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ネット依存における精神・心の問題点

ネット依存でうつ病となった女性

ネット依存はいろいろな意味で厄介なものですが、治療できないものではありません。他の病気と同じように、早い時期に適切な対処をすれば、重症化させずに済むのです。ネット依存かもと思った時には、どんなことに気を付けるべきなのでしょうか。そして、周囲の人間がすべきこと、してはいけないことはあるのでしょうか。

 

ネット依存になりやすいのはどんなタイプ?

ネット依存に絶対ならない人はいません。けれども、人間関係の構築に消極的で、できれば他人とは関わらずにいようとする子は、ネット依存になりやすいタイプであると言えます。特に、心の底から孤独を好んでいるわけではなく、本当は友達が欲しいと思っている子は、それができないリアルでは想像以上の寂しさを抱えているからです。

 

リアルでの人間関係が希薄でも、ネットの中では目立ちたがりだったり、積極的に仲間を作っていたりすることもあります。リアルではできないことを、ネットの世界では実行し、現実では埋められない寂しさをネットの中で満たしているのです。

 

親子共に人の話をきちんと聞く、生真面目なタイプが多いです。そのため、悩みは深くとも、治療を始められれば医師の言うことにも素直に耳を傾けることができます。これは治療の上ではとても助けになる特性でしょう。

 

また、子供にとって父親の存在が希薄であるケースも多いです。ただし、実際に父親がいるかどうかとは一切関係がありません。母子家庭であっても母親の接し方などで、父親の存在を子供がしっかり認識していれば問題はありませんし、逆に父親が家にいても、子供への関心や関わり方が薄かったり、存在感がなかったりすれば問題が生じやすくなります。

 

心理的な意味での父親不在の家庭では、子育てにおいて母親が孤立しやすくなり、子供との密着度が必要以上に増します。そうなると、母親は過干渉になりがちで、ネット依存の我が子に対しても、ただ「やめなさい」と強引に禁止したり、逆に怒らせまいと遠巻きにするだけになってしまったりして、必要な対応がとれなくなってしまいます。

 

ネット依存かもと思ったら、ネットができない時の行動に注意

ネット依存かどうかを見極めるポイントとしてよく挙げられるのが、「ネットができないと分かった時の行動」です。依存症ならば、何としてでも隠れてネットを使おうとし、その為ならばどんな手段を取ることも厭いません。これは「探索行動」と呼ばれるもので、あらゆる依存症で見られます。

 

薬物依存ならば「薬物探索行動」、アルコール依存ならば「アルコール探索行動」と呼ばれ、依存対象の欠如に示す反応は凄まじく、暴力を伴うこともあります。

 

ネット依存の場合も同じです。本人によほどの自覚がない限り、ネットを急に取り上げられると、どうしたら良いか分からなくなってしまい、とにかく混乱して思わぬ危険な事態を招くこともあります。

 

したがって、完全な依存状態になってから無理やりネットを取り上げるのは絶対に避けるべきです。専門家の手にゆだね、ゆっくりとネットから離れる方向にもっていくことを心掛けて欲しいのです。子供のネット利用については、本来は与える前にきちんと考え、毅然とした態度で対応しておくべきです。

 

まずは、せめて子供が高校生になるまでは、自宅でネットの環境構築をしないことです。PCは共有スペースに置き、パスワード管理は親が厳重に行いましょう。

 

我が子が時代に遅れてしまうと不安に思うかも知れませんし、子供たちからもそういう抗議があるかも知れませんが、一度与えておきながら、ネット依存だからと言って取り上げるよりはずっとましです。

 

スマホやゲーム機にしても、すぐに買い与えてしまうのは考え物です。もし買い与えるならば、フィルタリングサービスは必ず利用しておきたいものです。各種SNSアプリの提供企業も、遅まきながら対応を始めていますから、調べてみるのもよいでしょう。

 

これで完全だと言えるものはまだありませんが、何もせずに大人と同じスマホを渡すよりは良いはずです。

 

ネット依存から抜け出すためにすべきこと

ネット依存から脱却する第一歩は、リアルにおける人間関係の再構築です。そこから少しずつネットの時間を減らし、オフラインの活動を増やしていくのが基本です。

 

しかし、他の依存症と同じく、本人にネット依存の自覚が無いことが多いので、家族や身近な人に指摘されてもなかなか耳を傾けません。お互いに感情的になってしまえば状況は更に悪化します。

 

そもそも、完全な依存症となってからでは、家族にできることはそうありません。ネット依存の専門家か、そういった事情に詳しい第三者を介した方がうまく行きやすいものです。

 

ただし、この第三者には、粘り強く真剣に、子供や家族と向き合ってくれる人を選ばなくてはなりません。ベストなのは精神科医などの専門医ですが、これがまた簡単ではないのです。

