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言葉の力を育むために親ができること

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子供の言葉の力を育もうとする親

言葉は、私たちの生活になくてはならないものです。学問においても基礎となるのが言葉であり、社会に出てからは、言葉をうまく使えるか否かが成功の鍵を握っています。子供が社会に出たとき、自立して生活していくためには、言葉の力を身につけていなければなりません。

 

言葉の力とは具体的にどんなものでしょう?言葉の力を身につけるために、子供のうちから身につけておくべきことは何でしょう?家庭でできる言葉の力をつける方法や親の心構えについて見ていきましょう。

 

全教科の基礎となる4つの言葉の力

言葉の力とは、言葉を使って聞いたり話したり、読んだり書いたりする力のことです。人は、言葉を使って考え、考えたことを言葉で伝えます。言葉は、知性や学力の基礎であり、学問において必要不可欠なものです。

 

言葉の力は、大きく4つに分けることができます。理解する力である「聞く」「読む」力と、表現する力である「話す」「書く」力です。幼少期には、特に聞く力と話す力をしっかり身につけることが大切です。学童期になると、聞く話す力が身についている前提で、読み書きの指導が行われます。

 

4つの言葉の力の中でも「読む力」は、他教科に大きく影響します。例えば、計算問題は得意なのに、文章題になると間違ってしまう子供がいます。また、理科や社会でも一問一答形式の問題は得意なのに、問題文の長い応用問題になると苦手意識を持つ子供がいます。どちらの子供達も、問題文を正しく読み取ることができないことが原因です。

 

ある進学校では、国語の長文読解が得意な生徒達を集めて、大学合格に向けて特訓を行いました。すると、全教科の成績が上がり、合格率も上がったといいます。国語力という学問の基礎ができていたからこそ、他教科の成績も上がりやすかったのではないかと考えられます。

 

聞く、話す、読む、書くの4つの言葉の力を育むには、親はどんなことに気をつけて子供に接すればいいのでしょうか。それぞれの4つの力について、具体的に見てみましょう。

 

「聞く」親が見本を見せる

「見る、聞く、嗅ぐ、味わう、触る」の五感のうち、最も早く発達するのが「聞く」力です。胎児のうちから耳は発達しており、母親の声や周りの音を聞いています。生まれてからもまずは、耳から周囲の様子を感じ取り、耳を使って様々なことを学習していきます。

 

耳を使って学び始める子供達ですから、幼少期にはまず、「聞く態度」を身につけさせてほしいと思います。そのためには、親がまず見本を見せなければなりません。子供が話しかけてきたとき、忙しいからといって適当に相手をしていてはいけません。

 

しっかり子供の目を見て話を聞き、話に合わせて相槌を打ったり、質問をしたりしましょう。自分の話を聞いてくれたという満足感を子供が得られれば、短い時間でも構いません。逆に手を動かしながら顔も見ずに聞いている方が、子供は満足できず、何度も話しかけてくるものです。

 

親が子供に「聞く態度」を意識して接していると、子供も自ずと自分もそうするべきだと感じるようになります。しかし、子供ですから、他のことに注意が向いたり、話に集中できなかったりすることがあるでしょう。その時には、「目を見て話を聞くのよ。」と言ったり、「体をお母さんの方に向けて欲しいな。」と諭したりしてほしいと思います。

 

何度も繰り返すうちに、徐々に自分のものとして「聞く態度」が身についていきます。叱るだけでは子供は嫌になってしまいます。大事なことは、親が見本を見せることです。その上で、子供も同じようにできるように、繰り返すことが大切です。

 

「話す」話し方は思考力にも影響する

子供が最初に影響を受けるのは、親の話し方です。とりわけ、乳児期から幼少期にかけて面倒を見ることの多い母親の話し方は、大きく影響します。例えば、おいしいものを食べたとき、母親が「うまっ!」と言えば、子供も「うまっ!」と真似するでしょう。「おいしいね。」と言えば、「おいしいね。」と言うようになります。

 

母親が学生時代に流行った言葉を、子供の前で使っていたらどうでしょうか。「まじで?」「っていうかさぁ」など、言葉の乱れは子供にも影響します。言葉は、人間が考えるときの道具となるものです。言葉の乱れは、思考にも影響を及ぼします。

 

