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大学入試改革により塗り替わる受験地図と、我が子に合った受験プランの考え方

受験勉強をする女子高生

2020年の大学入試改革を控え、センター試験に代わる共通テストの全貌がなかなか見えず、改革そのものが迷走しているようにも見えますが、これからの入試は知識偏重型から受験生の総合評価へと転換していることは間違いありません。

 

これは社会で求められる人材像ともリンクしており、子供の教育を考える上で、長いスパンで付け焼き刃ではない学力を身につけさせる重要性に気づきます。小・中・高のどの段階で受験をさせるかも、子供のタイプを見極めて判断しなければなりません。

 

現在の受験事情について、その基本情報をご紹介します。長い子育てで避けて通れない「受験」を前向きに捉えるヒントが見つかるかもしれません。

 

我が子の受験プランを考えるために知っておくべき受験の基礎知識

中等教育のグローバルスタンダードは高校受験回避である

受験は、子供が学校に通う中では避けて通れない関門です。日本の義務教育を公立校で受ける子供のほとんどは、15歳(中3)の時点で高校を受験するのが、初めての受験となります。

 

ところが実は、この年齢で受験を経験させるのは、日本の他には韓国や中国、そしてシンガポールなどアジアの一部の国に限られていることをご存知でしょうか?

 

欧米を中心に、小学校(初等教育)と大学(高等教育)に挟まれた期間を「中等教育」とし、この期間での学力選抜試験は行わないのがスタンダードです。

 

例えばイギリスでは、5~18歳までが義務教育期間ですが、11~18歳までの7年間(または15歳までの5年間)は中等教育学校に通います。その9割近くは、入試による選抜を受けずに入学します。

 

イートン校やラグビー校など、名門校として名高い「パブリックスクール」は中等教育学校の中の「私立学校」に分類されます。かの有名な『ハリー・ポッター』のホグワーツ魔法魔術学校もまた、7年制・全寮制の中等教育学校として描かれています。

 

フランスの場合は、中等教育期間を4年間の前期(コレージュ)と3年間の後期(リセ)に分けていますが、リセに進級するための入試は行われません。コレージュでの成績や本人の希望に沿って、大学を目指すリセ、もしくは2年制の職業リセに進みます。

 

ドイツは、4年生を終える10歳の時点で将来進む道を選択し、それに合わせた中等教育学校を選ぶシステムです。大学で学ぶことを希望する場合は、ギムナジウムと呼ばれる9年制の学校に進みますが、日本の中高一貫校と同じく、途中で進学の為の学力試験は行われません。

 

アメリカでは、日本の幼稚園年長に当たる歳から12年間が義務教育期間となります。小・中・高の区切りは州によって違いがあり、中には中学校と高等学校が分かれている地域もあります。ですが、公立の場合学力による選抜試験は行われず、住んでいる地区にある高校に進学することができます。

 

歴史を振り返ってみると、かつての日本の中等教育は欧米型でした。イギリスの制度を参考に1899年(明治32年)に出された中学校令では、13歳から17歳までの5年間が中等教育にあてられることとなり、各府県1校以上の中学校を設置するよう求めました。

 

これが大きく変わったのは第二次大戦後のことです。GHQ占領下である1946年(昭和21年)の学制改革によって、義務教育期間は小学校6年、中学校(前期中等教育)3年の計9年間と定められ、後期中等教育である新制高校と切り離されました。

 

後期中等教育までを義務教育期間に含めたいという希望はあったものの、実現できなかった背景には予算不足があったようです。

 

我が子は中学受験タイプか、高校受験タイプかを見極める必要がある

11歳くらいから18歳くらいまでの中等教育の期間は「思春期」のまっただ中で、自分と向き合い、仲間と様々な経験をしながら成長するための大切な時期だと言えます。中でも高校受験を迎える15歳前後の頃は、多くの子供たちが反抗期を迎え、心身ともに揺れ動いています。

 

現在の日本の学校制度の中では、一人前の人間として自立するための準備期間を受験勉強に費やしてしまい、大人になるために必要な冒険や失敗、出会いと別れを通した「人としての成長」がなおざりになってしまう危険性があります。

 

そこで、中学受験をすることで15歳での高校受験を回避し、「思春期のモラトリアム」を手に入れる選択肢をとる家庭が増加しています。

 

過酷な受験勉強に加え、部活や人間関係でも悩みやストレスを抱えがちな年頃でもあり、受験期間中にそのバランスを崩してしまうと、その影響は長く後を引くことになりかねません。