 

何しろ、本人にその自覚がないのですから進んで受診してくれるはずもなく、説得が必要になります。方法は人それぞれですが、本人の現状に問題があることを認識させ、その原因がネットの過剰使用にあることを分からせるというのは共通した流れになります。

 

これも簡単なことではありませんから、まずは家族と話し合い、その方法を探ることから始まります。

 

受診に漕ぎつけるまで時間がかかってしまうのは、本人の自覚は勿論のこと、ネット依存を精神科の領域と捉える人がまだ少ないことも一因となっています。おかしいとは思いつつもどうしたら良いか分からず、精神科の受診を決意する頃には既に重度の依存症になっており、身体的な不調まで出始めていることが殆どです。

 

当然ながら、そこに至る前に受診する方が良いのですが、その目安についてもなかなかはっきりしたものがありません。勉強、仕事以外でのネット利用時間が1日5時間以上など、時間も目安にすることがありますが、同じ時間でも重要なのは中身なので、他の目安も合わせて総合的に判断することになります。

 

勿論、ネット利用が1日5時間超というのはかなりの長時間利用であり、たとえ総合的に見て「違う」と判断されても立派に「ネット依存一歩手前」と言えます。

 

しかし、スマホの普及以降、子供たちに限らず、人々のネット利用時間は増加する一方です。依存とまでは至らずとも、知らないうちにその手前にいる人は、思っているより多いのではないでしょうか。

 

ネット依存と併発することもある「引きこもり」や「うつ」

引きこもる子供の場合

ネット依存の子供がひきこもり状態にある場合は、その相関関係をきちんと見極めるのが重要です。ネット依存の結果、ひきこもるようになった場合は、ネット依存の治療がどちらの問題も解決します。

 

けれども、ひきこもり始めてからネット依存になった場合は、ネット依存だけを治療しても問題は解決しません。別の何かを見つけてひきこもってしまいます。

 

引きこもりの子供にネット環境を与えることを、「外の世界に触れるきっかけになる」と推奨する精神科医もおり、専門医の間でも見解は分かれています。けれども、たとえ外の世界に触れられたとしても、そこから先に進むことはかえって難しくなり、引きこもりの状態が改善されることはありません。

 

ネットから得た情報に、子供が救われることもあるでしょう。同じ気持ちの人と出会えるかも知れません。けれども、そこから「外へ出る」力を得られるかどうかは別の問題です。仲間に出会えて変われる子もいれば、ネットにハマって更に引きこもっていく子もいます。ここからでも外が見えると思うと、そこで満足してしまうのです。

 

ネット依存についての見解は、今の時点では残念ながら、専門家の間でも分かれています。ネット依存は病気ではなく、ネットは単なる媒体に過ぎないと考える人も多く、その場合は治療のツールとしてネットを使うことにも躊躇する必要がありません。見解が統一されない限りは、医師によって対応が真逆になってしまうこともあり得るのです。

 

うつ病を併発する場合

引きこもりの原因がうつ病であるケース、ネット依存からうつ病に至るケースはありますが、うつ病からネット依存になることはありません。

 

うつ病の場合、何かに依存するほどに傾ける情熱がなかなか持ちづらいからです。何時間もネットで遊べるような気力は、うつ病患者にはありません。ただし、うつ病からの回復途中にネット依存になることはあります。

 

ネット依存からうつ病を併発する場合、2種類のケースが考えられます。1つはオンラインでの人間関係がこじれてしまい、うつ病を発症するケースです。ネット依存の人にとっては、オンラインの友達が全てですから、これがうまく行かなくなると心の拠り所を失うことになり、大変なストレスを受けるのです。

 

もう1つは、自分がネット依存であると気づいた場合です。ネットをやめられない自分自身がストレスになり、うつ病を発症してしまうのです。どうにかしたいと思っても、オンラインの人間関係を切ることはできないため、自分の力だけでは抜けられず、「ダメな自分」を責めてしまうのです。この「自分はダメだ」という気持ちも、うつ病も特徴です。

 

抑うつ状態が2週間続く他、うつ病の傾向が強いと判断された場合、抗うつ剤などの薬物療法とネット依存の治療を同時進行で行います。ネット依存の治療が進むことで、うつ病の治療にも効果が現れやすくなります。逆に、ネット依存をそのままにしておくと、うつ病の治療も進みません。この2つが併発している際は、精神科医の治療が必須です。

 

ネット依存の診断は難しい!適応障害や発達障害と誤診されるケースもある

明らかにネット依存の状態にある子でも、精神科で違う診断を下されることは、現状では珍しくありません。中でも「適応障害」や「発達障害」と診断されるケースが目につきます。

