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子供の夜ふかしの危険性

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夜ふかしする子供

夜ふかしをして睡眠時間の短い子供が、近年増加しています。夜ふかしの習慣が定着すると、様々な悪影響が身体に出てきます。しかし、多くの人にそのような自覚はないようで、便利なものが溢れかえっている現代では、夜ふかし傾向はさらに加速しています。一度立ち止まって、子供の夜ふかしについて今一度考えていきましょう。

 

日本の赤ちゃんは睡眠時間がとにかく短い!原因は夜ふかし

現代の日本人の睡眠時間が短いという事実は、いろんなところでよく耳にすると思います。日本人の平均睡眠時間は、1年で1分程度短くなっていると言われています。

 

1960年と2015年の日本人の平均睡眠時間を見てみると、

・【平日の平均睡眠時間】1960年:8時間13分、2015年:7時間15分

・【土曜の平均睡眠時間】1960年:8時間13分、2015年:7時間42分

・【日曜の平均睡眠時間】1960年:8時間31分、2015年:8時間3分

となっており、55年間で、平日58分、土曜31分、日曜28分短くなっています。(出典:NHK放送文化研究所「日本人の生活時間」2015年版、1960年版)

 

このような生活環境下で育つ子供は、必然的に睡眠時間が短くなる傾向にあり、乳幼児でさえも睡眠時間が世界一短い水準といった問題を抱えています。

3歳以下の子供の1日の総睡眠時間の国際比較

 

上記の国際調査において、日本の乳幼児の総睡眠時間は最も短く11時間37分で、最も長いニュージーランドより1時間40分も短い結果となっています。

 

上記(日本人の平均睡眠時間、3歳以下の子供の睡眠時間)はどちらも平均ですので、各個人・各家庭、年齢・時期などによっては、問題はもっと深刻化している場合もあると考えられます。

 

日本の乳幼児の睡眠時間が世界一短いのは、夜ふかしに原因があります。日本においては、22時以降に就寝する乳幼児が50%弱となっており、ヨーロッパ各国と比較しても異常な状態となっています。

赤ちゃんの就寝時間の国際比較

※「夜ふかし」というと、「何かイレギュラーなことがあり、いつもより遅くまで起きている」といった意味合いで使うこともあるため、「遅寝(おそね)」と表現した方がしっくりくる方もいるかもしれませんが、本記事では「夜ふかし」で統一して記載しています。

 

小さい子供の就寝時間・睡眠時間は、親の仕事状況や育児方針などに大きく影響を受けます。女性の社会進出によるワーキングマザーの増加、夜型人間の増加、子育てに対する価値観の変化などにより、夜ふかしをする乳幼児が増加したと推測されます。

 

しかし、他の国の乳幼児と違い日本人の乳幼児だけが、夜ふかし、短い睡眠時間に適応できる身体を有しているわけではありませんし、適応できるようにすぐに進化するわけでもありません。睡眠障害を抱える子供たちが増え、心身の健康や発達に問題を抱えるレベルにまで発展する可能性も考えられます。

 

夜ふかしは習慣化する!高校生の5割以上が0時以降に就寝

子供の睡眠における様々なアンケートや調査を見ていると、小学校低学年にもかかわらず「朝起きるのがつらい」「日中疲れる」などと回答しているのをちらほら見かけます。そういう子供の就寝時間を見てみると、概ね0時頃それよりも遅いといった具合になっています。

 

言うまでもなく、夜ふかしの生活は小中高と学年が上がる毎に定着化・習慣化していきます。小中高の就寝時間を見ていると、小学6年生の55.7%が22時以降に就寝、中学2年生の28.3%が0時以降に就寝、高校2年生の51.5%が0時以降に就寝となっています。

 

友達との話題についていくために、テレビやネット動画を見たりしている子供もいるでしょう。また、部活や塾で遅く帰宅し疲れているにも関わらず、宿題や勉強をしている子供もいるでしょう。いずれにしても、現代の子供は寝るよりも優先順位の高いことを抱えていると考えられます。

 

一方起床時間については早まる傾向にあり、小中高ともに7時までに起きている割合が7割程度となっています。

 

遅くまで夜ふかししているにも関わらず早起き傾向にあるため、どうしても睡眠時間は短くなってしまいます。

 

ここで少し疑問を持たれた方もいるかもしれません。例えば、0時就寝、7時起床とすれば睡眠時間は7時間となります。「睡眠時間は短すぎても長すぎてもNGで、最適な睡眠時間は7~8時間」ということをどこかで耳にした方も多いと思います。だとすれば、最適な睡眠時間を確保しているので問題ないのでは?

