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今までとはひと味違う読書感想文の書き方

読書感想文を書く

小学校から高校まで、1年のうちで1回も読書感想文を書かないという年は、おそらくないでしょう。多少面倒とはいえ、とにかく読んで書いてしまえば終わるものですから、えいや!とやっつけてしまっている人も多いかも知れません。

 

ですが、どんなに力技を使ったとしても、本を読み、書く手間暇はかかるものです。どうせ同じ苦労をするなら、一度くらいは今までとはひと味違う読書感想文を書いてみるのはどうでしょうか?

 

ただの面倒な課題と思わずに、ほんの少し考え方を変え、書き方にほんの少しの工夫を加えてみるだけで、読書感想文は驚くほどレベルアップします。

 

読書感想文でも「つかみ」は大切

あらすじや出演者がいくら魅力的でも、最初の数分間がおそろしく退屈な映画や舞台を最後まで見るのは苦痛なものです。小説や漫画でも、最初の数ページがつまらなかったら、その後は読む気にならないという人だっているでしょう。何においても「つかみ」というのはとても大切なのです。もちろん、読書感想文も例外ではありません。

 

まずは冒頭の一文から

読書感想文で「つかみ」の大部分を担うのは、冒頭の一文です。そこでがっちり読者の心をつかんで、次を読もうという気を起こさせることができるかどうかが、読書感想文の評価を大きく左右すると言ってもよいくらいです。では、どうしたら読む人の心をつかめる一文が書けるのでしょう。大きく分けて、二つの考え方があります。

 

1つ目は、とにかく1番から始めることです。本そのものや物語の第一印象、1番好きだと思ったこと、1番強く疑問に思ったことでも良いです。読者は、最初はこう思った、と言われればその後の変化を、1番これが好きだった、と言われれば、その理由を、1番の疑問を投げかけられればその答えを予想して、先を読もうという気持ちになるものです。

 

もう1つは、自分に絡めてみるという方法です。「自分」というネタは、それこそ自分にしか持ちえないものですから、個性的な冒頭になるでしょう。自分と登場人物の置かれている状況や能力を比較するのも良いでしょう。物語に自分自身の置かれた状況や気持ちを重ねられるならば、自分自身の話から始めても、読む人の興味をひきやすくなります。

 

最初の一文は、長々と書く必要はありません。短めの方が印象に残りやすいとも言えます。大切なのは、簡潔で、オリジナリティがあり、その「次」を予感させるものであることです。少しだけ頭をひねって、最高の一文から書き始めてみましょう。

 

できることなら題名にもひと捻り!

読書感想文の題名と言えば、9割方が「〇〇を読んで」です。それでも間違いではありませんが、折角「つかみ」を工夫できたなら、こちらももうひと捻りしてみたいところです。誰が書いた、どの読書感想文にも合うようなありふれたものではなく、独特の題名をつけて、読み手にアピールしてみて下さい。

 

考えに考えた結果、もしも、「これでは何の感想文か分からないかも」と不安になるようでしたら、副題として「~〇〇を読んで~」と付け加えてもよいでしょう。

 

読書感想文をぎゅっと「しめる」には

「つかみ」と同じように、「しめ」も大切なものです。読者が最後に読む部分ですから、ここですっきりしないと全体に対する印象はがくんと悪くなってしまいますし、逆に「しめ」の部分をすっきりとまとめ上げることができれば、読書感想文全体をぎゅっと締まったレベルの高いものにすることができるのです。

 

本を読んだことによる変化を示すと、「しめ」の部分をレベルアップすることができます。物語を読み始めた時の印象はこうだったが、読み終えた後はこう変わった、というのもあるでしょうし、読み始めた当初は疑問に思ったことに答えが出たのなら、それを持ってくるのも良いでしょう。疑問への答えを書くならば、冒頭と呼応させておくのが効果的です。

 

また、自分自身の考えや気持ちに変化があったのなら、それを持ってくるのもよいでしょう。これまでは反発しか感じなかった両親の気持ちが少し分かった、とか、友人関係の悩みに解決の方法を見つけた気がした、というのもあるかも知れません。

 

物語と現実を重ね合わせた上で、自分の内面に与えた影響を書くことで、「しめ」は重みを増すことができます。

 

さらに、「しめ」の部分を先に決めてしまってから、書き始めるという方法もあります。印象的な言葉を使った「しめ」を予めある程度考えておき、そこに向かって書く、という方法です。少し上級者向けの方法ではありますが、うまく「しめ」ることができれば、良い印象を残すことができるでしょう。

 

主題を言葉で表してみると、読書感想文がビシッと決まる

読書感想文は基本的に自由なものです。本を読んだ感想であれば、何を書いても、どう書いても良いものではありますが、主題をひとつ決めて書いていくと、あれこれと感想を書いていくよりも、一本筋が通り、ビシッと決まったものになります。

