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不規則な睡眠が子どもに悪影響を与える

夜更かし

遅くまで大人と一緒にTVを見たりして夜更かししている子どもは増えてきていますが、こういった子どもはきれいな三角形を描くことができないなどいろいろな問題を持つ度合いが多いというショッキングな調査があります。子どもと睡眠の関係について見ていきましょう。

 

不規則な睡眠は脳の発達を妨げる

最近では大人のほうの都合もあり、夜更かしするなど子どもが不規則な睡眠環境に置かれることが多くなっています。平成14年に行われた調査で、こうした不規則な睡眠環境を抱えた子どもにはさまざまな問題が発生していることが分かり、子どもと睡眠との関係性がクローズアップされることになりました。

 

この調査は、都内の幼稚園児や保育園児222名を対象として三角形を模写する簡単なテストを行ったものです。同時に、保育士や保護者に対していつもどういった睡眠を取っているかや生活習慣などのについてのアンケート調査も行いました。

 

調査の結果を見ると、毎日眠る時間が一定しておらず、1時間半ほどのズレが見られる不規則な睡眠環境を持つ子どもたちのうち、44%もの子どもが上手に三角形を模写できませんでした。斜めの線が2本以上あること、角があること、3本の線で囲まれていること、といった三角形の持つ特徴をつかんだ絵を描けなかったのです。

 

これに対し、毎日眠る時間が一定している子どもたちのうち三角形を上手に模写できなかったのは12%程度でした。

 

どうしてこういった差が出てくるかですが、斜めの線を描くには縦や横の線よりも高い脳の機能を必要とすることがあげられます。したがって、こういったテストをすることで脳の機能がどれぐらい発達しているのかを推し測ることができるのです。こうした脳の機能は4歳半から5歳半ぐらいの時期に伸びるとされています。

 

こうしたテストの他にも、不規則な睡眠環境にある子どもは幼稚園や保育園でも集中力に欠けたり、長時間活動し続けることができなかったり、話を理解しなかったり、まっすぐな姿勢で座っていられなかったり、仲間と一緒に作業することが不得手だったりといった行動面での問題が見られるということがアンケートから浮かび上がってきました。中には特に理由もないのに他の子どもを攻撃するような行動をした子どももいたそうです。

 

この調査は5歳児を扱ったものですが、1歳児について調査したときも不規則な睡眠環境下に置かれている子どもが多かったといわれ、日本の子どもはものすごく夜更かしになっていると考えられています。

 

基本的に、子どもというのは放置しておくと眠ろうとしません。きちんと決まった時間に眠るようにさせるのもまた大事なしつけなのです。

 

睡眠にも正しく身につけるための臨界期が存在する

子どもの脳の発達にとって、睡眠を取ることがどんなふうに影響を及ぼしているのかはまだはっきりしたことが分かっていません。一方で、生まれつき持っている能力と考えられてきた睡眠そのものにも臨界期があるのではないかという指摘が脳科学分野の研究者から上がってきています。

 

理化学研究所では、ネズミを暗闇の中で1ヶ月の間育て、その脳波を測るという実験を行いました。生まれてから1ヶ月目のネズミを暗闇に入れて育てたケースでは、眠っている間の眠りの深さに関連している脳波が普通のネズミに比べると30%ほど減少しました。しかし生まれた直後のネズミや生まれてから2ヶ月目のネズミを使ったケースではこうした現象が見られなかったといいます。

 

この研究から分かってくるのは、成長途中のネズミの場合、睡眠そのものも視覚的な体験によって発達するのではないかということです。そして、生まれてから1ヶ月~2ヶ月の間に臨界期があるということも分かります。

 

こうした研究を人間に当てはめて推測を行うと、人間にとっての正常な睡眠を取るやり方を身につけるための臨界期はおよそ8歳ぐらいでピークに達し、臨界期が終わるのはおよそ15歳ぐらいまでではないかと見ることができます。

 

睡眠について問題がある場合、子どもの体や精神にもさまざまな問題が出ることが医学的な調査で分かってきています。例えば、体温の周期が乱れたり、多動や夜尿といった身体面での問題の他、無気力、粗暴など精神的な問題が出てくるのです。

 

また成長段階の早いうちに睡眠が足りなかった子どもの場合、うつ病や統合失調症となる危険性もあるとされています。

 

このように、正しい睡眠を身につけるのにも臨界期が存在し、その時期にきちんとした睡眠の取り方を習慣づけられなかった場合、その子どもは後に何がしかの障害や問題に苦しめられかねないのです。

 

不規則な睡眠は子どもの学習にも悪影響を及ぼす

近ごろ、記憶や学習と睡眠という側面からの研究が進められてきています。そこから見えてきたのは、正しい睡眠の取り方を身につけることができなかった場合、子どもが学習面でハンデを背負うことになりかねないという事実です。

 

今のところ、睡眠を取ることで脳内の神経ネットワークにどんな影響が生じるのか、そして神経ネットワークにどんな変化がもたらされるのかはまだはっきりしていません。しかし、人間は睡眠を取っている最中に脳の中で眠る前の体験をもういちど思い返しているらしいことが分かってきています。

 

こうした睡眠が記憶に対してどんな効果を与えるのかはまだ仮説が立てられている段階です。例えば、一時期に何かを記憶するための短期記憶を長期記憶に置き換えているであるとか、必要ない情報を忘れるといったような効果が考えられています。

 

いずれにしても、学習という面から見ても正しい睡眠の取り方を身につけることが子どもにとっては大変大事だということは間違いないと言っていいでしょう。

 

ノンレム睡眠でも夢を見る

人間が眠りにつくと、最初の段階でまず深い睡眠に入り、次に浅い睡眠に移行します。前者はノンレム睡眠と呼ばれ、後者はレム睡眠と呼ばれるものです。ノンレム睡眠とレム睡眠は眠っている間に何度か繰り返し起こり、その中で記憶を処理していると考えられています。

 

目覚めたときに覚えているいわゆる「夢」はこのうちレム睡眠に見ているとされていますが、最近の研究ではノンレム睡眠の時間帯にも夢を見ていることが明らかになってきました。

 

2000年、アメリカのハーバード大学医学部で行われた研究によれば、テトリスというTVゲームを1日7時間3日の間やった学生を、寝入りばなのノンレム睡眠中に起こしてどんな夢を見ていたか調べたところ、3/4の学生がテトリスのゲーム画面であったり、テトリスを連想させるようなイメージを見たと回答したのです。

 

このことから、ノンレム睡眠の際にはその日経験したことをもう一度思い起こしているのではないかと言われています。学習したことを定着させるためにもきちんとした睡眠を毎日取ることが重要と考えられます。

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