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日本における子供の貧困の現状

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母子家庭

昨今、日本で子供の貧困問題がクローズアップされているのをご存知でしょうか。その割合は6人に1人と高いものですが、身近な問題として実感している人はそう多くないのも事実です。

 

ですが、子供の貧困は世代を超えて繰り返し、抜け出すのは困難であり、しかも貧困に苦しむ人の数は拡大傾向を示しています。このことは将来の国内市場の縮小を招き、政府の財政にも影響を与える大きな問題であるとも言えます。日本の子供の貧困問題は決して人ごととして見過ごすわけにはいかないのです。

 

日本における子供の貧困とは、そもそもどういう状態か?

絶対的貧困と相対的貧困(経済状況による貧困の定義)

「子供の貧困」と聞いてみなさんが思い浮かべるのはどんなものでしょうか。いつもお腹をすかせている、ボロボロでサイズの合わない服を着たような子供の姿かもしれません。見た目で分かる、明らかに貧しい子供、それは「絶対的な貧困」という状態を指します。

 

「子供の貧困」それは、衣食に事欠くような明らかな貧困だけではありません。我が国の新聞やテレビで最近よく耳にする貧困は、いわゆる「相対的な貧困」です。貧困ラインに満たない状態をそのように呼びます。

 

貧困ラインとは、国民の可処分所得の中央値(所得額を順番に並べた、ちょうど真ん中の値)の半分の所得額のことです。

※可処分所得とは、給与(年収)から所得税や住民税などの税金、年金や健康保険などの社会保険料を引いた金額のことで、いわゆる「手取り」と言われる金額です。

 

2015年の日本の貧困ラインは1人あたり122万円です(2015年の可処分所得の中央値は245万円で、その半分が貧困ラインのため122万円)。親1人、子供2人の3人家族だと207万円が貧困ラインとなります。

 

ちなみに世帯あたりの貧困ラインを算出するにあたっては、家族で共有できる生活必需品も多いため、3人家族であれば3倍ではなく、√3倍(約1.7倍)とするため「122万円×√3≒207万円」となります。

 

3人家族の貧困ラインは「207万円/年」ですので、月額にすると約17万円となります。月額にして約17万円というのは、やりくりすれば親子3人なんとか暮らしていける額のような気もします。

 

しかし、総務省統計局「家計調査」における2人以上世帯における1か月間の消費支出の平均は、2016年で282,188円となっています。それを踏まえれば、その生活に余裕は全くないことが見てとれます。それでも一見して貧しいと分かる身なりなどではなく、身近にいても気づかないことがほとんどでしょう。

 

貧困ライン以下のレベルの生活を送る17歳以下の子供の割合のことを「子供の貧困率」と言いますが、厚生労働省の2016年度「国民生活基礎調査」によると、日本の子供の貧困率は2012年の16.3%がピークで、じつに6人に1人が貧困状態でした。2015年度は13.9%と若干改善がみられたものの、ここ20〜30年でじわじわ上昇してきた数値であり、まだ予断を許さない危険水域にあります。

子供の貧困率の推移

 

貧困ラインに満たない生活を送る世帯は、子供の教育や将来についてどう考えるでしょうか?

 

出費を衣食住に最低限必要なものだけに抑える生活を続けていると、子供の教育や将来に投資するという考えは起こらず、その結果子供の進路の選択肢を数多く用意してやることはできません。これでは子供がいまの貧困から脱出することはかなわず、貧困が繰り返されてしまうのは否めないでしょう。

 

生活状況による貧困の定義

「生活保護世帯」「児童養護施設」「ひとり親世帯」の子供たちを、その多くにみられる生活状況から「貧困」と定義する考え方もあります。

 

国際比較がしやすい指標である相対的貧困という考え方に対し、日本の子供の貧困問題を考える上では、子供の貧困とその後の教育格差、すなわち進学率や中退率、就職率などへの影響をライフステージ別に検証することが欠かせません。

 

しかしながら、相対的貧困状態の子供のその後を追跡できるデータが我が国にはほとんどないため、便宜的にこの括りで「子供の貧困」を捉えることで、貧困状態の世帯と全世帯との比較がしやすくなります。

