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キレるのはなぜか

キレる

キレる子ども――ある子どもが衝動を抑えきれず、むやみに攻撃的になったような場合にそんな言い方をすることがあります。この「キレる」という現象の原因について探っていきましょう。

 

セロトニンの影響

ネズミでも「キレる」ことがある?

脳の神経で働く神経伝達物質に、セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンというものがあります。「キレる」こととこれらの神経伝達物質に関わりがあるかもしれない、という実験結果があります。

 

雄のネズミに薬を投与して脳内におけるこれらの物質の濃度を増減させ、何も操作を加えていないネズミとともに籠の中に離します。すると、本来ならばストレスが多くならない限り同じ種別の動物には攻撃しないはずのネズミがもう1匹を攻撃し始めたのです。このネズミは相手が降参のポーズを取ってもなお攻撃し続けたといいます。

 

動物が違う種別の動物に対して見せる攻撃性とセロトニンの間に関連があることは以前から分かっていましたが、この実験では同種の動物にも攻撃をし続けたというのが特徴的でした。

 

脳内物質を操作されたネズミの行動、同じ種別の動物をしつこく攻撃するという行動は、人間で言えば「キレる」という行動に当たるわけですが、こうした行動を取るのは脳内物質のうちセロトニンとノルアドレナリンが少なく、ドーパミンが増えた状態になっていたネズミだったといいます。

 

脳内物質を操作することによってネズミが「キレる」ようになった根本的な原因はまだ解明されていません。また、ネズミに当てはまったからといってそれがそのまま人間でも起きるわけでもありませんが、子どもが「キレる」ことについて何らかのヒントが得られるかもしれません。

 

セロトニンの働き

人間の脳において、神経の間で情報を伝達する神経伝達物質は30~40種ほどが見つかっています。そのうち、セロトニンやノルアドレナリン、そしてドーパミンが関連しているのはモノアミン系と呼ばれる神経系で、思考や行動、感情といった生きていく上で重要な情報を司る部分となっています。

 

このモノアミン系のうち、セロトニンが情報の伝達を担っているセロトニン系の神経は、脳幹にある縫線核と呼ばれる部位から始まっていて、その部分に数万個が存在しています。そしてこの神経系は脳の広い部位に広がっており、ノルアドレナリンやドーパミンが情報の伝達を担う神経系が暴走しないようにコントロールする機能があるのではないかとされています。

 

うつ病や強迫性障害、パニック障害などを治療するための薬に「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)」という薬があります。このSSRIと言う薬は、脳の中の神経細胞どうしで情報を受け渡されるための場所、「シナプス間隙」と言われる部分で、神経伝達物質であるセロトニンの濃度を高い状態に保つための薬です。

 

神経系のうち、セロトニン系の神経はノルアドレナリン系の神経とともにうつ病に大きく関わっていますが、衝動的に行動したり不安に駆られるといった精神の動きをより強く抑制する働きがあるのはセロトニン系であるとされています。このため、強迫性障害やパニック障害に対してもSSRIが効果を発揮できるのだというのです。

 

また、1993年にオランダでなされた研究に、セロトニンと攻撃性の関連を示すものがあります。攻撃性の高い人が多い一族を調べたところ、セロトニンの代謝に関連する遺伝異常が発見されたという内容の研究です。

 

さらに、アメリカで行われた研究報告では、衝動的な行動を取ったり自殺するといったケースで、脳脊髄液におけるセロトニン濃度が低かったことがわかったとするものもあります。

 

セロトニン神経系を鍛える

セロトニン系の神経は、毎日の生活の中で鍛えることができるという興味深い特徴を持っています。この神経系を鍛えるにはウォーキングやジョギングのようなリズム運動が効果的で、毎日一定時間こうした運動を続けることで、セロトニンの血中濃度や尿中濃度が明らかに上がることが分かっているのです。

 

反対に、運動をあまりせず、毎日部屋にこもって生活をしているとセロトニンの血中濃度や尿中濃度ははっきりと下がります。数十分の間ネズミを泳がせた後に脳内のセロトニン濃度を計測したところ泳ぐ前の30倍近くに上昇していたという報告もあります。

 

現在のところ、「キレる」という行動とセロトニンとの因果関係はまだ解明されていません。しかしセロトニン神経系は脳の広い範囲に広がっているほか、セロトニンとの関係で説明できる部分も多いといいます。

 

いずれにしても、セロトニン神経系は毎日の生活の中で簡単に鍛えることができるということは知っておいても損はないでしょう。

 

