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小さいころからの暗記学習は子どもの好奇心をダメにする?

暗記学習

最近では中学校や小学校で受験するという子どもが増え、子どもがまだ幼いころからいろいろな勉強や習いごとをさせている家庭も多いといいます。そんなふうに幼いころから勉強をさせることには何か問題はないのでしょうか。

 

好きなことで食べていくのと受験戦争、どっちがたいへん?

およそ親であれば、自分の子どもの人生はよりよいものになってほしいと思うものかと思います。できれば勉強の方もしっかりできて、一流と言われるような大学や企業に就職して、幸福に生きていってほしいといった感じでしょうか。あるいは、勉強なんて適当でいいから、自分の好きなことをうまく見いだしてそれをずっと続けていられることが幸福な人生だ、と考えるような親もいるかもしれません。

 

確かに、勉強がきちんとできることや、受験戦争に勝利して一流の大学や企業に入ることがすべてではありません。人生を豊かに生きるには、大好きといえるような趣味をたくさん持つこともたいへん重要な要素です。しかし一方で、勉強は完全に放り出してそうした好きなことばかりしているというのはそれはそれで問題だと言えます。

 

例えば、サッカーに打ち込んでいる子どもがおしなべてプロサッカー選手になれるわけではありません。野球が好きだという子どもがみな大リーガーになれるわけでもありませんし、アニメが好きな子どもが全員有名なアニメ映画監督になれるわけでもないのです。このように、自分が好きなことだけにうちこみ、それで一生涯生計を立てていくというのは並大抵のことではありません。ある意味では受験戦争を勝ち抜くよりハードな道のりであり、他の人がまねできないほどの才能と、そして血のにじむような努力をすることが必要になります。

 

仮に、子どもが他者の追随を許さないほどのすばらしい才能を持っていて、かつ、子どもがそうした道に進むのに必要な教育を完全に与えることができるだけの金銭的余裕を親が持っているのであれば、勉強は気にしなくていいから自分の才能を伸ばすことに専念しなさい、と子どもに指導するのもいいかもしれません。

 

しかし、それほど才能があるわけでもなく、あるいは金銭面でのバックアップが難しいような場合には、子どもに好きなことで食べていけばいいと簡単に勧めるのは困難かと思います。好きなことはあくまで趣味にしておいて、大人になってからきちんと食べていけるように、そして社会の役に立つ人間になれるような頭の良さを育ててあげることが大事になってきます。

 

詰め込みによる暗記学習が子どもの好奇心を潰す

ここで注意する必要があるのは、「頭の良さ」とは試験でよい点数を取ることとイコールではないということです。

 

「頭のよい人」というのは、自分の周りで何かトラブルが発生したときに、状況に合わせて判断したり行動したりすることができる判断力や、柔軟な思考の力、あるいは創造性といったものを有している人のことを指します。さらに、無味乾燥な知識ではなくきちんと体系立てて理解された教養も必要です。子どもを教育する際には、試験でよい点数を取ることを目指すべきではなく、子どもをこのような「頭のよい人」に育てることを目指すべきなのです。

 

とはいえ、実際に受験のための勉強をする際には試験でよい点数を取ることが第一になってしまいがちです。それも当然といえば当然で、受験で大事なのは1点でも多く点数を稼ぎ、目標とする学校の合格ラインを超えることだからです。実情がこうである以上、試験でよい点数を取ることを目指すなと言うつもりはありませんが、同じ点数を取る場合であっても「頭の良さ」に資するやり方と、そうではないやり方があります。

 

受験勉強というと、なにはおいても暗記、と考えている人が多いのではないでしょうか。受験勉強で覚えなければいけない知識の量は膨大です。例えば漢字、熟語、英単語に数式、化学式、年号などなど、その用途も分野も多岐にわたります。こうした内容を試験までに間違いなく記憶しなければならないわけですから、そういう考え方になるのも仕方がありません。

 

こうなってくると、何十回も漢字の書き取りをしてみたり、英単語や年号などをとにかく丸暗記したりといったように、いわゆる詰め込みによる暗記学習をすることが一番だと思ってしまいがちです。ところが、そんなことを繰り返していると、人間は心も身体もすっかり疲れ切ってしまいます。

 

人として成長する時に必要となる要素には、あふれんばかりの好奇心と、豊かな感性とがあります。好奇心が枯れ果てていたら何かに興味を向けることができなくなります。そうなれば新しい知識を取り入れることもできなくなってしまうでしょう。感性に乏しければ他人とうまくコミュニケーションを取ることが難しくなる上、美しいものに感動すると言ったような精神の豊かさを手に入れることもできなくなります。

 

男の子の場合、科学的な分野や技術分野など、新たなものごとを生み出す分野が得意であることが多いものですが、こうした分野はそもそも好奇心が働かなければ成立し得ないものだと言うことさえできます。

 

好奇心は、自分の知らない「何か」に出会ったとき、その性質や働きなどについて解明しようとする時の原動力になるものです。そして好奇心というものは、自分の外側から刺激を受けることによって発揮されます。自然の中でのびのびと活動したり、大勢の友だちとふれ合ったりすることによってそうした刺激を経験することができるわけです。

 

受験勉強のためにそうした刺激を断ち、詰め込みによる暗記ばかりしていたら、好奇心の発露する機会が失われてしまいます。さらに言えば、暗記学習をする際には好奇心が邪魔になってしまいます。今日一日で漢字を30個覚えなければいけないという時に、「『暗』という字はどうして『日』へんに『音』なんだろう?」などとやっていたのでは間に合わないからです。

 

幼いころから詰め込み学習を続けてきた子どもは、ものを覚えるために「不必要」な好奇心を殺すすべを自然に身につけてしまっているのです。しかしながら、好奇心が死んでしまっている子どもは、成長しても「頭がいい」人間には育ちません。一方、たとえ勉強であっても好奇心一杯に取り組んできた子どもは、「どうして?」が解消されることによる楽しさを勉強にも見いだすことができ、成績も伸び、最終的に「頭がいい」人間に育ちます。

 

子どもの好奇心を伸ばすことができるのは毎日の授業や勉強ではありません。自然とふれあい、大勢の友だちとふれ合って遊ぶことによって、「これは何?」「どうしてこうなるんだろう」といった経験をすることで芽生えていくものです。そしてそのような好奇心を満足させた経験が多い子どもほど、勉強に対しても好奇心いっぱいで主体的に取り組むことができるようになります。

 

受験戦争を勝ち抜くには覚えている知識がどれだけ多いかは確かに重要です。しかしながら、そのためだからといって幼いころから詰め込み学習ばかり受けさせ、本来子どもが積めるはずであった経験から遮断してしまうことは不幸な結果を生む確率を高めます。

 

それよりもむしろなるべく子どもには幅広い経験をさせ、好奇心を磨く場を提供してあげることの方が重要です。その方が、結果的に受験勉強の学習効果も上がりますし、最終的な結果もよくなると思うのです。

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