 

内閣府が2014年にまとめた「子供の貧困対策に関する大綱」には、家庭の生活状況別に見た中学卒業以降の進学・就職そして中退に関するデータがあります。それによると、高校進学率は全体で98%を超える一方で、生活保護世帯では90%に留まっていることが分かります。

 

また高等学校等中退率にいたっては全世帯が1.7%であるのに対し、生活保護世帯は5.3%と3倍にのぼっています。高校3年間に換算すると、高校に入学した子供のうち実に約16%の子供たちが中退してしまうことになります。

 

その先の大学等進学率についても同じ傾向が見られます。全世帯平均の大学等進学率(専修学校・短大を含む)が73.3%であるのに対し、ひとり親家庭では41.6%、生活保護を受けている世帯では32.9%にとどまり大きな差が生まれています。

 

高等学校の進学率では生活保護世帯がやや低いものの、すべての生活状況で90%を超えており大差がないだけに、大学進学率の違いが目を引きます。このように、日本の子供の貧困問題とその連鎖を考える上で生活状況で括った貧困の定義づけが役立ってきます。

 

世界の中でも突出する日本の子供の貧困率

前述の通り、日本におけるの子供の貧困率は、2012年に16.3%と過去最悪を更新しました。OECD(経済協力開発機構・ヨーロッパ諸国を中心にアメリカ・日本も含めた先進国が加盟する国際機関)34カ国における子供の貧困率を比較した2013年のデータにおいて、日本の子供の貧困率は、OECD加盟国34カ国の中で見ても悪い方から11番目となっています。

OECD加盟国の子供の貧困率(2013年)

 

この貧困率はOECD平均である13.3%を上回っており、国内総生産でみれば世界3位の経済規模である日本の立ち位置を考えても、その貧困率の高さは目を引きます。

 

日本が他国と比べて貧困率が高いことがわかるデータがもう1つあります。ユニセフが2016年に発表した「イノチェンティ レポートカード13 子どもたちのための公平性:先進諸国における子どもたちの幸福度の格差に関する順位表」に、先進諸国の相対的所得ギャップを示したものがあります。

 

相対的所得ギャップというのは、貧困層と中間層の間にどれだけ格差があるか、つまりその国の「格差社会度」を端的にあらわすデータです。

 

先進諸国41カ国中で日本は下から8番目の60.21%となっていますが、これは「所得階層の真ん中に位置する世帯所得から60.21%を引いた値が、所得階層の下から10%目の子持ち世帯の所得と同じ」ということです。この相対的所得ギャップの数字が大きければ大きいほど、いわゆる「中流」と「下流」との格差が大きいということになります。

先進諸国の相対的所得ギャップ

 

調査した41カ国中、もっとも格差が小さかったノルウェーでは、この相対的所得ギャップは40%を下回っており、日本の値の大きさは特筆すべきものとなっています。しかもここ10年でその格差は広がってきています。首都大学東京の阿部彩教授の調査で、日本の下から10%にあたる世帯の所得は10年前と比べるとさらに減っていることが分かっています。

 

これらのデータを見ると他国と比べても日本の貧困率の高さ・子供間の格差の広がりが深刻な問題となっていることが分かります。

 

とりわけ厳しいひとり親家庭(特に母子家庭)の現状

「子供の貧困」と一口に言っても、貧困にあえぐのは子供のみではありません。その子供が暮らす家庭の貧困が背景にあります。したがって、ひとり親家庭の貧困率について検証すると子供の貧困の全体像がより鮮明になってきます。

 

内閣府「平成26年版 子ども・若者白書」には、「OECD諸国のひとり親家庭の貧困率(2010年)」が掲載されていますが、OECD平均が31%のところ、日本は50.8%でなんとワースト1位となっています。(2012年には54.6%に増加しています)

OECD諸国のひとり親家庭の貧困率(2010年)

 

日本のひとり親の就業率は母子世帯81%、父子世帯91%と、74%のアメリカ、56%のイギリスなどを大きく上回っているにもかかわらず、このような結果が出るのは何故なのでしょうか?