 

読書感想文の主題とは、その物語や本から受け取ったメッセージのことです。物語そのものの主題と重なることもあるでしょう。自分なりの視点から見た、独特の主題を見つけることもあるでしょう。独特の主題を提示できれば、読書感想文はかなり個性的なものになりますが、物語そのものの主題をしっかりと捉えられていれば、それだけでも十分です。

 

主題を見つけたら、それを短い言葉で表してみましょう。いわば、読書感想文のキーワードです。難しい言葉にする必要はありません。普通の言葉で、的確に表現できていればよいのです。普段使うような言葉でも、あまり使ったことのない言葉でも、正しく使えるならば問題はありません。自分の語彙も広がって、良いこともあるかも知れません。

 

例えば、主人公の戦いを常に見守り、その帰るべき場所となって待ち続ける家族との絆を主題とするならば、「絆」や「相棒」という言葉で表現できるでしょう。お互いに影響を与え合って成長していく主人公と友人たちの姿に心動かされたなら、「化学変化」や、「出会い」「岐路」などのワードでもよいでしょう。

 

キーワードを見つけられたら、読書感想文の中で使ってみましょう。「しめ」の部分で使うのもよし、逆に始めの方で問いとして提示して、「しめ」にその答えを持ってくるという方法もあります。目立ちにくい言葉ならば、キーワードにカギ括弧(「」)をつけて強調するのも方法の1つでしょう。

 

読書感想文コンクールに出してみよう

読書感想文が少しレベルアップしたと思ったら、コンクールに挑戦してみるとよいでしょう。ただ提出して終わりの学校課題よりも、ちょっとした思い出にもなりますし、力試しとしてもおすすめです。それに、自分のことを全く知らない、完全な他人に読んでもらうというのは、なかなか良い経験になります。

 

読書感想文コンクールは、企業や地方自治体などの主催で、割合よく開催されています。学校全体で応募したり、校内で選抜したりということも多いようですが、自分で選んだコンクールに、自分で応募してみるのがよいでしょう。学校から出される課題とは違い、自分から挑戦してみるのですから、それはずっと価値のあることですし、力になります。

 

もちろん、コンクールですから、賞にはかすりもしない、ということもあるでしょう。初めての挑戦で入賞、などというラッキーは、そう簡単にはないものです。

 

けれど、だからと言って挑戦そのものが無駄になるわけではありません。挑戦したという事実そのもの、読んだ本、そして考えたこと全てが力になっていくからです。挑戦そのものが目的なのです。

 

コンクールで評価される「書き方」とは

読書感想文コンクールには、全国からたくさんの感想文が送られてきます。レベルは様々ですが、基本的なことは全てクリアできている作品が殆どです。

 

本を読みこんであるのはもちろん、勢いまかせでなく手順を経てしっかりと書き、念入りに推敲されたものばかりです。そういう中で、上位に入るような読書感想文には大抵、いくつかの共通点があります。

 

まずは、自分勝手になっていないこと。本人の思いが綴られていない読書感想文は、単なる解説でしかありません。だからと言って、その本が伝えようとしていることを無視して、自分の思いや意見ばかりを書き連ねただけでは、ひとりごとと同じです。自分の気に入ったところばかりをクローズアップしただけでもいけません。

 

読書感想文は、自分の気持ち、思いと本の内容、筆者の思いや伝えようとしていること、どれも無視しては成り立たちません。本を読んだ読者である自分の気持ちや視点、本を書いた筆者の思いやその視点を、常に意識しながら書いていくことで、読書感想文を自分勝手なひとりごとにしてしまわないようにしましょう。

 

また、社会にもきちんと目を向けていることも重要です。本の中だけで完結してしまい、現実の社会に全く目を向けていないと思われると、評価は上げにくくなります。

 

本ばかり読んで身の回りや社会のことに無関心では、良い読書感想文は書けない、ということです。できればそこから、自分自身の問題や行動に絡めて展開できれば、評価はさらに上がります。

 

そして更に入賞のチャンスを広げたい!という人は、課題図書の選び方を工夫しましょう。工夫といっても大したことではありません。ただ、あまり他の人が選びそうにない本を選べばよいのです。選ぶ人の少ない本を読んできた、ということは、それだけで審査員の注目を浴びることができます。

 

もちろん、他の人が選びそうにない、ということは、自分もまた敬遠したいと思うような本をわざわざ読む、ということですから、大変かも知れません。けれども、そうでもなければ読むことのなかった本と出会えるというのは、それはそれで意義があることです。

 

この機会に、今までは読みそうになかった本を手に取ってみるのも良いのではないでしょうか。

 

