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赤ちゃんや子どもを環境ホルモンから守ろう!

環境

人間は毎日の生活の中でさまざまな化学物質と接しながら生活をしています。こうした物質は5万種類から10万種類にも及ぶとされていますが、その中に人間の体内にあって重要な働きをしているホルモンと似たような作用を及ぼすものがあり、そうした物質が与える影響が懸念されています。

 

人間への影響はまだ未知数、しかし……

人間が日々接している化学物質は5万種類から10万種類にも及ぶとされていますが、その中に人間の体内にあって重要な働きをしているホルモンと似たような作用を及ぼすものがあり、そうした物質は外因性内分泌攪乱物質、ないしは環境ホルモンなどと呼ばれています。

 

90年代初頭、アメリカのフロリダ大学のチームが、アポプカ湖のワニに関するセンセーショナルな調査結果を発表しました。それによると雄のワニの約80%について生殖器に異常が見られ、血液中のアンドロゲンという男性ホルモンが正常な個体に比べると1/3しかなかったというのです。

 

雄のワニたちがいわば「雌化」した原因は、80年代を通じて散布されたDDTという農薬にありました。これがワニの体内に入り内分泌系を撹乱、ホルモンや生殖器に異常をもたらしたというのです。

 

それ以降、雌雄同体の特徴を持った魚、といったような報告がなされたり、精子の数の減少と環境ホルモンとの間に因果関係があるのではないかとするような研究がいくつも世間を騒がしました。

 

体内で分泌されるホルモンは、生殖に関わる機能を含む体機能を正常な状態に保つといった恒常性の維持に関わっています。環境ホルモンと呼ばれる物質は、本来体内で分泌されるこうしたホルモンと同じような効果を持っているため、生物の体の中に入ると体内のさまざまな機能バランスが崩れてしまいます。

 

数ある化学物質のうち、内分泌攪乱効果を持つ環境ホルモンと認定された物質はおよそ70種類ほどあります。こうした物質が人間の体にどのように影響を与えるかについてはまだ研究途上であり、完全に明らかにはなっていません。

 

とはいえ、環境ホルモンが動物の体に影響を及ぼしているのは間違いないため、予防的な原則に基づいた対応が必要と思われます。人間への影響が完全に解明されるのを待つことなく、そうした物質に対して対応策を取っておくようにすべきなのです。

 

日本においても環境省が対応に乗り出しています。平成16年に、子どもを基準にして環境ホルモンに対するリスク評価を行い、またそういった物質への対応策をまとめているのです。

 

赤ちゃんや子どもへの環境ホルモンの影響

環境ホルモンのリスク評価を行う際に子どもを基準に据えるのは、大人よりも子どものほうが大きな影響を受けるためです。環境ホルモンを大人と同じ量だけ摂取した場合、子どもの方が体が小さいために体重に比べた摂取量が多くなるだけでなく、そうした物質から影響を受ける度合いが高いこと、そして肝臓でそうした物質を解毒する力も弱いことなどがその理由となっています。

 

環境ホルモンを体内に取り込んだことによる人間への影響については完全には解明されていませんが、いくつかの研究報告からそれを探ることができます。

 

例えば、環境ホルモンの直接的な影響例としては、アメリカで切迫流産を防止する目的で広く使用されたジエチルスチルベストロール(DES)と呼ばれる合成女性ホルモンの例があります。このDESについては、1938年からの30数年間に500万人以上が使用したというデータがあります。この合成女性ホルモンを使用した母親から生まれた女の子が強く影響を受け、膣がんや生気形成不全などを起こすケースが多く見られました。

 

また、東大産婦人科の調査に、ビスフェノールAという物質が胎児の血液中やへその緒のほか、妊娠初期の母体の羊水中から高い濃度で検出されたというものがあります。また同じ調査において母乳からダイオキシンが発見され、報道などを通して一時期話題になりました。

 

ビスフェノールAはさまざまなプラスチックの合成に使われる物質で、合成女性ホルモンとして研究されていたこともある物質です。現在厚労省では、ビスフェノールAの成人への影響は現時点では確認できないとしながらも、なるべく摂取しないようにと呼びかけています。

 

ネズミを使った実験により、胎児の時期に環境ホルモンの影響を受けることで、その後生まれてからの神経行動の発達に影響が出るということも分かっています。

 

ネズミによる研究がそのまま人間に当てはまるわけではありませんので、この研究結果をもって例えば「子どもがキレる」原因であるというような考え方をするのは短絡的です。

 

しかし、子どもの世代やさらに先の世代の神経発達や生殖機能に問題を引き起こす危険性があること、そしてがん発生のリスクが高まりかねないことなどを考えれば、予防的な措置として子どもや胎児を環境ホルモンに晒す度合いはなるべく少なくした方がいいのではないかと思われます。

 

なお、ダイオキシンなど環境ホルモンは母乳による育児と絡めて話題になることが多かったわけですが、WHOや厚労省などは授乳によって赤ちゃんが免疫を獲得できること、また母親と子どもの間でのコミュニケーションがはかられ、それが赤ちゃんに与えるプラスの影響が大きいことを重視し、母乳による育児は環境ホルモンに晒す危険性よりも遙かにメリットが大きいとする立場を取っています。その点についてはあまり神経質にならなくてもいいのではないでしょうか。

 

使いようによっては薬にもなる環境ホルモン

人体への影響はまだ判然としないながらも悪影響が懸念されている環境ホルモンですが、一方で環境ホルモンを薬品として利用するような研究も進められています。

 

薬品としての利用の例としては、例えば経口避妊薬(ピル)が例としてあげられます。この薬には女性の体内にある女性ホルモン(卵胞ホルモンと黄体ホルモン)が入っており、その効果で排卵を抑制します。体内のホルモンを撹乱するわけですので環境ホルモンであるということができますが、この薬を服用している子宮内膜症や卵巣がんの発生が抑えられるという副次的な作用があるとして注目を集めています。

 

別の例として、タモキシフェンという環境ホルモンは、エストロゲンという女性ホルモンの働きを妨害します。この環境ホルモンが効果を発揮すると子宮の内膜を肥大させるという悪影響がありますが、一方で乳がん(エストロゲンの働きで進行する性質がある)を抑制したり再発防止をしたりする効果があるため、がんの治療に用いられています。

 

このように、環境ホルモンも使い方次第で薬として利用できる側面を持っています。こうした作用も含めて、環境ホルモンがどのようにして人間の体に作用するのかということを広く調べれば、不妊治療や子宮がん対策に効果を発揮する薬ができるかもしれないのです。

 

なお、平成11年にはダイオキシン類特措法が設けられるなど、日本は環境ホルモンに対する対応が比較的早い国であるとされています。ダイオキシンについては研究が進んでいて、ダイオキシンを体から排出させるための方法も開発されています。

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