子どもの頭がよくなる食生活とは?
食生活は、子どもの健康を守るためにとても重要なことですが、子どもの脳の発達にも大きな意味を持つものです。どのように気をつけていくべきなのか、具体的に見ていきましょう。
子どもの食べ過ぎは脳にも良くない!?
子どもの食については、多くの親御さんの悩みどころでしょう。食べる量が少ない、あるいは多すぎる、嫌いな食べ物が多過ぎる、などなど。その中でも最も注意すべきことは、子どもの食べ過ぎです。
人間の体には、脂肪を作ったり分解したり、体に貯めたりする働きを持つ、脂肪細胞というものがあります。脂肪細胞が多くなりすぎると、肥満を導くことになります。そして肥満はさらに、生活習慣病や心臓の病気を招くのです。
ここで注目していただきたいのは、この脂肪細胞は4~5歳の間に最も数を増やすということが分かっています。その上、この時期に脂肪細胞が体にたくさん存在すると、その後もずっと減らないのです。ですから、幼児期に脂肪細胞を増やしすぎないことは、子どものその後を考えればとても大切だと言えるのです。
また、小さい頃に太りすぎてしまうと、体を動かすのが億劫な子どもになってしまいます。体を動かさないと、脳の中でも前頭前野と呼ばれる部分が働きにくくなる傾向があります。この前頭前野という部分は、人間の脳の中でも特に重要な働きを担っています。人間としての考え方や行動などを支配している部分が、前頭前野なのです。
そんな大事な部分が働かなくなれば、子どもの脳の発達に大きな影響を及ぼすことでしょう。たくさん食べてもその分体を十分動かしていれば問題ないかもしれません。事実、お相撲さんは食べた分だけ激しい運動をしているので、脳の発達に問題が出るということはないのです。
小さいうちに脂肪細胞をたくさん作ってしまうと、その状態は大人になってもずっと続きます。ですから、成長したのちに痩せたいと願ったとしても、なかなか叶わないということになるわけです。幼いうちから食べすぎないよう、親御さんは気をつけてあげてください。
「たくさん食べて大きくなってね」という親心もあるかもしれませんが、だからといって食べさせ過ぎては、子どもが大きくなってからとても困ることになるのです。
子どもの食べ過ぎを防ぐ方法は?
子どもの顔や体の丸みは、とてもかわいいものですね。しかし、子どもの将来を考えたら、食べさせ過ぎないように心がけなければなりません。どこまでなら食べてよいのか、どれくらいから食べ過ぎなのかを、小さな頃から教える必要があるのです。
しかし、食べるのは本来、楽しいものです。「食べるのって楽しいな」とせっかく気付いたのに「もう食べちゃだめよ」と食べ物を取り上げてしまうのは酷なことです。食欲旺盛な子どもには、別のやり方で食べる量をセーブしてあげましょう。
食べることに執着している子どもには、もっと楽しいことを教えてあげるのがおすすめです。食べることよりも楽しそうな遊びに誘えば、自然と食べたい気持ちを忘れて遊びに集中することでしょう。もちろん、親がだらだらといつまでも食べていたり、いつも食べすぎたりしていては、良いお手本になりませんので気をつけてくださいね。
子どもには難しいかもしれませんが、根気よく、食べても良い上限を教えてあげてください。お昼ご飯をいつもよりたくさん食べた時には、夕ご飯は少なめにしておくんだよ、というように。
人間の歴史は、飢餓との戦いだったと言ってもよいでしょう。ですから、食べられる時にお腹いっぱい食べておくというのは、本来ならば自然な姿なのですが、現代はそうも言えない状況にあります。
というのも、今は食べ物にあふれている時代だからです。そんな世の中に住む私たちは、上手に自分の食欲を制御しなければなりません。そうしないと健康を保つことも、脳を健やかに育むことも難しくなってくるからです。正しい食生活は、子どものうちに身に付けさせておくべきなのです。
もちろん、好き嫌いなく食べるようにしつけるのも大切なことです。どんな状況下に置かれても食べ物に困らないよう、嫌いな食べ物を減らしておくに越したことはないのです。どんな震災がいつ襲ってくるかわかりません。避難中は好きなものばかり食べられるわけではないのです。そんな時に何も食べられないのでは困りますね。
そうでなくても、人の家でごちそうになるときに、嫌いなものばかりだから食べないというのは、その家の人に申し訳ないものです。もっと日常的なことを言えば、嫌いなものが多ければ多いほど、学校の給食では本人が毎日困ることになるでしょう。
子どもには、炭水化物や脂質、たんぱく質を過不足なく摂り、野菜と肉・魚類もバランスよく食べることを教えましょう。子どもが嫌いだからと言って全く食卓に乗せないのは考え物です。大人でも嫌いな食べ物はありますが、嫌いでも何とか食べられるくらいにはさせたいものです。