 

しかし、よく耳にするこの7~8時間というのは大人の話です。子供に必要となる理想的な睡眠時間は、小学生で10~11時間、中高生で8.5~9.5時間です。ほとんどの子供が慢性的な睡眠不足の状態で生活を送っているわけです。

ライフステージ 1日の必要睡眠時間
新生児(1~2ヶ月) 10時間~18時間
乳児(3~11ヶ月) 10~13時間+昼寝数回
幼児期(1~3歳) 12時間~14時間
4~6歳 10時間~13時間
6~12歳 10時間~11時間
13~18歳 8.5時間~9.5時間
成人 7時間~9時間
高齢者 7時間~9時間

※ショートスリーパー、ロングスリーパーといった人もおり、最適な睡眠時間は個人差があります。そのため、あくまで目安です。

 

夜ふかしは子供の健康に良くない

夜ふかしが健康に良くないというのは、新聞、テレビ、ネットなど、近年様々なメディアで取り上げられているため、認識としては周知徹底されているかと思います。具体的に子供の健康にどう良くないのか関心の高いものを挙げてみましょう。

 

夜ふかしすると成長できない

身体の成長や修復を行う成長ホルモンという脳下垂体から分泌されるホルモンがあります。成長時期の子供にとっては、とても大事なホルモンです。

 

この成長ホルモンは、22時~2時頃に分泌量が最も増加するのですが、そのためには寝ていないといけません。22時~2時にぐっすり寝ていれば、成長ホルモンの分泌量が増え、骨や筋肉の成長、ケガなどがあれば修復を促進させます。

 

22時~2時以外の時間帯でも成長ホルモンは分泌されるという近年の研究もありますが、夜ふかしをすると他のホルモンの分泌リズムが乱れるため、結果、成長のバランスが乱れると考えられています。

 

夜ふかしすると太る

夜ふかしと肥満の関係については、「富山スタディ」と呼ばれる有名な研究があります。富山大学大学院 医学薬学研究部 疫学・健康政策学講座は、平成元年富山県生まれの赤ちゃん約1万人を対象に10年以上の追跡調査を実施することで、子供の睡眠習慣と健康状態の関連性について研究を行いました。

 

その結果、3歳の時の睡眠時間が、10年後の中学1年の時の肥満に影響を及ぼすことが分かりました。3歳時点での睡眠時間が短いほど、中1時点で肥満になる確率が上がり、睡眠時間が11時間以上の3歳児と9時間未満の3歳児を比較すると、中1時点で1.6倍肥満になっています。

 

むろん、「睡眠時間以外の要因が、肥満化を促進しているのではないか?」とも考えられます。そこで、両親の肥満度、偏食(欠食、間食頻度 etc.)、運動不足、長時間のTVなどの項目で点数付けしてグループ分けし、できるだけ比較可能な状態にして調査しています(専門用語では、セレクション・バイアスを可能な限り排除)。

 

睡眠不足の習慣が肥満を招く理由として、自律神経と成長ホルモンバランスの変化が関係していると分析しています。睡眠不足は肥満以外にも高血圧、糖尿病、脂質異常症などになるリスクを高めると考えられ、「寝ぬ子は太る」として警鐘を鳴らしています。

 

睡眠の習慣化についても調査しており、3歳時点での就寝時間と小学4年時点での就寝時間を比較すると、むろん年齢が上がる毎に就寝時間は遅くなる傾向にあるが、3歳時点で早寝の場合、小学4年時点でも早寝の傾向にあります。つまり、就寝時間や睡眠時間についての習慣付けは、就学前からがベターというわけです。

 

夜ふかしは学力低下を招く

子供の夜ふかし、睡眠不足について、親として特に気になるのが学力との関係かと思います。

 

睡眠と学力についての調査はいろんな所で実施されていますが、文部科学省が行っている「全国学力・学習状況調査」においても、「毎日同じくらいの時間に寝ていますか?」という質問に対して、