最近の小学生の中には、「わたし的には」「ぼく的には」という言い方をする子供がいます。「わたしは」「ぼくは」という言い方に比べて、曖昧な印象を与えます。「わたしは、~だと思う」ではなく、「わたし的には、~だと思うんだけど…」という具合です。

 

何かをぼかしたような曖昧な表現は、思考力の弱さにつながります。自分の意見をしっかり持ち、はっきりと伝えるためには、正しい話し方を身につける必要があります。話す力を身につけることで、考える力を育てることができます。

 

「読む」読解力をつける精読の勧め

「読む」という行為には、2つの態度があります。1つ目は、好きな本を楽しんで読む「漫読」です。漫読では、読みとばしや誤読があっても構いません。ある程度の話の流れを理解しながら、楽しんで読むことが目的だからです。

 

2つ目は、仕事や勉強などのために、丁寧に読み進める「精読」です。仕事上では契約書やマニュアルを読み込み、勉強においては国語の長文読解や数学の文章問題の読解などです。精読は、漫読とは異なり、丁寧に一字一句見落とさないように丁寧に読まなければなりません。

 

「うちの子はよく本は読んでいるんだけど、なかなか国語の成績が上がらない。」と言う親がいます。確かに、本を読むことは大切なことです。しかし、本は読んでいたとしても、好きな本を漫然と読んでいるだけかもしれません。漫読だけでは、本当の読解力は身につきません。

 

精読で要点をつかんだり、考えながら読み進めたりすることで確かな読解力が身につきます。漫読を通して、本に親しみながら、精読で読解力を養うと良いでしょう。

 

「書く」口出しはせず書く態度を育てる

書く力と話す力は密接に関わっています。書くことも話すことも表現するという点では同じです。したがって、親子の日頃の会話が、書く力にも大きく影響します。しかし、話したことをそのまま書いても、読み手には伝わりにくい文章になってしまいます。伝えたい内容を熟考し、読み手に分かりやすく書くことが求められます。

 

長期休みには、学校から作文が宿題として出されます。子供達の中には、何を書いていいか分からないという子供がいます。作文用紙を前に、なかなか鉛筆が進まない子供を見ていると、つい親は口出しをしたくなります。

 

「思ったことを書いたらいいのよ。」「まずは書き始めてごらん。」などと、子供が考えを巡らせている横から口出しをします。子供が親の口出しを聞きながら、なんとか書き上げると、今度は「もうちょっと、こうしたら良かったんじゃない?」と、アドバイスをします。

 

口出しをされた上に、せっかく書き上げたものにアドバイスという名の難癖をつけられると、子供は書くという行為さえも嫌になってしまいます。親は、子供が書く文章に口出しをしてはいけません。特に、低学年のうちまでは、漢字や文法の間違い以外は正してはいけません。

 

低学年の子供達がまず身につけるべきことは、書くことへの基本的な姿勢です。自分の気持ちや感じたことを素直に表現すること、書くことが楽しいと感じられることが大切です。親が口出しをしてしまうと、親の言いたいことを書こうとしてしまい、本当の考えや思いを書くことができなくなってしまいます。

 

ノートの取り方についても同じことが言えます。親は、乱雑に書かれているノートを見ると、「きちんと書きなさい!」と言いたくなります。子供はきちんと書こうとすると、話を聞くよりも、板書を写すことに集中してしまいます。大事なのは、話を聞きながら思考を巡らせ、理解することです。

 

書く力を高めるためには、親は余計な口出しをせず、書くことへの基本的な態度を身につけさせることが大切です。子供が悩んでいるときには、話題を引き出したり、会話を通じてどう考えたのかを思い出す手伝いをしたりすると良いでしょう。

 

読み書きの力を家庭で育てる方法

小学校に上がると、聞き話す力に加えて、読み書きの力がより重要になります。学校では文字を習い、文章を読んだり書いたりする指導が行われます。より効果的に言葉の力をつけるために、家庭でできる方法はないのでしょうか。

 

家庭で「読む力」を育てる音読ゲーム

学力の基礎となる言葉の力の中でも、特に重要なのが「読む力」です。前述の通り、本を読むという行為には漫読と精読があります。単に楽しんで本を読んでいるだけの漫読では、本当の「読む力」は身につきません。考えを巡らせ、整理しながら読む精読を重ねることが必要です。