 

その理由として筆頭に挙げられるのが、日本のひとり親、なかでも母子家庭の収入の低さです。「ひとり親家庭」と「非ひとり親家庭」とを比較してみましょう。厚生労働省「ひとり親家庭等の現状について」(2015年)によれば、大人が2名以上いる家庭の相対的貧困率は12.4%です。その一方、ひとり親家庭の相対的貧困率は54.6%と非常に高いものとなっています。

 

就業率が高いのに相対的貧困率が高いというのは、いわゆるワーキングプアと呼ばれる状態です。もちろんすべてのひとり親家庭が貧困に苦しんでいる訳ではありませんが、母子家庭については様々なデータがその厳しい現状を明らかにしています。

 

まず所得水準で比較してみましょう。女性全体の平均所得は269万円ですが、母子家庭となると181万円にとどまっています。生活保護の受給率を見ても母子家庭14.4%、父子家庭8.0%と、ひとり親の家庭は全世帯平均である3.2%を大きく上回っていますが、その中でも母子家庭の生活を取りまく状況がいかに厳しいかが分かります。

 

このような母子家庭の経済状況には、長年続いてきた男女間の賃金格差がいまだ解消されていないこと、また産休・育児休業の取得率が中小企業で伸び悩むなど仕事と子育ての両立を支援する体制づくりが頭打ちとなるなど、社会構造の問題も大きな影響を与えています。

 

2011年度の全国母子世帯等調査では、母子世帯の平均年間就労収入は正規職員で270万円という調査結果が出ており、父子世帯の平均年間就労収入426万円と比べても格段に厳しい経済状況におかれている母子の姿が浮かび上がってきます。

 

こうした状況を踏まえると、現在の日本では離婚などで母子世帯になるが最後、収入レベルが下がり一気に貧困ラインを下回ってしまう可能性が非常に高いと言わざるをえません。

 

世代を超えて連鎖する子供の貧困

すぐ近くにあるという実感なしに蔓延してきた子供の貧困問題ですが、この貧困が世代を超えて連鎖することはより重要な問題として捉えなければなりません。つまり、世帯収入の差によりもたらされた学力の差は、学歴の差となり、収入の差にもつながるのです。

 

貧困家庭の子供は進学率が低く、その先安定した仕事に就けなかったり低賃金に悩まされることが多く、将来家庭を持っても子供に対して教育的投資を行う余裕がなくなり、結果として子供世代の貧困へと連鎖していきます。

 

現在貧困状態にある子供たちが大人になった時、収入が低いままなら、その分国の税収や年金などの社会保険料の収入も伸びませんし、消費の拡大も見込めません。場合によっては職を失い失業保険・生活保護などの社会保障に頼るケースも多くなってしまいます。

 

つまりこれは、将来の国全体の所得や財政収入の減少、さらに言えば社会保障給付額の増加にも繋がる危険な連鎖なのです。

 

ある自治体で生活保護を受けている世帯主の4分の1にあたる人は、子供時代にその親が生活保護を受けており、母子世帯にいたってはこの割合が4割にものぼるというデータが、関西国際大学の道中隆教授の調査で明らかになっています。貧困層から抜け出すことは並大抵のことではないことが分かります。

 

世帯収入と学力との相関関係はどうなっているのでしょうか?お茶の水女子大学が2014年に、小学6年生の「全国学力・学習状況調査」と保護者へのアンケート結果を元に行った調査で分かったのは、世帯収入と子供の学力が非常に密接に関連しているということでした。

 

ある学力テストにおいて年収700〜800万の家庭の子供の算数の正答率が79.7%だったのに対して、年収200万未満の家庭の子供は67.2%にとどまっています。一方で年収1,500万以上の家庭の子供はじつに85.6%の正答率でした。

 

この傾向はすべての教科について同様に見られ、世帯収入最下層(200万未満)と最上位層(1,500万以上)では、各教科とも20ポイント以上の差がつくなど、家庭の経済状態が子供の学力に与える影響の大きさが、はっきりと現れる結果となりました。

