増える子供の喘息
近年、喘息を患う子供が増えてきています。喘息は発作が起きるとたいへん苦しく、繰り返して症状が発生し、場合によっては死亡してしまうこともあるため軽く考えていい病気ではありません。子供と喘息の関係について少し考えていきましょう。
子供たちの喘息の状況
文科省で100万人以上を対象に行われている「学校保健統計調査」では、喘息を患っている子供について調査が行われています。学校保健統計調査によると、喘息の子供の割合は、昭和23年以降年々上昇傾向にあり、平成22年~23年度に過去最高を更新して、その後、幼稚園児・小学生は減少傾向、中高生は横ばい傾向となっています。
平成28年度では、幼稚園児の2.3%、小学生の3.69%、中学生の2.9%、高校生の1.91%が喘息を発症しています。
20年前の統計と比べた場合には、幼小中高とも2倍以上になっています。文科省では、大気汚染や子供のストレス、食習慣の変化などが、複合的に影響し合った結果でこうした事態が発生しているとみています。
喘息は自動車やたばこ、工場排煙といった大気汚染要素や、寒さ、運動、ストレスなどにより過剰反応が起き、気道が狭くなったり閉塞してしまうことによって発生します。喘鳴、息切れ、咳、痰といった症状があらわれますが、発作の際にはこうした症状が激しくなり、呼吸困難、過呼吸、酸欠、体力消耗などが発生し、死亡することもあります。
こうした発作が起きなくなり治ったと思っていても、気道で起きている炎症が静まっていない場合には、また発作が発生してしまいます。喘息は炎症が慢性化し気道が狭くなってくればくるほど症状が悪化するため、早めに医師の診察を受けることが大事になってきます。
喘息の治療に際しては、抗アレルギー剤や吸入ステロイド剤を処方されることが多くなります。
小児喘息で入院する子供は減っている
小児喘息の場合、その多くはダニによって起きるアレルギー反応のために起きていると考えられています。人間の体にあり異物から体を守る免疫システムが、ダニに対して過剰に反応してしまうことによって起きるのです。
免疫システムは、体内に入った異物(この場合はダニ)を攻撃する際に「IgE」と呼ばれる抗体を作ります。この抗体が気管支の粘膜にある肥満細胞にくっつき、さらにそこにダニがくっつくと、細胞からヒスタミンやロイコトリエンといった生理活性物質が出ます。それによって気管支の筋肉が収縮してしまい、気道が狭くなったり閉塞したりするのです。こうした反応を即時型過敏といいます。
この即時型過敏の他に、気道付近で炎症が起きるようなメカニズムの方が、近年では重要視されています。たとえば慢性気道炎症(肥満細胞からサイトカインが出ることによりそこに白血球や血小板が集まってしまい、炎症を引き起こすもの)であったり、アレルゲンが体に入ったことに白血球の一種であるTリンパ球が過剰反応し、それで炎症が起きてしまうといったものです。
小児喘息については、その9割までが6歳までに発症、また1歳~3歳で6~7割までが発症に至るとされています。
小児喘息の患者数は昔と比べると増加傾向にありますが、近年では抗アレルギー剤や吸入ステロイド剤が処方されるようになったため、入院にまで至ってしまうケースは著しく少なくなっています。こうした薬剤による治療を行えば、完治までは見込めないものの喘息発作をある程度制御できるようになるため、治療を開始してから数ヶ月程度で発作前の生活に戻ることができるようになっています。
小児喘息だからとあきらめないで
医療機関の中には、小児喘息を患う子供を持つ親を対象にした勉強会を開催しているようなところがあります。小児喘息の治療には、その子供が置かれている周囲の環境を改善することが必要で、そのためにはどうしても親が積極的に協力することが必要だからです。
こうした親に対する啓発活動の中で、重要なことの1つに親同士のコミュニケーションが挙げられます。中には我が子が喘息になってしまったことで、不幸のどん底にいるような気持ちになってしまう親もいるため、自分たちだけがたいへんなわけではないということを知ることで、気持ちを軽くすることができます。
また、子供が喘息を持っていることであきらめてしまうのではなく、何にでも挑戦してみるようにと指導するケースもあります。喘息の子供は確かにハンデを抱えているのかもしれませんが、そのぶん我慢強く、また努力家でもある場合もあります。
子供のころに小児喘息を患っていたというトップアスリートは意外に多く、中にはスピードスケートで金メダルを取った清水宏保選手や、水泳で銅メダルを取った寺川綾選手などもいます。こうした選手はもともと喘息対策としてスポーツをやり始め、そこまでの成績を収めるに至ったのだと言います。
喘息の治療については、吸入混濁器(吸入器に喘息用の薬剤を入れ、ミスト状になった薬剤を吸入するもの)という治療薬が認可されるなど、治療法の面でも進展が見られています。しかし喘息については何よりも気管支の炎症が慢性化しないように気をつけることが大切で、その点は治療法が変わっても変わらないという認識を持つことが非常に大事です。
喘息の吸入薬
喘息の薬としては、気管支の炎症を起こしている部分に直接効果を及ぼせる吸入ステロイド剤が処方されます。子供でも使うことが可能なものとしては、プロピオン酸ベクロメタゾン(BDP)とフルチカゾン(FP)があります。このうちフルチカゾンを使用する場合にはプロピオン酸ベクロメタゾンの2倍の効き目がありますので使用量を半分にします。
ステロイド剤の吸入の際にはそれを補助してくれるスペーサーと呼ばれる器具を用います。使用回数は朝と夕方の1日2回となります。なお、吸入ステロイド剤には副作用はありません。
また、アレルギー症状を改善してくれるインタールや気管支を拡張する効果のあるベネトリンないしペプチンといった薬剤を混ぜて吸い込むやり方もありますが、症状の度合いに合わせた治療計画を作って吸入を行うことが必要です。
更新日:2019/11/29|公開日:2017/07/07|タグ:喘息