 

国公立の高校を受験するのであれば内申点も意識しなければならないため、先生や親の顔色を見ながら良い子を演じ、その結果自己肯定感を育むことができないまま大人になってしまう子供もいます。

 

では、我が子は中学と高校のどちらで受験をさせるのが正解なのでしょうか?それにはまず、我が子のタイプを知ることが必要です。

 

高校受験向きなのは、授業で積極的に発言でき、班やクラスの活動でまとめ役になるなどリーダータイプのお子さんです。高校入試の合否判定の重要な資料である内申書を作成するのは先生ですので、学業だけでなく部活や生徒会などで活躍して、先生に好印象を与えることが有利に働きます。

 

反対に、内申点が期待できない子の場合は、入試の点数だけで合否が判定される私立高校に照準を合わさざるを得ないなど、受験校の選択肢が狭まるリスクがあるため、そういった点も踏まえて我が子の受験プランを考えるべきだと言えます。

 

中学受験には4つの選択肢がある

12歳の時点で中学受験をする場合、その選択肢は大きく分けて4つあります。

 

①私立中高一貫校

6年間一貫教育という点を生かし、独自のカリキュラムで教育活動を行なっています。進学校では、高2くらいまでに履修範囲を終え、その後は試験科目の演習を強化するなど、受験対策に力を入れている学校が多くあります。授業料は6年間で約800~1000万程度が見込まれるなど、高額となっています。

 

私立の中高一貫校を目指すためには、新小4(小3の2月)から受験専門塾に通って本格的に受験対策を行う必要があります。また、いわゆる御三家などを目指す場合は、小5の2学期以降は学習量、時間ともに大きな負荷がかかります。

 

②国立中高一貫校

高度な授業が展開されるが学費は公立と変わらず、費用負担が非常に軽いのが特徴です。また、校名は大学附属を謳っていても、実際に進学できるかは学校により異なります。

 

筑波大附属中学校・高等学校の内部進学率は、例年8割程度で、中学校での成績に内部入試の点数を加味して判定します。

 

東京学芸大学附属高校には、小金井、世田谷、竹早という3つの系列中学がありますが、内部生用の入試で選抜されます。2018年度の進学率は約30~50%という狭き門でした。

 

また、お茶の水女子大学附属は中学までが共学のため、男子は高校受験が必須となります。

 

その一方で、東大合格率の高さで知られる中学受験の最高峰、筑波大学附属駒場中学校・高等学校では、全員が中学校から高校に進学することができます。

 

ちなみにいずれの国立校も、大学への内部推薦制度はありません。

 

東京都では、国立中高一貫の入試日は例年2月3日で統一されています。また、後述する公立中高一貫校の入試日も同日に設定されており、併願ができないのが難点でもあります。

 

③私立大学付属校

併設大学への内部進学制度があるため、高校受験に続き、大学受験も避けることができる点が特徴です。

 

スポーツや学外での活動などに力を注ぐなど、6年間をフルに活用することができる一方で、受験という「競争」を一切知らないまま社会人になることに不安を感じる親御さんもいます。

 

一方、受験対策ではなく、大学進学を見据えた授業を行えることが大学付属校の強みです。

 

最近では、高大連携プログラムを充実させている学校も増加しており、大学講師のセミナーを受けて進学する学部選びの参考にしたり、大学の授業を受講して、入学後に単位換算ができる制度を持つ学校もあります。

 

学費の面では、一般的に私立中・高の中でも高額となっています。授業料のほか、入学金や施設費、寄付金、制服代、中には学校債の購入を勧められる学校もあり、初年度の納入金が140万円を超える学校も複数見られます。

 

④公立中高一貫校

1999年の学校教育法の改正によって誕生した学校で、6年間の一貫教育を通じて、生徒の個性を重視した多様な教育を行うことを目的としています。一般の公立中学と費用負担が変わらないのに中高一貫教育が受けられることから、その人気は年々高まっています。

 

公立中高一貫校の選抜方法は、一般的な中学受験とは全く異なっています。科目ごとの学力試験の代わりに行われる「適性検査」と「作文」、「面接」そして小学校からの報告書をもとに総合的に合否が判定される仕組みです。

 

適性検査ではあるテーマに沿った資料を読み取り、論理的に考えて自分なりの意見をまとめ、グラフや文章で表現します。

 