世帯収入と学力との相関関係

 

そしてこのことが子供の進学・中退・最終学歴に影響を及ぼすのは先ほど「生活状況による貧困の定義」でも紹介した通りです。

 

次に、学歴の差は収入にどのような影響を与えているかについて見てみましょう。厚生労働省の賃金構造基本統計調査では、学歴別・年齢別の賃金を男女別に見ることができ、学歴と収入のはっきりした相関関係がよく分かります。

 

例えば男性のピーク時の賃金月額を最終学歴別に見ると大学・大学院卒で約54万円、高卒では約35万円です。両者の間には1.5倍以上の開きがあることが分かります。賃金カーブに大きな差があることも特徴的で、生涯賃金という視点ではさらに大きな差が生じてきます。

学歴、年齢階層別賃金(男)学歴、年齢階層別賃金(女)

 

生まれた家庭の経済格差は、その後受ける教育の格差、そして将来の所得の差に大きな影響を与えていますが、高所得者と呼ばれる人たちにも同じような現象は起こるのでしょうか?

 

2014年に実施された東京大学学生生活実態調査によれば、東京大学に通う学生のじつに54.8%が年収950万以上、35.8%が年収1050万以上の高所得世帯の出身だったことが分かり、各方面に衝撃を与えています。つまり、どんな家庭に生まれたかがその後の学歴に影響しているのは貧困層だけではないということです。

東京大学学生の親の年収額分布

 

メディアに登場する子供の貧困

子供の貧困は次第に注目を集めてきており、様々なメディアで取り上げられることも多くなってきました。この問題についてさらに知るために、現実を的確に伝えている記事などを紹介します。この日本で、生まれた環境によって将来の夢や希望を失ってしまう、そんな子供たちが実際存在するということを感じるきっかけになるでしょう。

 

NHKスペシャル「子どもの未来をすくえ〜貧困の連鎖を断ち切るために〜」

2014年12月に放送されたこの番組では、貧困生活を送る人とそこに手を差し伸べる人について取材が行われました。

 

経済的に苦しい生活について理解を深めることができるのはもちろんのこと、シングルマザーへの就労支援や、まだ食べられるのに様々な理由で処分される食品を食べ物に困っている施設や人へ届けるフードバンクの活動など支援事例についても紹介しています。

 

子供の貧困問題の認知度を一気にアップさせたこの番組は、NHKオンデマンドで視聴できます(視聴は有料)。
https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2014059649SA000/

 

朝日新聞「子どもと貧困」

2015年に始まったシリーズで、密着取材から浮かび上がる貧困の実情は、この問題の深刻さや重要性を訴えかけるのに十分なインパクトがあります。

 

様々な子供の貧困を取り上げており、経済的な困窮により子供の将来の可能性が狭まるなど相対的貧困の典型的なケースから、絶対的貧困とも言える衣食に困窮するレベルに陥っている家庭の子供たちのケースまで紹介されています。

 

現在も不定期に掲載中で、過去の記事は朝日新聞ウェブサイトで読むことができます(全文を読むには有料会員登録が必要)。
http://www.asahi.com/topics/word/子どもと貧困.html

 

「貧困を背負って生きる子どもたち 仁の物語」

NPO法人山科醍醐こどものひろば等が制作したフィクション動画です。

 

心の状態に大きな影響を与える貧困により、主人公の仁は自分の境遇に後ろめたい思いを抱いていました。自分の将来に対しても希望が持てなかった仁が、イベントで大学生と出会ったことをきっかけに、次第に前向きになっていくという気持ちの変化を描いているところが、この動画の特徴です。

 

子供の貧困が、決して金やモノがなくて困っている状態というだけではなく、貧しい状態がその情緒に大きな爪痕をつけてしまうということがご理解いただけるでしょう。

 

ヴィジュアルノベルとしてYoutubeで紹介されており、メッセージにあふれた作品となっています。前・後編各5分ほどで、他のエピソードも視聴することができます。(上:前編、下:後編 / ※動画再生はデータ通信量が大きいため、スマホ等での視聴はWi-Fi接続をおすすめします)

