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中学受験のために、塾に通うのはかわいそうなのか?

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塾で勉強する小学生

中学受験というと、「子供がかわいそう」「親が勝手に決めているのだろう」といったイメージが世間には根強くあります。小学生では将来について見通して考えるには幼すぎる、勉強なんて楽しいものではないといった大人の固定観念がこれらのイメージの裏にはあるのかもしれません。

 

世間のイメージからは、中学受験の実態は見えてきません。中学受験をする子供達の実態について、様々な調査を用いながら見ていきましょう。

 

中学受験勉強は「つらいだけ」なのか?

中学受験を決意すると多くの子供は塾へ通い、親は私立中学の情報収集を始めます。親子で話し合い、固い意志を持って受験を決意したはずですが、世間の声に本当にこれでよいのかと疑問を持つ親も多くいます。

 

世間では、「小学生から塾に通わせるなんてかわいそう」「子供がつらい思いをしているのではないか」といった中学受験に対する負のイメージがあります。一方、保護者は情報を集め始めると、私立中学の魅力に引き込まれていきます。世間のイメージと私立中学の魅力の間で葛藤してしまうのです。

 

しかし、「つらい受験勉強」と「魅力的な私立中学での生活」は交換条件なのでしょうか。小学生が何かを犠牲にした「つらいだけ」のものが中学受験勉強なのでしょうか。決してそうではありません。

 

中学受験は取り組み方次第で、親子の成長の機会になり、家族の絆を深める貴重な体験になります。更に質の高い私立中学での教育を受けられるという大きな可能性を秘めています。中学受験に対する世間のイメージと、中学受験の実態には乖離があると思います。

 

中学受験の塾通いは「かわいそう」なのか?

中学受験と塾は切り離すことはできません。塾に蓄積されたデータや指導法によって的確なアドバイスをもらえるだけでなく、受験のプロ達による授業を受けたり仲間と切磋琢磨してモチベーションを上げたりすることができます。もはや、塾なしで中学受験をすることは無謀と言えるでしょう。

 

一方、塾に通うことへの負のイメージは根強くあります。「夜遅くまで塾に通ってかわいそう」という声は世間でよく聞かれます。本当に中学受験のために塾に通うことは「かわいそう」なのでしょうか。

 

ベネッセ教育総合研究所が2007年に小学6年生とその保護者を対象に行った調査では、「塾と学校の勉強ではどちらが楽しいか」という質問に「ぜったい学校」「どちらかというと学校」と答えた子供は51.5%でした。一方、「ぜったい塾」「どちらかというと塾」と答えた子供は44.9%でした。

 

この結果からは、「塾より学校の方が楽しい」と子供達は感じているということになります。「塾通いはかわいそう」という巷の親からは「やっぱり学校の方が楽しのよ」という声が聞こえてきそうです。

 

しかし、中学受験をする予定の子供だけを抽出した調査では、「ぜったい学校」「どちらかというと学校」と答えた子供は31.6%、「ぜったい塾」「どちらかというと塾」と答えた子供は64.5%になります。中学受験をする子供達にとっては、塾の勉強は学校の勉強よりも楽しいのです。

 

同じ調査の中には「学校と塾の勉強ではどちらが将来役に立つと思うか」という質問もあります。全体では、「ぜったいに学校」「どちらかというと学校」と答えた子供が43.7%、「ぜったいに塾」「どちらかというと塾」と答えた子供が54.5%でした。

 

中学受験をする予定の子供だけで見ると、「ぜったいに塾」「どちらかというと塾」が71.7%、「ぜったいに学校」「どちらかというと学校」が26.3%という結果です。子供達の実感として、塾の勉強は将来の役に立つという意識があることが分かります。

 

中学受験勉強は将来役に立つのか?

ベネッセ教育総合研究所の調査から、中学受験のために塾に通っている子供達の約7割が「塾の勉強は将来役立つ」と感じていることが分かりました。しかし、子供達の実感としてではなく、客観的に見て本当に中学受験の勉強は将来役に立つのでしょうか。

 

受験勉強における単なる知識の詰め込みは、社会に出てからほとんど役に立ちません。「受験勉強=知識の詰め込み」というイメージを持っている人も多いと思いますが、私立中学入試には知識の詰め込みだけでは太刀打ちできません。

 

私立中学入試では、持っている知識を使ってどのように問題を解決するのかに重点が置かれます。論理的に道筋を立てて考えることが求められるのです。したがって、進学塾では知識を身に付け、その知識を活用する力を育成することを目標に指導がなされます。

 

