よく噛むといいことがいっぱい!
普段、何気なくものを噛んで食べている私たちですが、よく噛んで食べることを意識したことはありますか?「同じものを食べるなら、噛んでも噛まなくても、摂れる栄養は同じなのだからいいのでは?」と思ったら大間違い。噛むことの良さを知らないと、損をするかもしれませんよ!
噛まずに食べることの弊害
最近は歯触りの柔らかい食べ物が好まれているようです。それは同時に、私たちは昔に比べて、よく噛まずに食べるようになってきたということにもなります。
現代の子供は、1回の食事で約600回ほどしか噛んでいないという調査結果があります。今から2000年ほど前は、約4000回は噛んでいました。今のおじいちゃんおばあちゃん世代が子供の頃は、約1500回ほど噛んでいました。現代の子供の噛む回数が、どれほど少なくなったかがお分かりいただけるでしょう。
大昔は食材自体が固いですし、調理法も発達していなかったために柔らかくならなかったので、たくさん噛まなければならなかったのでしょう。時代が進んでも、昔ながらの日本食を食べていた時代はやはり、よく噛んで食べる必要があったのです。
今は豊かな食生活を送ることができるような時代になりました。毎日しっかりと栄養を摂ることができています。今の子供たちは咀嚼の回数も、食べる時間も減ってきていますが、たくさん噛まなくても、栄養がきちんと摂れているのであれば問題ない、そう思う人もいることでしょう。しかし、噛まずに食べることは、子供たちの体に様々な弊害を引き起こしています。
なぜ噛んで食べるのかというと、もちろんそれは食べ物を飲みこみやすくしたり、体内に栄養を摂り込みやすくしたりするためです。しかし理由はそれだけではありません。口や顎、さらに顔の筋肉から頭蓋骨に至るまで、咀嚼に使う部分全てをきちんと発達させるには、しっかりと噛んで食べることが欠かせないのです。また、咀嚼によって唾液腺からのホルモン分泌が促され、さらに、脳を活性化させる作用もあります。
よく噛んで食べていないと、顔や頭といった部分がきちんと発達しなかったり、脳の働きが鈍ったりするという弊害が引き起こされるというわけです。実際、今の子供たちは顎が小さくなってきていると言われています。「小顔になるならそれもいいわ」などと思わないでくださいね。見た目が美しければ健康でなくてもよいということは、決してないはずです。
今の子供たちはよく噛まずにものを食べているため、顎が小さくなり、本来しっかりと入るはずの永久歯が顎に入りきらず、歯並びが悪くなってしまうケースが増えてきています。これではますますものを噛みづらくなってしまい、噛むことの大きな目的である食物の消化や栄養の吸収といったことが不十分になってしまうでしょう。これはとても大きな問題です。
噛むことのメリット
先ほど噛むことのメリットについて、さらっと述べましたが、更に詳しく見ていきましょう。
たくさん噛むと頭がよくなる!
「頭の良い子になってほしい」親はみんなそんな風に思っているものです。そのためにどうするかというと、勉強するように口を酸っぱくして言ったり、どうにかして机に向かわせようと工夫したりすることでしょう。もちろん勉強することは大切なのですが、勉強量を増やすだけでは頭は良くなりません。
睡眠や食事などの基本的生活習慣を整えるとか、運動もきちんとするとか、本を読むとか、教科の勉強以外にも、頭をよくするために必要なことはいろいろあります。そして、食べ物をよく噛んで食べることも、頭をよくするのに効果を発揮します。
ものを噛むと唾液が出ます。唾液の働きにもいろいろあるのですが、ここで注目したいのは、脳の働きを良くする効果です。脳細胞が働くときに必要なホルモンがあるのですが、そのホルモンは唾液によって分泌が促進されます。
ドライブ中に眠気が来る時、私たちはよくガムを食べますね。これはどういうことかというと、ガムを噛むと唾液が出て、脳細胞が活性化するためのホルモンが分泌され、眠気が冷めてくるという仕組みなのです。
歯は使わなければ丈夫にならない
力を込めて何かをする時、私たちは歯をぎゅっと食いしばります。しかし歯が丈夫でなければ、歯を食いしばって力を出すことはできません。では、どうすれば歯を丈夫にできるのでしょうか。
丈夫な体をつくるには、適度な運動が必要です。つまり、体をきちんと動かして使うことで、丈夫な体が作られます。これと同じで、歯を丈夫にしたければ、歯をたくさん使うことです。
きちんと歯を食いしばることができれば、頑張ろうとする気持ちにもつながるでしょう。歯を食いしばって頑張ることができるように、日頃からきちんと噛んで、歯をたくさん使いましょう!
