学級崩壊状態を改善させる工夫

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学級崩壊

今では、学級崩壊が起こるクラスは珍しくありません。それどころか、小学校に上がったばかりの一年生のクラスでもよく起こります。そんな学級崩壊を改善するために、実際に学校が行ってきた実践例をご紹介しましょう。

 

小1プロブレムを克服するために

小1プロブレムという言葉をご存知でしょうか?小学校に入ったばかりの1年生が、学校生活において集団行動がとれず、授業中じっと自分の席に座っていられなかったり、先生や友達の話を集中して聞くことができなかったりする状態が長く続くことです。これでは授業が成り立たず、学級崩壊に陥ってしまいます。

 

小1プロブレムは、決して珍しいことではありません。2011年に東京都教育委員会が行った調査によれば、5校に1校という割合で小1プロブレムが起きていました。

 

小1プロブレムついては、これまでにいろいろな調査や研究が行われてきています。様々な実践が試みられ、その結果小1プロブレムが改善されていったケースも多くあります。それらに共通している点は、担任一人に任せず、学校が一体となって、または保護者と一体になって問題解決に望んだということです。

 

これらの実践を詳しく見て見ると、子供の心を豊かに育てるためには、どこか一つに任せず、共同して子育てを行っていかなければいけないことがよく分かります。具体的な実践例をいくつか見ていきましょう。

 

2人担任で丁寧に対応する

ある小学校の先生たちは、自分の感情をコントロールできない1年生がとても増えてきたことを実感していました。それに加え、一斉指導で指示をしてもなかなか全員に伝わらないということも感じていました。集団に指示を出すと、自分に言われていると感じられない子供がいるために、一人一人の名前を呼びつつ指示を出す必要があるというのです。

 

そんな学校でのある実践です。はさみで紙を切る活動をしていました。線に沿って切るためには、集中力が必要です。しかし集中力が続かない子供が出始めます。そわそわと体を動かしたり、急に席を立ってどこかへ行こうとしたり…。しかもそういう子供が一人出ると、それにつられるかのように何人かの子供も立ち歩き始めるのです。

 

自分の感情の赴くままに、突然立ち上がったり教室を出ていったり、友達を叩いたりする子が多く、感情のコントロールができない子供が増えてきていることを、担任の先生は感じていました。

 

その授業中、ある子供が友達に邪魔されて紙を切るのに失敗し、パニックを起こして泣き叫び始めました。担任の先生がなだめるも、落ち着く気配はありません。そこで、そのクラスのもう一人の担任の先生がその子につき、なだめ役を務めました。

 

こうすることで、最初の担任の先生は全体指導を続けることができたのです。もしも2人体制でなければ、他の子まで落ち着きがなくなって授業がすすまなくなってしまったことでしょう。

 

授業が終わり休み時間になると、最初の担任の先生は泣いていた子供に対してきちんとフォローします。パニックになってしまったことは決して責めず、その子のイライラした気持ちを受容し、心が落ち着くまでじっくりと向き合います。幼稚園の先生がよくするような感じです。

 

幼稚園から学校への移行をなめらかに

この学校では他にも1年生が学校生活に慣れ、集中して勉強ができるようになる工夫をしていました。

 

まず、最初の1カ月は教科書を使わず、お絵かきなどの子供が好む活動を取り入れて授業を組み立てていました。こうすることで子供たちは、楽しみながら集中して授業に取り組む姿勢が身についていきました。

 

そして、発声練習を授業に取り入れました。絵を見ながら、全員でその絵の名前を大きな声で言うのです。これは、友達とのコミュニケーションがうまくできない子供が多いため、大きな声で発声練習をすることで、自分の気持ちを言葉で相手に伝える力を身に付けさせたいという思いからことでした。

 

今の子供たちは、昔のように先生が前で説明をしてそれを聞くという授業形態にはついていけないことがあります。そんな現状を踏まえて、子供が集中できるような様々な工夫をしていく必要があるのです。

 

異学年交流で安心感を持たせる

1年生を6年生のお兄さんお姉さんたちが面倒を見るというシステムも、とても良い結果を生んだ方法でした。入学したての1年生に対して、最上級生の6年生たちが、手取り足取り学校のルールを教えていくのです。

 