ビジネスにおいても、常に論理的思考が求められます。日々起きる問題をどうスムーズに解決するかはビジネスマンにとって必要不可欠な能力です。このような能力の基礎を小学生のうちから身につけることができれば、将来役に立つことは間違いありません。

 

また、受験勉強においては、目標を設定してそれに向かって努力することが求められます。次のテストで何点を目標にしようか、そのためにはどんな勉強をどれくらいすればいいか、学校の行事を考えていつどれくらい勉強ができるかなどを日常的に考える必要があります。

 

目標設定、計画、実行、振り返り、次の目標設定という中学受験におけるこの行動は、ビジネスにおけるPDCAサイクルと同じものです。Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)というサイクルをビジネスでも同様に繰り返しています。

 

論理的思考やPDCAサイクルの基礎を、中学受験勉強を通して小学生のうちから学ぶことができます。これらの点だけ見ても「中学受験は将来役に立つ」と言えます。

 

「脱ゆとり」への転換、「PISAショック」

経済協力開発機構(OECD)による国際的な学習到達度調査であるPISAが、2000年から本格的に始まりました。この調査は、義務教育終了時の年齢である15歳を対象に、3年ごとに、読解力、数学知識、科学知識、問題解決能力を調査します。PISAでは、知識を問うだけでなく、知識の活用、分析、評価ができるかが問われます。

 

2000年の調査で日本は、読解力こそ8位だったものの、数学知識は1位、科学知識は2位という輝かしい結果を残しました。しかし、2003年の調査では、科学は2位を維持したものの、数学は6位に陥落、読解力に至っては14位と、10位以内にも入れないという結果になりました。

 

この結果に大きなショックを受け、国は「脱ゆとり」へと大きく方針を転換させました。それまで日本の子供達は、学習に対する意欲は低くても学力は高いとされ、学習意欲を高めることを目的に「ゆとり教育」が進められてきました。

 

しかし、PISAの調査によって、ゆとり教育後も学習意欲は依然として低いままで、学力は以前より低くなったことが明らかになりました。学習意欲と共に学力を上げるために、「脱ゆとり」への改革が始まりました。

 

改革が始まった3年後2006年の調査では、数学は10位、科学は5位、読解力は15位と前回の調査を更に下回る結果となりました。日本の子供達は知識の活用や読解した情報を分析し、評価することが苦手だと明らかになったのです。

 

その後、2007年に改正された学校教育法では、「知識の活用」、「課題解決のための思考力・判断力・表現力」、「学習意欲」が「新学力観」として掲げられました。これらの学力は「PISA型学力」とも呼ばれ、教育改革が進められていきます。

 

2007年には、全国学力・学習状況調査が始まりました。この調査では、小学6年、中学3年を対象に、算数・数学、国語、理科(2012年から)の学力をテスト形式で、学習状況をアンケート形式で調査しています。特徴的なのは、知識力を問うA問題と知識の活用力を問うB問題が導入され、PISA型学力を大きく意識した調査だということです。

 

その後のPISAでは、徐々に順位を上げ、2015年の調査では数学は5位、科学は2位、課題だった読解力は8位と全てにおいて10位以内という結果を取り戻しました。2000年代に入って国が掲げた「脱ゆとり」「新学力観」が一定の成果を上げたと言えます。

 

中学受験でPISA型学力が身につく

PISA型学力の必要性が認識され、知識の活用力を高めることが公教育の場で重視されるようになりました。2000年に入ってPISAの調査が始まり、日本の子供達が知識の活用や分析が苦手だと明らかになった後のことです。

 

一方、私立中学入試では、知識の活用や分析に重点が置かれてきました。決して知識の詰め込みだけでは太刀打ちできないユニークな問題が出題され、その正誤が合否を分ける結果になります。

 

中学や高校では、英語や数学など小学校時代には習わない新しい科目を習います。それでも小学生のうちに知識の活用力を身につけた子供達が、のちに力を発揮することを、私立中学では見抜いていたのです。

 

教育ジャーナリストの中曽根陽子氏は、教育情報誌「エデュケーション・ダイアモンド」において、私学の入試問題について言及しています。「私学の入試問題の中には長文を読ませた後、その内容に賛成か反対かの立場を表明し、その理由を論理的に書かせるものがありますが、これなどまさにPISA型読解力を測る問題だと言えるでしょう」と述べています。

 

また、早稲田アカデミー教務部の千葉宗博氏は同誌で、私学中学校の入試問題では「知識の積み上げの上に運用力を問う問題が出題される」ことを指摘し、この能力の基礎を低学年のうちに培うべきだと述べています。

 

つまり、高学年になってから受験に向けて知識を詰め込んだだけでは、私立中学入試には対応できないということです。「新学力観」として近年重要性が指摘されているPISA型学力を私学では長年測ってきたのです。

 

進学塾ではPISA型入試に対応できるように、研究を重ね、様々な工夫を凝らしてきました。知識の活用、分析、評価、表現などの能力はもちろん、学習意欲の向上にも力を入れています。このような指導が、子供達が「塾の勉強は将来役立つ」と感じている要因だと考えられます。

 

中学受験の塾通いで遊ぶ時間は減るのか?

