読書感想文を書くための読み方と書き方
作文が苦手、文章を書くのが苦手、本を読むのがとにかく嫌!などなど、読書感想文を書くのがつらくなる理由は色々あるでしょう。中でも困るのは、本を読むには読んだけれど、何を書いたらいいのか分からない、という悩みです。
せっかく読んだのに、そこから先に進めない、などというもったいないことにならないように、まずは読む前、読む時にちょっとだけ、いつもと違うことをしてみませんか?
読書感想文を書く時は、まずは本を手に入れる!
当たり前のことを、と思うかもしれませんが、この場合の「手に入れる」は、借りたりせずに「自分の本」を手に入れるということです。本当にどうしようもない事情がある時は仕方がないかも知れませんが、読書感想文を書く時は、やはり図書館で借りただけよりも、自分で買った方が書きやすくなります。
理由はいくつかありますが、第一に、何事も借り物でやるよりは自分のモノで行った方が気持ちの入り方が強くなるということです。
借りてきたものならば、何かあったら返してしまえば無かったことになりますが、自分のモノとなったらそうは行きません。その本は他でもない、自分が感想文を書くためにそこにあるのですから、逃げずにしっかり書き切らねばという覚悟も決まります。
本なんて滅多に買わない、読まないという人には、なおさら買ってほしいと思います。そしてできれば、読み終えた後もそばに置いておくことをおすすめします。読書経験が少なければ少ないほど、宿題としてであっても一度読んだ本というのは貴重です。
大切な思い出になるかも知れないし、もしかすると唯一無二の宝物になるかも知れません。ほんのちょっとだけ借りて、返してしまうだけでは、そんな可能性すら見出すことなく終わってしまいます。
さて、自分の本を手に入れることにしたら、是非ともその時の状況や気持ち、顛末もよく覚えて置いてください。それは読書感想文を構成する重要な要素の一つになり得ます。どう思ってその本を選んだのか、どうやって手に入れたのか、手に入れてどう思ったのか、そういったことの全てが、読書感想文を彩る大切なエピソードとなるのです。
読書感想「文」と思わずに、話すように書いてみる
読書感想文を書くのが苦手、という人の中には、いざ本を読み終えても何も感想がない!と言いだす人が結構いるようです。けれど、本当にそうでしょうか?
いざ文章にするとなると構えてしまうものの、私たちは普段の生活でも、似たようなことをいつもやっているものです。たとえば、前の日に見たドラマや、はまっているゲームの話を友達とすることはありませんか?あのシーンスゴかった、俳優の○○ってやっぱりかっこいい、あの台詞キたよね!などなど、どんなことでも構いません。
簡単に言ってしまえば、友達と話した内容の中でドラマやゲームを本に置き換え、友達に話したことをもう少し掘り下げて文章にしたものが「読書感想文」ということになります。その「本に置き換える」というのが難しいと思われるかも知れませんが、それがそうでもないのです。
ドラマやゲームを見たりしたりしている時、無意識のうちにしていることを、本を読む時にもすれば良いというだけです。それは、後で誰かに(もしくは誰かと)話そう、と考えながら読むこと。ここ、面白いじゃない?この人、どうかしてるよね!など、特定の誰かとの会話を想定しながら読むと良いでしょう。
何かを見たり、聞いたり、読んだりしたのに、何も感じない、思わない人など本当はいません。ただ、忘れてしまっているだけなのです。けれど、誰かに話そう、と思いながら読むと、自然と意識が変わって、思ったことや感じたことが記憶にしっかり残ります。
実際に友達に話してみるのもおすすめです。会話をすることで、記憶はさらに鮮明に、より深いものになるからです。
話した内容をまとめるのが大変!と思うかも知れませんが、大丈夫です。話し上手な人がしばしば文章も上手だったりするように、うまく話ができれば、うまく書くこともできるものです。
友達に話した後は、案外すっきりと考えがまとまっているでしょう。おしゃべりなら任せて!という人ならば、書き方より先に話すことから始めてみるのも良いかも知れません。