「同じ時間に寝ている」「どちらかと言えば同じ時間に寝ている」と回答した子供は、

「あまり同じ時間に寝ていない」「全く同じ時間に寝ていない」と回答した子供よりも

学力が明らかに高い傾向があることが示されています。

 

従って、「学力が低い子供は、就寝時間が定まっておらず睡眠習慣が規則正しくない」と結論付けられます。

 

就寝時間や睡眠時間の違いが、学力に違いを生むメカニズムは、主として2つ考えられます。

 

脳や自律神経の機能低下

夜ふかし、睡眠時間が不安定な状態が続くと、体内時計がおかしくなり寝付きが悪くなってきます。結果、睡眠不足状態に陥ります。睡眠不足状態が続くと、睡眠により維持されている脳の神経細胞の働きが悪くなり、情報処理能力が低下します。

 

また、脳の視床周辺は自律神経をコントロールしている部分ですので、この部分の神経細胞の働きが悪くなると、自律神経の機能が低下します。自律神経というのは、内臓や血管などをコントロールしている神経です。

 

自律神経の機能が低下すると、倦怠感や不快感、いらだち、昼間でも眠くなる、集中力低下、無気力などの症状が出てきます。結果、勉強する意欲が低下します。

 

このように脳の処理能力の低下、勉強意欲の低下により、学力低下につながっていきます。

 

朝食の欠食

文部科学省の「全国学力・学習状況調査」においても、朝食を毎日きちんと摂っていない子供は、毎日欠かさず摂っている子供に比べて学力が低いことが示されています。朝食の欠食と学力低下のメカニズムについて、東海大学スポーツ医科学研究所の小澤治夫教授が調査・研究を行っています。

 

小澤教授の調査によると、高校生の7割以上が「授業中眠くなる」と回答しており、「眠気で集中できず授業が理解できない、勉強する意欲が沸かない」といった状態になっていることが分かりました。

 

授業中の眠気や勉強意欲低下の原因を探るために、高校生の血液検査を実施した結果、貧血(鉄分不足)が原因であることを突き止めました(男子の31.7%、女子の47.7%が貧血傾向)。

※貧血になると、倦怠感、目まい・立ちくらみ、頭痛、耳鳴り、動悸・息切れなどの症状が現れます。

 

貧血の原因を探るために、小中高校生10,447人を対象とした調査を実施した結果、朝食の欠食が貧血の原因であることを突き止めました。貧血状態の子供の多くが、朝食を食べておらず、栄養素も必要となる量の8割程度しか満たされていないことが分かりました。

 

朝食を欠食する子供は、学校によってばらつきはあるが、小学生で1割以上、高校生では3~5割になる学校もあることが判明しました。朝食を欠食する原因として、パソコン・スマホなどの使用過多による夜ふかし、睡眠習慣の乱れを指摘しています。

 

つまり、「夜ふかし→朝寝坊をする、目覚めが悪い→朝食を欠食(時間がない、食欲がない)→貧血状態になる→授業中の眠気、勉強意欲の低下→学力低下」といった悪循環が存在するわけです。

 

最近テレビに良く出ている予備校講師・林修先生も「大学生の学力が低下している」「東大の中下位層はレベルがかなり低下している」と警鐘を鳴らしていますが、夜ふかしも少なからず影響しているのかもしれません。

 

夜ふかしすると脳の海馬が小さくなる

近年の脳科学の研究により、睡眠時間の違いが脳の形態に影響を及ぼすことが解明されつつあります。

 

東北大学脳科学センターの瀧靖之教授は、脳と睡眠時間の関係を調べるために、5歳~18歳の290人の健康な子供を対象に調査・分析しました。その結果、夜ふかしをして睡眠時間が短い子供は、睡眠時間が長い子供よりも脳の海馬が小さいということが分かりました。具体的に言うと、海馬の灰白質の体積に違いが見られました。

海馬

 

脳の神経細胞の1つ1つは、細胞の核を含む細胞体と神経繊維からできており、情報処理を細胞体で行い、神経繊維を通して情報を別の神経細胞へ伝えます。細胞体と神経繊維は同じもの同士で集まって集団を作ることが多く、細胞体が集まっている所を灰白質、神経繊維が集まっている所を白質と呼びます。従って、脳は灰白質の部分と白質の部分に分かれます。

神経細胞

 

灰白質、白質

 