社会問題と読書感想文をリンクさせる

現代社会が抱える問題や、現在の社会情勢を読書感想文の中にうまくリンクさせていくと、社会に対してきちんとした考えを持っているという評価に繋がります。切り口は色々と考えられますが、1番やりやすい方法は、授業や新聞、雑誌、テレビから得た情報を引っ張ってくるというものでしょう。

 

中でも学校の授業は、何より社会の基礎を何よりも分かりやすく教えてくれるものですから、それをうまく本の内容とつなげていくのも良いでしょう。最近やった授業の内容から、本の内容に話を広げていくと、書き出しとしても使いやすいはずです。

 

本や物語の中の世界と現実社会は、全く違うように見えていてもどこかしら重なる部分があり、違う部分があるものです。違いに注目し、本と現実社会がどう違うのか、何故違うのかを考え、対比しながら展開していくことでも、読書感想文は現実社会とリンクしていきます。

 

角度を変えて見ると、読書感想文の世界が深まる

「少し変わった切り口で書きたい」とか「どうにも気持ちが入り込まない」というときは、角度を変えて物語を見てみるとよいでしょう。角度を変えるというのは、視点や状況を変えてみるということです。

 

視点を変えてみる場合は、主人公からではなく、その友人や家族、恋人から敵役まで、物語の中では直接には描かれない位置から本筋を見てみると、途端に登場人物や物語の世界そのものが、ぐっと近くに感じられるようになったりしますし、場合によっては新たな発見もあるかも知れません。

 

一歩進んで、登場人物たちのキャラクターを少し変えてみる、というのも有りです。物語においては、主人公はともかく、脇を固める登場人物たちは、1人ひとりがそれぞれ、「何か」を象徴した存在です。たとえ前半10ページで死んでしまうようなことがあっても、意味のない登場人物というのは、実は1人もいないのです。

 

ただ、彼らが何を象徴しているのか、示しているのかは、通りいっぺん読んだだけでは分かりにくいことも多いものです。登場人物たちのキャラクターを少し変えてみる、というのは、それを際立たせるには有効な方法です。本の中では強気な母親が、もしもたおやかな女性として描かれていたら?意地悪な先生が優しい女神のような女性だったら?

 

もちろん、物語はあるべき姿にならないでしょうし、キャラクターを変えてしまったことによって、何か足りない気持ちになるでしょう。それこそが彼らが象徴していた「何か」であり、その物語が必要とし、示したかった世界やテーマでもあります。そこまで持っていければ、読書感想文としてはかなり秀逸なものになるでしょう。

 

リンクさせる力で読書感想文を高める

読書感想文は、1冊の本を読んで書くものではありますが、本の中だけで終わらせなければならないものではありません。むしろ、そこから現実社会や自分の経験、知識に比較したり展開したりしてリンクさせ、広げていった方が、より「自分だけの」「自分らしい」感想文が書けるでしょう。

 

リンクさせる先となる知識や経験は、豊富であるに越したことはありません。豊かであればあるほど、読む人に「なるほど!」と思わせるような意表を突いたリンクを繋ぐことができるでしょうし、他の物語と対比させてみたり、連想してみることで、読書履歴の豊富さも示すことができます。これもまた、評価アップに繫がります。

 

自分にはそれほどの読書歴もなければ、豊かな知識もないと思っても、諦めることはありません。自分なりのリンクをできる限り広げれば良いのです。本を読むなかで、伝えたいと思ったことがあったら、そこに何かリンクするものはないだろうかと考えてみるようにして下さい。あ、これ!としっくり来るものがあったら、さっそく取り入れてみましょう。

 

この「リンクさせる力」が豊かであればあるほど、読書感想文は個性的なものになりますが、それ以外でも日常生活でも常に働かせていると、知識を脳内に根付かせ、引き出しやすくなります。連想する、対比するというのは、記憶術や発想力の強化にも役立つものだからです。読書感想文で成功したら、是非、実生活にも応用してみて下さい。

 

読書感想文を「真剣に」書くことで向上するもの

ただ書いただけでは、読書感想文は単なる「本の感想」に過ぎません。けれども、本の世界、筆者の思いにまっすぐに向き合って受けとめた上で、自分の思いや意見をできうる限りの説得力をもって伝えるというところまで高めるならば、それはもう、紙に書いただけの文章ではなく、本の筆者や読書感想文を読む人との対話だと言えます。

 

面と向かって話すのもそうですが、文章を介してとなると、本来はかなりのスキルが必要なものなのです。特に、見知らぬ人との対話は本当に難しいものです。このスキルは、磨けるならば磨いておくと、これからの人生の様々な場面で役に立ちます。仕事はもちろん、プライベートでも必ず必要になる場面は訪れます。磨いておいて損はありません。

 

もしもできることなら、課題やコンクールがなくとも、読書記録などをブログで発表して、日常的にこのスキルを磨いてみるのも良いのではないでしょうか。

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