子供に対する正しい愛情のかけ方
親であればだれでも、我が子に対して愛情を持っているはずです。しかし、その愛情のかけ方が間違っている場合も多々あります。あなたは大丈夫ですか?
手をかけすぎるのは真の愛情ではない
現代日本はとても豊かな国です。身の回りは物にあふれ、たいていのものは手に入ります。それは幸せなことですが、貧しかった時代に比べ、我慢や節約の精神をもちにくくなっているとも言えます。気が向いたときに少しバイトすれば、どうにか生きていけるような世の中では、頑張る気持ちを持つのも難しいかもしれません。
昔はたいていの家に、両親以外にも祖父母やきょうだいがいました。家を出ても、多くの近所の人や友達がいました。昔の子供たちは、親以外のいろいろな人から、様々なことを教わることができたというわけです。
しかし今は核家族化が進み、昔ほど近所づきあいが濃いものではなくなってきているため、子供が関わる人の数が減ってきています。親にとっては、子育てを助けてくれる周りの人が減り、子育ての全ての責任を負っているような気持ちになって、身体的にも精神的にも大きな負担を抱えるようになりました。
このような事情と、少子化の問題とが重なって、子供に手をかけすぎる親が増えてきているようです。親が決めたレール通りに子供を進ませようとしているとも言えます。子供に対する愛情ゆえの行動ではありますが、残念ながら愛情のかけ方としては正しくありません。
子供への愛情だとして、子供が欲しがったらなんでも買ってやり、たくさんの習い事や塾に通わせるなど、あれやこれやと手厚く世話をしてやっていませんか?これは親の愛情の正しい表し方ではありません。
自分の力でやれることであれば手出しをせずにやらせたり、欲しいものを我慢する体験をさせたり、自分がどう動くべきかを子供自身に判断させたりする。親はそばで見守り、時には助言を与える。本当の意味での親の愛情というのは、このような形で表されるものなのです。
「甘えさせ」は大事、「甘やかし」はNG
昔に比べ、厳しい親が減ってきているようです。だからと言って今の親たちが優しいのかというとそうではなく、子供に甘いと言ったほうが正しいでしょう。「子供が親に甘えるのはいけないことなの?」と思う人もいるかもしれませんが、「甘えさせ」と「甘やかし」は全く違うものです。
「甘えさせ」は十分にして良いものです。どんなことが「甘えさせ」なのかというと、例えば、子供が抱っこを求めてきたときには「もう大きいんだからやめなさい」とか「今は忙しいから駄目よ」などと言って突き放さず、抱きしめてあげること。
子供が親に何か話そうとしてきたときは、忙しかったとしてもひとまず手を休めて、しっかりと子供の話を聞く。これらは「甘えさせ」です。
少し前に、抱き癖がつくから子供が求めてきてもすぐに抱っこはしない方が良いなどと言われたこともありましたが、今は違います。子供が親を必要としている時にはしっかりとその気持ちを受け止めて甘えさせる。それが将来の自立につながるとされています。
とは言え、就学前の子供ならはっきりと言葉にして抱っこを求めてきますが、小学生にもなると「抱っこして」というのが恥ずかしくなってしまう子供もいるでしょう。それでも何とはなしに親のそばにいたがったり、会話を求めてきたりする様子が見られることがあるものです。
子供のそんなサインを見逃さず、話を聞きながら頭をなでたり肩をポンポンと叩いたりして、たくさんスキンシップをとりましょう。「甘えさせすぎかしら」などと思う必要はありません。
抱きしめる時間は少しでも、あるいは話を聞く時間が少しでも、求めた時すぐに親に受け止めてもらえれば、子供は「自分は親に愛されている」と思えます。子供にとっては、愛情を言葉で表してもらうのと同等の価値があるのです。
ですから、幼い頃はもちろんのこと、小学生になってからも、子供が甘えてきたり、甘えたそうだなと思ったりしたら、その気持ちをしっかりと受け止めて甘えさせてあげましょう。「もう赤ちゃんじゃないんだから」なんて言わないでくださいね。抱きしめてあげたり、目をしっかりと見つめて話を聞いてあげたりしましょう。
たっぷりと甘えることができれば子供は満足し、心が穏やかになるはずです。心が穏やかになれば意欲をもつことができ、また頑張れます。
子供が甘えてきてもそれに気付けなかったり受け入れられなかったりして、愛情をもので表してしまった時、それは「甘やかし」になります。例えば子供が抱っこを求めてきたり話しかけてきたときに、家事で忙しくしていると「忙しいの、後にして」と断ってしまい、「お菓子あげるからおとなしくしていて」とか「テレビをつけてあげるから見ていて」などと、ものでごまかしてしまう人がいます。これは「甘やかし」です。
子供は抱きしめてもらいたかったり話を聞いてもらいたかったりしたのに、ものを与えられてしまうとごまかされてしまい、本当に欲しかった愛情はどんなものだったのか忘れてしまいます。
だから、ものをいくら与えられても満足感が得られず、「もっとほしい、もっともっと」と思うようになってしまいます。そのうち、親が物を与えなくなると暴力をふるって手に入れようとしたり、誰かのものを盗んでしまったりするようになるケースもあるのです。
抱きしめたり話を聞いたりすることで表される愛情が欲しかったのに、それが得られず代わりにものを与えられ続けてしまうと、子供は自己中心的な人間に育ってしまいます。どんなに高価なものでも、どんなにたくさんのものでも、親の真の愛情の代わりにはならず、親の愛情を確認できないまま成長してしまうからです。
子供に真の愛情の示し方ができず、ものを与え続けている親は、それが子供への愛情だと思っているし、自分は子供を愛していると思っています。しかし子供にしてみれば、そのやり方では親の愛情を感じることができないことが多々あります。このような心の行き違いから、親子間の信頼関係が揺らぎ、様々な問題が引き起こされるのです。
親はもちろん、愛情を持っているからこそたくさんのものを与えているのでしょうけれど、それでは子供は心の寂しさを埋めることができません。心が寂しい子供には、心で愛情を示してあげましょう。そうすれば、親の愛情がしっかりと子供に伝わります。
「甘やかし」にはもう一つのタイプがあります。それは、親が子供の言うことになんでも従うタイプです。子供が観たいと言ったら夜遅くになってもテレビを観させる。ゲームをしたがったら、いつでも何時間でもやらせる。このように子供がしたいと思ったことを何でもかなえようとするのは「甘やかし」であり、これもやはり正しい愛情の表し方とは言えません。
子供の言うことで、間違いだったりわがままだったりした時には、きっぱりと拒否し、必要に応じてしっかりと叱らなければなりません。普段からスキンシップをたっぷりとり、子供の気持ちに共感して良い親子関係を築けていれば、例え厳しく叱ったとしても子供はそれを親の愛情として受け取ることができます。
子供に対する正しい愛情のかけ方とは、子供の気持ちをしっかり受け止め、必要な時にはきちんと叱るということなのです。
更新日:2019/11/29|公開日:2017/09/01|タグ:愛情