いろいろな角度から物事を観て、思考力をアップさせ、コミュニケーションに活用しよう!
今、私達がそれぞれの目で見ている以外の世界を、意識して考えたことがあるでしょうか。他人の感覚、ペットの世界など、ちょっと今の感覚をずらして違う目線で物事を見る事が、思考力を確かな物にして、それがやがてワザ化されていきます。自分の感覚以外の思考をいかに受け入れて、テクニックとして活用するかについて見ていきましょう。
しっかり根を張る「分かる」が思考力アップの鍵
松尾芭蕉は、旅先での何でもないような街並みや情景を「奥の細道」として世に生みだしました。旅先では誰でも日常的な時間から離れて新鮮な気持ちになる事でしょう。旅に出た時は、観光名所などたくさん見て周りたい気持ちは少しおさえて、1つずつ時間をかけて周りましょう。
例えば、京都旅行へ行ったときには、お寺巡りをするプランを立てる人が多いと思います。
お寺の敷地には、素晴らしい日本庭園も広がっています。限られた時間内でお寺と庭園を出来るだけたくさんいて周ろうと急ぎ足で巡ると、どの庭園を見ても違いを意識することが出来なくなり、同じような庭園に見えてきてしまいます。
松尾芭蕉が、もし急いで旅をするような人だったら、奥の細道のような作品は生まれなかったでしょう。足を止める時間を長くとり、じっくりと見ることで、なぜそこにこの石があるのかという理由や苔むす様子などに風情を感じるようになります。こうして、日本庭園との付き合い方を理解するようになると、行く度に新たな発見が体験できます。
日本庭園に限ってではありません。急ぎ足で物事を見て流してしまう人よりも、数は少なくてもじっくりと丁寧に見て理解していく人の方が、人生の質も違ってくると思います。細い根をたくさん張る木よりも、少なくても太くて長いしっかりした根を張る木の方が、倒れにくいし、栄養も効率的に木全体に行きわたる事と同じことです。
1つの事を細かく見ていくことで発見が尽きないようになれば、自然と物事を見る態度に丁寧さが増し、思考を豊かにすることが出来ます。細部にまで目が行くようになれば、もうどれもこれも日本庭園が同じにしか見えないなどとは思わなくなるはずです。
「日本庭園」という枠を外して物事を見ることができる事こそが、思考力がアップしている証であり、思考テクニックとして身についているということにもなります。
他人の目で見る感覚で、角度の違う思考力を身につける
同じ日本庭園を見ていても、人によって感じ方や見方が違います。スケールを大きくして言えば、世の中も1人1人の見方やその姿勢で変わっていきます。私達はどうしても世の中はこういうものだと目に見えている事や、今感じていることを前提にして物事を進めがちです。
地球上に生きるすべての生き物に違う世界が存在している事を意識したことがあるでしょうか。例えば、私達人間よりも優れている犬の聴覚ですが、それを上回るのが猫の聴覚です。人間と同じ空間で、ペットとして飼われている犬や猫が、人間以上の音を聞き分けて過ごしています。さらには、犬が聞こえない音を猫が聞こえているわけです。
電化製品のモーター音など、さほど人間が気にならない程度でも、犬や猫にとっては、もしかしたらうるさいくらいの音なのかもしれません。そう思うと、新しく電化製品を購入する際に、犬や猫の立場になって、できるだけ音が静かな製品を選ぼうかと意識するようになるでしょう。
また、自分自身の身体感覚を少しずらすことでも、今まで感じたことのない物を得ることができます。いつも無意識で履く靴は、どちらの足から履いているかを改めて意識して、逆足から履いてみましょう。その感覚や気持ちを味わうだけでも日常生活がどれだけ無意識の中で成立してしまっているかを考え直す機会を与えてくれます。
このように、自分達が見ている世界とは違う世界を考えてみる事で、思考の質や幅が広がっていきます。しかし、私達はこれをしない為に、どんどん概念を作り上げ、物事をパターン化して見てしまい、思考の幅を狭めています。
あらゆることに関心を持ち、思考を変えるヒントを得る
私達が今見ている世界には方向性があります。子供の事やペットの事に関心のない人には、子供やペットの世界は無いと同じようなものです。また、その逆もあります。結婚し、子供が出来たことで、子供と楽しく遊べる公園やレジャー施設を探したりするようになるのも、子供の世界を意識するようになったからです。
子供が出来るもっと前から、探していた公園や施設はあるはずなのに、その世界に目を向けた途端、情報として入ってくるわけです。これを踏まえてみると、思考力をアップさせるには、あえて関心の無い事に目を向けてみる事も重要であると言えます。
いつも立ち寄る本屋で、行ったことのない書籍コーナーはないでしょうか。もう大人だし、絵本コーナーには用がないと思っているなら、あえて絵本コーナーに行って、タイトルだけでも目を配って見てください。今の悩みを解決するヒントになり、新しいアイディアがひらめくきっかけになるかもしれません。
私達は、「大人だから」「子供だから」「今の自分には関係無い事だから」などと言って、排除してしまっている世界がたくさんあります。また、それだけ意識が凝り固まっているということでもあります。この意識の凝りは、あえて自分がみている世界とは違う方向性の世界に関心を持つことで柔らかくなります。
自分の意識は、方向性が決まったらどこまでも伸びていきます。その束が、自身が作り上げた世界です。世界は広いとは言いながらも、自分の主観から構築されています。また、この主観はこれまで歩んできた経験から来るものであり、「経験は絶対である」という無意識な考え方も含まれています。