昔の子供たちの世界には、こうした異年齢集団がありました。下級生は上級生と一緒に遊ぶことを通して、様々な集団ルールを自然と学ぶことができました。楽しく過ごすには、ちょっと我慢してルールを守らねばならないこともおのずと身についていきました。

 

今は、このように異年齢集団で遊ぶ子供たちの姿は見られなくなりました。だから今の子供たちはルールを自然と身に付けられる場がなくなり、自己中心的な行動が目立つようになったのだと言えます。そこで、異年齢の子供たちが一緒に生活する学校で、かつてあったような集団を取り入れようと試みたわけです。

 

6年生のお兄さん、お姉さんたちは、1年生と手をつなぎながら学校中を案内して回り、いろいろな決まりを教えてあげます。このように体と体の温かな触れ合いを通した教えは、子供たちに安心感をもたせます。その安心感の中で、様々なルールを体で覚えることができるのです。

 

子供たちの学力低下について論じられていますが、子供たちの学習意欲が低下したのは、学校生活の中に安心感がなく、人の肌の温かさが感じられないからではないでしょうか。安心感と温もりは子供の心を落ち着かせ、活力を湧かせます。そのような心の状態がなければ、本当の意味での学びが学校で生まれることはありません。

 

親も学校で子供を教育する

またある学校では、親を学校に招き入れ、指導に参加してもらう実践をしました。昔は、教室は担任の先生の天下でした。でもそのやり方では、今の子供たちを指導していくのは難しくなっています。ですから、学校をもっとオープンにして、保護者にもどんどん学校に入ってきてもらい、みんなで一緒に子供たちを育てていこうという考えです。

 

具体的には、絵本の読み聞かせや子供たちの掃除のサポートという形で、保護者が参加します。それも強制ではなく、自分たちができる時に、できる範囲でやることになっています。やらなければならない、というものでなく、保護者自らが楽しんでやりたい、という姿勢がポイントです。

 

教師が一人で掃除のやり方を子供たちに教えるとしたら、子供たちの前に立ってほうきの使い方を見せるということくらいしかできません。しかし保護者の方たちは違います。子供たちの手を取って一緒にほうきをもち、触れ合いながら丁寧に使い方を教えてあげています。教える時も決して命令口調ではなく、子供の心に伝わりやすい表現で教えます。

 

もちろんこれは、他人の子だからこそできることなのかもしれません。自分の子供に対してはついぞんざいに言葉だけで教えようとしたり、うまくいかないとすぐに叱りつけたりすることになりがちです。これが他人の子だと、親の方も客観的になれますから、落ち着いて優しく丁寧に教えようという姿勢が生まれるわけです。

 

親が指導に参加するこの方法によって、親たちも、子供の普段の様子が見られるというメリットがあります。そのためか、参加人数も結構多いようです。

 

子供たちは見守られると安心できる

保護者が学校での指導に参加することで、子供たちは大人から見守られたり声をかけられたりすることが増え、安心感を持てるようになります。学校は教師だけで子供を教育するものだという考えは、正しいわけではありません。

 

例えば、保護者が絵本の読み聞かせをしてくれれば、その間に教師が授業の準備など本来の仕事に集中して取り組めます。その結果、授業はより良いものになります。もちろん、愛情がたっぷり込められた読み聞かせによって子供たちの心は安定していますから、授業にもスムーズに入ることができ、集中して取り組むことができるようになります。

 

小1プロブレムが起こる理由には、子供たちに向けられる愛情が足りていないことや、大人が示す理想像によるストレスから感情のコントロールができないようになり、パニックを起こしてしまう現状があります。我慢が足りないからだとか、大人がもっと厳しくすればよいのだという意見で改善するほど簡単なものではありません。人間の心はもっと複雑です。

 

私たち大人は、子供たちの心に何が起こっているのかにもっと注意を向け、その原因となっていることを改善し、子供の心が健やかに育っていくように努力すべきです。子供たちの心を豊かに育てるには、言い聞かせたり道徳の授業を定期的に行ったりするだけでは足りません。もっと全体的な、環境づくりから整えていかなければなりません。

 

教師間の協力、子供同士の協力、親と教師との協力によって、今子供たちに起こっている様々な問題を解決するという姿勢が、これからはますます必要になってくることでしょう。

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