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大手塾の参入も相次ぐ低学年向け塾の現状

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低学年向け塾

塾や予備校は基本的には全て、進学を目標に勉強を教え、受験の指導をするものです。しかし、小学校3年生以下の低学年や、幼稚園くらいの年齢の子供たちが通う塾は、少し違った側面を持っています。

 

塾が用意している低学年コースでは、勉強への意欲を引き出す事に重きを置き、他にも、子供を預かる学童保育の機能を兼ね備えた塾も登場しています。あらゆるニーズに応える塾が、近年参入する低学年教育の現状は、どのようなものなのでしょうか。

 

大手塾の低学年コースと低学年向けプログラムの増加

中学受験のために通塾して勉強をするのは小学校3年生の2月から受験までの3年間というのが定番です。低学年のうちは様々な事柄に興味を持ったり、外への関心を広げたり、勉強する事の楽しさを知ったりする事が大切で、低学年のころから塾にたくさん通ったり、先行して勉強すれば良いというわけではありません。

 

ですが、早めに塾に通い始めて、勉強する習慣を身に付けたり勉強の楽しさを知るといった「地ならし」をしておく事は、先々の受験のために効果的であるともいえます。

 

中学受験塾大手のうち、サピックスには低学年のコース、日能研には「ユーリカ!きっず」、四谷大塚には「リトルコース」という低学年を対象としたコースがあり、どれも学ぶ事への積極性を呼び覚まし、考えるという行為の基礎を築く事を目標としています。そうした土台の無いうちに知識だけ教え込む事は、むしろ中学受験に悪い影響を与えるのです。

 

低学年向けのコースを作るのには、塾としてもメリットがあります。少子化で生徒の数が減る中で、早いうちから塾に入ってもらう事には囲い込みの効果があり、厳しい塾業界を生き残っていくためにも大きな役割があります。

 

ですが、低学年のうちはまだ考える力が未熟で、そうした状態の子供に勉強を教える事は難しいものです。そのため、低学年の生徒に教えるための専用のやり方やカリキュラムを組まなくてはなりませんし、教えるのは低学年専門の講師でなくてはなりません。

 

いくら中学受験に関しての教材に詳しくても、それは低学年向けの教材を作る参考にはならず、いちから低学年の生徒の学年や成長に応じた教材を開発していく必要があります。

 

そうした手間が必要な割に、低学年生の通塾日は週に1回程度で、高学年生に比べると格段に少なく、しかし高額な授業料を要求するわけにもいかないという理由から、収益は少なくなってしまいます。そのため、オリジナルの低学年向けのコースを用意できる塾は限られた大手塾だけです。

 

そんな中で「ボランタリーチェーン」という事業形態が、小学生を対象とした塾の間で話題となっています。これは企業が開発した商品を加盟店が導入するしくみで、フランチャイズチェーンと違い、導入する側は、商品を開発した企業のグループに入る必要がありません。

 

塾業界でも、外部の業者が低学年の子供を対象とする事を想定して開発したプログラムを導入するやり方が流行しているのです。

 

数学的な感覚を鍛えるパズル教室や、理数に強くなるロボット製作教室など、その種類は多岐に渡り、習い事と同じような気持ちで通えるため、生徒や保護者としても塾が身近なものとなります。

 

遊びの中で数学的なセンスを育む「パズル道場」

テキスト教材と、教具パズル、対戦型パズルの3種類の学習教材を使って、遊びながら思考力や数学的なセンスを無理なく育成する事ができます。仮説をたてたり、論理的に考えたりといった事に加え、空間把握能力も育まれます。

 

生徒には自分の力で考える事が求められ、指導者は指導らしい指導を行いません。自力でパズルを解いていく中で、粘り強さも身に付き、それは先々中学受験の時に難しい問題に直面した際にも諦めずに取り組む姿勢の元になります。

 

eisuという三重県の塾が開発したもので、全国のあらゆる塾がこのプログラムを導入しており、それらの会場では毎月「パズル検定」が行われます。

 

国語版もあり、こちらは語彙力や国語のセンスを鍛える事を目的とした内容になっています。

 

カードゲームで論理的な思考力を磨く「アルゴクラブ」

「算数オリンピック数理教室アルゴクラブ」では、アルゴというメイン教材を使用し数理的なセンスを磨きます。

 