情報処理を行う細胞体の集まっている重要な所(灰白質)が、睡眠時間が短い子供は小さいわけです。このようなことが起こる原因は、睡眠時間が短いと、海馬の神経細胞が新しく作られたり、細胞分裂するのを抑制するのではないかと考えられています。

 

ここで重要なのは海馬の働きです。海馬は、本能的な行動や記憶に関与する部位で、成人後も細胞分裂を行う脳の中で唯一の部分です。海馬が損傷を受けていると、新しいことを記憶するのが困難になります。また、(仕組みはまだ解明されていませんが)脳にしまってある記憶を引き出すのにも海馬が重要な働きをしていると考えられています。

 

新しいことを記憶したり、思い出したりするための部位ですから、勉強には欠かせないですが、うつ病やアルツハイマー病などのいくつかの病気に深く関係している重要な部位とも考えられています。つまり、海馬が大きいと、人生においていくつかの病気を回避できる可能性が高いという指摘があります。

 

夜ふかしぐらいと深刻に考えていない人も多いと思いますが、脳の重要部分のサイズを縮小させてしまうほどに恐ろしい行動なわけです。

 

大人の夜ふかし文化が、子供を夜ふかしにした?!

日本では高度経済成長以降、長時間労働が浸透し、朝~夕方までが基本とされつつも実際には朝~夜まで働く労働環境にシフトしていきました。特にバブル期以降は、消費者の消費活動の時間帯が24時間・年中無休になっていったため(消費活動をそのように拡大促進させるために企業が戦略的に経営を行ったため)、労働環境はさらに悪化していきました。

 

最近になってようやく「長時間労働はいかがなものか」といった声がチラホラ出始めましたが、理想的な睡眠時間を確保するには、まだまだほど遠い状況かと思います。

 

そのような状況が当たり前の親世代のもとで育つ子供たちも、自然に睡眠時間が減少する力学が働いてしまいます。例えば夕食の開始時間や家庭内の物音が落ち着く時間は、高度経済成長以前と比べれば遅くなっており、夜型生活が当たり前になっています(「何時から夜」といった夜の定義も昔に比べると変わっているかと思います)。

 

親の労働環境の他にも、便利さによる夜ふかしの助長も挙げられます。消費者のライフスタイルの多様化が進み、コンビニ、スーパー、ネットカフェ、ゲームセンター、ファミレス・飲食店など24時間営業が当たり前になっています。

 

深夜のコンビニやファミレスで乳幼児と一緒にいる親などよく見かけますし、中学高校生が夜遅くまで眠らない街で過ごしている光景も珍しくはありません。

 

それでも「外は外、家は家」なら問題ないですが、インターネット、スマホなどが普及したこともあり、夜ふかしするだけのネタがあふれています。友達とチャット(LINE等)やメールなどでやり取りしたり、ネットゲームにはまったり、夜遅くまでテレビを見たりと、寝るよりも面白いことがたくさんあります。

 

厚生労働省の研究班は、中高生のネット依存の深刻度合を調べるために、2012年10月~2013年3月にかけて、全国の中学校140校、高校124校(生徒数約14万人)を対象とした調査を実施しました。

 

その結果、ネット依存が強く疑われる「病的なネット使用」の生徒が8.1%に上ることが判明しました(男女別割合は、男子6.4%、女子9.9%)。この結果から推定すると、全国でネット依存の中高生が51万8000人いると報告しています。

※ネット依存とは、ネットの過度な使用により健康や生活に悪影響が出る状態

 

ネット依存が疑われる「病的なネット使用」の生徒のうち、睡眠時間が6時間未満の生徒が43%、午前中の体調が悪い(常に悪い&しばしば悪い)と回答した生徒が24%となっており、ネット依存が強いほど夜ふかし傾向で、健康に害を及ぼしている結果となりました。厚生労働省は「ネット依存は健康に悪影響」として警鐘を鳴らしています。

 

実際、ネット依存が原因で睡眠障害になり、病院を受診する子供が急増しています。「スマホから逃れたいので学校にかくまって欲しい(授業や部活動中なら通信不可の言い訳ができるため)」と学校側にお願いする生徒もいることが報告されているほどです。

 

ネット依存による夜ふかしは、テレビの登場が大元かと思いますが、その後様々なマルチメディアが出てきたことを考えると、今後も夜ふかしのネタは加速的に増加していくと考えられ、睡眠障害を訴える子供も同時に増加していくと考えられます。

 

祖父母世代、親世代が生み出した夜ふかし文化は、子供世代にも受け継がれ、確実に浸透しているのは否めない事実です。

 

教育熱心も子供の夜ふかしに影響している?!

