骨のためだけではなく、生活習慣病予防のためにカルシウムを摂ろう!
カルシウムは骨を強くするためのものと思っていませんか?もちろんそれは間違いではありません。しかし、カルシウムをきちんと摂らなければならない理由は、骨を強くするためだけではありません。実は、生活習慣病を防ぐためにも、カルシウム摂取はとても大切なのです。
骨のカルシウムが血液中に流れ出す!
体内のカルシウムの99パーセントは骨や歯に蓄積されます。では、残り1パーセントのカルシウムが存在する場所がどこなのか、ご存知でしょうか。それは、血液や細胞の中です。「たった1パーセントなのだから、やはりカルシウムは骨や歯のために必要なのでしょう?」と思われるかもしれません。しかし、この1パーセントのカルシウムがとても大切なのです。
血液で言えば、血液0.1リットル中にカルシウムが10㎎少なくとも8.8㎎含まれていないと、人間の脳や心臓などの臓器の働きに異常をきたし、命も危ぶまれる事態になります。
カルシウムの摂取量が少ないと、血液のカルシウム濃度が低くなります。少し低くなるだけでも人間の脳は「命が危ない」と判断し、副甲状腺ホルモンを分泌させます。すると、骨の中に存在するカルシウムを血液中に流れ出させて、血液の中のカルシウム量を増やして適切な濃度に保ちます。
血液中のカルシウム濃度が低い状態が続いていると、いつも骨からカルシウムが流れ出ていくようになります。すると骨の中のカルシウムが少なくなってスカスカの状態となり、骨はもろくなってしまいます。これが骨粗しょう症です。
カルシウムパラドックスとは?
カルシウムの摂取量が少ないと血中カルシウムが減少するため、カルシウム不足が続けば血中カルシウム濃度がどんどん低くなると思われます。
しかし、カルシウムに関する常識は「カルシウムの摂取が少ないと、血中や血管、脳の中のカルシウム濃度が増えていく」というものです。神戸大学名誉教授・藤田拓男氏の研究によって解明されました。あまりに逆説的な事実のため「カルシウムパラドックス」と呼ばれています。
体内のカルシウム濃度が常に低い状態になっていると、骨の中のカルシウムが血液中にたくさん溶け出していくようになります。血液中のカルシウム濃度が満たされても溶け出し続けるので、血液中のカルシウムが過剰になります。すると、血管や脳、軟骨や免疫細胞などにため込まれていきます。これらは本来、カルシウムが入り込んではいけない場所です。
例えば、血管内にカルシウムがたまりすぎると、血管が固くなる動脈硬化を引き起こします。動脈硬化を起こした血管では、血液はスムーズに通れなくなり、高血圧症や心筋梗塞、脳梗塞につながってしまいます。
また、脳内にカルシウムが入り込んでしまうと、脳細胞はうまく働かなくなります。特に記憶の働きを担う細胞に異変をきたし、認知症やアルツハイマーなどを引き起こしてしまう可能性があります。
溶けだしたカルシウムが軟骨にたまると、軟骨は硬化しすり減っていくようになります。そして骨同士がぶつかり合うようになり、変形性関節症や変形性脊椎症の原因となります。免疫細胞にカルシウムがたまってしまった場合は、免疫のシステムがうまく働かなくなりますので、がん細胞などが増えやすくなってしまいます。
つまり、カルシウムの摂取不足によって、カルシウムパラドックスの状態になると、あらゆる生活習慣病を引き起こすことになってしまいます。
牛乳よりも効率的なカルシウムの摂取方法
カルシウムが不足すると骨や歯が弱くなるだけでなく、生活習慣病にもなりやすくなりますから、普段からカルシウムの摂取を心がけましょう。
厚生労働省が推奨しているカルシウム摂取推奨量は、成人で1日650~800㎎となっています。しかし閉経後の女性はホルモンバランスの関係からカルシウム不足になりやすくなります。また、加齢によって腸からのカルシウム吸収がうまくできなくなります。閉経後の女性や老年期の方は、1日1000㎎はカルシウムを摂るよう心がけてほしいものです。
では、カルシウムを摂取するには、どのような食材を口にするとよいのでしょうか。よく挙がるのが牛乳やチーズなどの乳製品でしょう。確かにこれらにはたくさんのカルシウムが含まれています。
しかし残念なことに、これらのカルシウムは体に吸収されにくいという特徴があります。それに、本来日本人は牛乳を飲む習慣がなかった民族ですから、牛乳を飲むと腹痛などを起こしてしまうといった乳糖不耐症の人も結構います。
牛乳や乳製品がダメなわけではありませんが、カルシウムをより効率的に摂るためには、小魚や藻類などを食生活に積極的に取り入れるとよいでしょう。
カルシウムを多く含む食品 | カルシウム量(mg/100g) |
干しえび | 7100 |
がん漬(カニの塩辛) | 4000 |
田作り | 2500 |
煮干し | 2200 |
つくだ煮 | 1800 |
えんどう豆 | 1300 |
ひじき | 1000 |
乾燥わかめ | 960 |
(出典:文部科学省「日本食品標準成分表2015年版」)
更新日:2019/11/29|公開日:2017/01/30|タグ:カルシウム