約80%の妊婦さんが間違っていた妊娠と葉酸サプリメントの知識
妊娠を計画している女性は、葉酸サプリメントを妊娠前から摂取することで、神経管閉鎖障害(新生児障害)のリスクを下げることができるのが分かっており、厚生労働省などからも積極的にアナウンスされています。しかしながら、葉酸サプリメントの正しい摂取方法ができていた妊婦さんは約20%という調査結果も出ており、ほとんどの方が摂取方法を間違っています。
そこで今回は、葉酸サプリメントの正しい摂取方法、葉酸サプリメントを摂らないと赤ちゃんは病気になるのか、どんな病気なのか、葉酸サプリメントの正しい選び方などについて詳しく解説していきます。
葉酸は食事ではなくサプリメントで摂る必要がある!
葉酸を摂取するには、
・食事(食品)から摂る
・サプリメントなどの栄養補助食品から摂る
の2パターンありますが、神経管閉鎖障害(新生児障害)の発症率を下げるという目的の場合、葉酸サプリメントで摂取する必要があります。
理由は主に
・食品中の葉酸が神経管閉鎖障害に効果があるという研究データはない
・食品から葉酸の必要量を摂ることが困難
の2点です。以下詳しくご説明します。
食品中の葉酸が神経管閉鎖障害に効果があるという研究データはない
そもそも葉酸は、主に以下の2種類に分けられます。
・食品中の葉酸(ポリグルタミン酸型の葉酸)
・葉酸サプリメントなどの栄養補助食品中の葉酸(モノグルタミン酸型の葉酸)
つまり、「天然葉酸」と加工食品用に使用されている「合成葉酸」の2種ですが、これら2つは分子的な構造が違うものです。このうち、神経管閉鎖障害のリスク低減に効果があるという研究データは「合成葉酸」のものばかりです。合成葉酸に関しての研究データ(研究論文)は複数発表されています。
(※天然葉酸、合成葉酸というネーミングは一般的ではないですが、分かりやすさを優先して本記事では使用しています)
天然葉酸に関しての研究データが存在しないのは、
・そもそも研究(実験)されていない
・研究(実験)はされているが、結果が芳しくないなどの理由で発表されていない
のどちらかの理由と論理的には考えられます。
いずれにしても、天然葉酸に関しては、理論的には効果があると考えられてはいますが、数値的なデータが存在しないため実証ができていない状況です。
食品から葉酸の必要量を摂ることが困難
葉酸を摂取した際に、体内で有効に利用される割合は、
・天然葉酸(食品中の葉酸):50%
・合成葉酸(栄養補助食品中の葉酸):85%
となっています。
また、葉酸は熱に弱く、水溶性のため、調理での損失が大きい物質です。
このような事実から、仮に天然葉酸が神経管閉鎖障害のリスク低減に効果があるとしても、生野菜、生果物などの生ものから大量に摂るということになります。しかも毎日欠かさずです。これは、不可能ではないですが、一般的な食生活を勘案すると困難かと思われます。
以上の理由から、厚生労働省も妊娠を計画している女性、妊娠の可能性がある女性は、栄養補助食品(主に葉酸サプリメント)から葉酸を摂取するよう推奨しています。
栄養補助食品というと、葉酸サプリメント以外にも食品に葉酸が添加されたものも該当します。諸外国では食品への葉酸の添加が義務化されている国もありますが、日本は現時点では義務化されていません。独自に葉酸を添加した商品(米、パスタ、シリアル、ヨーグルト、キャンデー etc.)を販売している会社もありますが、後で詳しく説明する摂取方法(摂取量の把握、継続性等)を勘案すると葉酸サプリメントを活用するのがスタンダードと思われます。
葉酸サプリメントの正しい摂り方~いつから・いつまで、摂取量 etc.~
神経管閉鎖障害の発症率を低減するための葉酸サプリメントの摂取方法は以下の通りです。
・いつから・いつまで:妊娠1ヶ月以上前~妊娠3ヶ月までの間
・摂取量:通常の食事からの摂取にプラスして毎日0.4mg~1mgを葉酸サプリメントから摂取する(1mgを超えてはならない)