子育ての問題

近年、小学校の低学年の児童の中に「キレる」児童が増加し、いわゆる学級崩壊を引き起こす元になっています。このような「キレる」児童が増加する背後には子育てがあるとされています。

 

「キレる」の原因――5つの理由

少し前までは、小学校の低学年というと第一次反抗期と第二次反抗期の間の時期にあたり、子どもの精神的には相当落ち着いている時期であると考えられてきました。小学校の高学年ぐらいの子どもが「キレる」というのであれば第二次反抗期が早まっているのではないか、という見方もできますが、低学年の子どもにこういった問題が発生するとなると、それとは分けて考える必要があります。

 

小学生をすぎた中学生以上の子どもが「キレる」場合、自分の将来像をうまく描けず絶望したことを背景にして自暴自棄的な犯罪を犯すようなこともあります。しかし、小学校も低学年の子供であれば、まだ大人からの影響を強く及ぼしうる時期ですので、周囲の大人がその子供にどのように関わるか次第ではそうした態度を直していくことが可能です。

 

小学校の低学年で「キレる」子どもについてその背景を見てみると、次のような背景がある子どもが「キレる」ことをしがちだという傾向が見えてきます。

・親などから虐待を受けている

・超早期教育を受けた経験がある

・家庭で叱られた経験がない

・強いストレスを受けている状態である

・注意欠陥・多動性障害(ADHD)を持っている

 

このうち最後の注意欠陥・多動性障害はいわゆる発達障害を持つ子どもですが、こうした原因であることは割合としてはかなり少なく、最初の4つ、つまり子育て環境に問題がある場合がほとんどです。

 

育児に苛立つ母親が増えている

昭和55年と平成15年に、大阪府と兵庫県で4ヶ月から3歳までの子どもを持つ母親を対象とするアンケート調査が行われました。この2つの調査から、現代の母親たちが育児に対していらだちを募らせている実態が浮かび上がってきました。

 

たとえば昭和55年の調査の時に比べ、育児にいらだちを感じると回答した母親の割合が3倍近くに達しています。これを3歳児を抱える層でみると50%近くの母親がいらだちを感じると回答しているのです。

 

また、育児について悩んだときに相談できる相手が近くにいない、であるとか、おむつ交換などの子育て経験をしたことがまったくない、といったような回答をした母親の割合が2倍から1.3倍近く増加し、最近の母親たちが育児について不安を感じがちであることが分かります。

 

さらに、近頃の母親は育児がうまくいくかどうかで他者から評価されるということに対して大きな不安を感じており、自分の思ったとおりの子どもに育て上げようとするような傾向も大きく見られています。

 

たとえば、母親たちが3歳児に対してどのように接しているか、つまり母親の態度を調査からまとめてみると次のようになるといった具合です。

・厳格・禁止:昭和55年66% → 平成15年90%

・期待:昭和55年17% → 平成15年71%

・干渉:昭和55年40% → 平成15年87%

・不安:昭和55年41% → 平成15年75%

 

こういった態度の表れとして、子どもがまだ1歳~2歳のころから教育を行うような超早期教育であったり、子どもを早くから進学のための塾に通わせるなど、競争とでも形容できそうな子育てをしがちな傾向が見えてくるのです。

 

「キレる」子どもや非常に自己中心的なものの考え方をする子どもの中には、こういった家庭環境で育っている子どもが少なくありません。

 

ある小学三年生は、友達がピアノを演奏しているのをうるさいと感じ、鉛筆で友達の頭を何度も刺したりしたにも関わらず、相手がうるさいのが悪いと思い込んでいたといいます。この子どもは1週間に3回塾通いをするだけでなく、英語、水泳、ピアノ、少林寺拳法などの習い事もしているなど、ものすごく忙しい毎日を送っていたのです。

 

親が子どものいいなりになると「キレる」子どもができあがる?

