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子どもが起こす身近な事故を防止しよう

子どもの事故

子どもはいろいろなことに好奇心を持ち、大人が思ってみないような行動を取ります。そしてまだ何が危険なのかをよく知らないため、家の中などで深刻な事故を引き起こすこともよくあります。子どもにそうしたことを起こさせないためにはどうすればいいのかを考えていきましょう。

 

意外に多い身近な子どもの事故

子どもは危険性をよく認識できない一方で好奇心が強いため、大人が考えもしないような危険な行動を取ってしまうことがままあります。それによって家庭内で大けがをするようなこともよく見られます。

 

こうした子どもの行動に対し、親や周囲の大人が注意をしたり見張ったりするというのには限界があります。本当に子どもの安全を考えるのであれば、大人が子どもに気をつけていなくてもそもそも子どもが危険にわないような家庭環境を作ってあげるのが親の責務ではないでしょうか。

 

そのためには、大人が想定外の子どもの行為をあらかじめ想定しておくことが大事になってきます。そしてそれには子どもによる事故の事例をたくさん知り、そこから事故が起きるときのパターンをつかむことでそれにつながりそうな家庭内の危険をあらかじめ除去しておくのが一番です。

 

いくつか事故の例をあげてみましょう。ある家庭では母親がお風呂のお湯を捨てようと栓を抜きましたが、5分後に1歳児が湯船の中でおぼれ、いったんは呼吸が停止しました。湯船の排水溝にはその子どもが入れてしまったとおぼしき玩具が詰まっており、お風呂のお湯がなくならなかったのです。この子どもは一命を取り留めましたが、体に麻痺の症状が残ってしまう結果となりました。

 

また、ヘアスプレーを石油ストーブのすぐ近くで噴射してしまい、スプレーに引火した火で大火傷を負ってしまった、というような事例もあります。

 

こういった事件を聞くと「たまたま」だとか「親の注意不足」といったようなことを言う人もいますが、家庭内での子どもの水死は珍しい事例ではありません。平成14年の厚労省の調査によれば、なんと1年間に177件も発生しているのです。

 

死亡までには至らなかったが手当を必要としたようなケースはこの数字に含まれていません。そうした事故は、死亡したケースの5000倍~10000倍はあるのではないかと考えられています。子どもが死ななかった事故のうちおよそ60%が家庭内で起きているという調査結果もあります。

 

こうした家庭内の危険に気づくには、素人が自分一人で考えていても限界があります。例えば地域の事故防止センターなどでは、心肺蘇生などの市民講座を開催していることがあります。こうした場では心肺蘇生の技術の他に家庭内で起きたそうした痛ましい事故のケースを紹介してくれるようなところもあります。

 

こういった講座では精巧な人形を用いた実践的な救命方法などを学ぶことができ、家庭内の危険についての知識や意識も高まりますので、参加してみてもいいのではないでしょうか。

 

立ち後れる事故分析

生まれつき持っている疾病などによる死亡が多い1歳未満児をのぞいた場合、日本における子どもの死亡原因のトップは不慮の事故です。これは過去40年以上ずっと続いています

 

先進国と言われる国々の間で1歳~4歳の子どもの事故死亡について比較すると、日本は15カ国中11位となり、この時期の幼児が事故で死亡する確率が相当高くなっているという実態が浮かび上がってきます。子どもの事故死が一番少ないのは北欧のスウェーデンですが、スウェーデンと比較すると1年で500人以上も多い死亡者数になっていると聞けばいかに多いかが分かろうというものです。

 

どうしてこういった差が生まれてくるかですが、子どもの事故をどのように捉えているかに原因があるとされています。ヨーロッパやアメリカでは事故が発生したときにそれがたまたま起きたのだとは考えず、原因を徹底的に分析し、それに基づいた防止策が体系的に研究されているのです。

 

現在の日本の状況はまだそこまでに至っていませんが、医療機関や個人の家庭、保育所や幼稚園などから全国で起きた子どもの事故事例を集め、それを一元化してどんな事故がよく発生しているのか、増えてきている事故のタイプ、あるいは重傷になりがちな事故のタイプなどを調べることができるように動き出しているところもあります。

 

このようにして情報を集め、それをもとに専門家が防止策を考えて広く周知するということは待ったなしの課題だと言えるでしょう。

 

まず子どもの体を知る

子どもが引き起こす事故を防ごうとする場合、そういった子どもたちの体の性質を把握することが重要です。大人にとっての「想定外」を少しでも減らすためです。

 

頭や指といった子どもの体の大きさや、腕力・握力などの力の強さといったデータ。こうしたものを年齢別、性別ごとに集め、事故防止の基礎的なデータとして活用するのです。

 

例えば、よく「小さなモノは子どもの手が届く範囲に置かない」といったことが言われます。こうした言い方はかなり漠然としているので、「小さい」というのがどれぐらいなのか、個人によってとらえ方が違ってしまいます。

 

これに対して、子どもの口の大きさと喉に至るまでの距離を測り、そのデータをもとにした誤飲チェッカーを作ります。3歳以下の子どもの場合、直径39ミリメートル、長さ51ミリメートルまでというように子どもの体についてのデータを集めることができれば、それをもとにした誤飲チェッカーに収まってしまうようなモノが「小さい」といったふうに誰でも判断することができるようになります。

 

さらに、子どもの身長と手を伸ばした高さを測定し、3歳以下までの子どもであれば1メートルまでしか手が届かないので、それよりも高い場所に小さなものを置いておくこと、とした方が間違いの無い対策が簡単に取れる、というわけです。

 

こうしたデータの集積は、個人的に利用できるだけでなく企業にとっても意味のあるデータとなります。実際に子どもが指をはさんでしまって事故になり、それから対応を行うのではなく、子どもの指が入らないような隙間しかない品物を最初から作る方が簡単だからです。

 

ヨーロッパでは、子どもの体に関する計測データをもとにして玩具などのチェックが行われ、子どもの平均的な腕の力で部品が取れてしまうような商品は適切でないとして販売させないといったように、法的拘束力を持った規制もあります。

 

子どもの体に関する計測データをもとにした実際的な規制があれば、子どもが起こしてしまう事故は大きく減るはずだと専門家は指摘しています。

 

家庭における事故防止のために

家庭の中で子どもが事故に遭わないようにするためには、子どもの家族だけに任せるのではなく、社会全体の問題として捉えるべきだという考え方があります。

 

たとえば、0歳児のうち3割は薬の瓶を開けることができます。こういったような子どもの身体の知識であったり、過去に診断した負傷者の事故事例などを医師が提供し、それを親や企業が利用することができれば、親は家庭で薬瓶を子どもに近づけなくなるでしょうし、企業は子どもが簡単に開けない容器の開発にとりかかることができる、といった具合です。

 

このような考え方で、アメリカでは実際に小さな子どもが開けようとしても簡単には開かないようなキャップつき容器を使うように法律が定められています

 

日本においても徐々に浸透しつつありますが、更に一層、事故情報の管理・一元化を進め、それを利用して医師や企業、行政、そして親たちの間で連携をはかっていくことが求められていると考えます。

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