facebook Twitter Google+ はてなブログ feedly

双子の研究を通して見えてくるもの

Pocket
LINEで送る

双子

病気を予防するための予防医学という考え方があります。そうした考え方の立場から見ると、遺伝の影響や環境との関わりを認識し、その人の置かれた環境を整えていくことによって病気を予防できるようになります。個人に対して遺伝と環境がどんなふうに作用しているのかを調べるため、最近では双子というものを通した研究が行われ始めています。

 

一卵性は似ていて、二卵性はそうでもない?

俗に、双子は姿形だけでなく行動もそっくりだと言われます。これは本当なのでしょうか。

 

東京都にある東京大学教育学部付属中等教育学校は全校生徒が717人の学校ですが、そのうち18%ほどにあたる128人は一卵性および二卵性の双生児になっています(2015年2月時点)。この学校では60年近くこうした双生児たちを集めて研究をしている世界で唯一の施設です。

東京大学教育学部附属中等教育学校に通う双子の生徒

 

こうした双子のペアに話を聞いてみると、一卵性のきょうだいで肌の色や手の形、動作といったものの他、衣服の好み、性格、教科の好き嫌い、異性の好み、クラブ活動、姿勢や行動のタイミングといったところまでかなり似通っているというようなペアもいれば、同じく一卵性でも行動するタイミングなどは似ているものの衣服の好みや性格はまるで違うといったようなペアもいます。

 

二卵性のペアはさらに違いが顕著に見え、本人たちに聞いてみても似ている部分は多少あるがベースの部分ではまったく違う、という答えが返ってきます。

 

似ている部分、そうでない部分

東京大学教育学部付属中等教育学校は、毎年一定の数の双子を集めて研究を行い、そこから分かったことを学校教育の現場にフィードバックすることを目的にしています。遺伝か環境か、あるいは素質か学習か、といったことをテーマに掲げ、双子のペアをわけてそれぞれ別のクラスに配置し、学力を始め体や心、性格や行動を観察してさまざまな研究を行っているのです。

 

こうした調査研究の結果、一卵性のペアで似通ってくる度合いが高いものとしては、身長や声、指紋や歯形、目の良さや基礎的な体力面などが上げられることが分かってきました。一方、学力や運動の技術、筋力や柔軟性といった体の機能、胸囲などは、素質的なものよりも後からトレーニングなどで鍛えたことの方が大きく作用するため、違いが出てくることが多いことが分かっています。

 

学力の面をもう少し詳しく分析すると、美術や音楽と行った芸術関連の科目については配置されたクラスに関わらず同じような成績になる傾向があり、数学などの他の科目は違ってくるという傾向が見られました。そして配置されているクラスのムードや教師との関係性、本人がどれだけ努力を積んだかといった環境的な要因が加わって差が生まれていきます。

 

研究の結果として、双子のペアごとにかなりばらつきがあり、いまのところ明白な法則性のようなものは発見されていません。とはいえ、双子でない兄弟や姉妹と比べると、一卵性の双子では性格はやはり似ていることが多く、特に女子のペアの方が似ているような傾向があるといいます。

 

双子には遺伝も環境も作用している

双子とそうでない子どもにはやはり違いが存在します。たとえば、双子として生まれた子どもは、そうでない子どもに比べて体が小さいことが多く、体重にしておよそ2割ほどの差がつきます。しかし、こうした差が見られるのは最初のうちだけで、およそ3歳~6歳ぐらいの間までには双子でない子どもと遜色がなくなってきます。

 

また、一卵性双生児の場合生まれたときにきょうだい間で体の大きさに差があることがあります。こうした差についても、よほど大きな差があるのでない限りは生後半年ほどでほとんど差が解消し、眉毛、指の形、眠っているときの表情などがよく似てきます。

 

言語面でも双子とそうでない子どもには少し違いが生じます。双子として生まれた子供たちの場合、そうでない子どもに比べて発達が若干遅くなることがあるのです。どうしてそうなるのかは判明していませんが、親が子どもたちを区別せずに接したり、双子同士でしか通じない特殊な意思伝達手段を使ったりすることがある、などといったことによってそうした遅れが生じるのではないかと考えら得ています。

 

このような言語面での遅れは一卵性男児を持つ親への調査では4割ほどに達しますが、これも時間とともにトラブルになることなく発育が進みます。

 

さらに、個人の心理、あるいは個性に関する分野では個人個人差が出ることも分かっています。例えばテストを受けるという活動に対してストレスを覚える子どももいれば逆に楽しんでいるような子どもいる、といった具合です。

 

アレルギーといった体質ではどちらかの子どもだけが発症してしまうというケースが多く見られる他、幼いころの癖、例えば指をしゃぶるといったものについては、遺伝要素以外にも環境面に関する要因の影響が大きいということが判明しています。

 

こうした研究結果を総合すると、双子については遺伝と環境が互いに作用し合い、影響を与えているということが見えてきます。こうした研究から遺伝と環境との関わりを調べ、それを予防医学の分野に応用しようという研究が行われているのです。

 

双子の2つのタイプ

双子は大きく2つのタイプに分けることができます。1つは「一卵性双生児」であり、もう1つは「二卵性双生児」です。

 

一卵性の場合、1個の受精卵が早い段階で2つに分かれ、それのいずれもが子宮の中で発育することによって生まれてきます。このため双子はいずれも同じ遺伝的特徴を共有しています。

 

二卵性の場合、2個の受精卵が同じ子宮の中で発育することによって生まれてきます。このため遺伝的には一般の兄弟姉妹とほとんど変わらない程度の違いを持っています。

 

自然な妊娠・出産の場合、双子ができやすいかどうかは人種によって差があるとされ、多い順に並べると黒色人種、白色人種、黄色人種といった順となります。

 

日本人の場合を例に取ると、一卵性双生児が生まれる確率は0.4%ほどとなっています。この確率は不妊治療の広がりとともに増加してきており、最近では一卵性ないし二卵性の双生児あわせて1.1%ほどとなっています。

Pocket
LINEで送る

このページの先頭へ