子どもの好き嫌いをなくすのは容易ではありません。しかし、細かく切って好きなものに混ぜたり、周りの家族がおいしそうに食べて見せたりするなど、方法はいろいろありますので、あきらめずに試してください。続けるうちに、驚くほどあっけなく、食べられるようになることもあるのですから。
子どもの脳を育てる栄養素とは
脳の発達という視点から、子どもに是非取らせたい栄養素や食材がいくつかあります。
葉酸
細胞を分裂する時に欠かすことのできない栄養素です。赤ちゃんがお腹にいたころに、葉酸をとるよう勧められたことを思い出す方もいらっしゃるのではないでしょうか(妊娠中の葉酸については「約80%の妊婦さんが間違っていた妊娠と葉酸サプリメントの知識」に詳しく説明していますので参考にしてください)。幼い子どもの体内では、細胞分裂が活発に行われています。ですから、葉酸は特に大切だと言えるのです。
葉酸をたくさん含む食材としては、緑黄色野菜が挙げられます。ホウレン草やブロッコリーなどですね。ぜひ、食卓に積極的にのぼらせてほしい食材です。
DHA・EPA
脳に良いとして話題に上ることが多い栄養素です。これらは神経細胞から神経細胞への情報伝達をサポートしてくれる働きを持っています。脳や神経の病に侵されている人はDHAやEPAが不足しているという研究結果もあるくらいです。DHA・EPAはサバやサンマなどの青魚、マグロの目玉の近くにたくさん存在しています。
アセチルコリン
神経細胞間の情報伝達を行う物質です。人間が何をするときにも、この物質が必要になります。食べ物から摂取したコリンという物質をもとにして、体内でアセチルコリンが合成されます。コリンの1日の必要摂取量は500㎎ほど。とれたての鶏卵(Lサイズ)1個に含まれるコリンは、およそ300㎎です。その他、レバーや肉・魚類、豆や牛乳などにコリンが含まれています。コリンの摂取が減らないよう、注意しましょう。
ウコン
スパイスとしてよく知られているウコンですが、脳の活動を活性化する働きがあるとされています。インドではアルツハイマーにかかる人があまりいないのですが、それはウコンをよく摂取するからではないかという考えもあります。
脳に良い栄養素や食材、物質を知って、子どもの食事作りに役立ててみてください。
脳科学の視点から見たおすすめおやつはこれ!
脂質の摂りすぎは良くないということは、多くの人が知っていることでしょう。しかし脂質の全てが悪いわけではありません。摂りすぎないようにすべきなのは、トランス脂肪酸というものです。これを毎日たくさん摂っていると、体内の悪玉コレステロールが増加し、逆に善玉コレステロールは減少していくのです。
トランス脂肪酸がすぐに体に悪影響をもたらすわけではありませんが、小さいうちから摂り続けていると、老いるに従って動脈硬化や認知症を引き起こす可能性が高まってくるのです。
ですが、悪いことにこのトランス脂肪酸は、マーガリン(ファットスプレットと表示があるものも含む)やショートニングに多く含まれており、これらは子どもが大好きなパンや、ケーキ、クッキー、ドーナツなどの洋菓子によく使われるのです。
これらの食品を食べる機会の多いアメリカでは、特に摂りすぎないよう注意が呼びかけられています。日本人はアメリカ人よりは食べていないにしても、子どもが大好きな食品に含まれているという点で、気にかけておく必要があるでしょう。
しかし、洋菓子がすべて悪いわけではありません。脳の発達という視点から考えてみると、チョコレートはとてもおすすめなおやつなのです。チョコレートはカカオ豆から作られていますが、このカカオには、脳の働きをよくするポリフェノールがたくさん含まれています。
どんなチョコレートでも良いわけではありません。ただのチョコレートを食べすぎてしまうと糖質の過剰摂取になってしまいますから、カカオを多く含んだチョコレートを選び、あくまでも適量を食べるようにしましょう。さらに最近では、神経伝達物質であるギャバを添加したチョコレートが市販されており、脳の前頭前野の働きを高めるおやつとしては、特におすすめです。
良い食生活の基盤となることは
子どもの食生活を良くしようとするなら、栄養の摂り方やどんな食品が脳に良いかを知ることが必要です。しかし、それよりも重要で、食生活の基盤となることがあります。それは、子どもが家族と一緒に楽しく食卓を囲むということです。
家族一緒に食べていなければ、食についての大切なこと、例えばマナーに関することや栄養に関することなどを伝えることができません。それに、子どもがどのように何をどのくらい食べているかということも、一緒に食べていなければ把握できないでしょう。
一般的に食事中のテレビ視聴は良くないとされていますが、テレビの情報から家族の会話がふくらむのであれば、問題ないという考え方もあります。ただし、テレビに夢中になって肝心の食べることがおろそかになるのであれば本末転倒ですのでご注意を。