日本人の予定外の妊娠率は意外に高く64%というデータがあります。妊娠初期では妊娠に気付かない女性が多く、「気付いたら3ヶ月だった」といったこともあるためです。このようなことから考えて、妊娠を計画、予定の段階から葉酸サプリメントを摂取しておくことが無難です。厚生労働省も葉酸サプリメントを摂取する対象を「妊娠を計画している女性、または、妊娠の可能性がある女性」と表現しています。
妊娠が分かってから葉酸サプリメントを摂取しても効果があるという考えもありますが、逆に胎児の神経管形成時期を考慮すると推奨されている期間を守らないと効果はないという考えもあります。むろん、適正時期に摂取しなかった場合の実証データは存在しませんので(倫理面の問題で臨床実験できませんので)、どちらの考えも実証には至りません。
摂取量に関しては、毎日以下の通り摂取する必要があります。
・通常の食事から0.24mg/日
・葉酸サプリメントから0.4mg/日~1mg/日
先に説明の通り、食品中の葉酸(天然葉酸)とサプリメント中の葉酸(合成葉酸)は違うものですので、食事だけで全て、または葉酸サプリメントだけで全てという摂取方法はNGです。なお、食事からの0.24mg/日に関しては、神経管閉鎖障害のリスク低減を目的としたものではありません。葉酸は神経管閉鎖障害以外にも健康に必須の栄養素ですので、妊娠に関係なく毎日摂取する必要があり、その分が「18歳以上の男女ともに0.24mg/日」となっています。
葉酸サプリメントに関して、1mg/日を超えて摂取すると他の病気や症状の診断を困難にするなどの支障をきたすため上限を1mg/日とされています。(詳しくは後述)
また、必ず毎日摂取する必要があります。葉酸は水溶性ビタミンに属する栄養素で、体内に貯めておくことができません。
ビタミンは、「水溶性ビタミン」、「脂溶性ビタミン」の2種類に分類でき、
・水溶性ビタミン:貯めておくことができないビタミン
・脂溶性ビタミン:貯めておけるビタミン
となっています。
貯めておける方(脂溶性ビタミン)は、十分摂取しているなら数日摂取しなくても問題ないですが、貯めておくことができない方(水溶性ビタミン)は、短期間の不足でも影響が出てきます。従って、毎日継続的に摂取する必要があります。葉酸サプリメントを昨日飲み忘れたから、今日2日分という摂取方法はできませんのでご注意ください。
その他の注意点として、たばこは葉酸の吸収効果を低減させますので、禁煙を守る必要があります。また、抗てんかん薬を服用している場合、抗てんかん薬と一緒に葉酸を1日2mg~3mg内服する必要があります。詳しくは主治医に確認が必要です。
また、過去に神経管閉鎖障害の赤ちゃんを妊娠、出産した経験のある方は、次の妊娠での神経管閉鎖障害の発症率が、通常の女性と比較して3~5倍高くなるとされています。妊娠前に専門医や遺伝カウンセラーに相談して助言を受けるのがベターです。
約8割が葉酸の摂取方法を間違っている!
調査会社最大手のマクロミルが2012年1月に実施した「妊婦における神経管閉鎖障害リスク低減のための葉酸摂取行動に関する調査」によれば、
・妊娠1ヶ月以降に葉酸を摂取し始めた女性が6割以上
・妊娠1ヶ月より前に葉酸を摂取していた女性のうち、葉酸サプリメントなどの栄養補助食品で摂取していたのは半数程度
という結果が出ています。
つまり、神経管閉鎖障害のリスクを低減するために正しく葉酸サプリメントを摂取できている女性は2割程度ということになります。厚生労働省などの取り組みで、葉酸サプリメント摂取に関しての周知は広くされてはいますが、摂取時期、摂取量、摂取方法などの適正行動レベルまでの波及効果はまだまだ低いと考えられます。
もし自分自身の知識や行動は問題ないとしても、親族や友人などに妊娠を予定されている方がいましたら正しい葉酸の摂り方を教えてあげて欲しいと思います。
葉酸サプリメントを摂らないと赤ちゃんは病気になるの?