一般的な中学受験専門塾で行う試験対策では太刀打ちできない内容のため、当初は塾での対策は不要だと言われていました。

 

ですが近年では人気が高まった故の難易度アップにより、出題形式に合わせた対策は不可避とされ、都内には公立中高一貫専門塾も誕生しました。ただ、準備期間は私立中高一貫受験よりは1年ほど短いケースが多くなっています。

 

中学受験人口は地域差が大きい

これまで述べてきた中学受験の4つの選択肢は、東京を中心とした首都圏在住の子供達の話です。

 

中学受験をするかどうかは、住んでいる地域によっても大きく差があり、また、両親の学歴にも影響を受けています。誰しも自分が選んだ道が最善だと思いがちだからです。

 

つまり、我が子を中学受験させる場合に、両親のどちらかが公立中、公立高、国立大のルートを通って来たのなら、事前に夫婦間で価値観を共有しておく必要があります。

 

さて、現在の中学受験率は、全国平均でおよそ8%ほどです。文部科学省「学校基本調査」によると、2割以上の子供が中学受験をする東京都、高知県を筆頭に、神奈川、京都、大阪、奈良、和歌山、広島で1割超となっています。

 

ですがそれ以外の地域の子供にとっては、中学受験をしないのが当たり前だということがわかります。

【2018年度 中学生の生徒数】
地域 全体 公立 私立 国立 私立&国立
の割合
全国 3,251,670 2,983,705 238,326 29,639 8.2%
北海道 126,986 122,758 2,942 1,286 3.3%
青森 32,137 31,182 471 484 3.0%
岩手 31,732 31,061 212 459 2.1%
宮城 59,344 57,513 1,357 474 3.1%
秋田 23,034 22,593 0 441 1.9%
山形 28,417 28,011 0 406 1.4%
福島 49,650 48,473 764 413 2.4%
茨城 75,330 71,164 3,705 461 5.5%
栃木 52,936 51,245 1,228 463 3.2%
群馬 52,809 51,112 1,292 405 3.2%
埼玉 186,891 177,291 9,087 513 5.1%
千葉 157,979 147,770 9,754 455 6.5%
東京 300,085 222,876 74,504 2,705 25.7%
神奈川 225,555 199,731 24,907 917 11.4%
新潟 55,315 53,610 643 1,062 3.1%
富山 27,879 27,117 286 476 2.7%
石川 30,699 29,941 281 477 2.5%
福井 21,304 20,919 385 0 1.8%
山梨 22,020 20,580 962 478 6.5%
長野 56,800 54,723 1,000 1,077 3.7%
岐阜 56,160 54,214 1,442 504 3.5%
静岡 99,221 92,935 5,130 1,156 6.3%
愛知 206,910 196,080 9,642 1,188 5.2%
三重 48,625 45,889 2,307 429 5.6%
滋賀 40,961 38,952 1,663 346 4.9%
京都 66,035 56,956 8,689 390 13.7%
大阪 225,305 202,730 21,301 1,274 10.0%
兵庫 145,111 132,519 12,263 329 8.7%
奈良 36,791 31,775 4,566 450 13.6%
和歌山 24,480 21,776 2,284 420 11.0%
鳥取 15,063 14,346 313 404 4.8%
島根 17,596 16,910 269 417 3.9%
岡山 51,267 48,374 2,358 535 5.6%
広島 75,049 66,501 7,324 1,224 11.4%
山口 34,467 32,591 1,208 668 5.4%
徳島 18,534 17,684 408 442 4.6%
香川 26,389 24,775 924 690 6.1%
愛媛 33,942 32,543 954 445 4.1%
高知 17,432 13,886 3,137 409 20.3%
福岡 134,450 126,285 7,081 1,084 6.1%
佐賀 23,256 21,495 1,302 459 7.6%
長崎 36,501 34,204 1,871 426 6.3%
熊本 48,186 46,335 1,372 479 3.8%
大分 29,373 28,144 753 476 4.2%
宮崎 30,095 27,786 1,821 488 7.7%
鹿児島 45,395 42,879 1,938 578 5.5%
沖縄 48,174 45,471 2,226 477 5.6%

(出典:文部科学省「平成30年度 学校基本調査」)

 

あえて中学受験をしないと決めたら、放課後をどう過ごすかが今後の鍵を握る

中学受験をするメリットとして、思春期を勉強以外のことに費やせることが挙げられるのは先ほども述べましたが、その一方でデメリットもあります。

 