 

精読は、漫読に比べて根気が要ります。難しい表現を読み解いたり、難解な語句を理解したりしなければなりません。しかし、読む力を身につけるためには、避けては通れない道です。

 

家庭でできる精読の練習方法は、親子で行う音読ゲームです。特に低学年の子供には音読が有効です。学校から宿題で出される場合もあるでしょう。初めは、親が子供の音読を聞くだけで構いません。習慣になってきたら、親子で交代しながら音読をしてみましょう。親の音読を聞くことで、子供はもっと上手に読もうと思うはずです。

 

親子で交代して読むのに慣れたら、次は音読ゲームです。200字程度の文章を子供に音読させます。読み間違ったり、つかえたりしたら減点です。点数をメモしながら行うと結果が目に見えて分かります。

 

しかし、あまりにも厳しくすると、ゲームとしての楽しさがなくなってしまい、子供は嫌になってしまいます。子供が楽しめる範囲で、厳しさは調整することが有効です。親子で競うと子供もやる気になるでしょう。

 

この音読ゲームでは、一字一句を間違えずに読むという精読の態度が身につきます。早く間違えずに読める力は、長文読解や文章問題の理解に役立ちます。ある中学生は、塾でこの音読ゲームを徹底的に行い、読解力を身につけたと言います。その結果、成績が上がり、第一志望だった最難関の高校に合格したそうです。

 

音読ゲームでは、読解力はもちろん、集中力も養われます。何かに夢中になって取り組んだことのある子供は、ここぞというときに集中力を発揮することができます。問題に向き合う集中力を養うのにも、音読ゲームは有効です。

 

家庭で「書く力」を育てる2つのポイント

「書く力」は、言葉の力の中でも学力アップに欠かせない力です。中学受験では、記述式の問題が多く出題されます。国語では、長文を読解してその要点を捉えた上で、自分の考えや意見を書くことが求められます。国語だけでなく他教科でも記述式の問題は増えています。

 

家庭で書く力を身につけるには、2つの観点が重要です。1つ目は、読み手に伝わるように正確に書く力です。家庭でできることは、日頃の会話で正しい言葉遣いを意識させることです。親が見本となり、正しい言葉遣いで接し、子供にも正しい言葉遣いで、自分の考えを伝えられるようにしつけます。

 

高学年になれば、読み手を意識した書き方を身につけることが必要になります。分かりやすい表現を意識し、体験を交えたり、具体例を書いたりする工夫をしなければなりません。他者の視点を身につけることが家庭でも必要です。

 

2つ目は、読み手が面白いと感じる書き方をすることです。低学年のうちは、自分が面白いと思ったことを書かせることが大切です。親が余計な口出しをすると、うまく書こうとしてしまい、本当に思ったことや感じたことを書けなくなってしまいます。本人が感じたままの面白いと思ったことを自由に書かせてください。

 

そのときに、有効なのが日記を書かせることです。1日1行でも2行でも構いません。子供の感性を大切にしてほしいと思います。「今日は雨が降ってうれしかった。」と子供が言えば、そのままでいいのです。親の感覚としては、雨でなぜうれしいのだろうと思うかもしれません。そんな感覚のずれこそ、子供らしい面白さではないでしょうか。

 

自分が体験したことやその日あったこと、思ったことなどを自分の言葉で書くことは、書く力を身につけるのに重要なことです。毎日少しずつでも続けることで身についていきます。

 

しかし、毎日スラスラと日記を書ける子供は多くはありません。何を書けばいいか分からず、手が止まってしまうこともあるでしょう。そんなときに、親が「楽しかったんじゃない?」などと、親の考えを押し付けてはいけません。「どう思ったの?」などと、子供本人の言葉を引き出す手助けをしてあげてほしいと思います。

 

大切なことは、子供が自分の言葉で書くことです。親がうまく書かせようと思えば思うほど、子供は書くことが嫌になります。それは、自分の言葉ではなく、親の言葉で書いているからです。子供自身から出てくる言葉を親が受け止めることが大切です

 

