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体温がおかしい子どもたち

体温計

昔に比べ、最近の子どもたちの体温を調べるといわゆる平熱である36℃台になく、35℃台であったり37℃台であったりする子どもが増えてきています。その原因と影響について少し見ていきましょう。

 

体温35℃台もめずらしくない

子どもたちの体温が低くなっているという話は、1970年代も後半に入ったころ、教職員や研究者の間で話題になり始めていました。1990年ごろにはそういった声がかなり大きくなり、いろいろな方面で子どもたちの体温を調べる試みが始まりました。

 

ある調査では、午前中の体温を平均した値が35℃台になっていた子どもが全体の16%ほどおり、こうした子どものうち午後になってもまだ体温が35℃台にある子どもは6%ほどいました。

 

1週間から2週間の調査の中で、体温が1回でも35℃台になった子どもは全体の40%に達し、調査期間のうち70%で体温が35℃台で推移した子どもも6%もいたといいます。体温が35℃台といういわば「低体温」な子どもたちが一定数存在していることが指摘されたのです。

※低体温に関しては「低体温の原因と改善法!男性や子供も要注意、低い体温を上げると不調がなくなる」に詳しく解説していますので参考にしてください。

 

別の調査では、逆に体温が朝の時点で37℃以上ある子どもが一定数いることも明らかになりました。朝の時点の体温が35℃台だった子どもが17%弱いた一方で、37℃台の子どもも6%強いたのです。

 

この体温が高めの子どもの比率は午前中には22%ほどに増加し、午後には半数を突破しました。37℃台の熱があるといっても別に病気で熱があるわけではなく、本人にとっては普通の状態です。このため普通に体を動かして運動したりもします。平時ならともかく、夏の暑い季節などには熱中症を起こしかねませんので危険なのです。

 

どうして子どもの体温がおかしくなってきたのか

子どもの体温がおかしいという現象を説明する説はいろいろと出されていますが、そのうち2つほど見てきたいと思います。

 

まず低体温の子どもについて。こちらは運動不足による基礎代謝の低下が指摘されています。運動不足によって子どもたちの筋肉量が減り、筋肉が作り出す熱の総量が減っているために体温が低下しているのではないか、というのです。

 

人間の体は特に運動していなくても36℃前後の体温を維持していますし、それ以外にもさまざまな活動を行いながら生命を維持しています。人間の体が自分自身を維持するために最低限必要となるエネルギーの量を基礎代謝といいます。

 

基礎代謝の約40%ほどは筋肉によるものです。運動不足で筋肉量が減ればこの部分が下がりますから、全体として生み出される熱量が下がるというわけです。

 

次に体温の高い子どもについて。こちらは体温を調節する機能が乱れているためではないかとされています。元々人間は汗をかくことによって体から熱を逃がすメカニズムを体の中に持っていますが、これがうまく機能しなくなっているというのです。

 

その原因は、幼児期からクーラーの効いた涼しい環境で育ってきたことにあるようです。こうした環境で育った子どもは小さいころにあまり汗をかく機会がありません。このため汗を出すのに必要な器官である汗腺が十分に発達せず、そのため体温を上手に逃がせなくなっているのではないかというわけです。

 

加えて、体温を調節するのに重要な機能を果たしている自律神経系が乱れている子どもも増えてきており、そのこともこうした傾向に拍車をかけているのではないかとされています。

 

体温上昇のピークもずれている

体温というのは体の活動が盛んになるとともに上昇します。このため体の活動が活発になる日中が一番高く、夜眠っているときに一番低くなります。ところが、体温が低い子どもについて調べてみると、必ずしもそうなっていないということが見えてきます。

 

体温が低い子どもたちの体温の上昇を調べると、本来体温上昇のピークになるはずの昼過ぎごろに一番高くなるのではなく、それよりも遅い時間に一番高くなる時間がずれてしまっているというのです。

 

朝に体温が低いということは、朝起きて学校に行かなくてはならない時間に体にエンジンがかかっておらず、一番活動的であるはずの時間帯でも本調子ではなく、夜眠る時間になっても体が眠る準備ができていないといったようなことが起きてきます。まるで毎日時差ぼけのまま生活しているかのようです。

 

別の調査に、朝起きたときの体温と通学に対する意欲の関係を調べたものがあります。それによると、36℃台の体温を持つ「標準的」な子どもたちでは55%近くが通学意欲があると答えたのに対し、35℃台の体温を持つ「低体温」な子どもたちでは36%程度といったように、通学意欲にもあきらかな差が出てきています。

 

こうした調査を見てくると、今まで不登校は精神的な問題とされてきましたが、肉体面からのアプローチも必要になってくるのかも知れないと思わされます。

 

体温が低いか高いかはともかく、子どもの体温調節がうまくいっていないと問題が起きかねないということが分かります。ですから、しっかりと運動させ、冷暖房に頼りすぎるのをやめさせ、規則正しく毎日を送るようにさせるといった、いわゆる基本的な生活サイクルを身につけさせることが大事になってくると思われます。

 

子どもに限らず、体温の変動は個人個人によって差があります。体調や周囲の環境の状況によっても変わったりすることもあります。このため子どもの体温を継続的に測って記録し、子どもの健康を管理するためのデータとして利用することが必要となってくるでしょう。

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