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繊細な思春期男子の心の変化と成長

思春期の男子

大人である私たちも経験してきたもの、それが「思春期」です。男の子の思春期はお母さんにとって、よく分からない事だらけだと思います。だって、お母さんとは性別が違いますから、分からなくて当然です。そんな男子の思春期は、どのように見守ってあげたらいいのか見ていきましょう。

 

A君の気付き・・・それが思春期

あるやさしいママとやさしいパパのところに、とっても可愛い男の子、A君が生まれました。A君はママとパパ、両方にとっても大事に育てられましたが、いつもママにベッタリで「ママがいれば大丈夫」そう思っていました。

 

一歳を過ぎたA君は「あんよ」が出来るようになり、嬉しくて楽しくて大好きなママの事も忘れてどんどんヨチヨチ歩いて行ってしまいます。ママはA君から目が離せなくなり、そのうちに時々パパやママに叱られるようになりました。

 

保育園に入ると「イヤ」という言葉も覚えてきて、イヤイヤと言うようになりました。そうするとまた叱られるのですが、パパやママの言うことをちゃんと聞いていれば「いい子ね」と褒めてくれます。それを何度も繰り返し、A君はパパやママの言うことを聞くとパパやママが笑顔になると言うことを発見しました。

 

小学校に入ると授業がありますから、長い時間座っていなければいけません。A君は「そういうものなんだ」と思ってちゃんと座っていました。宿題も「そういうものなんだ」と思って、ちゃんと出された次の日には先生に提出していました。

 

でも、お友達の中には授業中に大人しく座っていられない子や宿題をやってこない子たちもいました。A君にはどうしてお友達がそんなことをするのか全く分かりませんでした。

 

中学生になったA君は、ときどきちょっと自分でも説明できない気分になる時が出てきました。ママの言うことに「ん?」と思ってしまうことが増えたのです。今まではママの言う通りにしてきましたが、最近はママの言うことに対して「なんで?」「どうして?」と考えるようになりました。

 

だんだんママに学校や友だちの話もしなくなり、ママから聞かれても何だかそっけない態度をとってしまいます。ママは今までのA君とはまるで別人ですから心配で心配で、余計にあれこれ質問攻めにしてしまいますが、これがまたA君からすれば逆効果。

 

そのうちに「うっせぇババァ」「知らねーよ」なんて大きな声を出してしまうようになり、そんな大きな声を出すつもりじゃなかったのに、とうまく伝えられず悔しくて壁をドンっと叩いたら壁に穴が空いてしまいました。

 

今のA君のお話。とうとうA君に思春期がやってきたのです。とても喜ばしい事ですよ。おめでとうございます。健全に成長しています。

 

思春期は今までの仮面を剥がす時期

ママの言うことに対して疑問を持つようになったA君。その気付きはターニングポイントです。今まではA君にとってママは絶対的な存在で、それはつまりママの価値観がそのままA君の価値観だったのです。

 

それが思春期になり、なんとなく自分の価値観が生まれてきます。まだ中学生ですから、しっかりとした価値観ではありません。しかし、しっかりとした価値観でなくても、自分の中に自分なりの価値観を見出すことによって親の価値観と照らし合わせるようになります。

 

そうなると、今までの自分の価値観が親の価値観であった事に気がつきます。なんとも説明のつかないくらい不思議な気持ちです。なんだか今まで自分は仮面を被っていたような気分です。今度は本当の自分を確かめようと、その仮面を剥がそうともがきます。それが思春期です。

 

本当の自分、なんて言ってもまだよく分かりません。でも、今までの自分は本当の自分じゃなかったということは分かります。じゃ、どうすればいいのか。分かりません。とりあえず、いろんな事を否定してみたり、いろいろな事に首を突っ込んでみたりします。

 

うまくいかなくて、何が本当の自分なのか分からなくて、イライラ、悶々とする日々です。しかし、こうして色々な経験、体験を通して自分の価値観を自覚していきます。思春期の子供たちは、自分探しの第一歩に直面しているわけです。そして、同時に「自分」が形成されていくのです。