社会で求められる言葉の力

言葉の力は、社会人になってからも重要です。ビジネスの様々な局面で、ビジネスマンとしての言葉の力が求められます。例えば、社内での会議、顧客へのセールストーク、商品開発のプレゼンテーション、クレーム対応などです。話す、聞く、読む、書くの4つの言葉の力で、具体的に求められる力について見てみましょう。

 

TPOにあった「話す力」

社会で求められる話す力は、子供の頃から培った言葉の力が基礎になっていることは間違いありません。しかし、社会ではもうワンランク上の力が求められます。それぞれの時(T)、場所(P)、場合(O)にあった話す力が必要です。

 

例えば、話す力では、より相手を意識した会話力が必要になります。同僚と上司とでは、話し方を変えるのは当たり前のことです。また、社内と社外では言葉遣いは変わります。単に敬語の使い方だけでなく、言葉を選ぶ力や相手の考えを察する能力も必要となります。

 

ビジネスのほとんどは、言葉を使った取引によって成立していると言っても過言ではありません。上司や同僚、取引先や顧客との話によって物事が進み、仕事がうまくいったりいかなかったりします。

 

社会において、的確な会話力や交渉力を身につけるためには、子供の頃から言葉の力を育んでおくことが必要です。より高度な会話力には、相手を説得する力や動かす力が必要だからです。

 

心を込めて「聴く力」

社会では、自分の思いを話すだけでなく、相手の思いを汲み取る、聴く力が必要になります。「聞く」と「聴く」では、少し意味合いが異なります。「聴」という漢字には、「心」という字が入っています。文字通り、心を込めて、誠心誠意相手の思いを聴くという意味合いがあります。

 

子供の頃に身につけた聞く態度が、大人になってからの聴く態度に大きく影響します。幼少期から、「相手の目を見て話を聞きなさい。」「相手に体を向けて話を聞くのよ。」と言われて育った子供は、自然と話を聞く態度が身についています。

 

ビジネスの現場では、相手の話を単に理解するだけでなく、相手は自分にどうしてほしいのかを汲み取る必要があります。そのためには、心を込めて聴くという行為がなくてはなりません。

 

行間を「読む力」と正確に「書く力」

「読む力」に関しては、社会では、行間を読み取る力が必要になります。単に書かれていることを理解するだけでなく、その背景に何があるのか、本当に言いたいことは何なのかを想像する力ということができます。

 

この行間を読み取る力は、精読によって養われる読解力を基礎とするものです。精読では、一字一句を逃さないように丁寧に読み込み、筆者が何を言いたいかを考える必要があります。思考を働かせながら文章を読むことで、想像力や思考力が養われます。この力が社会でも必要とされる行間を読み取る力につながるのです。

 

「書く力」に関しては、情報を整理して伝える力が必要になります。相手に正確に、分かりやすく情報を伝える力です。語彙力を増やすことはもちろん、専門分野の知識や表現も求められます。

 

社会で求められる言葉の力は、子供の頃の言葉の力が基礎となります。子供のうちから、「話す」「聞く」「書く」「読む」といった4つの言葉の力をバランスよく育て、正しく使えるようになることは、大人になってからも必ず役に立ちます。

 

正しい言葉遣いを身につける辞書引き習慣

言葉の力を身につけさせるときに、特に注意したいのは、正確さです。相手の話や文章を正確に理解する力、自分の考えや意見を話したり書いたりして、正確に表現する力です。正確な理解力、正確な表現力は、論理的思考の基礎になります。

 

物事を筋道立てて考えるとき、言葉を使って考えを巡らせます。自分の考えをまとめて相手に伝えるときにも、言葉を使います。特に、「話す」「書く」という表現の力においては、正確さが大切です。相手に伝えたいことがきちんと伝わるように、正しい言葉遣いをしなければなりません。

 

正しい言葉遣いや表現を身につけるためには、辞書を引く習慣を身につける必要があります。リビングに辞書があり、分からない言葉に出会ったら、いつでも辞書が引ける環境にある子供は、その習慣が身についています。

 

ある塾で調べた結果、家庭で辞書を引く習慣がある子供達は、そうでない子供達と比べて、偏差値が高いということが分かりました。分からないことをそのままにしないという習慣が身についている結果だと言えます。

 

子供は、日常の中で知らない言葉に出会います。「お母さん、○○ってどういう意味?」と尋ねてくることがあるでしょう。そのときに、「辞書を引いてごらん。」と声をかけてあげればいいのです。