葉酸はビタミンB群に属する栄養素で、別名プテロイルグルタミン酸とも呼ばれています。以前はビタミンM、ビタミンB9(9番目に発見されたビタミンB群のため)と呼ばれていた時期もありました。ホウレンソウの葉から発見された物質のため「葉酸」と命名され、一般的にはこの名称が広く認知されています。必須栄養素であり、欠乏すると様々な疾患リスクがあるため、食事などから毎日摂取するのが好ましいとされています。
近年の様々な研究、実験結果から、葉酸(葉酸サプリメント)の摂取量が不足すると神経管閉鎖障害という新生児障害が発症する確率が高くなることが分かってきました。日本においては、2000年に厚生省(現在の厚生労働省)から、妊娠の可能性のある女性に対する葉酸サプリメント摂取の通知が出されたことから、広く認知されるようになったと思われます。(葉酸が「妊婦のビタミン」、「赤ちゃんのビタミン」と言われるのはこのためです)
神経管閉鎖障害とは、神経管欠損症、NTD(Neural Tube Defects)などとも言われ、脳や脊髄に起こる胎児の先天異常です。具体的には、「無脳症」、「二分脊椎」が主な病気です
神経管は妊娠6週頃(受精4週頃)に出来上がります。神経板という板状のものが両端がくっついて管状になります。これが神経管です。管となった神経管には両端がありますが(イメージとしてストローの吸う側と液体につける側)、片方(頭側)は脳になり、もう片方(お尻側)は脊髄となります。
管となる際にうまくくっつかない(閉じない)ことが稀に発生し、これが神経管閉鎖障害です。神経管の頭側がうまく閉じなかった場合の病気が「無脳症」で、お尻側がうまく閉じなかった場合の病気が「二分脊椎」です。
無脳症は、脳の形成が不完全となり、重症なため流産となるケースが多くなります。産まれた場合も、残念ながら治療法はなく、数時間で死に至るケースが通常です。このため無脳症と診断されると中絶手術(人工妊娠中絶手術)を選択するケースが多いようです。
二分脊椎は、顕在性と潜在性の2種類存在します。
顕在性二分脊椎は、神経が外部に露出した場合で、主な病気として「脊髄髄膜瘤」があります。症状として、脚部の運動障害(歩行障害)、感覚麻痺、膀胱や直腸の機能障害(排尿、排便障害)などを起こします。
脊髄髄膜瘤は難病に指定されており、根本的な治療法は無いのが現状で、症状に応じて治療法を検討・選択することになります。手術、一生涯のリハビリ、身体管理などが必要となります。
潜在性二分脊椎は、神経は外部に露出していませんが神経以外のものを巻き込んでしまった場合で、主な病気として「脊髄脂肪腫」があります。この場合は内部での融合不全のため、脂肪腫が小さいうちは外からは一見分かりません。成長につれ、脚部に痛みやしびれ・変形・感覚障害、膀胱や直腸の機能障害(排尿、排便障害)などの症状が出る場合があります。
脊髄脂肪腫は、時間の経過によって大きくなってきますので、赤ちゃんが成長するにしたがって発見率が上がってきます。しかし、大きくなると上記の症状が出やすくなってきます(最初から症状があるわけではありません)。そして、一度症状が出てしまうと、手術などの治療をしても症状を改善することはほぼできません。従って、症状が出る前に医師に相談して手術を検討する必要があります。
どのくらいの割合で病気になるの?なぜ病気になるの?
日本においては、神経管閉鎖障害の発症数のほとんどが二分脊椎となっています。二分脊椎の発症率は、2005年~2009年で調査した結果、出生1万人に対して5.22です※1。つまり1万人に約6人の発症率です。2014年の出生数は過去最低で100万3539人となっていますので、年間約600人の患児が産まれていることになります。(※1:日本公衆衛生雑誌 第61巻)
この数字が高いか低いかというのは人それぞれの感じ方になりますが、先進国の中では高い数字となっています。
言うまでもなくこの数字は葉酸サプリメントを摂取している女性も含めた数字となります。葉酸サプリメントを摂取していなかった女性のみでの発症率のデータは存在しませんが、後述する諸外国の減少効果を勘案すると相当数の発症率になると考えられます。
二分脊椎の発症原因は、現時点の医学では以下の3つと分かっています。
・環境要因
・栄養要因
・遺伝子要因
以下詳しく説明していきます。
■環境要因
以下に該当する場合、二分脊椎の発症リスクが高くなります。
・高度の肥満体型である
・妊娠初期に高熱を発症した経験がある
・喫煙している
・ビタミンAを摂取しすぎている
・糖尿病にかかっている
・抗てんかん薬を内服している etc.