書きながら読むと、読書感想文は書きやすくなる
本を読みながら感じる驚きや感情の揺らぎは、大抵の場合、最後のページを閉じた瞬間に半分以上は消えてしまうものです。普通に読む本ならばそれでも良いかもしれませんが、読書感想文を書こうという場合は困ります。そんな時は、その瞬間の気持ちや驚きを、すぐに書いておくと、後から役に立ちます。
やり方は簡単です。読んでいて、この主人公、いいこと言うな、このシーン、素敵だな!と感じた時、これって主人公の転機だよね、と思った時、そこに付箋をつけておくのです。浮かんだ気持ちとページ数を付箋に書き込んでおくのも良いでしょう。
それらは全部、読書感想文を書く上で、重要かつ有効な要素になり得る、いわゆる読書感想文の「ネタ」になるのです。
読書感想文に入れたい「変化」とは
変化とは、文字通り変わっていくことです。読書における「変化」には、大きく分けて二つあります。一つめは、物語の中における登場人物の心情や行動の変化。そしてもう一つは、本そのものが読者(読書感想文の書き手)にもたらす変化です。この二つはどちらも、読書感想文を盛り上げる要素として重要になります。
主人公の成長や変貌は物語そのものの柱となっているものですから、読者の読みとる力を示すためにも重要です。主人公が変わった!と思えたのはどこの部分か、何故主人公は変わったのか、そしてそれについて自分はどう思ったのか。本の中でそういった「変化」に気づいたら、それはメモしておくとよいですね。
次に後者、本そのものが読者にもたらす変化についてです。思っていたような話とは違った!と、本そのものについての見方が変わることもあるでしょう。新しい知識を得たというのも、本そのものがもたらした「変化」の一つです。
けれども、知識などより更に重要な変化は、新たな視点を得たことによってもたらされます。
本を読む時、読者は無意識のうちに、著者や主人公の視点で物事を見ることになります。自分とは違う視点から世界を改めて見た時、以前は見いだせなかった何かを見つけることができたなら、それは重大な「変化」です。これは読書感想文の根幹ともなりうる重要な要素になり得るので、是非とも考えてみたいところです。
また、読書感想文を書く本は、何も初めて読む本でなければいけない訳ではありません。課題図書の中に読んだことのある本があれば、それを選んでみるのも面白いでしょう。念の為に言っておきますが、一度読んだからといって、もう読まなくていい訳ではありませんよ?
もう一度、最初からちゃんと読んでみましょう。以前読んだ時とは違う何かを感じたら、それもまた「変化」の一つです。
読み終えたら、読書感想文を書く前にやるべきこと
本を読み終わってすぐに原稿用紙に向かっても、そう簡単に書き出せるものではないでしょう。やみくもに書き始めて、下書きを何度も書き直すというのは誰にとっても苦痛だし徒労です。まずは、「書きたいと思うこと」を書き出すという作業から始めましょう。
本を読みながら感じたことはもちろん、読み終えてから気づいた「変化」についてなどです。順番など気にせず、ランダムに書き出してみます。書き込みは、そう思った部分の本文とページ数も抜き出しておくと、後から分かりやすいでしょう。付箋にメモしていた場合は、その付箋ごと外して並べてみるのも良いです。
書き出したら、今度は大切だと思う順番にランキングしていきます。読書感想文に書きたいことランキングです。これは結構大変かも知れませんが、大切な作業です。順位の振り方は直感に従って良いでしょう。これはきっと大切だ!とか、ここはどうしても入れたい、など、読んだ時やメモを書いた時の気持ちを思い出しながら、番号を振ってみてください。
読書感想文は3つの柱で構成する
番号が振れたら、上位3位までを見ます。それが、今回の読書感想文に入れる3大要素、ということになります。その3つの要素を3本の柱として、読書感想文を組み立てていきます。