 

貧困に陥る子供の生活の現状

子供の生活に良くも悪くも大きな影響を与えるのは親の状況です。様々な「貧困状態の子供」がいますが、親によって育てられている子供、また離れて暮らさざるを得ない子供と、それぞれの事情によってその生活は千差万別です。

 

大半の子供は実の親と暮らしていますが、中には親とは離れて生活している子供たちもいます。死別や親の病気、経済的なものだけでなく虐待や育児放棄といった様々な理由で、やむを得ず親と暮らせない子供たちも存在します。

 

実の親と暮らしている子供の貧困

実の親と暮らしているけれど貧困状態にある子供、これは親が経済的に困窮しているケースがほとんどです。日本国憲法で保障される「生存権」、つまり健康で文化的な最低限度の生活を送るために生活保護制度を利用している世帯が多く含まれています。

 

親自身が金銭的に困り生活にひどく困難な状況にある場合は、「生活保護」を申請すれば最低限の生活費や家賃のほか、子供が義務教育を受けるために必要な学用品費などが支給されます。生活保護を受給するための条件のひとつは、収入が最低生活費を下回っていることです。

 

最低生活費とは、自治体ごとに定められている憲法で保障された最低限の生活を送るために必要な金額のことです。住んでいる地域・家族構成と人数によって、その額は大きく変わってきます。

 

例えば、東京都区部の夫婦(33歳・29歳)に4歳の子供が1人の世帯であれば最低生活費は約16万円です。都内で生活することを考えれば、これがかなり厳しい水準であることがお分かりいただけるでしょう。

 

わが国の生活保護制度の予算は2016年度で2兆8000億円以上計上されています。厚生労働省によれば、2015年の日本の未成年人口は2,198万人ですが、生活保護世帯に属する0〜19歳の子供は27万2000人で同年齢の人口の1.2%を占めています。

 

2000年に行われた同じ調査で0.7%であったことを踏まえると、15年で約1.7倍になっており、ここからも子供の貧困がより深刻になっていることが分かります。

 

なお、同じく厚生労働省の調査では、2016年時点で生活保護を受けている母子家庭の数は9万9000世帯にのぼっています。

 

また、ひとり親世帯で一定の条件を満たせば「児童扶養手当」を受給できます。これは生活保護と併行して受給することも可能です。2017年4月に改定され、1人目の支給額は最大42,290円で、第2子・第3子がいれば定額が加算されていく仕組みです。

 

2016年8月よりこの加算額が引き上げられる改正が行われ、2017年度は第二子に9,990円、第三子以降には5,990円それぞれ最大で加算されます。この改正ですが第二子については36年ぶり、第三子以降についても22年ぶりに行われましたが、物価スライド制が適用されているため前年と比べて支給額が0.1%引き下げられています。

 

児童扶養手当の予算額は2016年度で1746億円と非常に大きなものとなっています。その背景となる母子世帯・父子世帯の数ですが、2011年度では母子世帯約123.8万世帯、父子世帯約22.3万世帯となっています。なおかつその数は増え続けています。

 

そのほかの公的援助として「就学援助」があり、経済的に厳しい状況にある家庭の児童は受給できます。生活保護を受けるレベルでなくても、各自治体の定めた要件を満たせば申請することができ、学用品費のほか、給食費や修学旅行費に対する補助が行われています。

 

これは「経済的理由によって、就学困難と認められる学齢児童又は学齢生徒の保護者に対しては、市町村は、必要な援助を与えなければならない」と規定された学校教育法第十九条に基づく支援です。

 

2014年度に就学援助を受けた子供は全体のおよそ15%となっています。児童扶養手当と同じく、こちらもここ10年以上にわたって増加傾向がみられていましたが、現在は高止まりの状態にあります。

 

実の親と暮らせない子供の貧困

次に、親と離れて暮らさなければならない子供について見ていきます。子供が親と暮らせなくなる理由は様々ですが、親の病気や死亡、経済的理由、育児放棄、虐待などが挙げられます。

