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子どものスポーツに潜む危険とは

子どものスポーツ

子どもたち、特に中学生や高校生といった年代は本格的にスポーツに取り組み始める時期でもありますが、そうした中でスポーツをしたことにより怪我や障害を負ってしまうことが年々増加してきています。ここではそんな危険性について見ていきましょう。

 

外科的障害

中学生や高校生が部活動などでスポーツに取り組み始めるとともに、それが原因で怪我や障害を負ってしまうことが増加してきています。保護者や指導する側もそうした危険性をあまり認識していないことは問題です。

 

文科省の調査によると、中学生のうち約8人に1人、高校生のうち約4人に1人がスポーツ障害を起こした経験があるという結果が出ています。この割合は学年が上がるにつれて多くなっていき、高校三年生では3割を超えています。

 

小学生以上の児童生徒のうち突然死してしまう人数もやはり学年が上がるほど多くなる傾向があり、年間70人~80人ほどになっています。内訳としては女子よりも男子のほうが多く、スポーツをしている最中やその後に心臓病を起こすなどの例が多くなっています。

 

そもそも、こうしたスポーツによる障害は特定の部位を使いすぎることによって発生します。何度も何度も反復して同じ動作を繰り返すといったことが危険の始まりです。

 

体が発達している途中にある子どもの骨には、「骨端線」と呼ばれる部分があります。この部分があるおかげで骨が成長することができるのですが、完全に発達がすんでいないぶん外部からの圧力に弱いという特徴も併せ持っています。

 

筋肉について見てみても、この時期の子どもは骨の成長速度に筋肉の発達が追いついていないようなことが多く、このため骨と筋肉のバランスがまだ整っていないといった状態にもなりやすいのです。

 

こうした特徴を持つ子どもの体は疲労骨折や腱鞘炎などを発症しやすいだけでなく、特定の種目によく見られるような障害を起こすこともあります。

 

たとえば、サッカーヤバスケットボール、バレーボールをする人に見られるオスグッド・シュラッテル病などです。この病気は正座をしたときに膝が痛んだり、膝の皿の下の少しでっぱった部分が腫れたり熱を持ったりするものです。

 

こういった障害は外科的なもので、運動器障害などとも呼ばれます。またこれとは別に内科的な障害というものも存在します。

 

内科的障害

スポーツ障害のうち内科的な障害は急性障害と慢性障害に分けることができます。熱中症、過呼吸、心停止による突然死、動脈瘤の破裂といったものが急性障害に含まれ、貧血、不整脈、慢性疲労などが慢性障害に含まれます。

 

急性障害の代表格といえるのが熱中症で、温暖化のためか日本中で何件もの事例が報告されるようになってきており、毎年10人ほどの死亡事故に発展しています。夏場など日差しが強かったり気温が高かったりする際に水分を取らなかったり休憩を適宜挟まずに強度の高い運動をすることで発生します。

 

人間の体が熱を取り入れたり放出したりする度合いは、湿度や気温、日差しの強さなどを基準に数値化された国際的基準が設けられています。気温や湿度がある程度以上に達したときには練習や試合をしないように定められているのです。こうした基準が有りながら、実際の指導現場などにはまだ理解が不十分で徹底がなされていないのが現実です。

 

日本の夏場の気候は湿度も気温も高くなりがちですので、ほとんどの場合この国際的基準を超えています。つまり、十分に休憩を設けて水分をきちんと補給しないとものすごく危険な環境下にあるわけです。特に運動になれていない場合には急激な運動を避けることも大事になってきます。

 

一方、トレーニングのしすぎによって慢性障害を起こしてしまうような事例も見られます。

 

ある女子中学生が、医療機関に診察に訪れました。風邪をひいた後治癒したのに微熱が続いているというのです。血液検査や胸のX線撮影でも特に異常はありませんでしたが、それでも食欲が減退し体重も4kgほど落ちました。

 

このケースでは毎日体温測定をしてもらったことで原因が判明しました。起床時に体温測定するようにいったところ、毎朝5時半に測っていることが分かったのです。部活の朝練に行くために毎日5時半に起床していたためでした。

 

この毎日の練習によって体力が回復する前にトレーニングを重ねたことで体が慢性疲労に陥っていたことが原因でした。この女子中学生は生理も止まっていたといいます。

 

医師の指導により、この女子中学生は部活を3ヶ月休部し静養したところ生理も再開し体重も元に戻るなどして回復に向かいました。

 

このように、体を動かす部活をする場合には毎日トレーニングについての記録を取り、体重や体温や心拍数などをチェックし、練習などに対する意欲の度合いなども自分できちんとチェックして管理するようにすべきでしょう。また、栄養面での管理も大事ですし、定期的に医療機関で身体に異常がおきていないか診てもらうことも大事になってきます。

 

スポーツ障害を予防するには

京都にある地域医療学際研究所スポーツ医科学センターでは、アスリートの体に関するさまざまなデータを計測し、それを元にして安全かつ効率のいい訓練方法を模索しています。

 

このセンターでは中学生から大人まで、さまざまな年代の人に関して持久力や筋力、血中の乳酸値などのほか心電図、最大酸素摂取量などを計測し、コンピューターを用いた分析を行っています。

 

毎年およそ450人ものアスリートを分析する中で分かってきたのは、スポーツ障害の有無を発見するという点では、外科的なものよりも内科的なものを見つける方がはるかに難しいという事実です。

 

例えば、あるアスリートの最大酸素摂取量を測定していたときのこと。その選手が突然顔面蒼白となり、気分が悪いと言い始めました。すぐに測定をやめて病院で体調を調べたところ、その選手がスポーツ貧血を起こしていることが分かったのです。

 

スポーツ貧血というのは文字通り激しい運動をすることによって発生する貧血です。原因にはいろいろなものがあります。例えば持久力が必要な運動をしたために酸素が多く必要となり、そのために多量の鉄分が必要になって起きるケースや、運動することによって足の裏で自分の赤血球をたくさん踏みつぶしてしまうことによって起きるケースなどがあります。

 

鉄分は普通の成人の場合1日10mg~15mgほど必要ですが、スポーツ選手などになるとこの値が30mg~40mgに上がると言われています。しかし近年の食事には鉄分が不足しがちなことが多く、スポーツをすることで貧血を起こしやすい環境になってきているというのです。

 

スポーツ貧血に限らず、内科的障害はなかなか見つけにくいものですから、もし部活中などに具合が悪くなった場合にはすぐに専門の医療機関に行き、健康状態をきちんとチェックしてもらうことが大事になってくるのです。

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