facebook Twitter はてなブログ feedly

言語の処理はどんなふうに行われるのか

言語

人間に特有の脳の機能といえば「言語」を連想する方も多いと思います。この言語はどのように発達していくのかについて見てみましょう。

 

赤ちゃんの言葉の発達

生まれてから9ヶ月目ぐらいに入ると、赤ちゃんは言語を獲得するための準備に入ります。この頃には赤ちゃんにはさまざまな変化が一気に起きるので、その様子をさして「九ヶ月革命」など言うこともあるほどです。

 

この時期の赤ちゃんは、自分、お母さんやお父さん、そして物体という3種の存在について関係を理解していることが分かっています。例をあげれば、ある玩具を通じてお母さんと関係を築くといったことを理解し始めたり、他の人の心理的な動きをより理解するようになったりするのです。

 

また、この時期の赤ちゃんは自分が欲しい物体を取ってもらうために指さしをしたり、自分の前にそうした物体がなくても頭の中でそれを想起できるようになっています。

 

その上で、赤ちゃんは1歳ぐらいから言語を獲得し始めます。当然ながら個人差はありますが、まずは1歳ぐらいで一語文(「マンマ」「バイバイ」など)を使い始め、1歳半になるとこれが二語文(「ブーブー、いっぱい」)になり、2歳半に達するころにはそれよりもかなり複雑な文章を組み立てることができるようになります。

 

赤ちゃんが使う言葉は1歳半ぐらいから急に語彙が増え、百個ぐらいの言葉を使えるようになるころから文法的な部分も発達を示し始めます。そして2歳半ぐらいにはそれなりの文法に基づいた会話ができるまでになり、その後4歳ぐらいでまだ文法的には間違ったりするもののスムースな会話を行えるようになります。

 

そのぐらいまでの子どもは考えるときに独り言を言ってしまったりします。これはまだ言葉を外に出さずに心の中で自分の考えをまとめることができないからです。口に出さずに心の中で自分の言葉をまとめる「内言」ができるようになってくるのはだいたい5歳ごろになります。

 

内言を獲得するぐらいの時期になると、TVや絵本などの媒体から文字言語を身につけ始めます。それよりも前の音声言語だけの時期には、言語は自分の周りいる人との意思疎通の手段でしかないわけですが、文字言語を獲得してから小学校に通学し始めると、知識を学んだり思考を組み立てたりするという側面が強くなっていきます。

 

言語を処理する部位はどこにある?

人間の耳が音を感知するメカニズムは生まれたときにはすでに形成されていて、大人とあまり変わらないと言われます。つまり、成長するとともに言語機能とあわせて発達してくるのは音を正確に聞き取る力ではなく、耳で聞き取ったを脳で認知して言語として表現するための機能の方だということになります。

 

人間の脳が持っている機能のうち、言語の処理を担当している部分は左脳にあるのが普通です。右利きの人の場合は95%以上の人が、そして左利きの人であってもおよそ80%ほどが左脳にそうした部分を持っています。残りの20%ほどの人は、右脳にそうした部分を持っている人と左右同じぐらいになっている人が半分ずつぐらいに分かれます。

 

このように、言語の処理を担当している部分を持っている側の脳の半球のことを言語優位半球と呼びます。言語優位半球が形成される理由やプロセスはまだ分かっていません。

 

まだ言語を確立していない生まれたばかりの赤ちゃんに言語を聞かせても言語優位半球が反応することが分かっており、赤ちゃんとして生まれる時点ではすでに優位半球が存在しているらしいことは分かっています。

 

人間が使う言語というのは複雑なものであり、それを過不足無く処理したり脳の中で混乱を招かないようにするには生来柔軟性が高い片方の半球に偏るように機能を分布させたほうが有利だから、とする説もありますが、詳しいことは分かっていないのです。

 

オール脳で行われる言語の処理

アメリカの研究者の中には、母親のお腹の中にいる段階では赤ちゃんの右脳と左脳に形態面での相違が見られるとする人もいます。これははっきりと確かめられたわけではありませんが、乳幼児期の子どもの脳では大人の脳ほど言語優位半球がしっかりと固定されているわけではないことは分かっています。

 

たとえばてんかんの治療をするために脳の一部を切除することがあるのですが、そのときに左脳を切除すると、言語優位半球にある機能が右脳に移動するということが確認されています。これは年を取った人でも起きますが、患者が3歳以下である場合には特によくおきるといいます。

 

言語優位半球が完成する時期ですが、個人差はあるにしてもおよそ6歳ぐらいでいちおうの山場を迎えるのではないかとする説があります。

 

子どもが5歳ぐらいになると、それまでの音声言語中心から文字言語のほうも身につけ始めます。このようにして文字言語を獲得し始めるとき、言語優位半球では何か機能面での変化が起きるのでしょうか。

 

音声言語の場合、それを処理するのは左脳のブローカ野とウェルニッケ野と言われる部位となっています。前者は話す際に重要な機能を果たし、後者は理解するときに重要です。

 

そしてその2つの部位があるシルビウス溝と呼ばれる部分の周囲もあわせて、音声による言語の処理に関係していると言われています。そして文字言語を処理する段階になると、利用する脳の範囲がさらに拡大することが分かっています。

ウェルニッケ野、ブローカ野、シルビウス溝

 

どちらかの半球が優位半球となるとは言え、もう片方の半球がまったく使われないということはありません。脳の様子を画像処理して研究することができるようになってから研究が進んだ結果、優位半球ではない側にも反応が見られることが判明しています。つまり、両方の半球が互いに補い合っているということが分かったのです。

 

言語と脳の機能は密接につながり合って複雑な関係を構築しています。画像研究の技術の進歩により、さらなる発見が期待されています。

※当サイトではアフィリエイトプログラムを利用しています。

このページの先頭へ