アルゴは算数オリンピック委員会と東京大学数学科の学生、また数学者のピーター・フランクル氏が共同で開発したもので、論理的な思考力、集中力、推理力、記憶力、さらにコミュニケーション能力などまでも養う事を目標とした、カードゲームタイプの教材です。

 

株式会社アルゴクラブが開発と運営を行っており、この会社では中高一貫校の生徒を対象とした塾「SEG」の理事長である古川昭夫氏や、ボランタリーチェーンの「花まる学習会」の高濱正伸氏などが役員を担っています。

 

ロボット製作を通して理数的な体験を得る「クレファス」

クレファスでは、マサチューセッツ工科大学と、ブロック玩具で有名なレゴ社が共同開発したロボット製作のキットを教材として、ロボット製作を通して科学を学びます。クレファスという名前は、「create」「future」「science」からとったものです。

 

課題の発見、解決から、実際にプログラミングを行うところまで学ぶ事ができ、毎回課題に沿ったロボットを作り、プログラミングして動くようにしなくてはなりません。想像力、想像力、科学技術を育成し、理科的な原理について言及する授業も行われます。

 

読む算数で文章題に強くなる「玉井式国語的算数教室」

教材開発者の玉井満代氏は、もともとドラマや舞台の脚本・演出をしており、玉井氏が書き下ろした、算数の問題を内容に含んだ子供向けのストーリー展開スタイルのアニメーション映像を見ながら算数を解いていくという流れで授業が進みます。

 

授業は毎回「きほんのおはなし」「ものがたり算数」「かたちの形」という3つの区分で構成されています。

 

「きほんのおはなし」は、アニメーションを見ながらその映像と連動したプリントで、新しい単元の基礎について学習します。

 

「ものがたり算数」ではストーリー形式のアニメーションを見て、そこに仕込まれた算数の問題を、プリント教材を用いて解いていきます。ストーリーの展開を楽しみながらも問題を解く事で、算数で躓きがちな文章題を解くための「イメージング力」が鍛えられます。

 

「かたちの形」では、図形の展開図や、それが組みあがって立体になっていく様子、また立体の切断面などを、アニメーションを用いて分かりやすく説明する事で、図形に関してのセンスを鍛えます。ゆっくりと子供にも分かりやすいように工夫され、難易度も幅広く用意されているため、子供の興味が持続します。

 

他にも「図形のきわみ」という玉井氏が開発したプログラムがあり、こちらのテーマは「図形脳」を育成するというものです。

 

あらゆる学力の土台を鍛える「グリムスクール」

ベネッセが運営するグリムスクールでは、読書によって、あらゆる学力の土台となる国語力を育みます。

 

子供の発達段階に合わせて選定された本が課題として渡され、子供たちは宿題として、指示されたページを、通常の読書と同様に授業の前に読んできます。

 

授業時には、「作戦」と呼ばれるゲーム形式で、課題本についてのクイズが出題されます。この「作戦」は活発に盛り上がる遊びに近く、子供たちは競争心から、ゲームに勝とうと一生懸命になります。

 

ですがこのクイズは本をきちんと読んでいなければ答えられないので、正解した生徒は「次の授業も」と意気込み、正解できなかった生徒は「次こそは」と気合を入れ、意欲を持って読書に取り組む事ができるようになっているのです。

 

読書が楽しくなる「速読」

速読は子供だけではなく大人の中でも広まりましたが、日本速脳速読協会が運営する、塾が導入できるプログラムとしての速読が流行し、全国の1700以上もの学習教室や塾に導入されています。

 

この速読というのは、速く読むために「飛ばし読み」や「斜め読み」をするという事ではなく、理解や記憶力を伴ったまま、ただ文章を読む速さそのものを引き上げるものです。

 

速読を身に付ける事には「読書が楽しくなる」「勉強に役立つ」「テストや受験で役立つ」といった効果が期待できます。3つ目の「テストや受験で役立つ」については、日本速脳速読協会のホームページにおいて、「読書の速さと偏差値は比例する」という調査結果が公開されています。

 