 

もちろん、親が言うだけでなく、実際に辞書を引く姿を見せることが大切です。大人になっても、漢字の使い方に迷ったり、意味があやふやな言葉に出会ったりすることがあるでしょう。そんなときは、そのままにせず、手元にある辞書を引いてほしいと思います。親の後ろ姿を見せることが一番の教育です。

 

子供の表現力を豊かにする親の心構え

社会では、言葉の表現力が豊かな人は、周りから一目置かれます。講演会やスピーチなどで、はっとするような言い回しや分かりやすい例え話などをされると、いつの間にか話に引き込まれてしまいます。講演会やスピーチなどの大勢の前で話す場合だけでなく、1対1の話でも表現力が豊かな人とは話をしていて楽しいものです。

 

表現力が豊かな人は、相手の心をつかむ話し方ができます。それは、単に語彙が豊かだということではありません。想像力が豊かであったり、情景を生き生きと伝えることができたり、独特な視点で物事を切り取ることができたりするのです。

 

表現力が豊かな大人になるために、子供のうちからできることはないのでしょうか?

 

表現の豊かさは子供時代の経験の豊かさから

言葉の表現の豊かさは、その人の経験に裏打ちされたものです。単に言葉をたくさん知っているだけでは、表現の豊かさは生まれません。様々な経験を通して、感じたことや考えたことが言葉になるからこそ、表現が豊かになるのです。

 

表現力の豊かさの一例として、比喩表現があります。「一気に蛇口をひねったような忙しさ」という表現があります。これは、新学期の始まりや環境の変化などによって、急激に忙しくなった様子を表しています。単に忙しい、非常に忙しいというよりも、イメージがつきやすく、蛇口から溢れ出すスピード感のある水流のような忙しさが目に浮かびます。

 

「潮が引くように、祭りの賑やかさが終わろうとしている」と言えば、寄せては返す海の波が少しずつ遠ざかっていくように、祭りの賑やかさが去っていく様子が想像できます。祭りの賑やかさが終わるというよりも、祭りが終わる名残惜しさや切なさが感じられます。

 

しかし、言葉を知っているだけでは、比喩表現を使ったり理解したりすることはできません。その比喩に関わる体験があるかどうか鍵となります。一気に蛇口をひねったことがなければ、「一気に蛇口をひねったような忙しさ」は分かりません。潮が引く様子を見たことがなければ、「潮が引くように」という表現は理解できません。

 

言葉を教えることは大事なことですが、子供の頃にたくさんの経験をしておくことが、後の表現の豊かさにつながります。外に出て空を見上げたり、自然の中で思いっきり遊んだりする経験を大切にしてほしいと思います。

 

親のつぶやきが子供の表現を豊かにする

子供は親から様々な影響を受けます。言葉に関しても、親から受ける影響は大きいものです。特に、話す力においては、親の表現力や語彙力が大きく影響します。子供の表現力を豊かにしたいと思えば、親が積極的に色々な表現を使うことが重要です。

 

特に、自然の中での体験は表現を豊かにするチャンスです。自然の中といっても、わざわざ森の中や海辺に連れて行く必要はありません。外に出て空を見上げたり、道端の草を触ったりする体験でいいのです。

 

そんなときに、「今日は空がどんよりしているね。」と言えば、子供は空の様子を見て、「どんよりとした空」をイメージすることができます。美しい夕日を見た次の日に、「このオレンジ色は昨日の夕日みたいにきれいだね。」と言えば、自分の目でみた夕日と目の前のオレンジ色が重なって、新しい比喩表現として心に刻まれます。

 

日常生活の些細なことを言葉にする習慣が、子供の表現力を豊かにするのです。比喩表現に限らず、言葉の豊かさは親子の会話から育まれます。子供はこの表現は知らないだろうと親が表現の幅を狭めず、新しい言葉を子供が知るチャンスだと捉えて、積極的に色々な表現を使ってほしいと思います。

 

就職試験でも重視される「自分の言葉」

言葉の力が社会に出て初めて試されるのは、就職試験のときです。大学で試験対策をしたり、面接練習をしたりして試験に臨みます。しかし、実際の面接では、自分の言葉で話せない学生が多いと採用担当者は言います。練習はしてきているので、ありきたりのことは話せます。しかし、判を押したように同じで特長がないというのです。