「中学受験は親の受験」とも言われ、親の関わり方が受験の結果を左右する傾向にあります。つまり、塾と親とがタッグを組めば子供を志望校に送り込むことができる反面、子供が言われたことしかしなくなる危険性もはらんでいます。

 

興味を持って自ら学ぶ姿勢が身につかないまま入学しても、その先の「伸び」が期待できるはずもありません。

 

中学受験をしない選択をした結果、得られるのは「小学生時代の自由な時間」ですが、それをどう活用するかによって、我が子の将来の可能性を広げることもでき、同時に成長の芽を摘むリスクもあります。

 

塾通いの代わりに得られた時間で、我が子に何をさせたいか、家庭の方針を決めておくこと必要があります。

 

ベネッセ教育総合研究所は「放課後の生活時間調査」で小学校高学年の児童の放課後の過ごし方を調査・分析していますが、2013年度の報告書によると、塾や習い事がない日には1日平均で138.7分もの時間をテレビとゲームに費やしていることが分かります。

 

ただ遊んでいても、子供の内面は豊かになるとは言えず、塾に入れて安心したい親の心理も理解できるところです。

 

では、親は我が子に何を与えればいいでしょうか。テストで高得点を叩き出すための知識の詰め込みをしなくて済む分、子供の知的好奇心を刺激して、子供が自分から学びたいという気持ちを育てることが大切になってきます。

 

幸い、現在子供の習い事市場は拡大し、バリエーション豊富になっています。アート、語学、プログラミングなど、子供が興味を持ったことに挑戦させ、時間をかけて取り組んでみるのも良いでしょう。

 

また、スポーツや音楽の分野に力を注ぐことも、技術や体力の向上だけではなく内面の成長にも繋がるのでお勧めです。

 

日本の公立小学校の授業で教える範囲は基本知識が中心で、他国と比べるとかなり狭いと言われます。将来、グローバルな環境で活躍することが期待される今の小学生なら、そういった点も意識する必要があります。

 

そこで、中学受験をしない子供も、基本レベルの中学受験用の問題集を解いてみることをお勧めします。演習が圧倒的に不足している小学校の授業をカバーすることもでき、5年や6年で急に中学を受験したくなるといった場合にも、方針転換に対応することができます。

 

受験専門塾でも4年生のうちは授業も週1回のケースが多く、「授業→家庭での復習」という学習の習慣づけが大きな目的です。

 

したがって、受験を予定していない子でも負担感なく通塾することができるので、まずは1年通わせてみて、我が子の適性を見極めてみても良いでしょう。

 

もちろん、市販の中学受験用演習ドリルを使って家庭で取り組むやり方でも構いません。たとえ中学受験をしなくても、学んだことはお子さんの身につき、後に役立つことがあるはずです。

 

小学校受験組は少数派である

わが国の小学生のおよそ1.8%は、中学受験よりも早い段階でいわゆる「お受験」をして、私立あるいは国立の小学校に在籍しています。

 

TVや雑誌ではよく目にする「お受験」ですが、実際に経験しているのはほんのわずかな人達だということがわかります。最もお受験率が高いのは東京都ですが、その割合は5%にも満たないものです。

 

ある一部の層に限られた世界ではあるものの、小学校受験の世界についても触れておきましょう。小学校受験は、受験校の特徴ごとに3つのグループに分けることができます。

 

①私立大学付属小学校

有名私立大学の付属小学校は、基本的に内部進学で大学まで進むことができるため人気があります。

 

志願倍率ランキングを見ると、いわゆるブランド大学の付属小学校が上位を占めています。2017年度の1位は慶應義塾横浜初等部(横浜市)で11.5倍、2位は慶應義塾幼稚舎(渋谷区)で10.4倍という狭き門です。

 

そのほかにも、早稲田実業学校初等部(国分寺市)が7.5倍で5位、青山学院初等部(渋谷区)が5.1倍で6位と続いています。

 

付属小学校を持ち、恵まれた環境や施設を生かした一貫教育を行うことは大学のブランド価値を高めると考えられ、2006年~2010年には関西の人気大学「関関同立」(関西・関西学院・同志社・立命館)がそれぞれ付属小学校を開校し、話題になりました。

 

「純粋培養」で競争に晒されることのないまま大学卒業まで過ごすため、打たれ弱いのではと揶揄する声も聞かれることがありますが、小学校から恵まれた環境で過ごし、充実した教育を受けられるというメリットには代え難いとも言えます。

