勉強中・外出中いつもイヤホンで音楽は考えもの?!
勉強をする時に集中できるようにということでイヤホンをして音楽を聴きながら勉強するというスタイルの子どもが増えてきています。しかし、そのようにしているとなかなか学力が伸びないという専門家の意見があります。そのあたりについて少し見ていきましょう。
勉強中に音楽を聞いている子は学力が伸びない
今度電車に乗る機会があったら車内の人を観察してみて下さい。なかでも若い男性に注目して欲しいのですが、イヤホンをして音楽を聴いている人が多いのに気がつくかと思います。一昔前、観光などで外国の人が日本に来た際に、子どもも大人も電車の中で漫画を読んでいるといって驚いたというエピソードがありましたが、最近では漫画よりもイヤホンをして、携帯ミュージックプレイヤーや携帯やスマホを操作して音楽を聴いているような人の方が多くなってきているように思います。
このように、外出時にイヤホンで音楽を聴いている若い人が増えてきていますが、どちらかというと女性よりも男性の方にそうした傾向が見られるように思います。そうした人たちは財布や家の鍵と同じように外出の際にはかならず携帯プレイヤーを持参し、ごく普通の行動としてイヤホンを耳にさして音楽を聴き始めます。そうした人にとっては、外出の際に音楽を伴うというのは違和感のない自然な行為になっているのでしょう。
そうした指摘をすると、そういう時代なんだから別にいいのでは、という声が帰ってきそうですが、自分の子どもの頭を良くしたいと思うのであれば、子どもにそういった癖を身につけさせないように気を配った方がいいかもしれません。教育指導の一部の専門家の意見では、出かけるときにいつも音楽を聴いている子どもに限ってなかなか勉強ができるようにならないという傾向があるというのです。
勉強をするときなどに、周囲から聞こえてくるさまざまな雑音は邪魔になります。昔は耳栓をして勉強をするというスタイルの人も多かったわけですが、最近ではイヤホンをして音楽を聴きながら勉強するというスタイルの子が増えてきています。自分の子どもがそんなふうにしているのを見ても、集中するためならそれでもいいかと親は考えがちですが、はたして本当にそうなのでしょうか。
例えば、自分が大きなローンを組むことになり、その契約内容を細かく記した難解な文章を読まなければならないとします。そういった契約書にはさまざまな内容が記されており、普段使い慣れないような難しい単語もたくさん使われています。大きな金額の話ですし、万一妙な条項があってはいけませんから、いきおい集中して内容を吟味したくなるかと思います。
そんな時に、自分の耳元で音楽がずっと鳴っていたらどう感じるでしょうか。たとえその音楽が自分が好きなアーティストのものであったとしても、今はちょっと静かにしてくれ、と思うのではないでしょうか。そんなふうに本当に真剣にものごとに集中しているとき、しようとしているときには、音楽はどうしても邪魔になるものではないかと思います。
周囲で雑音がしていたとしても、本当に集中して勉強に入り込むことができれば、そんな雑音などまったく気にせず取り組むことができるものです。そして、子どもが勉強をするときに必要なのはまさにそうした集中力です。
塾や学校では優秀な成績を収めているのに、何故か模試などでうまく点数が伸びない、という子どもが時々います。こういう子どもに詳しく話を聞いてみると、試験中に周囲から聞こえてくる音、たとえば何かを一心に書いている音が気になってしまい、なかなか集中できずにテストで失敗した、というような話を聞くことがあります。逆に子どもたちの中には、そういう弱点を持った子どもがいることを承知の上で、わざと書くときの音が大きくなるように重めのシャープペンシルをつかって周囲にプレッシャーを与えるといった「戦術」をとる子さえいます。
受験やテストでいい成績を収めるには、周りの音など聞こえなくなるぐらいの集中力を発揮できる子どもの方が有利です。しかし、普段からイヤホンで音楽を聴きながら勉強していて、そういった集中力が身につくでしょうか。受験やテストの時にはイヤホンをさしているわけにはいかないのです。もし自分の子どもが勉強中にイヤホンを耳につける癖ができつつあるのであれば、一度考える必要があるかと思います。
「集中を妨げないような静かな環境」というのは、完全な防音室というわけではありません。隣室からTVの音や談笑する家族の声が聞こえてくるような環境は論外ですが、家事をする音などの生活音程度は問題ありません。むしろ、そういった多少の音がある環境下でも集中できないとなると、テスト本番で周囲の音からくるプレッシャーに負ける子どもになりかねないからです。
外出時に音楽を聞くことにもデメリットがある
いつも音楽を聴きながら勉強をすることがよくない理由はこれで分かって頂けたかと思いますが、さらに一歩踏み込んで、勉強せずに外を歩くときに音楽を聴くことのデメリットについても見ていきましょう。
外出すると、家の中にいるときよりもさまざまな刺激が五感を襲います。お店から聞こえてくるBGM、自動車の音、ネオンサイン、さまざまな広告看板、電車の中でやかましく話す話し声などなど、そういった刺激の中には自分にとって必要ないと感じられるもの、あるいは不快であるとさえ感じられるものもあることでしょう。
イヤホンを装着して音楽を聴いていれば、こういった刺激のうち耳から入ってくるものをいともかんたんにぬぐい去ることができます。それがなければじっと我慢するしかない刺激であっても、そうすることによってあっさりと解消されてしまうのです。こうしたくせが身につけば、ごく手軽に楽をすることができることになります。
また、外からのさまざまな刺激に耳を閉ざすということは、自分が思ってもみなかったような興味深いもの、あるいは美しいもの、すばらしいものに出会う偶然の機会さえ奪い取ってしまいます。これにより、こどもは周囲の環境に向ける注意力や観察力を育む機会を奪われてしまいがちです。
子どもの学力というのはただ記憶力によってのみ形成されるものではありません。嫌なことでも続ける忍耐力、周囲への注意力や知覚力、ものごとへの好奇心といった要素も多分に絡んでいます。したがって、そうした能力を養うことを奪いかねないことから、外に出かけるとすぐ音楽を聴いてしまうのはよくない結果をもたらしかねないというわけです。
最後に1つだけ言い添えるなら、ものごとはこれがすべて、ということはありません。どんなことにも必ず例外はあります。いつも音楽を聴きながら勉強をしていても、驚異的な集中力を発揮することができ、日々の勉強でもテストでも問題なく成果を出せるような子どもがいないわけではありません。子どもがそんな能力の持ち主であれば、十把一絡げに勉強中の子どもから音楽を取り上げるのはむしろよくありません。子どもの特徴を見て判断することが大事です。
更新日:2019/11/29|公開日:2015/05/28|タグ:イヤホン