■栄養要因
葉酸サプリメントの摂取不足の場合は、適正量を摂取している女性に比べて二分脊椎の発生率は上がります。
■遺伝子要因
「MTHFR 677TT」という葉酸の作用を低下させる遺伝子の型があります。この遺伝子型の女性は、体内で葉酸が十分に作用しないため二分脊椎のリスクが高まります。この遺伝子型を持つ女性は、通常の女性よりも葉酸サプリメントを十分摂取する必要があります。また、遺伝検査キットなどにより「MTHFR 677TT」を持っているかどうか簡単に調べることもできます。(⇒遺伝子検査キットについてはこちらを参照)
このように、環境要因は置いておくとしても、神経管閉鎖障害と葉酸サプリメントが密接に関係しているのが分かります。では、葉酸サプリメントが不足すると、どのようなメカニズムで二分脊椎が引き起こされるのか見ていきましょう。
前述の通り、葉酸はビタミンB群の一種ですが、DNAの合成、細胞分裂、細胞増殖に必要なため、人間の臓器や組織の生成、維持、修復に必須の栄養素です。つまり、胎児が大きく成長する際には、必要性が更に高くなるため、「赤ちゃんのビタミン」、「妊婦のビタミン」と呼ばれているのです。
DNA生成、細胞分裂レベルでの葉酸の作用の流れをきちんと説明するには、高校・大学水準程度の化学(化学反応)の知識が必要となりますので細かくは割愛して、ざっくりはしょって記述します。
葉酸に関わる体内での反応の過程で、ホモシステインという物質からメチオニンという物質に変わる部分があります。この部分がうまくいかないとホモシステインが体内に増加することになりますが、それにより神経管閉鎖障害が引き起こされると考えられています(動物実験など各種実験で確認されています)。
具体的には、ホモシステインは細胞の一種である内皮細胞に毒性を示します。その結果、様々な病気が発症する確率が高くなるのです。神経管閉鎖障害はもちろんのこと、体内のホモシステインが増加すると、癌、心疾患、脳血管障害、アルツハイマー病、若年性痴呆、動脈硬化などのリスクが高まると指摘されています。
なお、ホモシステインは必須アミノ酸のため必要な栄養素ですが、体内で高濃度となった場合、神経管閉鎖障害含め様々な病気の発症リスクが高まるということです。葉酸は、ホモシステインの値を低下させる(正常化させる)ことに関与しています。
葉酸への取り組みに関しては、諸外国の方が早くから取り組んでおり効果も出ています。欧米諸国においては、妊娠可能年齢の女性に対して、葉酸の摂取量を増加させるよう周知徹底・勧告を以前から実施しています。
また、アメリカでは、パン、スパゲッティ、シリアルなどの穀類100g中に0.14mgの葉酸を入れることを義務化するよう1998年の法律で定めています。これは、葉酸義務化の世界初の法律となりますが、その後40カ国以上で同様に葉酸の食品添加の義務化がされています。
その結果、諸外国の一例ですが、以下の通り神経管閉鎖障害が減少したとの報告が挙がっております。
・アメリカで50%減少(2004年時点)
・カナダで46%減少(2007年時点)
・南アフリカで30.5%減少(2008年時点)
例えばアメリカは法律で義務化していますが、義務化以前も葉酸を積極的に摂るよう周知徹底はしていました(現在の日本の状況)。さらなる効果を求めて義務化した結果、50%減少です。逆に考えると葉酸サプリメントを摂らないと発症率は相当高くなると思われます。
日本においては、諸外国に比べて神経管閉鎖障害の発症率が低かったため※2、葉酸に関する対応は遅れていました。(※2:現在は諸外国が減少してきたため諸外国の方が低くなってきています)
しかし、神経管閉鎖障害の発症率が増加してきたこと、諸外国で葉酸の効果報告が多数発表されたことなどを勘案して、2000年に厚生労働省から妊娠の可能性のある女性に対する葉酸サプリメント摂取の通知が出され、2002年からは母子手帳などにも明記されることとなっています。
葉酸サプリメントに副作用や危険性はあるか?