平成13年、文科省は「キレる」子どもの事例分析を行いました。807のケースを分析して、「キレる」子どもをタイプ別に分類したのです。それによれば、「キレる」子どもは耐性欠如型、攻撃型、不満型の3パターンに分類することができ、中でも耐性欠如型のケースが70%近くを占め最多となったという結果が出ています。

 

実際の事例から例をあげるならば、耐性欠如型というのは例えばお菓子を分けるじゃんけんで負けたときに怒りを爆発させてしまい、時間が経ってもそれが収まらないようなケースです。

 

このように、耐性欠如型の「キレる」子どもが増えたのには、子育て競争に血道をあげるのとは逆に子どもの意思を尊重する親が増えてきていることがあるといいます。「子どもの意思を尊重する」ならいいことじゃないか、とお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、この場合それが行き過ぎて1歳~2歳のころから親が子どもの言いなりになっているのです。

 

幼いころから何でも自分の思い通りに行動してきた子どもは、保育園や幼稚園に行くようになっても集団行動にうまくなじめず自分以外の他者と折り合いをつけるという術を学ばないまま小学校に行くようになり、結果として不満を感じると「キレる」ようになるというわけです。

 

こういった「キレる」子どもに対しては、キレてしまった時のことをまず思い出させた上で、自分がまわりの子どもの立場だったらどう感じるだろうか、ということを考えさせるようにすると、「キレる」頻度が下がっていくことが分かっています。

 

また、子どもが「キレる」場合には家庭での生育環境に問題があることが多いため、親や家族ぐるみでカウンセリングを受けてもらうようにすることも必要になってきます。

 

さて、ではそもそも「キレる」子どもに育たないように、何か取れる対策はないのでしょうか。

 

「キレる」子どもの背後には家庭での生育環境に潜む問題があることはご紹介したとおりですが、こういったことが起きてくるのには子どもたちの親の世代に共通した特徴に目をあてる必要があります。

 

親の年齢にもよりますが、子どもたちの親になっている世代は、子どものころから受験勉強に追われ、社会に出て自己実現することがいいことという価値観で育った世代が多いかと思います。ところが子育てにははっきりとした正しい答えなどなく、しかもどちらかというと自己犠牲的な側面が強いという特徴があります。

 

このため、こうした親の世代の苦労を社会が認め、評価していくような社会の仕組み作りをしていくことこそが大事になってくるのではないかと考えられています。

 

こうした点は、昭和55年と平成15年の親世代に対する調査の中にも現れています。3歳児を抱える母親の中で、他の子どもと自分の子どもを比べて気にしてしまうと回答した母親の割合が実に50%以上も増加しているのです。

 

また、育児をしていることを評価して欲しいといったような意見や、育児がうまくいったか他人から評価されるのが気になるといったような意見が多く見られるなど、子育てをすることで自己実現が遠のいてしまう現実によって母親世代がストレスを感じていることが浮き彫りになっています。

 

問題のある食生活

「キレる」児童を調べてみると食生活に問題があるケースが多いことが分かってきました。どういった問題が潜んでいるのでしょうか?。

 

最近の母親の台所事情

栄養相談の場で40歳より若い母親たちに話を聞くと、子どもに精神的なプレッシャーを与えたくないので嫌いなものは無理には食べさせないとか、自分が朝食を食べないので子どもにも食べさせない、といったようなことを言うケースが増えてきています。

 

こうした親たちは、総じて子どもの能力を伸ばすような取り組みには熱心です。早い頃から塾に通わせたり、タレントのオーディションに応募させたり熱心に取り組んでいたりします。

 

一方で料理はスイーツ系を作ることには興味はあるものの、煮物であったり焼き魚といったような昔ながらの料理の作り方をまったく知らないという場合が多いことも分かってきました。こうした料理のやり方を自分の親世代から学んでいないため、作ることができないのです。

 

いらつく子どもたち

昭和61年、広島県の福山市・尾道市に住む中学生1069人の食生活を調べた調査があります。発育期の子どもの場合、軽い栄養不足があるだけでも発達の遅れを引き起こしたり、精神不安定の原因になるとするWHOのレポートを受けてのものです。

 

調査の結果、摂っている栄養が偏っていればいるほど子どもがいらだちやすく、カッとなったりいじめをしてしまったりすることが多いことが分かりました。WHOの指摘通り、栄養の偏りと子どもの精神の安定には関連があることが分かったのです。

 

成長期の子どもは、おおよそ50種類ほどの栄養素を摂取することが必要です。偏った食生活によってこうした必要栄養素を摂取することができない子どもはカッとしやすく、また他の人に対してそうしたいらだちをぶつけて発散しようとするような傾向が多く見られたといいます。

 

この調査が行われた時期に調査対象となっていた中学生は、現在子どもの親になっているかと思います。この世代の大人は偏食を深刻に捉えておらず、食べることがファッション化しているという指摘がなされています。

 