3つにする理由は、それが一番、まとまりやすく、また、ぎりぎりのラインで個性を出せるという数だからです。「個性を出せる」ということは、同じ組み合わせが出にくいということでもあります。
単純な確率の計算に当てはめて考えるには少々無理もありますが、例えば10個の要素を書きだしたとして、2つだけを選んだ場合と3つ選んだ場合とでは、組み合わせの数は倍以上違います。
もちろん、多さだけなら4つ以上選んだ方が多いのですが、3つを4つに増やしても、組み合わせの数は倍増する訳ではありません。ただ、まとめにくくなるというだけです。3という数は、効率的に個性を示すボーダーにある数字であり、マジックナンバーとも呼ばれています。
また、書き出した他の事柄も、全て無駄になるわけではありません。4位以下の中にも、上位3つと関連づけられるものがいくつかあるはずです。それらは、上位3つの柱から枝分かれした要素として、読書感想文の中に取り入れることができます。
だから、ランキングをつけたメモは感想文を書き終えるまで手元において、それをまとめていくようにすると、下書きをいきなり書くよりもずっと書きやすくなります。
たくさん書き出した人ほど、この絞り込みは辛く、難しくなるかも知れません。あれもこれも、と思って悩むかも知れません。けれど、選択と決断は、人生における他のシーンでも繰り返し必要になることです。幸い、読書感想文での選択、決断には絶対の正解はありませんから、今後のための練習と思って、トライしてみてください。
さて、3つの要素を絞り込めたら、構成を考えましょう。3つの要素をどの順番で書いていくかを考えるということです。3位から書いていって、だんだんと盛り上げるか、それとも真ん中に1番書きたいことを持ってきて、山場を作るか…など、色々考えてしまうかも知れませんが、最初に1番書きたいことを持ってくるのが断然書きやすくなります。
これはやってみると分かると思いますが、山場を想定して、そこに向かって少しずつ盛り上げていく、というのは、かなりの技術と忍耐力が必要になるものです。本当に書きたいところまでたどり着く前に、疲れてしまっては意味がありません。
その点、好きなこと、書きたいことから始めると、普段書きなれていない人でも、筆がのりやすく、最後まで書ききる勢いがつきます。これは、感想文以外でも同じことです。
書き出しに困った時の「書き方」
書きたいことも決まり、絞り込みも完了して、あとは3つの柱を軸に原稿用紙を埋めていくだけです。しかし、そこではたと手が止まってしまう人はとても多いものです。原因は大抵、考えすぎだったり意気込み過多だったりするのですが、これを解消するのは、そう難しくはありません。自分に対して、質問をしてみるのです。
例えば、この本を選んだのって、どうしてだったっけ?とか、どこで買ったんだっけ?など、本を読む以前のことでも良いですし、一番好きな登場人物って誰だったかな、など、本の中のことでも良いでしょう。問いに対する答えから書いていくと、不思議とすらすらとペンが進むものです。
この「自問自答」を重ねていく方法は、書き出した後もずっと使えるものです。登場人物の誰が好きだった?で、その答えを書いたら次は、どうして好きだったんだっけ?と自分で自分の答えを掘り下げていくことで、書きたいことの根幹にどんどん近づくことができるからです。
もうひと捻りでワンランク上の読書感想文にする
読書感想文を苦手とする人は、とにかく書いて出せればいい!、それだけで満足と思うでしょう。けれど、どうせ書くなら、この際ワンランク上の読書感想文を目指してみませんか?ちょっとした工夫や注意で、これまでとは違う、少し大人の読書感想文が書けるようになりますよ。ざっと挙げてみると、以下のようなことになります。
あらすじをだらだらと書かない
根本的なことから言えば、読書感想文にはあらすじは不要です。読書感想文の読み手たちは、既にその本について知っている人たちばかりですし、彼らが読みたい、知りたいと思っているのは本に書かれている内容ではなく、その物語が「どう読まれたか」だからです。