 

受験勉強に貴重な時間を奪われないため、スポーツや学外の活動で成果をあげる子も多数います。

 

また、付属の大学には進まずに、他大学を受験することもできます。例えば2018年の学習院高等科から学習院大学への進学者数は、卒業生197名に対して95名にとどまっています。これは併設大学に理系学部や医学部がないため、外部受験をする生徒が多いためです。

 

白百合や東洋英和など女子のお受験における難関校では、大学受験でよりレベルの高い大学を目指す指導が行われるなど「進学校」としての顔を持っています。

 

また、女子の私立小学校受験最難関の一つである雙葉は、幼稚園から高校までしかないため、全員が大学受験をし、2018年度には東大に13名が合格するなど高い進学実績を誇ります。

 

②国公立大学付属小学校

国公立大学の付属小学校は、教育学部で学ぶ学生の研修や、教育学の臨床研究を行う場として設けられています。子供達の学力を伸ばすというよりは、新しい教育や指導法を試すための学校ですが、公立並みの学費で最先端の教育に触れられると人気を集めています。

 

東京には筑波大附属や学芸大学附属、そしてお茶の水女子大学附属小学校があり、いずれも人気校となっています。

 

試験内容は学校によって違いがありますが、ペーパーテストのほか行動観察や運動、個別の口頭試問などは共通して課されます。そして最大の特徴は「抽選」です。試験に合格した中から更に抽選で絞り込まれるため、合格には運も必要です。

 

国公立大学附属小学校は、東京に限らず各地方にも多くの学校があるため、私立小学校受験のように首都圏や大都市に限った話ではありません。例えば、金沢大学附属や奈良女子大学附属、大阪教育大学附属などは非常に人気が高い国立小学校として知られています。

 

③私立の「受験小学校」

東京を中心とした首都圏や関西の一部エリアに特徴的な現象ですが、中学受験を見据えて、受験対策に熱心な私立小学校に通わせるという家庭が一定数存在します。

 

大学まで内部進学する小学校よりも合格のハードルは低いものの、小学校でのカリキュラムが外部の難関中学合格を目指したものになっており、学校側も中学合格実績を上げることで優秀な児童の確保を狙っています。

 

公立小学校に通って塾で受験対策をしても良さそうですが、中学受験率が低い公立小学区を避けて環境を整えたい家庭は私立を選択します。

 

受験小学校には、首都圏では洗足学園小学校(川崎市)や東京都市大付属小学校(世田谷区)、関西では仁川学院小学校(西宮市)や追手門学院小学校(大阪市)などがあります。

 

教育費の比較は学費・塾代をトータルで見るべし

ここまで学齢期のステージ別に、いつ受験をするとどのような学校の選択肢があり、どのような学校生活を送ることになるのかを見てきましたが、それを「学習費」という切り口で比較してみます。

 

学習費とは、学校に支払う学費や給食費に加え、塾や家庭教師代、習い事やスポーツ活動の費用など、家庭が負担している子供の教育に関わる費用を合計したもので、文部科学省が2年に1度集計しています。

 

文部科学省「子供の学習費調査」によると、幼稚園から高校までずっと公立に通うと、その学習費は合計でおよそ504万円であるのに対し、全部私立に進んだ場合はおよそ1684万円と、3倍を超える金額がかかることが分かります。特に小学校での公立・私立の差が大きく、私立小学校は公立小の4.7倍もの学習費がかかっています。

【学年別学習費総額】
  公立 私立
幼稚園 682,117 1,445,385
小学校 1,934,173 9,164,628
中学校 1,433,090 3,979,521
高等学校(全日制) 988,211 2,252,179
合計 5,037,591 16,841,713

(出典:文部科学省「平成28年度 子供の学習費調査」)

 

その後4年間大学に通った場合、国公立に進むか私立大に進むかで、学費にさらに大きな差が生じます。国公立なら4年でおよそ257万円で済むところが、私立大だとおよそ544万円もかかります。

【大学(昼間部)の年間学費(1年分)】
国立 公立 私立
642,500 661,300 1,360,900

(出典:日本学生支援機構「平成28年度 学生生活調査」)

 

学習費の内訳のうち「学習塾費」を抜き出して見ると、中学から私立に進んだ場合の学習塾費総額はおよそ130万円であるのに対し、高校から私立だとおよそ150万円に跳ね上がります。これは、公立中学3年間でかかる塾代が約60万円と高額なのが影響しています。