最近子どもたちの間で食事の乱れから来る生活習慣病が深刻化していますが、そうしたことの背景にはこういった大人たちの食に対する無関心さが潜んでいるのかもしれません。

 

食事の偏りと「キレる」

近ごろ若者の間で糖分の摂取過剰が問題になっています。糖分を摂りすぎることによってどんな問題が発生するかというと、いわゆる「低血糖」な状態が起きる原因になるのです。

 

低血糖な状態は体の中の血糖値をコントロールするしくみがうまく働かなくなったことによって発生します。そしてこの低血糖によって子どもが「キレる」ようになってきたのではないかとする説が出てきました。

 

糖分を摂取して体の中で血糖値が上昇してくると、それを正常な状態に戻すために膵臓からインスリンというホルモンが分泌されます。長期間糖分を摂取しすぎると、インスリンがずっと分泌され続けて止まらなくなってしまいます。

 

そうするとこの過剰なインスリンの効果で今度は血糖値が下がりすぎ、血糖値が下がった状態すなわち低血糖の状態に陥ってしまうのです。ビタミンやミネラルなどの栄養素が足りなかったり、あるいは食べ過ぎやカフェインの摂り過ぎ、喫煙などによっても同様の状態が発生することがあります。

 

血糖値が低い状態が続くと、今度はそれを正しい状態に戻そうとして体はアドレナリンを分泌し始めます。アドレナリンの分泌は不規則に行われるため、その結果として血糖値が上がったり下がったりを繰り返すようになります。自覚症状としては、疲れやだるさ、めまい、偏頭痛や筋肉痛といったものが起きてくるようになります。

 

ふだん体の中で一番糖分を消費している器官は脳です。特に生命を維持するための働きをする間脳部には他の部分よりも優先的に糖分が割り当てられます。このため、体の血糖値が下がってくると少なくなった血糖は間脳に回されるため、大脳で使えるエネルギーが減少します。

 

大脳は複雑な思考をしたり理性的な判断を下すことをつかさどっている部分です。ここに割り当てられるエネルギーが減るわけですから、感情のブレーキが効きにくくなります。

 

そういった状態のところにアドレナリンが不規則に分泌され、脳の働きがいびつになった状態が発生することになります。こうして感情的に興奮しやすい状態が発生し、そうするといわゆる「キレる」と言われる行動を取ってしまうわけです。

 

インスリンの異常が起きるほど膵臓が疲弊してくるのは、糖分の摂りすぎが少なくとも半年以上続いているような場合に見られるともいいます。

 

「キレる」子どもや不登校、無気力症状を訴える子どもを診察すると、95%以上の子どもに低血糖が見られたという報告があります。こうした子どもには食事の乱れを改善するように指導し、またビタミン不足などが見られる場合にはビタミン剤を与えるなどすると状態がよくなる場合があります。

 

とはいえ、日本では医療と栄養学が協同でこうした研究をしている例がなく、食事が精神に及ぼす影響については詳細な調査研究は行われていません。

 

また、糖尿病の検査をする際には75gもブドウ糖を飲ませて検査を行いますが、その後に低血糖を起こして「キレる」行動を取ったというようなことも知られていません。

 

あるいは、脳の内部でブドウ糖やセロトニンが足りなくなるために「キレる」のではないかという説を唱える研究者もいます。この説が正しい場合、食事に動物性タンパクが不足していることが引き金になっている可能性があると言えます。

 

いずれにしても、子どもの食事に偏りが生じると精神や肉体面でなにがしかの悪影響を及ぼすということははっきりしています。このため、徐々に崩れてきつつある日本人の食生活をどのように見直していくのか、社会全体の取り組みが求められています。

 

発達障害がある場合

発達障害(ADHD、広汎性発達障害など)がある患者はキレやすいのか?

ADHDとは注意欠陥・多動性障害とも言われ、じっとしていられない(多動性)、順番を待つのが苦手(衝動性)、集中力に欠ける(不注意)といった3つの大きな症状が常に見られ、それが年齢にふさわしくないレベルで生じる場合を指します。

 

また、広汎性発達障害とは、社会性の獲得やコミュケーション能力の獲得が遅く、同じものに強くこだわるような症状がある病気です。自閉症やアスペルガー症候群などもこれに含まれます。

 

一般に、ADHDや広汎性発達障害の子どもはキレやすいと言われますが、実際にはそんなことはありません。こうした子どもたちがすべからく「キレる」わけではないのです。発達障害を持っていない子どもと比較したときに「キレる」度合いが高いと証明した研究結果もありません。