近年の少子化の進行により、一家庭あたりの子供の数は減ってきています。その結果、子供一人あたりの親の依存度・影響度が高まっており、教育熱心な親が増えていると感じます。

 

塾などで帰宅が遅くなり、帰宅後も宿題や予習復習などですぐに就寝できる状態ではないことが、夜ふかしに少なからず関与していると考えられます。実際、夜遅くまで進学塾で勉強する子供や電車の中で寝ている塾帰りの子供など、普通の日常風景としてよく目にします。

 

深夜まで勉強する子供に対して、「遅くまで勉強して、身体は大丈夫なの?早く寝なさい」と心配・注意する親よりも、「遅くまで勉強して偉いわ」とほめる親の方が多いのではないでしょうか。

 

結局、子供が自分から好きで夜ふかしを始めるパターンもあるでしょうが、大人の価値観やライフスタイルに影響を受け徐々に夜ふかし気味になり、いつの間にか夜ふかしが定着したというパターンが多いと思います。

 

夜ふかしをする子供が増えた原因は他にもあるでしょうが、いずれにせよ夜ふかし文化はここ数十年で浸透した健康的にはあまり好ましくない風潮です。数十年の急激な変化に、人間の脳や身体が適応できるように進化するわけがありません。まして、成長過程にある子供の脳や身体は、相当シビアな状況に置かれていると思われます。

 

子供の睡眠障害とは

夜ふかしによる睡眠不足が続くと睡眠障害を引き起こす可能性がありますが、子供の睡眠障害という疾患について詳しく見ていきたいと思います。子供の睡眠障害は、主なものとして「睡眠時随伴症(パラソムニア)」「概日リズム睡眠障害(サーカディアンリズム睡眠障害)」があります。

 

睡眠時随伴症(パラソムニア)

「睡眠時随伴症(パラソムニア)」は、睡眠時に発生する異常行動のことで、古典的な子供の睡眠障害です。

 

パラソムニアには、

・夜驚症:悪夢を見て突然目を覚したり、悲鳴や叫び声を突然上げて起き上がる症状

・睡眠時遊行症:睡眠中に脳は眠っている状態で起き上がり、部屋を歩き回ったりする症状(「夢遊病」という俗称で知られているもの)

があります。

 

どちらの症状も原因は解明されておらず、日中の生活における緊張や不安、睡眠時の脳の働きの未発達などが原因と考えられていますが、成長過程で基本的には自然消滅していきます。

 

そのため、睡眠不足状態が長期間にわたって続くことはなく、発達にも特に重大な影響もないため、基本的に治療は不要とされています。(眠気や不快感が次の日にも継続するようなイレギュラーケースは治療が必要な場合もあります)

 

概日リズム睡眠障害(サーカディアンリズム睡眠障害)

世の中は24時間周期で回っており、人間の体内時計も通常ほぼ24時間周期となっていますが、この体内時計が狂ってしまうために起こる睡眠障害が「概日リズム睡眠障害(サーカディアンリズム睡眠障害)」です。

 

前述のパラソムニアと違い、サーカディアンリズム睡眠障害は、生活習慣の改善や治療が必要となります。

 

ホルモン分泌や体温調整などの人間の生体機能は、およそ24時間周期で変化しています。これをサーカディアンリズム(概日リズム)と言います。地球の自転は24時間周期ですので、朝になると目覚めて活動を開始し、夜になると眠たくなるように、良い塩梅に体内時計ができているわけです。

※「サーカディアンリズム」を日本語に訳すると、「おおむね1日(24時間)のリズム」となります。

 

しかし、体内時計に不具合が発生しサーカディアンリズムが狂ってしまうと、24時間周期の地球(世の中)の時間とその人の時間とが同調できなくなり、健康や成長における問題が生じてきます。

 

健康を維持するためには、サーカディアンリズムに合わせて睡眠や食事などの生活を送ることが必要です。夜間勤務、徹夜で勉強など、不規則な生活を続けると体調を崩すのは、サーカディアンリズムに合わないためです(合わない生活を無理やりするからです)。時差ぼけで体調を崩すのもサーカディアンリズムが関係しています。

