傷の治し方は、乾かす派?湿らす派?
傷ができたら乾かして、かさぶたにして治すのが良い。幼いころ、こう聞かされませんでしたか?しかしこれは果たして本当なのでしょうか。
傷の治し方、今の主流は…
「すり傷を作っても、乾かしておけばかさぶたになって治る」と昔はよく言われました。実はこのやり方では治りが遅く、治っても傷跡として残ってしまいます。今は、乾かすよりもむしろ湿らせて治す方が主流となっています。この方法は「モイストヒーリング」とか「湿潤療法」などと呼ばれています。
傷ができるとその部分から滲出液(しんしゅつえき)と呼ばれる体液がにじみ出てきます。この滲出液には、傷をスピーディーに、しかも傷跡を残さないように治す働きがあります。というのも、傷によって壊れた線維芽細胞(コラーゲンを作る働きをする)や血管内皮細胞(毛細血管を作る働きをする)などを修復したり再生させたりする成分が、滲出液の中に含まれているからです。
そんな大切な浸出液を乾燥させないよう傷口には絆創膏を貼るなどして蓋をし、傷口がいつも湿った状態になるようにしましょう。そうすれば、滲出液に浸ったところで細胞が新しくできあがって皮膚の再生が円滑に行われ、よりスピーディーに、しかも跡をできるだけ残さずに傷が治ります。
それに、絆創膏などでふさがれているため、傷口にばい菌が入ることも防ぐことができます。また、傷口が乾燥するとそのことが神経を刺激して痛みを増長させるのですが、絆創膏で乾燥を防いでもいるので、痛みが少しおさまるという良さもあります。
かさぶたができると治るというイメージがあるかもしれませんが、それはちょっと違います。かさぶたとはそもそも何かというと、滲出液が乾燥によって固まったものです。かさぶたと一緒に、かさぶたの下にある細胞までもが乾燥し死んでしまいます。そしてかさぶたがあることで傷の部分の細胞が再び作られるのが遅れ、傷跡も残ってしまうというわけです。
傷を治すための正しい処置
傷ができてしまったら、以下の方法で正しく処置しましょう。傷が早く治るだけでなく、傷跡になりにくくきれいに治ります。
水道の水を傷口に流し、小さな石やごみ、ばい菌などが残らないよう、きれいに洗います。このような異物などが傷口についたままになっていると、身体の免疫システムが働いて、傷を治す作業がスムーズに進まなくなります。砂などは細かすぎて水では流せない場合がありまが、その時は綿棒やガーゼなどを上手に使って除いてください。
洗った後に消毒をしたいときは少量を使うようにし、その後すぐにまた水で洗い流しましょう。なぜなら、線維芽細胞や血管内皮細胞を壊してしまう消毒剤もあり、それを使うと傷の回復がかえって遅れてしまうからです。
傷口をきれいに洗ったら、絆創膏を貼りましょう。その後こまめに傷の様子を観察してください。膿んだり腫れたり、赤くなっていないかどうかを調べます。もしそのような異常があった時は、もういちど水道水でしっかりと洗います。
その後は消毒剤を少量使ったり、抗生物質入りの塗り薬を塗ったりすることもありますが、ここは医師によっても意見が分かれるところで、水道水で洗うだけにとどめたほうが早く傷が治るという意見もあります。
絆創膏を替えるタイミングは、絆創膏が濡れてしまったり汚れてしまったりしたときです。再度傷口やその周辺を水道水で洗い流し、きれいな絆創膏と取り換えてください。
更新日:2019/11/29|公開日:2017/06/15|タグ:傷