塾に通うと遊ぶ時間が減ると考える人が多くいます。塾に通っている子とそうでない子を比べれば、もちろん塾に通っていない子の方が遊ぶ時間はたくさんあります。では、どの程度遊ぶ時間が減るのでしょうか。

 

ベネッセ教育総合研究所が2008年に小学5年生を対象に行った、放課後の生活時間調査によると、塾あり習い事なしの子供が1日に遊ぶ時間は平均で約35分、塾・習い事どちらもなしの子供の場合は約66分でした。

 

比較すると1日あたり約30分の差があります。確かに塾に通っていない子供の方が遊ぶ時間は多く、塾に通うと遊ぶ時間が減るというのは事実です。では、習い事をしている子供はどうでしょうか。

 

ベネッセの同調査では、塾なし習い事ありの子供が1日に遊ぶ時間は約44分という結果が出ています。塾あり習い事なしの子供と比べて約10分の差があります。習い事だけの場合より、塾だけの場合の方が遊ぶ時間が減るというのも事実です。

 

しかし、塾に通う子供たちが毎日通塾しているかというと、そうではありません。中学受験のために塾に通う日数は、通常小学4年生で週2日、小学5、6年生でも週3日程度です。小学4年生なら塾のない週5日、5、6年生なら4日は自由に遊べる時間があるのです。

 

また、ピアノや習字などの習い事をしていたり、野球やサッカーなどのスポーツ少年団に所属していたりする子供でも、週に2~3日は拘束される時間があるはずです。全国レベルを目指す子供達なら家庭でも練習をすることは多く、遊ぶ時間は限られます。

 

塾に通うと遊ぶ時間が減るというのは事実ですが、塾で受けられる指導やそこでできる仲間などがあり、決してマイナスな面だけではないはずです。習い事をしている子供達も遊ぶ時間が減るのは同様です。習い事を通して得られることも多くあるのも事実だと考えられます。

 

中学受験勉強とゴールデンエイジ

低学年の時期においては、外で思い切り遊ぶことは大変重要なことです。五感を使って様々なことを感じ取り、幅広い経験をすることは、興味関心の幅を広げたり、物事に疑問を持ったりすることにつながります。

 

しかし、高学年になると外遊びで得られるような具体的な体験を通した知識や経験だけでなく、より抽象的な概念を学ぶことが必要となります。これは、10歳前後で考える力が転換期を迎えるからです。

 

「ピアジェ理論」では、7歳から11歳頃を具体的な経験から学ぶ「具体的操作期」、11歳以降を、論理的思考を高めていく「形式的操作期」と呼んでいます。「形式的操作期」に入ると、仮説を立てて推論するという論理的に考える力が伸ばされるべきだと考えられています。

 

考える力の転換期である10歳前後は脳科学的にも重要な時期であり、9歳から12歳までの過渡期は「ゴールデンエイジ」とも呼ばれます。このゴールデンエイジに何かに夢中になって取り組んだ経験は後の成長に大きな成長を与えます。習い事でもスポーツでもこの時期に基礎を築いていた選手が将来活躍するということは、よく見られることです。

 

中学受験においては、まさにこのゴールデンエイジに脳を鍛えることに他なりません。知識を蓄え、知識を活用、応用する力を身につけ、目標を追いかけることは、後の成長に大きな影響をもたらすと考えられます。

 

中学受験の塾通いでメディア時間が減る

ベネッセ教育総合研究所の調査によって、塾あり習い事なしの子供に比べて、塾なし習い事なしの子供は約35分1日に遊ぶ時間が長いことが分かりました。同研究所の調査にメディア時間の長さに関するものがあります。

 

メディア時間とは、テレビ、DVD、ゲーム、スマートフォン、パソコンなどのメディアと接する時間のことです。調査が行われた2008年の場合、メディア時間のほとんどがテレビやDVD鑑賞に当てられています。

 