【学年別学習塾費】
  公立 私立
幼稚園 19,982 26,828
小学校 341,145 1,333,255
中学校 602,792 431,222
高等学校 320,770 516,877

(出典:文部科学省「平成28年度 子供の学習費調査」)

 

小4~小6までの3年間中学受験専門塾に通ったとしても、その後4~5年は塾に通わなくて済むケースがほとんどで、学校によっては受験対策まで学校内で完結してくれるからです。

 

一方、公立中学から高校受験、大学受験と進む場合は、中1から高3まで塾や通信教育、家庭教師など何らかの形で受験対策が欠かせません。

 

迷走する大学入試改革、着地点は未だ見えず

大学入試改革の目玉、センター試験の抜本的改革案に期待が膨らむ

現在の受験界きっての話題は、2020年の「大学入試改革」です。これまで行われてきたセンター試験に代わる新テストが導入されることが決まり、その内容が漏れ聞こえて来ています。

 

新テストの対象となる2002年4月以降に生まれた生徒とその親は、一刻も早く対策を始めたいと考えているはずですが、その全貌は未だ不透明なままです。

 

教育再生実行会議は、2013年に第2次安倍内閣により設置された有識者会議です。首相や官房長官、文部科学大臣の他、有識者など計16名で構成されており、教育改革を推進するため、様々な教育問題について検討し、提言を行なっています。

 

その第4次提言として2013年10月31日に出されたのが「高等学校教育と大学教育との接続・大学入学者選抜の在り方について」です。

 

これは、高校と大学双方の教育改革を行うことで高等教育全体のレベルアップを図る、いわゆる「高大接続改革」と、これまでのセンター入試を抜本的に見直す「大学入試改革」を行うということでした。

 

特に、新しい入試の考え方は画期的なものでした。提言では、知識偏重型の入試から総合的評価による入学者選抜への転換が謳われ、「一芸入試」とも呼ばれ、学力は実質的に審査対象外となっている現状のAO入試や推薦入試に対してもNOを突きつけました。

 

新テストは、基礎レベルと発展レベルの2種類に分け、それぞれ「高校で学ぶべきことが身についているか(基礎)」、「大学で専門的に学ぶレベルに達しているか(発展)」を判定することとしました。

 

また、これまで年1回だけ実施されてきたセンター試験とは違い、年複数回実施することが重要なポイントとされました。

 

テスト結果はこれまでのように1点刻みで表示するのではなく、達成レベルで表すことで、知識を詰め込み1点ずつ積み重ねる試験対策からの転換を促しました。受験直前の詰め込み学習では対応できない仕組みが提案された訳です。

 

そして英語の試験については、英検やTOEIC、TOEFLなど民間の検定試験結果を利用することを想定し、センター試験時代のリーディングとリスニングの2技能評価から、スピーキング、ライティングを含めた4技能評価を行うという大転換が図られることとなりました。

 

これまで高校の調査書と評定平均値を提出すればよかった推薦入試やAO入試についても、新テスト(基礎レベル)のスコアを選考基準の1つにするよう提言が行われています。

 

この入試改革は、欧米を中心とした海外の大学入試システムを参考にしたものと思われます。アメリカを例にとると、大学進学を希望する人はSATと呼ばれる共通テストを受験し、そのスコアが米国内の大学の合否選考に使われます。

 

SATテストには、読解、文法、エッセイそして数学で構成されたReasoning Testと、英語の他歴史や社会学、自然科学など5分野20科目の中から志望大学の指定した科目を選択して受験するSubject Testの2つのテストがあります。

 

ほとんどはマークシート方式ですが、エッセイテストのみ記述式の試験となっています。

 

SATテストは米国内では年に7回実施されており、何度でも受験することができるため、目標とするスコアに達するまで繰り返し受験することも可能です。そのため、受験生達は学校の授業の進度とは関係なく、SAT対策の勉強を早くから始める傾向にあります。

 

提言が出された当初、関係者からは、日本の大学入試が大きく変わるという期待感とともに、好感を持って受け止められていました。

 

この提言を受け、中央教育審議会が2014年12月22日に取りまとめた答申では、新テストには記述式の問題も盛り込むことや、その後行われる大学ごとの選抜では、確かな学力に必要な三要素(知識・技能、思考力・判断力・表現力、主体的に学習する姿勢)を公平に判断できる試験を行うことを求めました。

