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子どもの成長は体の感覚と深い関連がある

バランス感覚

発達障害といわれる子どもたちに対し、身体感覚や皮膚感覚といったものを身につけてもらうことにより健全な成長を促す、という「感覚統合」とよばれる考え方があります。「体の感覚と成長に関連がある」という立場に立ったこの取り組みについて少し詳しく見ていきましょう。

 

感覚統合で重視される体の感覚とは

感覚統合というのは、1960年代にアメリカで提唱され始めた考え方です。人間の体に備わっている感覚のうち、触覚、前庭感覚、固有感覚という3つの感覚を重要視し、それを感じ取る力を養い統合を図れるようにしようというものです。

 

人間がなにか行動をする際には、周囲の状況をまず感じ取る必要があります。そのために五感であったり上で紹介したような感覚が備わっているわけですが、この感覚が脳の中でうまく統合されて正しく状況をつかめなければ正しい行動を取ることができません。

 

感覚統合では、発達障害といわれる子どもたちはこの感覚の統合がうまくいっていないのではないかという見地から、その点にポイントを絞って療育を行い、行動の改善を図ります。

 

前庭感覚とは、自分の体が周囲の空間の中でどういった位置にあるかということをつかみ取るための感覚です。また固有感覚とは全身の筋肉その他で圧迫感を感じ取るための感覚です。

 

こうした感覚は、視覚や聴覚といった感覚とは異なり、まわりの人間が子どもに教えることができません。あくまで自分で体を動かして感じ取っていくしかないものです。感覚統合療育では、さまざまな活動を通してこういった感覚を子どもが体得していくことを目指します。

 

たとえば、少し触れただけで痛みを訴えるような「感覚防衛」が見られる子どもの場合、あまり触覚を刺激しないように圧力の刺激だけを与えます。それとは反対に腕をつかんでも気がつかないような感覚が鈍磨した子どもに対しては、一度にいくつもの刺激を与える、といったようなことをするのです。

 

発達障害があるような子どもの場合、おとなしくしていられずに突然他の子どもを叩くような行動を取ることがありますが、これは何も害意を持っているのではなく、こうした身体感覚を確認したいという考えの現れです。

 

こういった身体感覚や皮膚感覚をきちんと認識することができるようになれば、結果として言動も正しいものができるようになってきます。

 

このような問題を抱えているは子どもばかりではなく、自分の子どもは愛しているがどのようにふれあったらいいのか悩んでいる母親、といった例も増えてきています。身体感覚や皮膚感覚の統合というテーマはますます重要になってきていると言えるでしょう。

 

肌と肌の触れあいは大切

親と子どもの間でなされるお肌とお肌のふれあいは、子どもの成長に必要不可欠なものです。そうしたことが子どもの身体感覚や皮膚感覚といったものをはぐくむ基礎になるからです。

 

例えば、親が子どもにする虐待の一種にネグレクトと呼ばれるものがあります。これは親が子どものことを無視するという行為ですが、ネグレクトを受けながら大きくなった子どもは自分が愛されておらず誰からも必要とされていないと感じ、情緒的に問題を抱えたり反応に乏しいような特徴を見せます。

 

不安神経症やうつといった精神的な疾患を抱えた人を調査してみると、子どもの頃に親との間で肌のふれあいが欠けていたと思われる人の率が通常の平均よりも15%ほど低いという結果が出ています。アメリカでも、犯罪や非行に走った子どもたちの幼少時を調べたところ、やはり親子間の肌のふれあいが欠落していることが浮かび上がってきたといいます。

 

しかし、こうした調査は大規模には行われてはおらず、まだまだ数字の裏付けが取れたとは言えないのが現状です。

 

子どもは親との肌のふれあいを本能的に求め、親が与えてくれなければ他の人とのふれあいでそれを補完しようとすることも分かってきました。

 

親とのふれあいの頻度と保育園での行動を調査したところ、家庭で親とのふれあいが少ない幼児ほど保育士から抱きしめられるのを好むという結果が出たのです。

 

数字上にも現れた感情の変化

子どもと母親の感情について、数字に表せる状態ではっきり目に見える形で示すという実験も行われています。

 

まず、自分の子どもを抱いた状態で数名の母親を部屋に入れます。そこに全く知らない人が入ってきて子どもを受け取り、そのまま母親は子どもを残して部屋の外に出るというような実験です。実験中、子どもと母親の体の表面温度をサーモグラフで可視化します。

 

実験の結果、母親の目や鼻の周囲、そして鼻の頭といった部分の体表温度が下がるのが認められ、子どものほうの体表温度も変わるのが分かりました。

 

こうした研究をもっと進め、子どもや母親の感情の変化を目に見える形で表すことができれば、さまざまなことに応用が期待できます。たとえば、育児のための教育プログラムに利用したり、虐待の恐れがある母親を事前に見つけ出して治療を行うなどの利用方法が考えられます。

 

このように、肉体の感覚は感情と関連しており、子どもがきちんと成長することにも大きな影響を与えているのは間違いありません。

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