 

以下、子供のサーカディアンリズム睡眠障害の基本要件と症状について列挙しておきます。

 

【1歳半~就学前までの子供のサーカディアンリズム睡眠障害の基本要件】

①19時~7時までに取る必要のある夜間の基本睡眠時間(9~11時間)が不足している。(「1日の必要総睡眠時間=夜間基本睡眠時間+昼寝時間」となりますが、総睡眠時間が満たされているからOKではなく、睡眠の基本となる夜間基本睡眠時間はまとまって取れていないとNG)

②夜間の睡眠中に頻繁に(3回以上or一度に30分以上)目が覚め、質の良い睡眠を確保できない。

③寝付きが悪い。(就寝時間が23時以降)

④就寝時間と起床時間が日によってばらつきがある。(90分以上のばらつき)

※①、②に関しては1つでも該当すれば睡眠障害が疑われます。

 

【1歳半~就学前までの子供のサーカディアンリズム睡眠障害の主な症状】

・朝スムーズに起きられない、起きるのが苦手になる

・保育園、幼稚園へ行くのを嫌がるようになる(行き渋り)

・日中泣くことが多くなる(機嫌が悪い)

・眠気があり午前中に睡眠が必要

・昼寝時間が長すぎる(夜間の睡眠不足を補充する眠りになっている)

・友達とのトラブルが多発

・無気力、ボーとしている

・自己主張が強くなる、言い分が通らないと癇癪(かんしゃく)を起こす

・理由のない攻撃行動を示す

・視線が合わない

・集団行動ができなくなる、苦手になる

 

就学後の子供についても基本的に就学前とほぼ同じですが、睡眠時間の条件や昼寝不要など少し異なります。

 

【就学後の子供のサーカディアンリズム睡眠障害の基本要件】

①19時~7時までに取る必要のある夜間の最低睡眠時間が不足している。(小学校低学年9~10時間、小学校高学年8~9時間、中学生以上7.5時間以上)

②夜間の睡眠中に頻繁に(3回以上or一度に30分以上)目が覚め、質の良い睡眠を確保できない。

③寝付きが悪い。(就寝時間が0時以降)

④就寝時間と起床時間が日によってばらつきがある。(90分以上のばらつき)

※①、②に関しては1つでも該当すれば睡眠障害が疑われます。

 

【就学後の子供のサーカディアンリズム睡眠障害の主な症状】

・朝スムーズに起きられない、起きるのが苦手になる

・学校へ行くのを嫌がるようになる(行き渋り)

・日中の機嫌が悪いが、午後から持ち直す

・平日よりも休日によく寝る(休日の起床時間が90分以上遅い)

・授業中に居眠りする、帰宅後に仮眠を取る

・被害妄想が激しく、友達とのトラブルが多発

・無気力、ボーとしている

・成績が悪くなる

・体育の時間、部活動などで怪我をしやすくなる

 

※睡眠障害の判定は難易度が相当高いため、専門医の診断が必要となります。

 

夜ふかしにより子供の脳や心身は悲鳴を上げている

子供の人生と子供の夜ふかしを天秤にかけた時、子供の夜ふかしの方が大事と言う親はいないはずです。しかし現実問題として、睡眠障害を発症する子供が毎年たくさん存在し、学校生活・社会生活に支障をきたしています。予備軍も含めると相当数になるのは先に見たとおりです。

 

子供の夜ふかし、睡眠時間の減少は、日本以外の国でも見られる現象ですが、睡眠時間の短さ、健康への影響は日本の子供が群を抜いています。

 

学校の始業時間は決まっているわけですから、夜ふかしをしても朝起きるしかありません。結果、睡眠時間が犠牲となり、理想的な睡眠にはほど遠いものとなります。子供たちの脳や心身は休息時間を確保できず、疲れ果て機能低下を起こしているとしたらどう思いますか?

 

海外では、十分な睡眠時間確保、結果として学力向上を目的に、(対策自体の良し悪しは置いておき)始業時間を遅らせる学校も増えていますが、日本ではまだまだ浸透しているとは言えません。

 

結局のところ、生活スタイルを見直すしか方法はありません。子供の将来、日本の未来のためにも、子供の睡眠について根底から考える時期に来ているのかもしれません。

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