 

では、なぜ発達障害=「キレる」というイメージが持たれてしまうのでしょうか。

 

ADHDの子どもたちは確かにちょっとしたことで怒り出すことがあります。しかし、落ち着かせてよく考えるように指導すると、そこまで怒る必要はなかった、ということを理解することができます。

 

広汎性発達障害の子どもたちは、(時刻表やカレンダーの日付などといったような)その本人だけにしか分からないようなものごとへの「こだわり」を強く持っており、それが乱されたりするとパニックを起こすことがあります。

 

こうした怒りやパニックは、周囲の人から見ると簡単に理解できないように感じられます。どうしてその子どもが怒っているのかが簡単には分かりにくいからです。このため、そんなに頻繁にキレてはいないにも関わらず、「この子どもはキレる」という印象を持たれてしまうことにつながってしまうのです。

 

自尊心が傷つくことで症状が悪化することもある

ADHDを持つ子どもの中には、たとえば暴力的で攻撃性が強く、幼稚園も中途退園せざるを得なくなってしまうようなケースもあります。

 

こういったケースであっても、保護者と担任の教師が相談を重ねて状況を理解してもらうことで自尊心を傷つけないように気をつけることにより、問題なく小学校に通うことができるようになる事例も報告されています。

 

たとえば、ADHDを持った子どもが友達が失敗したのを見て大声で笑ったり、ケンカを引き起こしてしまったような場合。こういった場合でも頭ごなしにしかりつけるのではなく、子どもの自尊心に気を配りつつ、そういった場面で取るべき態度について教えるようにするのです。また、何か苦手なことをやり遂げたときにはきちんと褒めるようにする、といったような対応も重要です。

 

こうしたきちんとした対応を取ることにより、ADHDの患者がよく服用しているメチルフェニデートという中枢神経を刺激するための薬を飲まなくても大丈夫になる子どもや、年齢が上がるに従って症状が安定し、周囲の友人との関係もそれなりに築けるにいたったような例も報告されています。

 

逆に、自尊心やプライドを脅かすような対応を周囲がしてしまうと症状がどんどん悪化してしまうようなことも起きかねませんので、そうならないように気をつけることが大切になってきます。

 

ADHDや広汎性発達障害と脳の異常

ADHDの定義では、中枢神経系の機能に異常があると定められているものの、正確なところは判明していません。

 

脳の部位でも前頭前野という部位は認知や思考といった脳機能の中でも高次な機能を主導しますが、ADHDではその部分になにがしかの問題が発生しているということもあります。しかしこの部位については、精神科に関わる疾患のほとんどで影響を受ける場所であり、それだけをもってADHDのことを語ることはできない、といった指摘があることもまた事実です。

 

一方、広汎性発達障害と脳の関連については、アメリカなどで行われている解剖研究などにより、脳の特定の部位に異常が見られるということが突き止められています。

 

広汎性発達障害の患者は、扁桃体、海馬、小脳といった部分について神経細胞の大きさが小さかったり、神経から神経に情報を伝達する軸索という部位の枝分かれ度合いが少ないといった特徴があるのです。

 

扁桃体は食欲、性欲、怒り、不安といった感情の動きに関わる部分です。また、海馬は扁桃体と深く関連している他、記憶において中心的な役割を果たしています。また小脳は以前は運動機能をコントロールしている部位とみられていたのですが、近年になって注意や認知といったメカニズムにも関連があることが分かってきた場所です。

 

現段階では、広汎性発達障害という病気は、これら扁桃体や小脳といった部位とかなり関連しているのではないかと考えられています。しかし広汎性発達障害がどういった形で発症に至るのかといったようなことはまだ判明していません。

 

このように、発達障害であることと「キレる」こととは、いまだ医学的な関連性を見いだせる段階に至っていないのが現状なのです。

 

(補足)ADHDの種別とその特徴

ADHDは大きく3つの種類に分けることができます。1つは集中力に欠ける不注意優勢型であり、もう1つはじっとしていられなかったり順番を待つのが苦手と言った多動性・衝動性優勢型であり、最後はそれらの混合型です。数的には最後の混合型の患者が最も多いとされています。

 

このうち、衝動性はごく幼い時期から目に付いてきますが、多動性は小学生ぐらいから、不注意は中学生ぐらいから目立ってくることが多いといいます。そして多動性は年を取るにつれて減ってきますが、不注意は年齢が上がってもわりあい長く続くとされています。

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