塾なし習い事なしの子供は平均して1日約111分、テレビやDVDを見て過ごしています。一方、塾あり習い事なしの子供は約64分なので、比較すると約47分塾なし習い事なしの子供の方が多いことになります。

 

授業時数の増加や行事へ取り組みなどによって、子供達が放課後に外で遊べる時間は年々少なくなっています。環境の面でも都会では空き地が減り、子供達が自由に遊べる場所も少なくなりました。また、近年では小学生をターゲットにした犯罪を見聞きすることも多くなり、外で子供を遊ばせることに不安を感じる保護者も増えています。

 

このような状況から、子供達は外で遊ぶよりも家庭でテレビやDVDを見ることが多くなっていると考えられます。近年ではスマートフォンやタブレットが普及しているため、動画を見たり、ゲームをしたりしている子供も増えています。

 

塾に通わない時間に何をするかは、家庭や子供の意識によって違いはありますが、多くの子供が家でテレビを見て過ごすという状況が生まれているのです。同じ時間を塾で過ごし、仲間と切磋琢磨しながら勉強している子供がいるとすれば、どちらがより有意義かは一目瞭然でしょう。

 

中学受験の塾通いで睡眠時間が減るのか?

中学受験のための塾というと、深夜まで猛勉強をしているというイメージを持つ人が多くいます。しかし、実際に深夜までの猛勉強が行われるのは、小学6年生の2学期、追い込み時期くらいのことです。

 

文部科学省が2013年に行った全国学力・学習状況調査によると、小学6年生では1日8~9時間寝ている子供達の正答率が最も高く、それより長くても短くても正答率は低いという結果が出ています。高い学力を維持するためには適度な睡眠が必要であり、単に長ければよいというわけではないことが分かります。

 

2008年にベネッセ教育総合研究所が行った調査では、受験予定のある小学5、6年生の平均睡眠時間は平均8時間9分、受験予定のない場合は平均8時間41分でした。受験予定の内子供達の方が30分程度多く睡眠をとっていますが、どちらも8~9時間の間に入っています。

 

中学受験のために塾に通っている小学生が、学校で居眠りをするという話を耳にしますが、ベネッセの調査結果からすれば、さほど多い数ではないと考えられます。しかし、受験をする子供が少数であるクラスでは目立つ存在であり、一人でも居眠りをする子がいれば「塾通い=居眠り」というイメージが付いてしまうのではないかと思います。

 

長期的な目で見ると、睡眠を削って勉強をすることは効果的とは言えません。学校で居眠りをしてしまうほどの子供が、勉強のために睡眠時間が短くなっているとすれば、勉強のやり方に問題があるのです。

 

中学受験の塾通いで家族団らんが減るのか?

塾に通うと家族団らんの時間が減るという意見も聞かれます。確かに、塾に通う日には、夕食を家族で囲むことはできません。しかし、毎日のことではなく、小学4年生なら週2日、5、6年生なら週3日のことです。これを多いと見るか、少ないと見るかは、各人の考えによるところだと思います。

 

そもそも、日常的に夕食の団らんが、毎晩行われている家庭はどれくらいあるのでしょうか。核家族化が進む現代では、夕食までに父親が帰って来られず、母親と子供達だけで夕食を食べる家庭も多いはずです。

 

そのような家庭では塾に子供が行ってしまうと、残された母親や弟妹達は寂しい思いをするかもしれません。一方、本人は塾の友達とお弁当を広げ、いつもの夕食とは違う賑やかな雰囲気を楽しんでいることがほとんどです。

 

夕食を一緒に食べられない日が増えるということは現実ですが、そのことと家族の団らんの時間が減ることはイコールではありません。中学受験を決意した時点で、親子は共有の目標を持っています。

 

そのために塾に通うことで、目標点数の設定やテストに向けての計画など親子共に目標実現のための道筋を話し合う必然性が生まれます。それだけでなく、塾の先生や友達の話、他校で流行っていることなど、子供が話したいことは増えるはずです。

 

実際に中学受験を経験した親からは「子供のことをより深く理解できるようになった」「親子の絆が深まった」という声が聞かれます。家族の絆は一緒に過ごす時間の長さではなく、相手のことをどれだけ深く考えたかによって決まるものです。

 

中学受験となれば、普段は仕事が忙しい父親でも関心を持つようになります。子供の頑張る姿を目にすれば、自然とねぎらいや励ましの言葉が出てくるでしょう。夕食の団らんはできなくなるかもしれませんが、それ以外の時間で話をしたり、励ましたりする時間が増えることが多く、家族団らんが減るとは一概には言えないのです。

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