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実はまだまだ怖い結核

結核

結核というとすでに克服された過去の疾病、という印象がありますが、実はそうではありません。実際には毎年3万人近くが罹患し、2千人以上が死亡しているというまだまだ怖い病気なのです。乳幼児は結核に感染すると時をおかず発症し、症状も重くなる傾向がありますから注意が必要です。

 

日本は先進国中最悪の状態

結核は過去の疾病といった印象がありますが、大きいので言えば平成17年に東京都で集団感染が起こりました。東京都中野区において、30代の塾講師が感染源となって178人もの人に感染が広まったのです。

 

塾講師が結核にかかってることが判明したために保健所が生徒や講師など塾に関わる人たちについて調査したところ、小学生から高校生までの生徒103名と保護者3名、そして塾の講師72名が感染し、そのうち62名が結核を発症していたということが分かりました。これは、厚労省が結核についてのデータを蓄積し始めた平成4年以降最大の数となりました。

 

結核を発症した人の多くは症状が軽い段階でしたが、学習塾があったビルが気密性が高い建物であったこと、そして塾のスタイルが個別指導式であったため、感染源の講師と生徒などが長時間接近して指導が行われていたといったことが大規模感染の原因であるという分析がなされました。

 

通常、子どもが結核にかかる場合、その感染源は子どもに接触する程度の多い両親や祖父母といったところがほとんどになってきます。結核は発症している患者と屋外で接したとしても感染が広がることはあまりないのですが、密室のようなところで接していると感染してしまう確率が一気に上がります。

 

結核は平成16年段階でも新規の患者数が29736人となっており、また死亡数は2328人となっていて、先進国中最悪の水準となっています。このため日本はWHOから結核中蔓延国、結核改善足踏み国に指定されています。結核はまだまだ油断ならない感染症なのです。

 

また、結核は発症する人が都市部において多くなる傾向があります。厚労省によると、平成25年における結核発病者数の平均は10万人あたり16.1人ですが、県別に統計を取ると発生率順に大阪、和歌山、東京と続き、それぞれ26.4人、20.6人、20.1人といった具合になっているのです。

 

結核はおそらくは社会的弱者が多いために都市部において多くなっているのではないかと考えられています。歴史的に西日本に患者が多い傾向がありますが、最近では東京の発病者数がだんだんと増加する傾向にあると言われています。

 

結核が減ったことで逆に免疫が落ちている

結核が過去の疾病という印象があるのは、明治大正期に比べて戦後の日本で結核にかかる割合が大きく減ったからではないかと思われます。戦後だけで見ても、昭和26年段階で10万人あたり698.4人であった罹患率は平成25年では16.1人まで減っているのです。

 

結核は栄養状態が悪かったり住環境がよくないと感染が進みやすく、また発症することも多くなってきます。結核は、生活水準が低い中で都市化や工業化が進展した明治期において増加しましたが、戦後に生活水準衛生環境が改善していくなかで減っていったのです。結核によく効く薬が開発されたこともそれを後押ししています。

 

ある調査によれば、以前結核菌に感染していまだに体内に結核菌を持っている人の割合は、80代が70%強であるのに対し、20代では1%~2%、10代では1%未満となるそうです。

 

このように、最近の子どもたちは結核菌じたいに触れる機会がなくなってきているため逆に免疫が弱いという状況に置かれています。このため集団生活を送る中で結核の発症が起こると、その集団に一気に感染が広がるというような特徴が出てきています。

 

日本ではウシ型の結核菌を用いたBCG予防接種を行っていますが、この予防接種は10年から15年ほどしか効果が続きません。さらに、実際に以前感染しそれによって免疫を得ているケースに比べると、免疫自体が弱いといいます。

 

BCG接種の対象年齢が変更された

結核は大きく分けると成人型と乳幼児型の2タイプに分類することができます。

 

このうち成人型では、感染が起こった後も結核菌は肺だけにいるというケースが多く、発症するとしても感染から何十年も経ってから、ということが多くなっています。発症する確率自体も低く、全体の10%程度です。

 

一方で乳幼児型は、感染が起きた後わりあい早期に発症する特徴があり、菌が全身に広がって症状が重くなりやすいという特徴を持っています。なかでも、2歳以下の子ども、特に生まれてから半年以内の乳児の場合、結核菌が脳髄膜に感染するなどして結核性髄膜炎などの重い症状を起こすことが多いので注意が必要です。

 

日本ではウシ型の結核菌を用いたBCG予防接種を行っていますが、この予防接種は乳幼児型結核を予防するという点では効果があるとされており、一方成人型結核に対する効果についてはさまざまな意見があります。

 

平成17年に結核予防法が改められ、公費で受けられるBCG接種の対象年齢が「生後3ヶ月~4歳未満」だったものが原則「生後6ヶ月未満」に改められ、現場の医師たちから疑問の声が上がりました。その後、平成24年に「生後1歳未満」に緩和されました。

 

乳幼児型結核への対応として1歳未満の乳幼児に接種を行うことが大事であることは間違いありませんが、それ以降は公費助成がなく自費による接種しか道がないとなると、1歳未満までの時期に何らかの事情で接種が受けられなかった子どもたちの間でBCG接種率が低下し、結果として社会全体で結核患者が増えてしまいかねないという意見もあります。

 

また、それまでは生まれつき免疫力を持っていない子どもに予防接種を行うことで重い副作用などがでる危険があるため生まれてから時間が経っていない時期の乳児には接種を行っていなかったのですが、専門的な議論がなされることもなくそうした制限がなくなってしまっているのは問題だとする意見もあります。

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