 

思春期の心の成長

そうは言っても、やはりそこはまだまだ子供です。お母さんからすると「私の言うことを聞いていればいいものを」と思うことが山のようにあるでしょう。そして、残念ながらだいたいは親の予想通りに失敗したりします。意味のないように思える事にこだわったりもします。その無謀な挑戦、失敗を繰り返して成長していくのです。

 

女の子と違い、男の子は失敗する事に意味があります。自分で挑戦したけれど失敗した、という事実が大切なのです。経験が全てという事です。思春期男子は常にやってみたいことがたくさんあり、大忙しです。

 

お母さんからしてみると、うちの子はなんてお馬鹿な子なんだろう、と思いがちですが、お馬鹿な子ではなく、しっかりと健全に成長している証拠です。男の子はだいたい側から見るとお馬鹿に思えるような実験を、真剣に大真面目にやっているのです。

 

微笑ましい実験をしているかと思いきや、親へ反抗してくることが増えるのもこの頃からです。反抗も彼らの実験の一つです。親がどんな反応をするのか、ケースバイケースで試しているのです。その親の反応次第で親を反面教師とするのか、自分の手本としていくのか考えるでしょう。

 

また、この時期には完璧だった両親の違う面も見えてしまうようになります。「好き嫌いせずに何でも食べなさい」と言う割には親の好き嫌いが多かったり、「インターネットをするなら時間を決めてしない」と言うくせに親は何時間もダラダラとネットサーフィンをしていたり、等。

 

なぜか今まで見えなかった親のダメなところばかりが目につきます。時には親に対して見下したような態度やセリフを吐く事もあるでしょう。その指摘が的確であればあるほど、親も余計に腹が立ってしまいます。

 

しかし、子供の言う通りなら、しょうがありません。「親に向かって」なんて言葉を使ってしまうと、子供は心を開かなくなってしまいます。素直に事実であればそれを認めてしまいましょう。「そうだね、言う通りだよ。ありがとう、気をつけるようにするね」なんて言われると、子供ももう言うことはありませんし、決してケンカにはなりません。

 

思春期は距離感が大事

思春期男子を扱うには距離感が大切です。思春期真っ最中の中高生を見ていると、「あまのじゃく」過ぎておかしくなってしまう事はありませんか。よくあるのが「勉強しなさい」「宿題しなさい」と言われると、「やる気がなくなった」と言うやつです。

 

「せっかく今やろうとしていたのに、やる気がなくなった」なんて一丁前なことを言ったりします。本当かも知れませんが、自分が行動に移す前に親に言われてしまうと、親の指示に従ったみたいで、なんだか嫌なのです。親の言うことを聞いた、と思われるのが嫌なんです。

 

これぞ「あまのじゃく」。正解は「A」だと分かっていても、親が「A」と言えば、なんだか「B」と言いたくなるお年頃なのです。そんな「あまのじゃく」の日々も、ニキビのように放っておけば、そのうちになくなります。執拗に触ってニキビ跡のように跡にならないようにしましょう。

 

しかし、何でも放っておいていいわけではありません。自分のモノサシを使って何にでもチャレンジしたい年頃ですが、まだ未成年ですから何かあれば親の承認は必須です。ニキビのように放っておいていい事なのか、本人が真剣に考えている事なのか見分けなければいけません。

 

親から見れば意味の分からない事でも、本人はいたって真剣だったりもします。本人が真剣に言ってきているのであれば、親もそこは真剣に対応する必要があります。子供と真剣に向き合い、本人の話を聞いて見ましょう。納得できるくらいの熱量を持って話をしているのであれば、時には「分かった、好きなようにやって見なさい」と声をかけましょう。

 

「自分を認めてくれた、話を聞いてくれた」という思いは、大人になってからも忘れません。放置しておいた方がいい時期か、真剣に向かい合う時期か、親は常に子供を見て判断して行かないといけません。「放任=子供を見ていない」という事ではないのです。

 

時には子供の目の前に立ちはだかり、時には優しい大きな心で見守り、柔軟にその距離を縮めたり離したりして適度に子供との距離を保ちましょう。ママが常に子供の味方で、パパは常に子供の壁となる、というように夫婦で役割を決めるというのも一つの方法です。

 

友人の支えなしには乗り越えられない?!

