趣味や習いごとは受験勉強にプラスになる
受験が近づいてくると、子供がそれまでやっていた習いごとや趣味をやめさせてしまう親は多いようです。しかし、こういった習いごとや趣味をしていると勉強をする上でも効果が上がるという主張があります。どんな内容なのか少しチェックしてみたいと思います。
広く趣味を持つことで人生を豊かに
毎年日本の平均寿命は延びています。少し前から言われ始めた「人生80年」というものは今ではすっかり普通の光景になり、むしろ90歳代までかくしゃくとして生きている方も普通になってきています。65歳を定年と考えても、第一線から退いた後で20年から30年は人生が続くということになります。
よく、現役時代に忙しそうにしている人に話を聞くと、定年になったらあとは何もせずにゆったりしたい、などという言葉が聞けたりしますが、第一線から退いた後のこの20~30年もの間ほんとうになにもしないでいることは難しいでしょう。一ヶ月二ヶ月ならばともかく、ずっとそんな状態が続けば生きていくのに飽きてしまい、いやになってしまいかねません。
やることがあまりに多すぎてめまいがするほど、という人よりも、なにもやることがない、という状態の人の方が不幸せです。退屈は人間から張り合いや気力を奪い取ってしまい、生きようとする意欲を失わせてしまうからです。
そんなふうにならないために重要になってくるのが趣味的な活動です。趣味に打ち込んでいれば、人生を灰色にしてしまうような退屈さとは無縁でいられます。
しかし、趣味と言ってもいろいろなものがありますが、よくあるパチンコなどのギャンブル系はあまりおすすめできません。自分のあり方を高め、自己表現につながるような趣味であることが理想的です。
どのようなものがいいかというなら、ガーデニングのようなものでもいいでしょうし、スイーツ作りといったものでもいいでしょう。絵画や陶芸、音楽といった芸術的なものでもいいと思います。いずれにしても、こうすればもっとよくなる、もっと上手にするにはどうしたらいいか、といったトライアンドエラーを繰り返すことができ、その活動に自分なりの手法を発見することができれば、自分のあり方を高めていくことができます。
また、充実した人生を送るためにはこうした趣味は複数あったほうがいいものです。幅広い趣味を持っている人は幸福に生きることができます。楽器を演奏したり、絵画や陶芸などに打ち込んだり、草木や土と親しんだりといったように、たくさんの趣味を持つようにすればいいのです。
若いころはがむしゃらに働き、あるいは子育てなどに注力して、そこから退いてから重い腰を上げて趣味を探そうとするような人がいます。そうなってようやく次に打ち込むためのものを探し始めるわけですが、そんな人に話を聞くと、たいていの人がもっと早く始めておけばよかった、と口にします。
どんなことでもそうですが、始めるには遅すぎるということはありません。とはいえ、やはり始めるのが早いほど、技術の上達も進み、得られる楽しみも深くなり、より多くの充足感を得ることができるのもまた確かなことなのです。
こうした点を考えると、子供には早いうちから趣味につながっていくような体験をいろいろと味あわせてあげたいものです。
受験勉強のために習いごとや趣味をやめるのはよくない
最近では、子供が男子か女子かに関わらず、ほとんどの親は子供にお金や時間をかけ、子供がよりよく生きていくために一つでも上のレベルの学校に入れるように心を砕いているかと思います。子供はまだ幼いころから塾通いをして、毎日何時間も勉強しているといったような場合もあるでしょう。
こういったものは時代の流れということもあり、一概に否定できるものではありません。しかし同時に、子供が勉強だけしていればいいかというとそうは言えないのもまた事実です。
せっかく子供に小さなころからいろんな習いごとをさせていたのに、受験の時期にさしかかるとそれをやめさせてしまう親がけっこういます。いよいよ受験が近づいてきたので、子供を勉強に集中させたいとか新たに進学塾に通わせたいからといってそうしてしまうのです。これは、その子供にとって将来的に大きなマイナスにつながります。
どんなに難しい学校を受験しようとしている場合であっても、新しく進学塾に通う必要がある場合であっても、勉強する時間を確保したい場合であっても、小さいころから続けていた習いごとをやめさせるのは得策ではありません。可能な限り費用や時間を捻出して続けさせたほうがいいでしょう。
何故かと言えば、習いごとをしていることで同時に勉強の効率が上がるためです。実際に、最近東京大学に合格した人の多くはピアノやバイオリンなどの楽器を弾くことができるという調査結果もあるぐらいです。どういうことかというと、こうした子供たちは楽器の習いごとを続けながらたいへんな受験勉強を乗り切ったということを意味し、つまり習いごとをしているからといって受験に悪い影響が出ることはないことを示しているといえます。
習いごとは子供の自己表現力を高めてくれるだけでなく、受験によるストレスやプレッシャー、不安といったものを解消させ心のバランスをとってくれるものです。来る日も来る日も知識を詰め込み、一生懸命勉強することで生まれるそうした負のフィードバックを習いごとや趣味によって悪影響を受けないようにできるのです。
受験勉強というととにかくひたすら机に向かい、余計なことに気を取られずに頑張って勉強するのが大事、と考えている人が多いのですが、そういったやり方はむしろ精神的に煮詰まってしまうことが多く、結果として非効率になることが多いものです。
不安に襲われたり、ストレスをためてしまって勉強の効率が上がらないような時、今までやっていた習いごとや趣味で気持ちを切り替え、リフレッシュしてまた勉強に取り組んだ方が結果として学習効率が上がります。
特に女子の場合、魅力あふれる子に育てるためにはみずみずしい感受性を養えるようにしてあげることが必要です。しかし、この感受性というものは割合にもろいもので、ひたすら暗記をするような詰め込み学習をすればするほどどんどん無くなってしまいます。
子供から感受性が失われれば、大きくなってから人間的魅力のない人物ができあがってしまいます。かなり多くのことを知ってはいるが、それを創造的に利用することのできないような人物であったり、有名大学に入ったことだけをよりどころにしているような歪んだプライドの持ち主といったものができあがってしまいかねません。自分の子供をそんなふうにしてしまいたい親は誰もいないと思います。
一流の大学や企業を目指し、一生懸命努力することは間違いではありません。また、そのために、人生の一時期に受験勉強に打ち込む必要性があるのもまたその通りだと思います。しかしそれと引き替えにして子供の持つ感受性や魅力を傷つけ、将来的につまらない人間にしてしまうようなことは何があっても避けるべきでしょう。
こうした理由から、現在子供が習いごとや趣味を楽しんでいるのであれば、受験勉強を理由にその機会を奪うようなことはしないようにするのが良いと考えられます。むしろそうした習いごとや趣味を続けていることで受験勉強の効率が上がり、さらにはその子供が大きくなってから人生を豊かで幸福に送れるようになるのです。