facebook Twitter はてなブログ feedly

思春期に多い原因不明の不調

原因不明

不定愁訴というのは、検査をしても特に原因が見当たらないにも関わらず、精神的ないし肉体的に明らかな不調や症状が発生しているような状態のことです。思春期の子どもたちはこの不定愁訴を訴えることが多いといいます。その原因について探ってみましょう。

 

不定愁訴はどうして発生する?

思春期の子どもに多く見られる不定愁訴は、ちょうど大人がかかる自律神経失調症や更年期障害といった症状と似通っています。

 

思春期の不定愁訴は生活リズムが崩れたために発生することが最も多く、その他には鉄欠乏症、起立性調節障害、スポーツ障害、心身症などによって引き起こされることが多くなっています。

 

思春期というのは同時に体や心が急激な発達を遂げる時期です。このため子どもの体は疲労していることが多く、そのために肉体の調子が乱れやすくなっています。こういう状態になると脳が自律神経を通じて体を休ませようとします。それによって入眠しにくく覚醒しにくいといった状態になってきます。

 

自律神経は、意識していなくても自律的に活動している内臓など体の諸器官をコントロールしている神経です。自律神経には大きく分けて2種類があります。1つはそうした器官を活発に動かす方向に作用する交感神経で、もう1つは逆に休ませる方向に作用する副交感神経です。

 

不定愁訴を訴える子どもの体ではこの自律神経の働きが乱れており、副交感神経の方が通常よりも強めに機能しているということが多くなっています。つまり、神経が体を休めようとしているわけですが、こういった時期にさらに体が「疲れる」ような活動をしてしまうと、この副交感神経の作用がさらに高まってしまいます。それにより、崩れた生活リズムがなかなか直らない、ということが起きてくるのです。

 

疾患により起こる不定愁訴もある

検査をしても特に原因が見つからず、病名がつかないからといって安心するのは早計です。思ってもみない疾患が原因で不定愁訴が引き起こされている可能性もあるからです。

 

生活リズムの崩れの次に多い原因として鉄欠乏症があります。思春期に入り急激に体が成長することで、活動のためのエネルギーになる鉄分が体内で不足することがあるのです。運動をすることや生理、あるいはダイエットをしていて栄養が偏ったりすると鉄分はさらに不足気味になります。

 

鉄分が不足するということはほぼ貧血と同じような状態になるわけですから、鉄欠乏症となった子どもには集中力や理解力が下がるといった症状も現れてきます。

 

また、起立性調節障害も不定愁訴を引き起こす原因となります。思春期には体が急速に成長します。特にこの時期には骨端線という成長組織を使って骨が伸び、それによって身長が伸びていきますが、一方で血管の方はそこまでの速度で成長することができず、全体的に引き延ばされてしまって機能が下がります。

 

正常な場合、人間の体が立ち上がった場合には足の血管が縮み、血液を上半身に戻す形になりますが、思春期の体では血管の機能が下がっているためにこれがうまく機能しなくなります。これによって頭部や体幹の血液が足りなくなり、めまい、立ちくらみ、頭痛、腹痛、疲労感といった症状が起きることになります。

 

さらに、思春期に達すると子どもは以前よりも込み入った概念が考えることができるようになってきます。こうした思考能力の向上により、自分自身についての悩みを抱えることが増え、またストレスを抱えたり精神的に不安定な状態に陥ったりします。このようにして精神的に負荷がかかった場合、脳は精神や体に休みを取るようにと副交感神経の働きを強めてしまいます。

 

こうしたメカニズムによって自律神経の働きが変わり、生活のリズムが崩れてしまうことによってより体調が悪化するのです。

 

思春期の不調は自立の機会

子どもは思春期になると体のだるさを訴えたり、眠気を訴えたりすることが多くなります。それを聞くと早く眠るようにとか、生活のリズムをきちんと整えるようになどとついつい言ってしまいがちですが、実際にそうしたとしてもあまり効果は上がりません。

 

ではどのように接すればいいかですが、ちょうど思春期というのは身体的にも精神的にも大人になる時期にさしかかっていますので、自立を促すように子育てのやり方を変えていくには逆にいい機会だととらえ、そのようにしていくといいのです。

 

具体的には、特に何も言わずに1週間ぐらい見守るようにします。そうするだけで子どもの顔つきや生活リズムなども自然に変化してきます。

 

このような親側の対応とともに、子ども自身が自分自身の状態を把握することも大事になってきます。思春期は体のバランスが崩れたり調子が悪くなったりすることや、精神的にも活力不足に陥ることがあるということを自覚し受け入れる必要があるのです。

 

小学生高学年になりいわゆる思春期にさしかかると、子どもは自分の体というものに興味を抱き始めます。この時期に人間の肉体や精神といったものについて正確な知識を与え、生活習慣などを自分で管理することの大切さを教えることは、その後思春期を過ぎてからの健康意識に非常に重要になってきます。

 

兵庫県の川西市医師会では、昭和60年代ごろから小児生活習慣病検診を行い、血圧、体脂肪、血液の3点を調べています。対象となるのは小学校四年生の児童で、検診の中で自分の体をきちんと管理していくことがいかに大事かを教えているそうです。

 

川西市で行った調査によれば、小学校一年生で全体の3%程度しかなかった肥満率が、小学校四年生の時点では全体の10%に増加してしまっているというような傾向が見られるとのことです。こうした問題を解消するため、毎年200人程度の希望者に対して検診結果をもとに食事の指導や生活習慣指導をしているといいます。

 

このように、思春期の子どもの多くは原因のはっきりしない不調に悩みがちです。こうした不調を乗り切るためには、子ども自身とまわりの大人たちがこうした不調をきちんと理解しておくことが非常に重要なのです。

 

心の健康と生活習慣の関連は

平成12年、文科省は全国の小学生から高校生までの子どもたちを対象とした調査を行い、心の健康と生活習慣について調べました。その結果、頭痛や腹痛がよく起きるかという質問に対し、中学生以上の生徒のうちの実に40%程度が痛くなるという回答をしたといいます。また、吐き気や悪心といった症状についても20%程度の自覚者があったといいます。

 

また、心の健康度と生活習慣に関連性があるかどうかを分析したところ、心の健康度が高い子どもは生活習慣の崩れが少なく、眠りに就く時間や睡眠時間が一定していたり、朝食をきちんと取っていることが分かったといいます。逆に心の健康面で不安を強く感じている子どもほど頭痛の自覚症状を持っている傾向があることも分かっています。

※当サイトではアフィリエイトプログラムを利用しています。

このページの先頭へ