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低下する子どもの体力を食い止める!

子どもの体力アップ

最近小学校などで児童の体力の低下が目立ってきています。小学校ぐらいの時期は体の基礎を作るために非常な大事な時期なのですが、その時期にこうしたことでは問題だということで体力向上に取り組み始めた学校もあります。

 

うまく体が動かせない子どもたち

広島県の東広島市立三ツ城小学校では、平成13年から毎月1回、全校生徒700人が参加する「ロング昼休憩」という取り組みを行っています。

 

この「ロング昼休憩」は13:00から45分間行われるもので、子どもたちの体力向上の一環として始まりました。子どもたちはこの時間中、グラウンドなどに出てドッジボールや縄跳びなどで遊びます。子どもが体を動かして運動する機会を増やそうという取り組みです。

 

この取り組みは、体力テストで子どもたちの体力がかなり低下していることを問題視したことから始まりました。

 

ボール投げで右手でボールを投げようとしているのに右足を踏み出してしまったり、反復横跳びで横方向に跳ぶことができず、引かれた線の間を歩いてしまうような子どもが続出したのです。体力を測定するためのテストが成り立たないような状況だったそうです。

 

三ツ城小学校の教師たちは、子どもたちが運動をする機会が少なくなっているためにこうした問題が生じていると危惧し、学校の時間割などに改善を加えてこうした体力向上への取り組みを開始したのです。

 

「投げる」運動で体力向上

三ツ城小学校の体力向上への取り組みは、ロング昼休憩だけに留まりません。毎週金曜日に「三ツ城タイム」という時間を設け、始業前の20分間を使ってエアロビクスや縄跳びをさせる時間を設けたり、毎週土曜日の午前中は校庭を開放したりとさまざまな施策を取っています。

 

子どもたちの保護者にも子どもを外でよく遊ばせるようにと通知を出し、親子で遊ぶ機会を増やして欲しいなどの呼びかけも行っているといいます。

 

三ツ城小学校の取り組みにおいては、体育のカリキュラムの中にものを投げるという運動を取り入れたことが特徴的です。ものを投げるという運動は高度な動きであり、運動の能力の多寡と大きな関連性があるからです。

 

走ったり打ったり跳んだりという運動とは異なり、ものを投げるという動作は全身のバランスが取れていないとうまく行うことができません。その上で、四肢をうまく調整できる高度な機能が必要になる行動なのです。

 

このことは、ボールを投げる距離が全国平均以下の子どもは、全国平均以上の子どもに比べ、その他の体力テストの項目でも劣っているという形で現れています。

 

三ツ城小学校では、こうした投げる体の動作を訓練できるように、的を設置してそれめがけてボールを投げることをゲーム形式で行ったり、バスケットボールなどの種目を運動に取り入れています。このような運動がまだ早い低学年の子どもには、投げる動作に関連する動きを鍛えることのできる紙鉄砲をさせています。これは、うまく上下に振ることでパンと音が鳴るようになっているものです。

 

取り組みを始めてから3年後には、こうした取り組みが功を奏しソフトボール投げの記録が前年度の記録を上回るという結果が出始めました。そのほか50m走や立ち幅跳びなどの記録にも改善が見られています。

 

何よりも子どもたちが運動をして体を使う時間を増やしたことが大きく、また体育のカリキュラムに工夫を凝らしたことがこのような結果につながったのではないかと分析されています。

 

子どもの体力向上は全国的な課題

体の動きを調整する中枢神経系の発達は子どもの頃、特に12歳ぐらいが峠になっています。つまり、小学校という時期は子どもが体の基礎を作るために非常に重要な時期であると言えます。

 

この時期に体をあまり使うことなく過ごした場合、その後の体の発達に大きな影響を与えますから、小学校の教師たちが子どもの体力低下を危惧し、その向上のためにいろいろと工夫するのは当然といえば当然なのです。

 

一方で、子どもたちを取り巻く環境は昔とはさま変わりし、放課後や休みであっても外で遊ばない子どもが増えてきています。どんな具合に生活をしているかをアンケートで調べた結果を見ても、テレビゲームやテレビ視聴といった回答する子どもが増えているのです。

 

これは、放課後や休日であっても塾通いなどで忙しかったりして、友達と遊ぶにもいちいち約束をしないといけなかったりするため、子どもが一人遊びをする機会が増えているからではないかと思われます。

 

なお、子どもたちの生活習慣を調査した研究では、1日に何時間テレビを見るかが体力の高低に関連しているという結果が出ています。1日に2時間以上テレビをみる子どもたちは体力が低い傾向が認められたのです。

 

文科省でもこうした子どもたちの体力低下を問題と考えており、平成16年ごろから全国的な取り組みにつなげるためのモデル事業を開始しました。三ツ城小学校のある東広島市を含め、全国の42の地域を指定し、子どもたちの体力を向上させる取り組みを行うというものです。

 

この取り組みは学校だけでなく地域や家庭も巻きこんで行われ、テストや実態調査などを通して子どもたちの生活習慣についても調べて検証を行うというものです。取り組みで効果が上がったものについては全国的に広く発信して、ゆくゆくは全国的な動きにしようとという流れです。

 

現在、この事業の結果として「子どもの体力向上のための取組ハンドブック」というものを作成し、全国の各小中学校に配布するなど、子どもの体力向上の普及啓発を広く実施しています。

 

子どもに体力をつけさせるには

人間の神経のうち、器用さであったりリズム感といったものを担当している部分は、生まれてから5歳ぐらいまでの間に8割方できあがり、残りの2割は12歳までに形成されるとされています。

 

このように、誕生から12歳までの時期は、脳の中でさまざまな神経の回路が形作られる大事な時期です。従って、小学校に通っているぐらいの時期に複雑な運動を行うことが子どもの発達にとって大変大事なのです。

 

この時期に必要となるのは、単純・単調な運動よりも器械運動など日常あまり行わないような運動です。運動が上手にできるようになることにより、体を動かすことが好きという気持ちが芽生え、将来的にも運動を日常に取り入れる生活習慣が身につくとされています。

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