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TVは赤ちゃんに悪影響かもしれない?

TV

最近、小児医療の現場や乳幼児検診などの場で、言葉の発達が遅れているような子どもが見られるという声が聞こえるようになってきています。こうした傾向は40年ほど前から見られるようになり、生活の中のTVの比重が増え始めるのと時期が一致しています。TVと子育ての関係について少し見ていきましょう。

 

サイレントベビー

最近、小さな子どもや赤ちゃんにコミュニケーション障害という診断がなされることが増えてきているといいます。どういった症状かというと、言葉の発達に遅れが出たり、お母さんが名前を呼んでも反応を見せない、といったようなものです。こうした症状を持つ赤ちゃんの生育にTVが影響を及ぼしているという報告があります。

 

コミュケーション障害と診断されたある赤ちゃんは、いつも付けっぱなしになっているTVのある部屋で寝かされていました。この赤ちゃんはお母さんが名前を呼んでもそれに反応せず、部屋の隅に置かれたTVをじっと見ながら手足をばたつかせるだけだったといいます。

 

このように、生まれてからずっと近くでTVがついているという生育環境に置かれていた子どもの中には、言葉の発達が遅れる子どもが比較的多く出るとされています。

 

この赤ちゃんの両親は危機感を抱き、医療機関に相談した上ですぐにTVを付けっぱなしにするのをやめました。その上で、かくれんぼやいないいないばーなどの遊びを通して、赤ちゃんとなるべく目を合わせるような育児に切り替えたそうです。

 

こうした努力の甲斐あってか、この赤ちゃんは4歳になる少し前には言葉を出せるぐらいまでに状況がよくなりましたが、このようなことを起こさないよう予防の意味合いも兼ねて、赤ちゃんや幼い子どもが長い時間TV番組に晒されることのないように気をつけてあげた方がいいかもしれません。

 

TVの何がいけないのか

赤ちゃんや小さな子どもの脳は毎日成長していきます。自分自身の周囲の環境からさまざまな刺激を受け、その結果として脳のいろいろな機能を形成していくわけです。もしこの時に周囲にTVがあれば、そこからまったく影響を受けないというわけにはいきません。

 

赤ちゃんの近くにTVがあり映像や音声を発していれば、赤ちゃんは当然そこからも刺激を受け取ります。そしてお母さんや家族に対してするのと同じようにそれに反応し、本能的に声を出したり手足をばたつかせたりします。

 

しかし、相手が人間であればそれに反応を返してくれるかもしれませんが、TVは赤ちゃんにはかまわず勝手に刺激を出し続けるだけです。赤ちゃんの行動に反応を返してはくれません。そうした環境に長く置かれると、赤ちゃんは自分から他の存在に働きかけるということをやめてしまいかねないのです。

 

TV番組の内容によっては大丈夫なのではないか、という感想を持たれる方もあるかもしれません。例えば幼児向けの教育番組であるとか、幼児向けに作られたビデオなどであればどうでしょうか。

 

こうした番組であれ、その映像や音声がかなり強い刺激を赤ちゃんに与えることは変わりありません。一番まずいのは、TVから与えられる強烈な刺激にまぎれて他の刺激を感じられなくしてしまい、お母さんや家族といった周囲の人の声が耳に入らなくなってしまうことです。このようにして親や家族から双方向的な刺激を与えられない場合、赤ちゃんの五感の発達にも影響が出かねません。

 

こうした指摘は国内や海外の学会からも上がってきています。アメリカの小児科学会はこうした状況に懸念を示し、2歳未満児にTVの視聴を制限するべきとの見解を示しましたし、日本の小児科学会や小児科医会も平成16年に乳児や幼児にTVやビデオを長時間見せるのは危険であるという意見を出しています。

 

これに対して、TVと言葉の発達には果たして関連性があるのかということで、疑問の声を上げる専門家もいます。たとえば日本小児神経科学会では、TVと言語発達の間の関連性について科学的根拠がないという意見を出しています。赤ちゃんや幼児がTVを見る時間や見た番組の内容を調べて検討を加えることは必要なものの、TVを見ることすべてをいちどきに否定してしまえば、育児の現場に不安をもたらしかねない、とする立場です。

 

このテーマについては文科省も大きな関心をもって見ています。平成18年度から科学技術振興機構が中心となり、TVの視聴と乳幼児の発達に関する研究を開始しています。

 

この研究では、0歳児の子ども数千人について、以後10年間の追跡調査を行う予定で、この調査の結果によってはTVが子どもの発達に何らかの悪影響を与えかねないという科学的な根拠が見えてくる可能性もあります。

 

TVを見て育った親世代

TVと子どもの発達の間に因果関係があるのか、科学的な根拠についてはまだ研究途上ですが、それでも小児医療の現場で危機感を覚えている医師も多くいます。

 

TVの刺激が子どもに問題を与える可能性があるということで、ある程度の「予防」運動なども展開されているのですが、そうした運動をするにあたってはまず親の世代の意識改革が必要となってくるようです。

 

平成14年、福岡市の「子どもとメディア研究会」というNPOがある調査を行いました。乳幼児の親三千人を対象にした調査の結果、実に7割以上の家庭で授乳中にもTVがついたままであることが分かりました。また、TVがついている時間が長ければ長いほど、お母さんと赤ちゃんの視線が合わなくなりがちになるという傾向も見受けられました。最近の赤ちゃんたちが毎日ずっとTVから与えられる刺激を受け続けているらしいということが分かったのです。

 

このNPOでは、家庭環境におけるTVの位置づけや役割についてもう一度考え直して欲しいということで、「ノーテレビデー」を設けることを提唱していますが、こうした呼びかけに対して反発を示す親御さんもいるそうです。

 

現在赤ちゃんや小さい子どもを持っている親の世代というのはちょうどTVを見ながら育ってきたということもあり、TVを見るということに対する抵抗感が少ないといいます。そして、こういった呼びかけをされたときに自分の育ち方を否定されたように感じるのか反発を示すというのです。

 

このためこのNPOでは、TVはよくないという極端な言い方ではなく、生活の中でTVがついていないという状態を一度経験してみてください、と呼びかけることから始めているとのことです。

 

TVがある生活にどっぷり使ってしまっている親の世代の意識改革を先にはかる必要があるのかもしれません。

 

最近の番組は受ける刺激が段違い

現在の赤ちゃんが目にするTV番組は、その親の世代が見て育ってきたTV番組とかなり変わってきています。最近のTV番組はCG技術などが進んだことにより、昔の番組よりもより刺激が多いものになってしまっているのです。

 

「幼児向け」とされる92本のTV番組について、その番組が始まりタイトルが流れる最初の1分半について調査してみると、最近のTV番組は平均で30回ほど画面の切り替わりが起きます。これに対し、1970年代頃の番組を調べてみると、その当時の番組では1分半に10回程度しか画面が切り替わっていないことが分かります。

 

1分半という短い時間の間に昔に比べ3倍近い場面切り替えが起きていることになります。単純な比較はできませんがそれだけ視聴者が受け取る刺激も増えているということは間違いないはずです。

 

以前、人気アニメ番組を見ていた子どもが目眩や痙攣といった発作を起こしたという事件がありました。これは光感受性発作と呼ばれ、鋭く光る画面や素早く切り替わる画面を凝視していることによって発生するものです。このように、親の世代が子どもだったころと最近ではTV番組が伝えてくる刺激が段違いであるということは意識に留めておいた方がいいかもしれません。

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