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外国語の学習はいつからが適当か?

英語

子どもに外国語を学ばせ始めるのはどのタイミングにすべきかというのは、最近の親たちの共通した悩みかと思います。外国語を学ぶための学習教材はちまたにあふれかえっていますし、子どもと外国語学習について取り扱った書籍などもたくさん出ています。専門家によって意見もいろいろで、親の立場からすればどうすればよいか悩んでしまうところかと思いますが、実際のところは何が正しいのでしょうか。

 

きれいな発音のためには早いほうがいい

子どもと外国語の学習については、早く始めたほうが効果が上がるとする専門家もいれば、早すぎる取り組みはよくない結果をもたらすと警鐘を鳴らす専門家もいます。結論から言えば、まだどちらが正しいのかは分かっていないというのが現状です。

 

フランス国立科学研究センターにおいて、人間の言語獲得についての研究を行っており、どの段階でどういった刺激を与えると赤ちゃんが言語を獲得する助けになるのか、といったようなことを明らかにしようとしている研究者にジャック・メレール氏がいます。

 

こうした獲得過程が明らかになれば、障害者に言語教育を行う場合への応用であったり、どうやって外国語を学習すべきかという点についての基礎的な学問に関連してくる可能性があるとされており、子どもを持つ親や教育に携わる人たちなどにも注目されている研究者です。

 

メレール氏によれば、母国語でない言語を学ばせ、ネイティヴのようにきれいな発音ができるようにさせたければ、できるだけ早いうちから学びの場を与えることが重要だといいます。

 

早すぎる教育で悪影響が及ぶことも

反対に、外国語を早いうちから習得することで赤ちゃんの脳によくない影響が及びかねないとする専門家もいます。京都大学霊長類研究所の正高信男氏です。

 

正高氏によれば、日本語などの母国語がまだきちんと習得できていない段階で、それに平行させて外国語を習得させようとすると赤ちゃんの脳が混乱してしまい、最悪のケースでは両方の言葉が上手く使いこなせなくなってしまいかねないといいます。

 

アメリカやヨーロッパに住んでいる日本人の家庭でベビーシッターなどを雇い、子どもの面倒を見ることを任せっぱなしにしたようなケースで、親子とも日本人であるのに子どもが日本語と外国語をちゃんぽんにした話し方をするようになってしまうことがあるといいます。例えば、「レッツ・イート・ご飯」といったような話し方です。これは別にふざけて言っているわけではなく、ごく真面目にそんな話し方をしてしまうというのです。

 

母国語をきちんと習得し終わっている人、例えば大人であれば、外国語に出会った際に母国語と外国語は言語としてのルールが違うということを理解することが容易にできます。しかし、母国語を習得し終わっていない子どもが外国語に出会うと、それら2つの言葉が別ルールで使われるものであるということが理解できず、両方のルールをごちゃ混ぜにして覚えてしまうのです。結果としてどちらの言葉も不完全にしか習得できない、という状態になってしまうといいます。

 

確かに、早くから外国語に触れる機会があれば、子どもはネイティヴのようなきれいな発音を身につけることができるのは間違いないわけですが、こうした危険を冒してまできれいな発音を身につけさせる必要性が本当にあるのかということを親として一度考えてみるべきでしょう。

 

外国語圏出身で日本語を学んだ人が日本人と話すときには、どれだけすらすら日本語を使えたとしても間違いなくなまっています。しかし、自分の考えを論理的に話すことができれば、日本人と意思疎通することには問題は起きません。日本人が外国語を学ぶときもそれと同じで、大事なのは発音よりもいかに考えを表現できるかのほうだと考えられます。

 

日本とヨーロッパでは事情が異なる

先ほどのメレール氏は早いうちから外国語を教育したほうがいいという立場ですが、例えばイギリス人がドイツ語やフランス語を学ぶといったような場合と、日本人が英語を学ぶ時には大きな違いがあります。

 

ヨーロッパの言語はいずれもその体系が似通っているため互いに学習がしやすいという事情がありますが、日本語とヨーロッパ系の言語形態は相当異なっているという点です。この点では正高氏も似たような指摘をしています。

 

また、家庭の中でさえ別の言語が飛び交うことが多いような諸外国とは違い、日本社会は基本的には単一の言語しか使われていない社会であるという特殊性も考慮しなければなりません。このため、日本人が外国語を学ぶ際には、どういった学び方をすればいいのか、という視点に立った教育論の研究が進まなければ、外国語を効果的に学ぶ方法を確立させることは困難だとも指摘しているのです。

 

正高氏によれば、ネイティブのような発音ができることよりも自分の考えをきちんと伝えられるほうが重要であることを考えれば、赤ちゃんのころから焦って外国語教育を行わなくても、大人になってから学習を始めてもけっして遅くはないといいます。赤ちゃんに外国語教育を施そうとするのであれば、このように専門家の間でも意見が分かれているということを頭に入れた上でよく検討してからにすべきでしょう。

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