葉酸サプリメントを過剰に摂取した際などに副作用や危険性はあるのかについて見ていきたいと思います。副作用や危険性と言った場合、過剰摂取に目が行きがちですが、欠乏(不足)した場合にもリスクはありますので両方説明していきます。
先に説明の通り、葉酸には
・食事で摂る「天然葉酸」
・サプリメントなどで摂る「合成葉酸」
の2種類があります。
従って、副作用、危険性を考える場合、以下の4つのパターンで考えていく必要があります。
・天然葉酸の過剰摂取
・合成葉酸の過剰摂取
・天然葉酸の欠乏
・合成葉酸の欠乏
天然葉酸の過剰摂取による副作用や危険性
葉酸を多く含む食品には、レバー、ホウレンソウ、アスパラガス、納豆、いちご などがありますが、厚生労働省によると、通常の食事をしている人で、葉酸過剰摂取による健康障害が発生したという報告はないとのことです。
合成葉酸の過剰摂取による副作用や危険性
葉酸サプリメントなどの合成葉酸を過剰に摂取した場合の副作用、危険性に関しては、以下のような報告が存在します。
・妊娠後期(30~34週)に1日1mg超の過剰の葉酸サプリメントを飲んでいた場合、飲んでいない場合と比較して、赤ちゃんが喘息を発症する確率が1.26倍となった。(オーストラリア アデレード大学)
・上記のオーストラリア アデレード大学の報告は、データが確定されたものではなく今後の検証が必要である。(順天堂大学大学院医学研究科)
・葉酸サプリメントの過剰摂取によりビタミンB12欠乏症の診断を困難にする(発見を遅らせる)。(厚生労働省)
・葉酸サプリメントを1日1~10mg程度過剰に摂取すると、発熱・蕁麻疹・紅斑・かゆみ・呼吸障害などの葉酸過敏症を発症することがある。また、小腸からの亜鉛の吸収を抑制する場合がある。(国立健康・栄養研究所)
・葉酸サプリメントの過剰摂取によるがん発症のリスクが懸念されていたが、約5万人を対象とした調査の結果、がんの発症リスクはないことが報告されている。(厚生労働省)
上記の報告からも分かるように、厚生労働省の定める摂取量、摂取時期を守って葉酸サプリメントを摂ることが必要です。
天然葉酸、合成葉酸の欠乏による副作用や危険性
葉酸サプリメントなどで摂る「合成葉酸」が不足すると胎児の神経管閉鎖障害のリスクが高まるのは既に説明の通りです。
それ以外にも葉酸は健康に必要な栄養素ですので、天然葉酸、合成葉酸に限らず欠乏した場合、以下のような病気や症状を引き起こすことが報告されています。
・動脈硬化などのリスクが高まる。(国立健康・栄養研究所)
・造血機能が異常となり、巨赤芽球性貧血、神経障害、腸機能障害などの病気を引き起こす。(国立健康・栄養研究所)
・乳がん、アルツハイマー病、先天性心疾患などのリスクが高まる。(順天堂大学大学院医学研究科)
上記の報告からも分かるように、厚生労働省の定める摂取量(食事、サプリメント)、摂取時期を適正把握して、過剰にも欠乏にもならないように摂取することが必要です。摂取方法をきちんと守っていれば、副作用や危険性はないと考えられます。
葉酸以外に妊娠予定・妊娠中の女性に必要な栄養素
妊娠予定期、妊娠中は栄養バランス良く食事をする必要がありますが、次の2つの観点から葉酸以外に必要な食品を知っておくのがよいでしょう。
・葉酸と協調関係にある栄養素(ビタミンB6、B12、C)
・妊婦さんに不足しがちな栄養素(鉄、カルシウム)
葉酸と協調関係にある栄養素(ビタミンB6、B12、C)
葉酸と協調して働く栄養素にビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンCがあります。栄養素は基本的に単体では効果的に働かず協調作用のある栄養素と一緒に摂取することで効果的に働くとされています。従って、葉酸のみを摂るのではなく、ビタミンB6、B12、Cを一緒に摂ることが必要となります。
ビタミンB6、B12、Cが多く含まれる主な食品は以下の通りです。(文部科学省「日本食品標準成分表2010」より)
ビタミンB6を多く含む食品 | ビタミンB6(mg/100g) |
---|---|
にんにく(生) | 1.50 |
ピスタチオ(いり、味付け) | 1.22 |
ひまわりの種(フライ、味付け) | 1.18 |