経験したことは自分自身であるので、意識しなくても思考回路にはきちんと構築されています。ですから、身構えずに気軽な気持ちで、他者の感覚を柔軟に取り入れていくことが、思考の幅を広げる鍵になります。
しかし、私達は、自分とは違う感覚を体験すると、不快に思い理解することを拒もうとする傾向があります。そこを排除せずに受け入れる事で、新しい世界が広がっていくのを気付かずにすごしています。
自分が面白いとも思わなかった事を、他者が面白いと言っていることに対して、「なぜ、面白いと言っているのか?」を自己分析して、他者の感覚を受け入れていきます。こうすることで、自分の面白いという感覚と、他者の面白いという感覚の差異に気付き、自らの感覚も磨いていくことが出来ます。
自分には無縁と思っていた世界に目を向けて、他者の感覚を受け入れる事で、思考力がアップします。やがてそれをワザとして使いこなせば、年齢や性別問わず、今まで思ってもみなかった世界を知り、新しい自分と出会えます。
しかし、他者の感覚を受け入れるにあたり、間違った解釈をしてしまうと、無意味な物となってしまうので、注意が必要です。
例えば、年配の方で、「最近の若者は○○だ」と最近の若者の後に言葉をつけて話しているのをよく見かけます。自分は年配だけど、若者をちゃんと見て意見を言っていると思っているようですが、これでは、「最近の若者」という思い込みやイメージの中から抜け出せない状態なだけです。中身のある意見とは言えません。
年配の方々から見て、最近の若者と言われる人達が皆同じ扱いにされていることが前提になっているので、後にどんな言葉をつけても、思考的には進歩も見られません。若者1人1人を丁寧に見ていけば、偉いと思えることも発見できると思います。また、自分が若者の頃と時代が違うが故の行動である事も気付くようになります。
マイナスな面ばかりを見れば、その人のマイナスなイメージばかりが引き出されてしまいます。反対に、マイナスな面は一度別枠にして、良い面だけを見つけてあげれば、人間関係も円満になります。また、お互いに気持ちも楽になります。
また、外見だけで判断して、「こんな奴に仕事は任せられない」と思ってしまうような新入社員が入ってきたとしても、外見を別枠にして取り置いてからじっくり1人の人間として見る事が出来る上司が1人でも多くいる会社であれば、新入社員はぐんぐん成長するし、会社の業績や評価にもつながっていくかもしれません。
思考のワザ化で個性豊かな人との付き合いもコントロールできる
外見やイメージをワザ化した思考テクニックで取り置いたとしても、人それぞれの個性に直接作用するものではありません。せっかちでよく慌てる人もいれば、整理整頓が出来ずにだらしないイメージがある人もいます。個性は、相手に言われて変わるものでもありません。
いつもなら、このような個性豊かな方々との人間関係は、かなり気を使ってしまう所ですが、これも思考テクニックでもっと気軽に付き合う事が出来ます。相手に自分の言う事を聞いてもらおうとするのではなく、短所も長所に変えて、こちら側がうまく誘導するのです。
例えば、よく慌てる人に「慌てないで、落ち着いて」と言わず、「機敏なところはとても良い。失敗せずに出来ればもっと良いのに」と伝えてみます。慌てる事を否定せずに、機敏であると言い換えて、短所を長所に変えてしまうのです。すると、言われた相手は、作業に慎重さが生まれ、それが機敏で確実性のある能力へと生まれ変わります。
この思考テクニックをワザとして使えるようになれば、人を見て「あいつは○○だから」という決めつけをしなくなり、相手の思いがけない面を知る事が出来ます。また、さまざまな個性ある人々と付き合っていく中で、他者の感性を知る事になり、自分自身の思考の幅が広がりやすくなる為、お互いにプラスになります。
また、仕事上で何かヒントを得たい時には、同じ会社の同性で同年代と話し合うよりは、異性や年齢が違う人に話をしてみると効果的です。同年代へ話してしまうと、だいたい回答の予想がついてしまうため、ヒントにならない可能性があります。
可能であれば、アンケート調査などを実施する時に、今置かれている環境も、私達とは違う時代背景も違う世界で生きている小学生を対象にしてみると、思わぬ回答が仕事のヒントにつながったりするのでおすすめです。所詮子供の考えたことという思い込みなど持たずに、まっさらな気持ちで子供達の思考を受け入れてみましょう。
一期一会の思考が未来を拓く
今、目の前で起きていることは、明日全く同じことは起きません。毎日定時に目覚めても、昨日の自分より今日の自分の爪や髪の毛が数ミリ伸びていたり、毎日飲む緑茶の茶葉の広がりは毎日同じではありません。私達の思考も同じことです。
ワザ化した思考テクニックは、年齢や性別、環境に捕らわれず、あらゆるジャンルで応用が利きます。それなのに、日々生きている中で「仕方がない」と思うような出来事を時代や環境のせいにして過ごすのは、実にもったいない気がします。
まだまだ景気は良くない日本でも、業績不振から発想の転換により見事に黒字経営に回復した会社も多く存在しているように、仕方がないことやピンチに置かれている状況を、チャンスに変えて、今日という日は二度と来ないのだという意識で何事も見つめてみると、その意識を持った数分後先の未来が変わっていくのです。
更新日:2023/05/31|公開日:2018/01/09|タグ:思考法