授業をしない塾「無学年進度別プリント教材教室」

学年が低いうちから通う学習教室というと、多くの人が公文式を思い浮かべるでしょう。週に2回、生徒たちが都合の良い時間に教室へ行き、前回与えられた宿題を指導員に提出します。指導員は課題を指示するだけで、授業をするわけではありません。生徒はその回で行うように指示されたプリント教材に取り組み、指導員の許可がおりれば帰宅できます。

 

生徒それぞれの学力に合った難易度と量の課題を見極め、生徒が学習するのを支える役割を持つのが指導員で、子育てがひと段落した主婦や、教師をしていた人たちがトレーニングを受けて、自宅などを教室として開放する事で全国に普及しました。

 

また「学研教室」も同じような学習教室で、他にも河合塾と日能研が連携して「ガウディア」という学習教室を開いています。こうした学習教室は「無学年進度別プリント教材教室」と呼ばれています。

 

それらの教室は授業をするという形式ではないため、塾とは別のものとして扱われていましたが、塾が低学年コースを開いたり、多くの生徒を相手に一斉に授業をするやり方をする塾ばかりではなくなってきたりといった近年の塾業界の動きから、区別される事が少なくなり、同じものとして扱われる事が多くなりました。

 

無学年進度別プリント教材教室とはやり方は違っていますが、テレビなどでも特集され大流行している「花まる学習会」という低学年学習教室もあります。

 

無学年進度別プリント教材老舗の「KUMON(公文)」

創始者で高校の教員であった公文公氏が1954年に、小学2年生の長男が自習形式で学習できるように、ルーズリーフに計算問題を書いた事から公文が始まりました。

 

公文式で目指すのは、高校並みの学習が自然にできるようになる事です。その目標から逆算し、算数・数学では、幼児にもちょうど良い「数かぞえ」から、高校生の学習する「微分・積分」といった難易度の高い範囲まで、教材が広く細やかに段階分けされています。

 

公文で教えているのは国語と算数と英語で、学習指導要領で定められた履修事項についても絞り込み、中学校や高校で学ぶ事に繋がっていく内容のみで教材が組み立てられています。

 

他の日本の民間教育機関に先駆けて、1970年代には海外進出を果たしました。世界各国の言語に訳された公文の教材は、今では世界の50の国と地域に広がり、教室も日本国外だけで8400教室を展開しています。

 

あらゆる教科をカバーする豊富なコースが魅力の「学研教室」

学研教室では国語と算数を切り離さず、並行して学習します。国語には「国語の読む力・書く力は、全ての学力の土台」、算数には「算数や数学は筋道を立てて考える力を養う」という理念があります。

 

小学校1年生以上を対象に、「小学英語コース」や「こども英会話」、「読書・活用コース」、さらに「科学実験教室」なども教室によって開講されています。

 

読書・活用コースは月に5000字から10000字以上の読書や、800字から1000字以上の作文をする事で、長文読解や作文の力を鍛える内容です。

 

科学実験教室では、あらゆる科学実験を実際に体験する事で、理科に対する知的好奇心を育みます。また違う学年同士でも合同で実験をするので、協調性やコミュニケーション能力も養われます。

 

学研エデュケーショナルが運営しているため、全国の学研塾ホールディングス傘下の塾とも連携しています。

 

本質を理解する学習を目指す「ガウディア」

ガウディアは2008年から展開されている、日能研関東と河合塾グループの共同出資により運営する、無学年進度別プリント教材教室です。

 

多様な問い方や発展的な問題を用意する事で、無学年進度別プリント教材がおちいりやすい、単なる繰り返しの学習からの脱却を目指しています。状況を理解し、それに応じて知識を運用する力を育む事を目標に、文章題を多く含んだ教材を作成しています。

 

子供の特性を活かした授業が楽しい「花まる学習会」

公文式などとは違い、「幼児の特性」を活かした一斉授業を行います。年中・年長コースは60分、小学1年生から3年生のコースは90分間、ノンストップで授業を行います。

 

宿題は「1日10分の花まるタイム」と呼ばれ、日本の名文や童謡を転写する教材と、計算問題の答えを短時間で導く練習をする教材があります。

 

よくある、学校や塾で行う指導とはずいぶん違っていて、国語や算数を「教科」として教えるというよりも、「読み書きそろばん」を教えるといった内容です。

 

