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子どもに広がる慢性疲労症候群

慢性疲労

近年、子どもたちの間で睡眠障害や意欲の低下あるいは異常な疲労感といった慢性疲労症候群が広がっています。元気が取り柄のはずの子どもに何故こうした病気が広がっているのでしょうか。

 

自主性を重んじることが最も大事

ある日、大阪医科大学付属病院小児科の心身症外来に、母親に連れられて一人の中学生がやってきました。その子どもは中学校に上がってしばらくしたころから、ひどいだるさを訴えて1週間に1度ほどの頻度で学校を休むようになったといいます。

 

そうした疲労感はどんどん悪化し、立ちくらみ、めまい、腹痛、不眠といった症状も出て、二年生の二学期から学校をずっと休むようになってしまい、それから2ヶ月後に病院に診察に来たのです。

 

検査結果は「起立性調節障害」。自律神経に問題が生じている病気で、寝起きの悪さ、立ちくらみ、頭痛、全身の倦怠感、集中力の低下などの身体不調を伴うものです。数年前に親が離婚したことや、中学校でそりの合わない友人につきまといを受けたといったことによってストレスをためてしまったことが原因ではないかと診断されました。

 

病院で起立性調節障害の治療を受けたものの、その子どもの状態はあまりよくなりませんでした。学校に行けない状態も継続し、勉強の方も遅れてしまって進路面でも問題が持ち上がってきました。

 

担当の医師は親子に全日制の高校に進学することにとらわれない方がいいというアドバイスをし、結果的にその子どもは毎日通わずともいい単位制の高校を選択しました。

 

その子どもは以前からギターを演奏するのが好きで、将来の夢はミュージシャンになることでした。高校は音楽系の高校を選び、そこに通いながらギターの練習をして時折コンサートなどにも出るようになりました。だんだんと元気を取り戻し、アルバイトができるまでになりました。

 

こうしたケースで一番大事なのは親が子どもにどう対応するかだとされています。子どもの自主性を重んじ、子どもが夢や希望を持てるように支えてあげるのが一番大事になってきます。

 

先んじて現れる睡眠障害

慢性疲労症候群に陥ってしまう子どもが増えていますが、そうした子どもには共通する特徴があります。

・1つ目は、生活が夜型に偏っていること

・2つ目は、多すぎる情報に接して頭を使いすぎていること

・3つ目は、周りの人たちに気を遣いすぎ、自分を抑える傾向があること

 

こうした傾向があるところに強いストレス――いじめの対象となる、引っ越しを経験する、受験、家族の関係が悪い、病気になる、など――を受けた時、それによって睡眠と覚醒、深部体温、ホルモンバランスなどが崩れることがあります。異常な疲労感を訴える慢性疲労症候群はこのようなときに発症することがあります。

 

熊本大学付属病院では、1年間で309人の子どもが慢性疲労症候群と診断されたことがあります。このうち273人は睡眠にトラブルを抱えていました。具体的には、眠りが浅い、1日10時間近くも寝ている、起床後の意欲の低下、慢性的な疲労感といった内容です。生きるための力が不足しているといった印象を受ける状態でした。

 

こうした子どもたちは、慢性疲労症候群の症状が出る前のステップで睡眠時間が短くなる経験をしていることが多いのが分かりました。その段階でその子どもの周囲の環境を見直し、睡眠を正常に戻すような治療ができれば慢性疲労症候群にまでは至らないことが多いのです。例えば、いじめにあって眠れなくなっている子どもの場合には、無理に学校に行かせようとせず、転校することを検討するといった対応です。

 

慢性疲労症候群まで状態が悪化してしまうと回復が遅くなります。睡眠障害の段階で状況を把握し、治療を行うことが大事になってきます。

 

ネットやメールが慢性疲労を助長する?

最近発達が著しいTV、ゲーム、インターネットやメールといった情報媒体が、そのほかの原因とあいまって子どもたちを慢性疲労にしたりそれを悪化させたりするという指摘があります。

 

精神的、または肉体的に疲れてしまったとしても、きちんと睡眠を取り脳や体を休めることができればいずれは回復します。しかし、TV、ゲーム、インターネットやメールなどといった情報媒体に振り回されるようになってしまうと睡眠時間をそちらに割いてしまいがちになり、また眠る直前までそういったものを利用していると脳が興奮状態を保ったまま眠りにつくことで睡眠の質が落ち、脳の疲労が取れないということが起こってきます。

 

ある男子高校生は特にきっかけも見当たらないのに不登校となり、2ヶ月ほど学校に行けない状態になっていました。不登校の原因はわかりませんでしたが、その高校生は夜遅くや明け方近くであってもメールに反応してしまういわば「メール中毒」とでもいうような状態になっており、また睡眠障害を抱えていることが分かりました。

 

主治医が高校生とその親にメールの利用を中止し、インターネットなどのメディアもしばらく距離を置くようにという指導をしたところ、3ヶ月ほどたって不登校は解消し学校に通えるようになりました。

 

情報媒体は利用するには便利ですが、それにのめり込んでしまうと心身が休む暇が無くなり、慢性疲労症候群を誘発しかねません。節度を持って利用することが求められるといえるでしょう。

 

慢性疲労症候群の外見上の変化

慢性疲労症候群に陥っていたり、あるいはそうなりかかっているような場合、子どもの体に外から見て分かるような変化が起こっていることが良くあります。

 

秋田市内の小学生1143人を対象とした調査では、程度の差こそあれ肩こりを訴えた子どもが約20%、目の下にくまがある子どもが約15%、肩胛骨のズレが認められる子どもが約5%ほどとなりました。そのほか、背中が丸まっているという特徴も良く見られます。

 

こういった特徴が子どもに見られる場合、慢性疲労症候群になっているか、あるいはその予備軍かもしれないと考えて注意を払うべきかもしれません。

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