子どもの衛生観念をどう育てるか
子どもは幼稚園や学校に行くようになると、風邪をはじめ、様々な病気をもらってきます。具合の悪い子どもを見ているのは、親としては辛いものです。ですから、生活習慣を整えて、病気に負けない強い体を作るとともに、感染予防に努めているという親御さんも多いことでしょう。
感染予防は確かに必要です。しかし、それが行き過ぎて、過剰なまでの清潔志向にある親御さんたちや子どもたちがいることも確かです。人の家で作られたおにぎりは食べられないとか、家以外のドアノブには触りたくないとかいう人もいます。ご家庭で、手指に使う消毒用アルコール剤を常備しているという人も多いでしょう。
過剰な清潔志向はかえって人間の抵抗力を弱めるという考えもあります。子どもの衛生観念をどう育てていったらよいのか、考えてみたいと思います。
食べ物を落としてしまった時の対応の仕方は?
子どもが食べ物を床に落としてしまいました。あなたならどうしますか?床に触れたらバイキンがつくし汚れるから、食べさせない?それともさっと水で洗ったりティッシュで拭いたりして汚れを落とし、食べさせますか?
落としたものにもよりますが、きれいにセロハンなどで包まれたものまで、落としたから食べない、というのはどうなのでしょうか。しかし実際は、セロハンなどでくるまれていても、落ちたから絶対に食べたくない、という人はいるのです。
周りの大人が過敏になってしまうと、子どもも「落ちた食べ物というのは汚いものなのだ」と考えるようになります。また、「床に落ちてしまったものは食べない」という約束事を作ると、食卓に苦手な食べ物が出た時に、わざと床に落として食べられなくするという子どもは、必ず出てきます。ですから、「落としたら食べない」とはっきり言いきってしまうのにはある意味問題があるのです。
では逆に「落としても食べられる」と言いきることはできるのでしょうか。これもやはり時と場合によります。お刺身や卵焼きなど、床についたら必ず何かが付着しそうなものなら食べないとか、明らかに汚れている場所に落ちたら食べないという方もいるでしょう。
こう考えてきますと、「落としたら食べない」「落としても食べられる」どちらも言い切ることはできないわけで、大切なのはどうなっていたら食べられるかという見極めではないでしょうか。
毎日掃除してある床にコロッケが落ちたとしたら、ティッシュで拭き取って食べても大丈夫なのかもしれません。外でお弁当を食べている時におかずの卵焼きが地面に落ちてしまったら、やはり食べないのが無難なのかもしれません。
大丈夫そうなのかやめた方がいいのかは、経験で判断することも多いでしょう。その場面ごとに、大人が子どもに教えてやらなければなりません。
この場合は大丈夫そうだから、よく洗って食べよう、よく拭いて食べよう、というように、汚れの取り方も教えてあげる必要があります。そうすれば自然と、臨機応変に対処して、落ちたとしても食べられるものは食べるというたくましい子に育つでしょう。
吐いたものの処理を子どもにさせるかどうか
清潔志向が高まっている現代。その一方で清潔かどうかについて過剰になっている傾向もみられます。汚すのが子どもだとよく言われますが、そんな子どもたちの中にも、泥や土を触るのに抵抗感を覚える子がいるのです。
泥や土は本来、汚いものではありません。もちろん泥や土の付いた手で食べ物をつかんで食べるのには不安がありますから、触った後はきちんと手を洗うべきでしょう。しかしそれさえできれば、土や泥を触っても何も問題はないのです。触っても平気なものは過剰に敏感にならず、触った後の適切な処理の仕方を教えてあげればよいのではないでしょうか。
また、友達の気分が悪くなって吐いてしまった時、その処理は誰がしますか?おそらく近くにいる大人がやることでしょう。学校の場合は、とにかく子どもには触れさせず、保健室の先生を呼んで処理をしてもらうように決められているところも多いようです。
しかしその処理について、子どもは全くノータッチでよいのでしょうか。もちろんすすんで子どもにも処理をさせようとは言いませんが、吐いてしまった時はどのように処理をすべきか、処理した後はどのように清潔にすれば良いのかだけは、子どもに教える必要があります。そうでないと、大人になった時に子どもの汚物の処理ができない人になってしまいかねません。
吐き戻したものには菌が入っているからそのままにはしておけないこと、でも適切に処理をして、その場所と処理をした人の手をしっかりと清潔にすれば、触っても大丈夫であることを、子どもにも教えたいものです。
たくさんの豊富な経験を積むと生き抜く力を持った子になる
日本では、少子高齢化がどんどん進んでいます。今の子どもたちが大人になる頃には、今よりもっと介護に携わる人が必要になってくるでしょう。しかし今の子どもたちがそのまま育っていって、はたして抵抗なく介護をすることができるでしょうか。
昔は、小さな赤ん坊を少し上の子どもが子守したり、おむつを替えたりすることは当たり前でした。だから、汚れたものの始末は慣れたものだったはずです。しかし今は違います。子どもには吐瀉物や便を触らせなかったり、一般家庭にも手指消毒用のスプレーやジェルがいつも置いてあったりするようになってきています。過剰なまでの清潔感にこだわる人も多いようです。
大人になってもおしっこやうんちなどには触ることができないという人は、昔よりも多いと考えられます。そのような人たちがいざ老人介護をしようとしたとき、トイレのお世話をすることができるのでしょうか。
もちろん、吐瀉物や便、尿などをただ触らせればよいという問題ではありません。触らせるからには、その正しい処理の仕方や、処理をした後の衛生についてを教え、徹底させなければならないでしょう。
更新日:2019/11/29|公開日:2015/12/07|タグ:衛生観念