 

例えば、小論文やディスカッション、面接、プレゼンテーションなど表現力やコミュニケーション能力を見る試験だけでなく、高校の調査書、本人の志望理由書、学外での活動の成果を見る報告書や顕彰記録、そして入学後に何を学びたいかを述べる学修計画書などを活用し、受験生の過去から未来までを総合的に判断することが必要だとしました。

 

センター試験の改革案が骨抜きになった背景には、学習指導要領至上主義がある

その2年半後の2017年7月13日に、中央教育審議会から「高大接続改革の実施方法等の策定について」と題された具体策が公表されました。

 

驚くことに、当初の提言で語られていた壮大な改革案は影を潜め、センター試験とどこが違うのかわからない内容に着地してしまっているのです。

 

「大学入学共通テスト(新テスト)」について変わった点は、英語と数学の試験に一部記述式が取り入れられること、そして英語の4技能を正しく評価できるよう、民間の検定試験を活用することだけです。複数回受験の話はいつの間にか無くなっていました。

 

抜本的な改革案が骨抜きにならざるを得なかった背景には、日本の学習指導要領の存在があります。

 

学習指導要領は、1947年に第二次大戦後の教育改革に伴い、アメリカの「コースオブスタディ」を真似て作られた学校教育課程の基準となるものです。概ね10年に1度内容が見直され、改訂が行われます。

 

学校のカリキュラムは、この学習指導要領に沿って組み立てられ、使用される教科書には、指導要領で定められていないものは掲載してはならないとされています。

 

現在は、指導要領で定められた教育内容は最低基準であり、それよりも詳しい内容を授業で取り上げても構わないとされていますが、指導要領に沿っていなければならないという思いは教育現場に根強く残っています。

 

指導要領や検定教科書に問題はないものの、その呪縛から逃れられなかった結果が今回の入試改革の方向性に現れています。つまり、共通テストは指導要領というテスト範囲から出題される到達度確認テストの色合いが濃いままなのです。

 

日本が目指す高等教育のレベルの底上げと大学入試の抜本的改革を成し遂げるためには、指導要領から独立した形で共通テストの作問を行わなければなりません。それが出来れば、年複数回のテスト実施への道も開け、本当の意味での入試改革に一歩近づくと思われます。

 

共通テストで受験生の本当の学力が測れるのか、疑問の声が上がる

状況が不透明なままの共通テスト導入ですが、実施に向けた準備も進んでいます。

 

2017年12月に数学・国語で初めての試行が行われました。翌年3月には英語の問題を公開、そして2018年11月にはより大規模なプレテストが全国の大学を会場に実施され、高校3年生を中心におよそ8万4千人が参加しました。

 

国語と数ⅠAでは記述式問題を新たに導入することもあり、プレテストの正答率をもとに難易度を調整することになります。これらを受け、2019年度には実施大綱が策定される予定です。

 

センター試験との一番の違いは、問題の導入にあたる文章の長さです。用語など、端的に知識を問うものからその背景を問う問題にシフトしているためか、会話文や図表を用いながら状況を把握させる手法をとっています。

 

つまり、社会、そして理数系科目でさえも読解力が問われることとなり、かえって教科そのものの力が測りづらくなっています。

 

また、50万人近くが受験する共通テストの記述問題をどうやって採点するのかという問題を指摘する声もあります。

 

採点は専門業者が行うことになっていますが、実際には専門業者が手配したアルバイトによる作業になってしまうのであれば、あえて記述問題を採用する意味合いが薄れるという懸念が上がっています。

 

その他、記号選択問題の出題方法にも批判の声が上がるなど、センター試験との違いにこだわるあまり、共通テストで本来判定したかった受験生の「確かな学力」が測れなくなっていることが浮き彫りになりました。

 

英語の民間検定テストを採用する意義についても様々な意見が出ている

英語の民間検定試験の採用についても懐疑的な意見が見られます。東大は2018年7月に、同校の入試では外部検定試験のスコア提出を必須にしない、という答申を行いました。

 

また、それに先立ち「東京大学新聞」(2018年4月3日号)では、大学入試で英語の4技能をバランスよく身につけることに拘る現在の流れに疑問を投げ掛け、一石を投じています。

 

そんな中、2018年3月には、8種類の英語検定試験が大学入試センターより認定されました。

・新型英検(1日完結型で合否が判定できる、新しいタイプの英検)