 

適応障害と診断される場合

適応障害というのは、自分の置かれた環境や直面した出来事からくる大きなストレスに対処(適応)できず、抑うつ、食欲不振など様々な心身症状が現れ、社会生活に支障をきたすようになることです。他にも不登校や暴力、暴言などがみられることもあり、表面的にはネット依存と似ています。

 

また、ネット依存になる子供は、元々学校生活がうまく行っておらず、いじめにあった経験のあることも少なくありません。ネットの過剰利用には目を向けず、いじめや学校生活の様子だけで診断すれば、適応障害と考えても無理はありません。

 

けれども、適応障害という診断が下ってしまったことで、ネットの過剰利用を問題視しなくなるのは考えものです。

 

発達障害と診断される場合

人間関係がうまく構築できないとか、コミュニケーション能力に問題がある場合、それらに重点をおいてカウンセリングした結果として発達障害と診断されることもあります。

 

現在はよく聞かれる診断でもあり、そう言われると家族や本人も「やっぱり」と思ってしまったりするため、ネット依存の併発は意識されず、そちらは放置されてしまうことになります。

 

更に困ったことに、発達障害とネット依存には濃厚な相関関係があるのです。発達障害があると、ネット依存になる危険性が高くなるという傾向があり、中でも「アスペルガー症候群」の場合、ネット依存を併発しやすくなる傾向があります。

 

アスペルガー症候群との関係は深い

アスペルガー症候群の子供は、知的発達度は低くなく、記憶力などが優れているケースが多く、大抵は学校の成績も悪くないのですが、とにかくコミュニケーションが苦手です。人の気持ちを推し量ったり、言葉にされない雰囲気を読み取ったりという応用ができず、結果、常に自分本位に物事を進めてしまうため、周囲との軋轢が生じやすいのです。

 

自分の言いたいことばかり話してしまうため、会話をつなぐことも苦手です。集団生活にはなじみにくく、友達もできにくくなります。しかし、ネットの文字主体のコミュニケーション方法は、表情や雰囲気など、彼らが感じ取りにくい要素が最初から遮断されているため問題なくやり取りができ、友達も作りやすいのです。

 

ネットは、アスペルガー症候群の持つハンデを、一時的にクリアしてくれる便利なものですが、そのままネットに頼り続ければ、結局、対面でのコミュニケーションは苦手なまま、訓練や努力で得られるスキルすら身に付きません。

 

社会生活を営む上では、ある程度の対面コミュニケーションのスキルは必要であるのに、それを得る機会もなくしてしまうのです。

 

発達障害の場合、「治療」ではなく、本人の持つ障害の種類や程度に応じ、また教育面も含めた「療育」を行います。ネット依存を併発している場合、「治療」も必要ですから、本来ならその両方を並行させなければいけません。ネットの過剰利用を無視してしまうと、結局のところ思うような成果が上がらなくなってしまいます。

 

ネット依存の扱いについては、精神科医の間でも明確な答えはいまだに出ていません。治療法を模索する医師がいる一方で、そのような病気はない、根本的原因となるのは(既に認知された)他の病気であると言う医師もいます。「ネット依存」が依存症の1つであるという認識は、広まりつつあるもののまだ共通認識とは言えません。

 

ネット依存の公式の診断基準はまだ存在しない

病気と認めるか否かで議論が分かれていることもあり、現時点では、医学的に「これらの条件に当てはまればネット依存症」と言える、共通した基準は存在しません。ネット依存の治療方法を本格的に研究するためにも、ネット依存が病気であると公的に認められ、その診断基準が確立されることは必要不可欠です。

 

現在よく知られているネット依存の定義は、最初にネット依存について指摘したアメリカの心理学者キンバリー・ヤング博士が作成したチェックリストですが、1998年に作成されたものであるため、現在の状況にそぐわない点も多く見られます。新しく、現状に合った診断基準の作成が待たれますが、それがなかなか進まないのです。

 

アメリカ精神医学会による「DSM-5」の試案段階では、ネット依存は「使用障害」として分類されており、将来的には疾患として分類される可能性が濃厚と思われました。けれども、議論の末、最終的にはネット依存は分類に加えられることはなく、「ネットゲーム障害」が、「今後研究されるべき疾患」の項目に加えられました。

 

ネットゲーム障害については、2018年に完成予定のWHOによる「疾病及び関連保健問題の国際統計分類」でも取り上げられる可能性が高くなっています。ネット依存そのものが病気と正式に分類されるには、まだしばらく時間がかかりそうですが、ネット依存の症状に苦しむ人を救うべく、医師を含め研究者による議論は現在も活発に行われているのです。

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