 

子供たちはまず、家庭的養護と言われる里親制度や特別養子縁組などを利用している子供たちと、施設で暮らす子供たちとに大きく二分することができます。

 

近年は、家庭的養護の推進を図る目的でファミリーホーム(養育者の家庭で5〜6人の児童を養育するかたち)を含む里親等委託の割合を引き上げる目標が定められ、施設の小規模化が進められてきました。これは2012年3月に厚生労働省が「家庭的養護と個別化」を社会的養護の原理の筆頭に掲げた指針を示したことが影響しています。

 

家庭的養護とは、戸籍上は親子関係になくとも家庭的な環境のもとで子供との愛着関係を育み、養育を行う環境のことです。政府が家庭的養護を推進するのは、親と離れて暮らさざるを得ない子供にも、養育者との密接な関係を構築して欲しいとの思いがあります。

 

施設での集団生活では、スタッフ1人が複数の子供をみることになり、一般的な家庭での養育環境とは異なってしまいます。「あたりまえの環境ですべての子供たちが暮らせるようにしたい」ということが背景にあります。

 

家庭的養護の代表的なものは「里親制度」です。戸籍上の親子関係を変更せず、養育を希望した里親が保護者に代わって預かり育てるというもので、行政が養育費を支給しています。これはいわば子供の養育の委託制度であり、場合によっては成人まで預かることもあります。

 

里親制度のもと、里親の自宅で育てられている子供の数は2015年3月現在で4,731人です。また養育者の自宅などで行う「ファミリーホーム」事業もあり、こちらでは2015年3月現在1,172人の子供が生活しています。

 

原則として6歳未満の乳幼児に対しては、「特別養子縁組制度」が適用可能です。これは里親制度と違い、実の親から親権を移譲し、実子と同じ権利を持つ安定的な養親子関係を築く制度で、様々な条件を満たした上で家庭裁判所により成立させるものです。

 

縁組は、児童相談所を通すケースと民間団体に委託して進めるケースがあり、司法統計によると2015年度は544件の特別養子縁組が成立しています。児童相談所を通しての縁組は里親制度の枠組みのもと行われ、「養子縁組里親」と呼ばれます。

 

次に施設で暮らす場合について見ていきます。施設に入所する場合は、その年齢に応じて行き先が異なってきます。まず新生児から2歳くらいまでは「乳児院」で生活を送ります。その後親のところに戻ることができなかった乳児の選択肢は、里親に引き取られるか「児童養護施設」への入所のいずれかとなります。

 

児童養護施設ではだいたい2歳〜18歳までの子供たちが共に生活しています。ほとんどの場合は相部屋で、家庭的養育で保障されるであろうプライバシーの面など環境には大きな差があります。

 

厚生労働省の「児童養護施設入所児童等調査」によると、施設で暮らす子供の数は2016年10月時点で2万7288人います。

 

国を挙げての取り組みが功を奏し、入所者数の減少がみられますが、いまだ里親・ファミリーホームで暮らす子供の実に4.6倍の人数が施設で暮らしています。また、進む少子化が入所者数の減少率にあまり影響を与えているとは言えません。

 

児童養護施設を退所した後は、それぞれ就職や進学など自立への道を歩むこととなりますが、進路を決める際にも様々な制約が課せられます。子供である入所者本人に経済的な余裕があるはずもなく、もし大学などに進学を希望するのであれば、自ら奨学金を得るなどの条件をクリアする必要があり、実際のところは非常に難しいと言えます。

 

子供の貧困問題を他人事にはしないで!

一時的にメディアに集中的に取り上げられたとはいえ、子供の貧困問題は決して一過性の流行のような現象ではありません。何十年もの間、世代を超えて繰り返されてきた根の深い問題であり、その解決には長い時間が必要です。

 

自分のすぐ近くにそんな子供がいないからといって安心などできません。国の行く末にも影響を与えかねないこの問題は、他人事ではないということを心に留めて、関心を持って成り行きを見守っていきたいものです。

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