・ケンブリッジ英検

・TOEFL iBT(大学レベルの英語力を判定するテスト)

・TOEIC(ビジネス英語のテスト)

・GTEC(学習指導要領に沿って4技能のレベルを判定するテスト)

・TEAP(英検協会と上智大が開発した4技能検定)

・TEAP CBT(コンピュータで解答するTEAP)

・IELTS(英語熟練度を判定するテスト)

 

これらについても、試験の目的がそもそも違うことや、受検地が偏っていること、検定料が違うことを「不公平」として問題視する声があります。

 

共通テスト導入後も4年間は、現状通り2技能に絞った英語の試験を継続し、外部検定試験と併用しながら様子見をすることが決まっていますが、プレテストの内容自体も「英語の技能が正確に測れるものではなかった」と批判されるなど、前途は多難です。

 

東大の意思表示に他大学は少なからず衝撃を受け、その方針にも影響を与えています。朝日新聞が同年8月にまとめた調査によると、英語の民間検定試験を活用するかを決めかねている大学は、82校ある国立大学のうち実に37校にのぼります。

 

受験勉強に費やせる時間には限りがあります。この状況に一番振り回されているのは受験生です。

 

センター試験最終年度である2019年度に高3を迎える受験生たちは、もし現役で合格しなかったら翌年には全く方向性の異なる共通テストの渦に飲み込まれてしまうため、まさに戦々恐々としています。

 

AO入試や推薦入試では、学力を含めた総合評価で選抜を行うため、優秀な生徒に有利となる

一方で、今回の大学入試改革におけるAO入試や推薦入試を含めた各大学での選考方法については、面接や小論文、グループディスカッションやプレゼンテーションが導入されることが変わらず盛り込まれています。

 

大学入試改革の方針を受け、2020年を待たずに国立大学協会でも、AO・推薦入試での入学者を定員の3割まで拡大する方針を掲げ、各大学が取り組みを始めました。

 

また、文部科学省は2020年度よりAO入試・推薦入試でも共通テストなどを利用した学力評価を義務化する方針を固めたこともあり、これまでとは異なる選抜方式で臨むことが求められます。

 

改革の先鞭をつけたのは、東大・京大という国立大学の最高峰2校でした。2016年に両校は戦後初めて推薦入試を実施しました。

 

東大では一般入試の後期日程を廃止し、その分を推薦入試に置き換えました。推薦入試の定員は100名ですが、1つの高校につき男女それぞれ1名ずつしか出願できないという制限が設けられています。

 

そして、その年のセンター試験の成績と書類選考、そして提出資料をもとにした個別の面接やグループディスカッションを総合的に見て、合否判定を行います。

 

東大合格と聞くと、学力試験を突破して厳しい競争に打ち勝つイメージがあるため、推薦入試は一見ハードルが高く見えないかもしれませんが、実際には高校の推薦枠を勝ち取ったことが高い学力を担保していることになります。

 

推薦合格者は、一般入試の準備も行っており、一般入試で受けても十分合格できる優秀な生徒が揃っています。

 

東大や京大の試みを参考に、他大学も推薦入試の手法を変えつつあります。これによって、一般入試では合格できないかもしれない生徒が受けるAO入試の時代は終わり、長い時間をかけて学力を積み上げてきた優秀な生徒を確実に囲い込むAO入試の新時代を迎えることになるでしょう。

 

2020年から、AO入試は「総合型選抜」と呼ばれるようになりますが、その名の通り総合力がある優秀な生徒にとって嬉しい改革となるでしょう。

 

トップクラスの私大も、この流れを手をこまねいて眺めている訳にはいきません。早稲田大学は、共通テストが導入される翌年、2021年度から入試改革を行うことを発表しました。

 

中でも政経学部の一般入試については、共通テストと外部の英語検定試験のスコア、そして学部が独自に実施する試験の合計点で選抜を行うなど、大きな変更となります。

 

共通テストは英数国に加え、地理歴史・公民・数学・理科から1科目を選択した計4科目を受験しなければならないため、これまでのような文系(英・国・社)受験ができなくなります。

 

国立に比べて私立は試験科目が少ないので対策が容易、といった捉え方は過去のものになっていくと思われます。

 

入試に必要な科目だけ塾に通って知識を詰め込んでおけば、大学生になれた時代は、いよいよ終わりに近づいているのかもしれません。

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