かぶ(漬物) | 1.10 |
まぐろの赤身(生) | 1.08 |
ビタミンB12を多く含む食品 | ビタミンB12(μg/100g) |
---|---|
あさり(缶詰、水煮) | 63.8 |
しじみ(生) | 62.4 |
赤貝(生) | 59.2 |
味付けのり | 58.1 |
すじこ | 53.9 |
(1μgは1mgの1/1000。1000μg=1mg)
ビタミンCを多く含む食品 | ビタミンC(mg/100g) |
---|---|
アセロラ(生) | 1700 |
煎茶 | 260 |
味付けのり | 200 |
赤ピーマン(油炒め) | 180 |
めキャベツ(生) | 160 |
妊婦さんに不足しがちな栄養素(鉄、カルシウム)
妊娠中に摂取すべき量が増大する栄養素に関しては不足しがちになります。また、調査結果などで不足していると判明している栄養素などがあります。これらに該当する主な栄養素が鉄、カルシウムで、意識して摂るようにした方が良いです。
鉄と言えば、血液中のヘモグロビンを作るために必要な栄養素で、不足すると貧血などを起こすことで良く知られているかと思います。妊娠中は、胎児、胎盤を成長させるために鉄の必要量が増加します。特に妊娠中期・後期では妊娠前の2倍以上摂取する必要があり不足しがちになる栄養素です。妊婦さんの約20%が鉄欠乏による貧血を起こしているというデータもあります。
次にカルシウムですが、こちらは妊娠中に必要量が増加する栄養素ではないのですが、日本人女性全体的に必要量を満たしていません。カルシウムの厚生労働省の推奨量は、18歳以上の女性で1日650mgですが、平均摂取量が20代女性:405mg/日、30代女性:441mg/日、40代女性:420mg/日と必要量に届いていない現状です。妊娠を機にご自身の食事を今一度振り返り、必要に応じて意識的に摂取するのが良いかと思います。
鉄、カルシウムが多く含まれる主な食品は以下の通りです。(文部科学省「日本食品標準成分表2010」より)
鉄を多く含む食品 | 鉄(mg/100g) |
---|---|
ほしひじき | 55.0 |
あさり(缶詰、水煮) | 37.8 |
きくらげ(乾燥) | 35.2 |
あわび(塩辛) | 33.9 |
煎茶 | 20.0 |
カルシウムを多く含む食品 | カルシウム(mg/100g) |
---|---|
干しえび | 7100 |
かたくちいわし(田作り) | 2500 |
ほしひじき | 1400 |
パルメザンチーズ | 1300 |
いりごま | 1200 |
葉酸サプリメントの正しい選び方(最低限押さえるべき選定ポイント)
今までの説明を踏まえると、葉酸サプリメントを選ぶ際の基本的なポイントは以下のようになることが分かると思います。
・天然葉酸が入っていると謳っている(表示されている)商品は避けるべき
・ビタミンB6、B12、C、鉄、カルシウムが含まれていること
・1回の摂取量で葉酸サプリメントの摂取上限1mg/日を超えない含有量になっていること
他に、容器等の表示・記載の正当性、広告内容の説明責任などもむろん選定のポイントとなりますが(後述)、かなり細かい内容となるため基本的なポイントとしては言及しないこととします。
また、信頼できる会社・商品(大手、ブランド等)、実績(人気商品)などの要素もポイントとして挙げることも可能ですが、各個人の考え方による部分が大きいため、これらの点に関しては詳しく言及しないこととします。
天然葉酸が入っていると謳っている(表示されている)商品は避けるべき
市場に出回っている葉酸サプリメントを調査すると、天然葉酸が入っていると謳っている(表示されている)商品は結構存在します。この場合、次の2つの可能性が考えられます。
・天然葉酸が本当に入っている
・天然葉酸が入っていないのに(合成葉酸なのに)、天然葉酸と謳っている
既に説明の通り、神経管閉鎖障害のリスク低減のためには天然葉酸ではなく合成葉酸が効果を発揮します。従って、仮に天然葉酸が入っていたとしても、あまり意味がないと考えられます。