従って、あらすじを延々と書いてしまうのは無駄どころか、単なる字数稼ぎと思われてしまう危険性すらあります。
できれば書かない方がよいくらいですが、それでも説明のためにどうしても必要な場合は、部分的に、且つできるだけ短くまとめた方が良いでしょう。時には、カギかっこをつけて本文を引用してしまうのも有りです。もちろん、「短めに」ではありますが。
帯やPOPも見ておこう
本の帯や裏表紙には、出版社がつけたその本のキャッチコピーやあらすじが書かれています。それらはいわば、作者サイドからのメッセージであり、その本が何を描いているのか、何を読んで欲しいのかを知ることができる貴重な情報源です。そのまま写したりするのはいけませんが、最初に読んでおくに越したことはありません。
書店の人がつけたPOPは、その本を読んだ人が書いた世界一短い感想文のようなものです。オススメポイントが端的に書かれていることが多いので、これもまた本を読む上での助けになります。
POPは、帯や裏表紙の内容よりも、個人の感想に近いものですから、もしかすると後々異論がでてくることもあるかも知れません。そんな時は、自分ならどう書くかを考えてみるのも良いでしょう。
ありえない!スゴい!で終わらない
実話であれ小説であれ、本の中の登場人物たちは、普通では考えられないような状況に陥ったり、ありえないような決断を下したり、不可能としか思えないことをやってのけたりするものです。逆にいえば、だからこそ魅力があり、本になっているとも言えます。
ありえない、スゴい、絶対無理!そう思うことは悪くはありません。その驚きも立派な感想ですし、どうせ本の中の出来事と切り捨ててしまうよりはずっとマシです。けれど、そこで終わってしまうのではワンランク上の読書感想文にはなりません。
スゴいのは何故か、絶対無理なことをやり遂げられたのは何故かを分析してみることで、本への理解は更に深まり、読書感想文の内容もより高度なものになります。
ちょっと斜めから物語を見る
物語は大抵、主人公の視点をメインに描かれますし、読者も主人公に感情移入しながら読むものです。普通の感想文ならばそれで十分に書けますが、視点を主人公ではなく別の人物に移してみると、全く違う世界が見えてくることがあります。
主人公のそばにいる友や恋人の視点はもちろん、敵から見た視点でも面白いでしょう。どうしようもない悪として描かれている人物でも、その人の視点から物語を見ると、それまでは見えていなかった一面が見えて、愛着を感じることだってあるでしょう。
現実に取り入れてみる
本を読んで何かを感じ、思い、そして得たと思ったら、それを現実に取り入れてみましょう。知識も考えも、ただ知っている、考えている、というだけではそれだけで終わってしまうものだからです。どんなことでも、些細なことでも構いません。本を読んで得たこと、学んだことは実践してみて欲しいのです。
実践してみてこそ、その本から得た知識や考えは本当の意味で血となり肉となったと言えます。そしてそれは、本の著者やその本を推薦した人たちが何よりも願っていることでもありますから、もしも触れられるならば、読書感想文にも是非、入れておきたいものです。
今はそれでいい、ということもある
あまりにも重いテーマを扱っている本であったり、その時の自分には手に余るような難しい本を選んでしまったりすると、そう簡単には結論の出ないこともあります。
自分が何かを得たとは思っても、何を得たのかがはっきり分からない。何かを知らなければと思うものの、それが何かであるかさえ見えてこない、そんな時は、そのままの思いを書きましょう。
ただ、分からないならば分からないなりに、理解しよう、何かを見出そうとしている過程や気持ちから目を逸らさず、丁寧に書いて欲しいのです。
分からない、難しい、答えが出ない、それだけで終わってしまったら、それはただの理解不足ということになってしまいます。しっかり悩んだ過程をきちんと書いて、自分の胸に楔を打ち込んでおきましょう。これもまた、大きな「変化」なのです。
更新日:2019/11/29|公開日:2017/09/20|タグ:読書感想文