噛まないで食べると栄養が吸収されにくい
よく噛まずに食べると、胃に負担をかけます。きちんと噛んで食べることによって分泌された唾液は、口の中に入った食べ物を包み込みます。栄養のある食べ物であっても、そのまま胃に入ってしまったら、それは大きな刺激になってしまいます。そうなると、食べ物の栄養がきちんと体に吸収されなくなるのです。
おいしくて栄養のあるものを食べて、その栄養を体にきちんと取り込むことで、健康な体を作ることができます。健康な体になるためには、ちゃんとよく噛んで食べることが大切なのです。
よく噛まないと味オンチになるかも!?
現代人の味覚は鈍ってきていると言われています。亜鉛が足りていないのがその大きな原因と考えられていますが、実は、噛まずに食べることが多くなってきていることも、要因の一つだと考えられています。白米をずっと噛んでいると、甘みが増したように感じるはずです。このように、食べ物をよく噛むとその味がよくわかり、味覚の成長が促されます。
噛むことで出てくる唾液には、「ガスチン」というたんぱく質が含まれているのですが、これが亜鉛と結びつくと、味覚を敏感にさせます。また、食べ物の味を決めている成分は、唾液によって食べ物の外に出てきます。この2つのことから、噛むことによって唾液をたくさん出すことは、味覚を鋭くさせてくれると言えるのです。
たくさん噛んで子供の肥満を防ごう
脳の中には満腹中枢というものがあります。ここが刺激されて15分ほどすると、脳からは「満腹になりましたよ、もう食べなくていいですよ」という命令が出て、人は食べるのをやめます。
満腹中枢が正常に働いている時は、食べ始めてから数分で血糖値が急上昇し、その後すぐに血糖値は最高値になります。人間は、血糖値の上昇により満腹であると感じ、食事を終えます。
そして、食べ物をよく噛んで食べると消化が良くなるので、血糖値がスムーズに上がります。だから、よく噛んで食べることは満腹中枢を正常に働かせることにもつながっているというわけです。
食べ過ぎを防ぎたい、肥満を防ぎたいと思うなら、満腹中枢を正常に働かせなければなりません。今や肥満は成人だけの問題ではなく、子供にまでその危機が迫っています。小学生の頃から肥満体型だと、将来様々な生活習慣病を引き起こすと言われています。
生活習慣病は体に重大な障害をもたらすこともありますし、ひどくなれば死をも招きます。子供の将来を考えたら、親としては子供の肥満を軽視することはできないはずです。
子供のうちにやれることは、まず、よく噛んで食べることでしょう。「よく噛んで食べなさい」と言葉をかけるだけでなく、歯ごたえがある食べ物を積極的に食べさせるようにするとよいですね。
また、噛まなければ飲み込めないような調理法にするのも良い方法です。野菜はみじん切りにするよりは大きめに切って煮る方が噛む必要性が出てきますし、生で出せばさらによく噛まなければ飲み込めないでしょう。
日頃から、子供がよく噛んで食べられるような工夫をしながら食卓を整えることで、子供の肥満を防ぎ、将来の健康をも守ってあげましょう。
噛むことはがんの予防策にも
農薬や着色料などをたくさん使った食べ物には、発がん性物質が含まれているということは、ご存知の方も多いでしょう。しかし、自然にとれる肉や魚などにも発がん性物質は含まれています。つまり、私たちが発がん性物質を全く口に入れないようにするのは、難しいことです。
しかし、発がん率を抑えるための方法はいろいろあります。その一つが、よく噛むことです。噛むことによって唾液が出ますが、唾液の中の「ペルオキシダーゼ」という酵素は、発がん性物質の力を弱めてくれる力があると考えられています。つまり、よく噛んで唾液をたくさん出すことで、発がん率が抑えられるというわけです。
きちんと噛む子はお話も上手に
ものを噛むという力は、話す力にもつながっていきます。話をするには、口や口周り、舌の筋肉をうまく使えなければいけません。食べ物をよく噛んで食べれば、これらの筋肉の発達を促します。
人間の赤ちゃんは、生まれた時にはおっぱいしか飲みません。歯もありませんから咀嚼はしませんが、それでもおっぱいに吸い付く力は相当なものですし、上手に吸えないとおっぱいは出てきません。赤ちゃんの頃から、ちゃんと口周りの筋肉を鍛え始めているわけです。
赤ちゃんは成長に伴って、おっぱいから離乳食へと移行します。その時にも噛む力は必要ですし、口の中の食べ物だけを噛んで舌は噛まないようにするなど、筋肉の使い方も学んでいきます。
このように、おっぱいを吸ったり食べ物を噛んだりしながら、子供は、話をするのに必要な口周りの筋肉を鍛えていきます。そうすることで、お話も上手にできるようになっていくのです。
更新日:2019/11/29|公開日:2016/06/12|タグ:噛む