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遊びとおもちゃで子供に身につく力

公園で遊ぶ子供たち

最近は習い事や学習塾に早くから通う子供が多く、遊ぶ時間があるのは幼稚園・保育園・小学校の休み時間だけという子供も多いと聞きます。果たしてそれは子供の成長にとってベストなのでしょうか。また子供自身も楽しいと思えているのでしょうか。今一度遊ぶことの大切さについて一緒に見ていきましょう。

 

自ら考えて動くことの大切さ

現在では、おもちゃといえば、ショッピングモールや百貨店などの店舗で販売されている既製品を指すことが多いかと思います。しかし時代をさかのぼれば、現在のような既に作り上げられたおもちゃは少なく、今そこにあるものをおもちゃにして遊んでいました。

 

例えば、石けりや石投げなど、どこにでもある石を使って遊ぶ。自分たちでルールを作って勝ち負けを決めたり、どのようにすれば石が水面でよく跳ねるかを投げ方や石の形で考えたりする。他にも縄跳びやあやとりなどは、ひもがありさえすればいいですし、砂崩しなどは砂と木の棒さえあればできる遊びです。

 

このように、今そこにあるもので遊ぶことが当たり前だったのが昔の子供の遊びでした。いわば何でもおもちゃにできる想像力があったのです。

 

イギリスの哲学者バートランド・ラッセルは、以下のようなことを述べています。

「受け身の喜びを味わう機会はほんのわずかでよく、一度その喜びを与えられると次から次へと欲するようになる。だから幼い頃の子供の喜びは、子供自身が主体となって考えて動き、自身が今いる環境から作り出さなければいけない。」

 

つまり子供は今いる環境をいかに楽しめるか、自ら考えて動くことが大切で、受け身でかつ与えられてばかりの環境にいては、自ら考えて動くことをしなくなると警鐘を鳴らしています。

 

自ら考えて動く力は、一朝一夕で身につくものではありません。幼い頃から、どうすれば今のこの時間を楽しく過ごせるかと、自分で考え続けることによって身につきます。その力は社会人になり、仕事をすることになった時に大きな差となって現れます。

 

例えば与えられた仕事をこなす人よりも自分で仕事を作り出す人のほうが、社会においては評価されます。社会人になってから、それに気づくのでは遅いかもしれません。自ら考えて動こうとするスタンスは、幼い頃からの積み重ねによって発揮できるのです。

 

遊びに集中することで身につく力

ではどのような教育をすれば、子供は自ら考えて動く力を持つのでしょうか。この力は無理に身につけさせるものではありません。例えば子供の目の前に積み木があったとします。子供は積み木に興味を持ち、積み木を並べたり、組み立てたり、くわえてみたり、積み木どうしで音を立てたりすることでしょう。

 

この「何か遊んでみたくなる」衝動は、人間の根源と言えます。オランダの歴史学者ヨハン・ホイジンガは、「人間とはホモ・ルーデンス(遊ぶ人)である」と言っており、そもそも人間は初めから遊ぶ習性を持っていると説いています。

 

人類の文明が生まれた頃の土器や石器は、土をこねたり石を削ったりして遊んでいるうちに、何かを作ろうという気持ちが芽生え生まれました。前述の積み木で遊ぼうとした子供は、まさに祖先が辿った過程「遊ぶ→何かを作る」を経験しているのです。

 

つまり、遊ぶ力は人間として根源的に身についた感覚なので、その感覚をそのまま生かしてあげるようにしましょう。遊ぶことによって何かを作りたい気持ちは広がりますし、そのような経験を沢山することが、将来的に遊び心を持った大人へと繋がっていきます。

 

この遊び心が新発見や新製品を生み出すことに繋がることもあります。例えばノーベル物理学賞受賞者のリチャード・ファインマンは、子供のころからガレージで電球や壊れたラジオを使って実験するのが好きだったようです。

 

ファインマンにとっては、電球や壊れたラジオを触ることが遊びであり、その遊びから新しい発見を見つけ出し、その積み重ねの結果、ノーベル物理学賞をしました。世界的に有名な企業「アップル社」や「グーグル社」の創始者も、ファインマン的なガレージで実験をする感覚で会社を作りました。

 

ファインマンの自伝にはこんな話が出てきます。ファインマンの母親の友人から壊れたラジオを修理してほしいと言われ、結果ファインマンは直してしまうのですが、この時の心中をこう語っています。

 

「かなりの労力を使ってやっとラジオを直すことができた。でも、もし修理の途中でお母さんの友達に『修理が大変ならもういいわよ』と言われていたら、私はとても怒っていたと思う。なぜなら、私は一度手を付けたら原因が分かるまでやり通さないと気が済まない性格だし、根気があるからだ。今もその根気は失ってはいない」