我先にという具合にみんなで図形問題を解いた後、10分も経たないうちに、名文の音読をしているといった授業で、始終指導者も子供たちもハイテンションで授業に取り組んでいるのが特徴的です。

 

子供はおとなしく座って授業を受ける事はできなくて当然で、身体構造としても、活発に手足を動かした方が集中できるという、子供の特性を活かした授業を目指しています。

 

オリジナルテキストの「なぞなぞペーパー」、通称「なぞペー」は、代表の高濱正伸氏が開発したもので、他のテキストもほとんどが花まるオリジナルです。

 

子供たち4~5人のグループが1つのテーブルにつき、そこに講師が1人つくので、子供たちが分からない部分については即座に講師が対応できるなど、行き届いた指導が可能になっています。

 

花まるが目標とするのは、「生きる力を持つ子供たちを育てる事」です。成功した大人は共通して実体験の豊富さを持っているため、子供たちに実体験の機会を多く持ってほしいという理由から、通常授業とは別に、特別講座として野外活動も行っています。

 

高濱氏は、子供たちが幸せになるためには「魅力的な人、メシが食える大人」になる事が大切だと繰り返します。カリスマ塾講師としても名高い高濱氏は、講演会やメディアへの出演などで引っ張りだこになっています。

 

拡大する学童保育の機能を兼ね備えた塾

ベネッセ教育総合研究所の調査によると、小学校1年生の子供を養育している母親のうち、半数ほどが仕事をしています。また、高い学歴を持つ母親は子供の教育に関しても力を入れる場合が多いという調査結果もあります。そうした「子供の教育に力を入れる働く母親」という層の求めるものとして近年広まっているのが「民間学童」と呼ばれるシステムです。

 

放課後、仕事を終えた保護者が迎えに来るまでの間を過ごす場所、という点では一般的な公立の学童保育と同様ですが、民間学童では、学校の宿題をこなす以外にも、学習的な指導のプログラムが用意されています。

 

このサービスはキッズベースキャンプという民間学童が2006年に開始し、東急グループに入った事によって展開地域を広げ、他の企業も同じようなサービスを始めて増えていきました。

 

民間学童では送迎を行っている事も多く、公立学童よりも遅い時間まで子供を預かってくれたり、プランも週に1度だけのものから毎日通うものまであったり、保護者と子供のニーズに細やかに対応したサービスを提供しています。

 

こうしたサービスを行うためにはきちんとした設備や人材が必要なために多くの費用がかかるうえ、子供たちを長い時間預かると、事故などの危険性も高まります。

 

費用やリスクなどを考慮すれば事業としては割に合わないと考えられますが、それでも塾の立場から見れば「子供の教育に力を入れる働く母親」と、その子供を囲い込む戦略になるため、大手塾の参入が相次いでいます。

 

個別指導のスクールIEを運営する株式会社拓人は2008年に「英語漬け」の環境で子供を預かる「キッズデュオ」を開き、特に国際的な子供になってほしいと希望する保護者に選ばれています。

 

2011年以降は人気の塾を運営する企業などが次々参入し、サピックスグループによる「ピグマキッズくらぶ」、明光グループによる「明光キッズ」、リソー教育グループによる「伸芽’sクラブ(しんが~ずくらぶ)」、学研グループによる「学研キャンパス」などがサービスを開始しました。

 

学研は他にも、市進との共同出資により、子供の主体性を重視し、子供が持っている力を信頼してその自立を支えるという理念のモンテッソーリ教育に基づく「クランテテ」を立ち上げています。

 

栄光ゼミナールのグループ会社であるエー・アンド・アイは、自習時間から授業、食事、送迎まで提供する、塾と学童が融合した「ワイズ」や、他にも「アカデミーガーデン」などを運営し、それぞれ連携して子供と保護者に安心と教育を提供する、放課後支援サービスに力を入れています。

 

学童保育への入所を希望しながら、定員などの理由から入所できずにいる待機児童数は厚生労働省の調査結果よりもずっと多く、潜在的には40万人を超えていると言われています。

 

こうした社会状況の中で、生活を支える機関としての働きからも、民間学童はこれからも増加すると見込まれています。子供を預かる塾が、共働きの保護者が増える日本の社会を支えているのです。

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