思春期は自分でも自分が分からなくなる時期です。そして、家に帰っても家族とぶつかることが多い時期です。そんな時に支えとなるのが「友だち」の存在です。何か分からないけれどモヤモヤする時に、同じような状況の友人たちとは何でも共有しあえる、かけがえのない存在となります。

 

男子でも中高生たちが友人たちと群れるのは、自分の気持ちを理解してくれる仲間だからです。同じような境遇にいるのですから自然な事と言えます。時にはその仲間が増えて、集団になる事もあります。そうすると大人たちはいい顔をしません。

 

集団になると目立ちます。ゴミ拾いでもするなら話は別ですが、ついつい夜遅くまでコンビニの前でたむろし話し込んでしまい、ついつい話が盛り上がり、声が大きくなってしまったりすると、お巡りさんが来てしまったり。

 

そんな時、「友人を選べ」「友人の影響か」なんて言われようもんなら大激怒です。友だちの悪口を言われるのは一番嫌い、自分が悪く言われているような気持ちにすらなります。思春期男子には間違っても友人関係について口を出さない事です。

 

思春期には友人同士で互いの個性を認めながら、思春期独特のモヤモヤを共有し、深くお互いの今後の自己形成に影響していきます。ずっと仲のいい親友、大切な友だち、が中高生時代からの友人ということが多いのはこのためです。

 

友人なしでは乗り越えられない思春期ですが、友人とだけ時間を過ごせばいいと言うものでもありません。思春期にやってくる「反抗期」は、「ロールモデル(憧れるような存在の大人)」と出会う事でスムーズに終息するといいます。

 

ロールモデルは親以外の大人、学校の先生でもない、自分に利害関係のない大人です。そういう大人を見て、憧れを抱き、自分の進むべき道や目標を見つけることができたなら、確かに迷いは消えます。最近はご近所との付き合いも減り、昔に比べるとそういう利害関係のない大人たちとコミュニケーションをとる機会は減って来ました。

 

最近、反抗期が長期化しているという背景には近所付合いが希薄になって来ている事も一つの要因かも知れません。大人でなくても、大学生のお兄さんたちとの交流できるような機会があれば積極的に参加させましょう。もし、おませな事を言い出したらロールモデルが見つかったのかもしれません。

 

思春期のSOS〜羽化するまで

大人たちから見れば不可解な行動も、思春期男子にとっては必要なことですが、過度に問題行動を起こすような場合、思春期男子からのSOSという場合もあります。色々な実験をする時期ですが、あまりに危険な実験は親が体を張ってでも止めなければいけません。

 

かと言って、子供の反抗期に親が過度に反応してしまい「押さえつけられている」と感じてしまうと、それが原因となり「問題行動=SOSを発信する」ことになりますので注意が必要です。素直に自分の意見を言えない年頃ですので、問題行動を起こすことで大人たちに訴えているのです。

 

ある学校の先生は思春期男子のことを、サナギに例えました。サナギの中では羽化に向けて体の組織がとてつもなく大きく変化し、自身を再構築します。それと同じことが思春期男子には起こっているのです。サナギから羽化し綺麗なチョウになろうと、男子たちも、もがいていますが、外から見ていると全く分かりません。

 

そっと見守っていた方が、なるべき姿になって出て来ます。何もしなくたって勝手に羽化して出て来ますから、あまりその最中に突かず、騒がず、そっとその日を待っていた方が健康な状態で羽化できるでしょう。

 

親の望むような姿ではないかもしれませんが、それがその子のなるべき姿だったのです。だいたいにして、親の望むようにはならないものです。しかし、しっかりと羽化して出て来た彼らを受け止めてあげましょう。

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