そもそもサプリメントなどの加工食品に天然葉酸を技術的に含有できるかという点が怪しいところです。実際、国民生活センターが、天然葉酸が入っていると謳っている葉酸サプリメントをいくつか化学分析した結果、天然葉酸ではなかったというデータもあります。
従って、「天然葉酸が入っていないのに、天然葉酸と謳っている」という可能性が濃厚となります。この場合、あくまで推測ですが、天然、オーガニックなどの言葉が日本人受けする傾向を利用した虚偽表示と考えられます。
いずれにしても、葉酸と神経管閉鎖障害に関する知識不足であり、信頼に欠ける商品、会社と考えざるを得ないため、おすすめはしません。
ビタミンB6、B12、C、鉄、カルシウムが含まれていること
既に説明の通り、
・葉酸と協調して働くビタミンB6、B12、C
・妊婦さんに不足しがちな鉄、カルシウム
も含まれていた方が一石二鳥でベターということです。
バランスの良い食事をする必要はあるため、これらの栄養素は食事で摂るのが基本ですが、毎日のことになりますので、葉酸サプリメントに一緒に含まれていた方が無難かと思います。
1回の摂取量で葉酸サプリメントの摂取上限1mg/日を超えない含有量になっていること
葉酸サプリメントは錠剤、カプセルの形態が多いですので、1日1錠(1カプセル)、1日2錠(2カプセル)といったように摂取目安が記載されていますが、1日の摂取目安量で葉酸サプリメントを摂った際に厚生労働省の定める上限値1mg/日を超えないようになっているかということです。
既に説明の通り、神経管閉鎖障害のリスク低減のために厚生労働省が定める葉酸の摂取量は、「毎日0.4mg~1mgを葉酸サプリメントから摂取する(1mgを超えてはならない)」です。サプリメントの摂取目安で0.4mgに足りない場合は調整すれば良いので問題ないのですが、例えば1錠で1mg超となるような場合はNGです。
国産ではほとんどないですが、海外産、海外輸入の葉酸サプリメントには、このようなケースも存在します。欧米などの主要国では、葉酸摂取に関して0.4mg~5mgとアナウンスされている国もあります。このため、1日の摂取目安が日本の基準範囲外になっていることもありますので注意が必要です。
おすすめの葉酸サプリメント(主な葉酸サプリメントの分析結果)
上記の葉酸サプリメントの選定ポイントを満たし、更に後述の分析の結果、おすすめの葉酸サプリメントは以下になります。
ベルタ葉酸サプリ
総合的に見て最もおおすすめはこれ!
葉酸、ビタミンB6、B12、C、鉄、カルシウムはもちろんのこと27種類のビタミン・ミネラル、厳選した6種の美容成分を配合。安心の無添加、無香料。出産経験のある社員による電話での無料サポート、相談が可能。
みんなの葉酸サプリ
標準的なものが良いならこれ!
葉酸、ビタミンB6、B12、C、鉄、カルシウムはもちろんのこと19種類のビタミン・ミネラルを配合。安心して飲めることを第一に考え、香料・着色料・保存料等はもちろん無添加、更に放射能検査及び250種類の残留農薬検査を実施するほどの安全性へのこだわり。
女性100人の声から生まれた葉酸サプリ
コストパフォーマンスで選ぶならこれ!
葉酸、ビタミンB6、B12、C、鉄、カルシウムはもちろんのこと8種類のビタミンを配合。錠剤の大きさやボトルのデザインなど利用者の声を反映して随時改良するこだわり。
【分析内容】
・天然葉酸が入っていると謳っていないか(表示されていないか)
・ビタミンB6、B12、C、鉄、カルシウムが含まれているか
・1回の摂取量で葉酸の摂取上限1mg/日を超えない含有量になっているか
・合成葉酸と天然葉酸の違いについて記載されているか
・1日の摂取量について具体的に記載されているか(下限0.4mg、上限1mgの範囲内)
・摂取量を守る必要があることについて記載(注意喚起)されているか
・栄養機能食品、特保食品に関して、健康効果が適切に説明されているか(健康増進法に準拠)
・栄養機能食品、特保食品に関して、栄養成分の表記が適切にされているか(健康増進法に準拠)
・成分表示の表記の順番は間違っていないか(JAS法に準拠)
・インターネットの公式サイトにおいて、上記の項目について正しく記載されているか
(画像出典:各銘柄の公式サイト、販売サイト)
更新日:2019/11/29|公開日:2015/04/22|タグ:葉酸サプリメント