 

景気が上向きになりつつあり、売り手市場と言われる就職活動ですが、企業は少しでも優秀な人材を採用したいと思っています。優秀な人材かどうかを見極めるのが面接です。面接では言葉を使って、志望動機や長所を伝えます。そのときに、「自分の言葉」で話せるかを採用担当者は見ています。

 

本に書いてあることの真似や、会社のホームページの丸暗記では、すぐに見破られてしまいます。例え、稚拙な表現であっても自分の言葉で、なぜその会社を志望したのか、自分の強みは何なのかを語れなければなりません。

 

自分の言葉で語ると言っても、その背景にはきちんとした自分の考えが必要です。社会情勢や経済、政治などに関心を持ち、実生活と結びつけて問題意識を持っていなければなりません。問題をどうにかしたいという思いが、説得力のある自分の言葉として表出するのです。

 

とはいっても、問題意識を持って自分の言葉で表現することは一朝一夕にできることではありません。自分の内面と向き合い、考えることが必要です。そのためには、日記を書くことが有効です。就職試験に向けての日記であれば、その日あったことだけでなく、日々関心を持ったことやそれに対する意見を書くことが必要でしょう。

 

小中学生の時期には、日記を書くことが有効です。学年が上がるにつれて、自分の内面に向き合う日記を書いていく必要があります。しかし、小学校低学年のうちは、親子で書く日記で十分です。日記を書くのは子供ですが、親子で話しながら、その日何があったか、どう感じたかなどの内容を引き出すのです。

 

例えば、親子で出かけた日に「動物園で何が面白かった?」と尋ねてみましょう。子供はすぐには、言葉にできないかもしれません。そこで「○○が面白かったでしょ。」と親の考えを押し付けてはいけません。子供自身の言葉が出てくるまで待つのです。

 

しばらくたって、「オラウータンが面白かった。」と言うかもしれません。そうしたら、ぜひ理由を尋ねてあげてください。「どうして?」と聞くと、「背中が曲がっていて、おばあちゃんみたいだった。」と言うかもしれません。「おばあちゃんみたい」というのは子供独特の比喩表現になっています。

 

子供の口から自分の言葉が出てきたときには、褒めてあげましょう。笑顔で「おばあちゃんみたいだったの。」と繰り返すだけで構いません。お母さんが笑ってくれた、褒めてくれたと子供が感じられれば、どんどん、言葉は豊かになっていくはずです。

 

どこかに出かけた特別な日だけでなく、日常生活の中でもどんなことがあったか、どう感じたかを引き出してほしいと思います。学校の授業のこと、友達との会話、先生の話など、子供が当たり前だと思っていることも、大人が聞くと新鮮なことがあります。親が質問をしながら会話をすることで、子供にも新しい発見があるでしょう。

 

そうして、楽しみながら会話をすることで、自分の言葉の引き出しは増えていきます。家庭で増えた言葉の引き出しが、学校の友達や先生との会話につながり、大人になってからの表現力の豊かさに発展するのです。

 

相手を意識した会話力を育てる方法

自分の言葉で、考えや感じたことを表現できるようになったら、次のステップです。社会では、相手の立場に立って考えられる人が重宝されます。子供の頃から、相手の立場に立って考える習慣を身につけさせてほしいと思います。

 

相手の立場に立って考える練習として、親子でできるのがインタビューゲームです。まずは親から子に「今日は学校でお友達とどんな話をした?」と尋ねてみてください。子供が答えたら更に重ねて質問をしてください。ひと段落したところで、「今度は交代ね。」と言って子供にインタビューをさせます。

 

「お母さんは、今日は何をしていたの?」と聞かれたら、自分の言葉で答えてください。子供なりに考えて色々と質問するでしょう。「今日は疲れて夕飯が作れないわ。」と言えば、「私もお手伝いする。」と言ってくれるかもしれません。子供なりに相手の立場に立って考えることができています。

 

親子で会話をしたからこそ生まれた、他者を思いやる意識です。親子の会話が日常的にある家庭ならよくある光景でしょう。相手の立場に立って考えることができているか、という視点を親が持つことで、日常の会話もより意義深いものすることができます。

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