 

この根気も大人が強制的に養わせるのではなく、子供自らが身につけていくものです。もし子供が何かに興味を持ち、真剣に考えたり、集中して取り組んでいたりしたら、その気持ちを削がないようにしてあげましょう。大人は子供を自分のペースに合わせようとしがちですが、子供の目線に立つことも大事です。

 

時間を忘れ好きなこと・興味の湧いたことに没頭した経験は、子供にとって人生の中で貴重な宝物になることでしょう。

 

おもちゃと言葉がコミュニケーション力を育む

一般的に子供は自分と他人の違いが分からない状態から、徐々に違うものであると認識し始め、自分というものに関心を持ちだします。そして他人でありかつ似たような年代の子供に関心を持ち、自分と他人との違いや関わり方を学びます。

 

特に遊びやおもちゃを介して子供は社会性を育みます。

 

おもちゃを貸し借りする際、黙っておもちゃの取り合いをするより、言葉を使った方が気持ちよく遊べることを知ります。

 

「このおもちゃ貸してくれる?」「うん、いいよ」、「この間おもちゃを貸してくれたから、今度は僕が貸してあげる」「ありがとう。僕も他にも持っているから見せてあげるよ」など、言葉のやりとりが子供同士の繋がりを広げます。

 

発達心理学者のエリク・エリクソンは、同じ年齢の子供同士でコミュニケーションをとることが、子供が社会的な性格を持つには肝要であると述べています。それは、子供同士はもちろんのこと、親子のコミュニケーションにおいても同じことが言えます。

 

子供が何かを欲したら、「うん、使っていいよ」と言葉で伝える。親も「このおもちゃ楽しそうだね。ママも遊びたいんだけど貸してくれる?」と聞いてみる。子供がおもちゃを手渡してくれたら、「ママも遊びたかったんだ!ありがとう。嬉しいな」と言葉で伝える。

 

このようにして、言葉を介した円滑なコミュニケーション方法を子供は覚えるようになります。

 

人間は何らかの集団に属して生きています。子供はまず、保育園や幼稚園というグループに属することから始まります。ここから急激に子供の社会性が求められることになります。

 

そこで大切なのが、みんなと上手につきあっていく力です。この力は前述した円滑なコミュニケーションを繰り返すことで身につきます。

 

コミュニケーション力は、子供が楽しい・嬉しいと思えるから身につくわけで、もし嫌だ・怖いと思ったとしたらどうでしょうか?子供はコミュニケーションをとることを避けるようになるでしょう。

 

しつけの一環として叱って教えることも必要かもしれませんが、子供がポジティブな気持ちになれるコミュニケーションが大切です。

 

また、コミュニケーション力は多くの人と関わることによっても育まれます。少人数のグループよりも、大人数のグループと接する。知っている友達だけとではなく、知らない友達とも交流してみる。

 

中には子供が「嫌だな」「合わないな」と思う時もあるでしょう。それはそれで、その後の良い経験になります。

 

様々な人と付き合うことで、様々なタイプの人がいることを知り、子供なりの対処法を覚えていくことも、子供のコミュニケーション力を伸ばす大切な要素です。

 

遊びは必要な栄養素

人間が健康的に生きていく上で、5大栄養素をバランスよく摂ることが必要なように、子供にとっての遊びは成長に必要な栄養素です。その遊びもバランスよく与えることが大事です。

 

家の中での遊び、外遊び、ゲーム、自転車、鬼ごっこ、サッカーなど様々な遊びを経験させ、遊びという栄養素の健康管理をすることで健康に育ちます。

 

遊びは自分が好きなことを楽しむという意味合いが強いからか、ネガティブな意味に捉えられがちです。私たちが子供の頃、よく親に「遊んでばかりいないで勉強しなさい」と言われた方もいるかと思います。

 

しかし、遊びは成長にとって必要な栄養素です。また遊び道具としてのおもちゃも然りです。おもちゃを介して遊ぶことで、

・「聴く、見る、味わう、触る、嗅ぐ」といった五感が刺激される

・脳がよく働くようになる

・足腰が鍛えられ、結果として体も鍛えられる

・細かい作業ができるようになる

・根気が身につく

・自ら考えて動く積極性を持つ

・柔軟に物事を考えることができ、クリエイティブな力を身につけられる

・会話やコミュニケーションを円滑に進められるようになる

など、子供の成長に大きな影響を与えることが分かります。

 

子供が楽しいと思える遊びの時間は、子供の人生にとって大変貴重な時間だと言えます。

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