子どもを叱るときにやっていいこと悪いこと
毎日子どもと接する中で、母親が子どもを褒める回数と、叱る回数とではどちらがより多いでしょうか。多くの家庭では叱る回数の方が多いのではないかと思います。どんなふうに子どもを叱ると効果が上がるのかについて少し見ていきましょう。
叱るときには子どもを歪めないように気をつけよう
そもそも親が子どもを叱るのはなぜかというと、当然ですが自分の子どもがよい子ども、ひいてはよい人間に育って欲しいと願っているからです。子どもがよくないこと、危険なこと、規範に外れたことをしようとした際に叱ることで、それをしては駄目だということを子どもに対して教えているわけです。
つまり、親が子どもを褒めたり叱ったりするという行為は、そのままどういった行動がよいもので、どういった行動が悪いことなのか、ということを子どもに伝達する手段になっているとも言えます。親が自分の道徳的な考え方、価値観、人生への向き合い方といったものを子どもに教えていることになるわけです。このため、どうせ叱るのであればより効果の上がる叱り方をしたほうがいいと言えます。
子どもが着ていた衣服を脱ぎ散らしたまま放っておいたような時、「ダメねぇ。服を脱いだらちゃんとたたみなさいっていつも言っているでしょ? だらしないわね、何度言ったら分かるのよ。そんな子は嫌いになっちゃうわよ!」などと叱りつけたりはしていないでしょうか。
叱りつけた母親からすれば、これはしつけの一環として言ったものにすぎないかもしれません。しかし、このような言い方は玩具を片づけなかったことを叱りつけているのではなく、子どもの性格上のまずい点を責めている形になっており、結果としてその子どものそのものを否定してしまっている表現になってしまっています。
このような言い方で叱っていると、子どもは精神的に問題を抱えたまま成長してしまう可能性があります。子どもが自分自身についての自己イメージを作り上げるときには、親からかけられた褒め言葉や叱られた経験などを基礎にするからです。
そういうプロセスの中で自分の性格のまずい点をあげつらわれてばかりいれば、子どもは自分に対してネガティブなイメージしか持てなくなってしまい、そのために自分に劣等感を持つようになってしまうのです。
叱るときに暴力を用いると悪影響を与えてしまう
子どもを叱るときに、叱る親の方が感情的になって怒鳴り散らしたり、殴ってしまったりするような場合があります。しかしそのようにしても、子どもに対する教育的効果はほとんどない場合か、ネガティブな影響を与えてしまうことがあります。
例えば、「ちゃんと靴をそろえなさい」「ドアはちゃんと閉めなさい」などと母親が何かちょっときつめに注意したようなとき、言われた子どもがすぐにかんしゃくを起こして母親を叩いたり、物を投げるといった行動を取るようになってしまったケースがあります。
この子どもは幼稚園などでも自分の思い通りにならないと他の園児を叩いたり、床に大の字に寝そべって暴れたりという態度を取ってしまっていました。幼稚園では乱暴で扱いにくい子どもとして周りから敬遠されてしまっていたそうです。
生まれながらにして粗暴だったり、周囲から嫌われるような性格を持って生まれる子どもはいません。子どもの性格に問題が生じたのであれば、それはそこまでの生育環境や、生育過程に問題があったということです。
この子どもについて、どういう環境下で育てられたのかを調べてみたところ、両親の間にトラブルがあったことが判明しました。父親が酒好きで、酒に酔ってはよく母親と喧嘩をしていたのです。喧嘩と言ってもかなり激しいもので、口論に留まらず暴力が出る幕もしばしばあったようです。その子どもはこういった両親のあり方を見て育ち、しかも父親は子どもが言うことを聞かないときにしばしば怒って殴りつけていたそうです。
子どもは親にとうていかないませんので、殴られると泣いて母親の元に逃げていっていました。しかし、父親がいないときになると、今度は母親に叱られたときに母親を叩いたり、噛みついたりといった暴力的な反抗を示すようになってしまいました。どんなふうに厳しく叱ってもこの行動はやまず、物を投げたりといったようによりエスカレートしていったといいます。
この子どもは成長する過程で間違ったメッセージを受けとってしまっています。他人に自分の意志を通すためには、父親がそうするように暴力を使うと効果がある、という考え方を身につけてしまっているのです。
父親をはじめとする大人には力でかないませんが、幼稚園の園児ならば自分とそうかわりません。気に入らなければ暴力をふるい、そうすれば自分の思いを通すことができるという理解をしていますので、何かあるとすぐ手を上げてしまうようになったのです。結果、周囲から距離を置かれるようになってしまいました。
このように、怒鳴ったり殴ったりして子どもに言うことを聞かせていると、子どもが誤った考え方を身につけてしまうこともあります。そのようにならないようにするためにも、感情が高ぶった場合でも親はそこで我慢し、子どもに接することが非常に重要です。怒鳴ったり殴ったりせず、子どもにきちんと口で言って聞かせることが大事なのです。
つい感情的になってしまったときにはすぐに謝る
母親の多くは、毎日自分の子どもを厳しい調子で叱ってしまっていることでしょう。宿題をしようとしない、片付けをしない、言いつけを守らない……子どもを叱ってしまう理由はさまざまで、しかもいろいろ転がっているものだからです。
しかしちょっと立場を変えて考えてみましょう。自分が何かに集中して作業をしようとしているときに、脇から「ちゃんとやりなさい」とか「うまくやり遂げなさい」と始終言われていたら、どうでしょうか。集中しないと難しい作業だというのに、いろいろ言われるせいでとても集中できずに結局失敗してしまうことになってしまうのではないでしょうか。
このように、子どもに対してやかましく小言を言い続けることで、子どもは物事に集中できなくなり、平静でいられなくなってしまうことになります。叱られてしまって、また叱られないようにうまくやらなきゃと感じれば感じるほど集中できずに失敗してしまい、さらに叱られてしまう……といった悪循環に陥ってしまうのです。
確かに子どもがやることを見ていると、親として看過できずつい叱りたくなることはあるかと思います。そういった時でもやかましく小言を連発するのではなく、静かな言い方で言って聞かせるようにするほうが効果が上がるということを覚えておきましょう。
とはいえ親も人間ですから、つい感情的になってしまうこともあるでしょう。気づくとまたやかましく小言を口にしてしまっていることもあるかもしれません。場合によっては、「そんなことする子はうちの子じゃありません!」などと言ってしまっていることもあるでしょう。
しまった、と思ったのであれば、その場できちんと子どもに謝罪することが大事です。「さっきはついイライラしてひどいこと言っちゃってごめんね。ホントはママ、あなたのことが大好きよ。悪いことしたわ、ごめんなさい」といったように、わかりやすくきちんと謝ることです。
感情的な言葉を口走ってしまった場合でも、その後にきちんとフォローを入れれば子どもは安心することができます。親でも間違うことがあるということ、そして、間違いに気づいたらきちんと謝ってくれるということを知ることで、子どもはより親のことを信頼してくれるようになるはずです。
更新日:2019/11/29|公開日:2015/10/28|タグ:叱る