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勉強に夢中になる方法は、脳の個性によって変わる

勉強に集中する子供

子供一人一人に個性があるように、脳にも個性がある事をご存知ですか?男女の差、個人差、遺伝、環境等、多くの要素によって脳の個性は決められています。そして、脳の個性が異なれば、勉強に夢中になる方法も異なります。我が子の脳の個性を知る事で、自分から「勉強したくなる」方法を見つけるともに、学力アップの方法を探っていきましょう。

 

勉強に夢中になる方法を決める脳の男女差

「我が子が何を考えているのか分からない」そう感じた経験はありませんか?特に10代の難しい年頃の子供を持つ親にとっては悩みの種ではないでしょうか。育った年代の違いもありますし、まして異性の子供となれば、より分からなくなるでしょう。

 

大人の男女の間でも同じような事は起こっています。職場内や恋人同士で男女の考え方のズレが生じる事は多々ありますが、このような時には必ずと言っていいほど、男女の脳の違いが引き合いに出されます。

 

これは約20年前に評判になった『話を聞かない男、地図が読めない女』(主婦の友社)が、男女間で起こるズレを、それぞれの脳の観点から論じた事が始まりであると言われています。

 

実際に、男女では脳の造りや能力に違いがある事が、脳科学の研究において明らかになっています。よく「男の子は積み木が得意」「女の子は口喧嘩に強い」と言われるのも、脳科学の視点で見ればただのイメージではなく、しっかりした理由に基づいています。

 

男と女では、脳の大部分において活動の仕方に違いがある為に、「男にとっては簡単な事も女には難しい」とか「女は得意だけど男は苦手」といった差が生まれます。また脳そのものや各部位のサイズ、様々な情報の結びつき方も、母親のお腹にいる時から違っています。

 

これらの違いが、男女間のズレを起こし、多くの親を「異性の子供の脳の中が分からない」状態にさせているのです。しかし、この脳の男女差が、物事に夢中になれる力や物覚えの良し悪し、意欲の度合いに影響しています。

 

つまり、我が子の脳内を知りたければ、脳の男女差を知る必要があると言えます。同時に、子供が勉強に夢中になれる力の土台作りに役立てる事もできます。

 

空気が読める女の子脳と、集中に強い男の子脳

具体的な脳の造りの違いとして、男と女では「脳梁」の太さが異なると言われています。脳梁とは、右脳と左脳をつなぐ役割を担う部位です。諸説ありますが、男性は右脳と左脳を分けて使い、女性は一緒に使う事が多いとされています。

 

また、未就学児の子供に関して言えば、女の子の方が、前頭葉の灰白質という部位が厚い事が分かっています。灰白質とは、例えるなら脳の情報処理機関です。その為、女の子は早い時期から語彙が豊富になり、親と違和感なく会話出来たりします。「女の子は手がかからない」とよく言われるのは、意思疎通が取り易い事が一つの理由です。

 

一方でこの時期の男の子は、意思疎通に関わる前頭葉の前頭眼窩野という部位の厚みが、女の子と異なります。相手の顔色から気持ちを憶測したり、場の空気を感じ取ったりという事が苦手とされています。気持ちとセリフが分離するので、相手に同調する事も中々出来ません。

 

例えばお母さんが不機嫌そうな顔をしていたら、女の子であれば「ママは怒っている」と考え空気を読んで近づいて来ないでしょう。ですが男の子にはその顔が「怒っている」顔なのか「体調が悪い」顔なのか、なかなか判断出来ません。これは右脳と左脳を分けて使う男の子脳の仕組みが影響しています。

 

しかし、右脳と左脳を分けて使う男の子脳は、一つの事だけを深く追い求めていく作業に向いています。特定の部位に絞って脳を使う事で、強い集中力を見せる事が可能になるのです。

 

逆に言えば、同時に複数の作業をこなすのが難しかったり、集中していると他の物が目に入らなかったりという状態になるのが、男の子脳の特徴です。前方から走ってくる消防車に目が吸い寄せられてうっかり躓いたり、お友達が持っているガス風船に釘付けになってお母さんを見失ったりするのは、男の子に多いです。

 

親としては、「うちの息子大丈夫かしら」と不安を煽るポイントかも知れませんが、これは別に注意が散漫している訳ではありません。不要な情報を切り捨てるという、集中に強い男の子脳の立派な特徴です。

 

男の子は、目から得た情報をまっすぐに脳の頭頂連合野という部位に持っていきます。頭頂連合野には、見た物の空間的な位置関係や運動を認識する機能があります。目の前で動いている物にたちまち反応出来るので、積み木であっという間にお城を作る事が出来たり、一度通っただけで道順を覚えられたりします。

 

稀にこの特徴が付きまとい行為等の非道な方向に向いてしまう事もありますが、男性はかつてより、一つの事だけを深く追い求めていく集中力と空間認知の能力を活かし、壮大な建物の建築や人工衛星の打ち上げを成し遂げてきたのです。

 

男の子脳を、勉強に夢中にさせるには

このような男の子脳の特徴を、勉強に活かさない手はありません。上手く活用して男の子の脳を勉強に夢中にさせましょう。その為に親が出来る事は、次の2つです。

 

一つは、子供の好きな科目や内容から勉強を始めさせる事です。興味のある物にはとことん集中できる特徴を利用して、勉強を習慣付けていきます。家庭の方針にもよりますが、好きな科目を好きなだけ勉強して極めるのも良いでしょう。

 

そして勉強したら褒める事を忘れてはいけません。勉強への意欲や集中力を維持するには、適当に手を抜きながら褒める事が重要です。ただ、嫌いな科目に着手したり、少しでも進展したな、と思った時は必ず褒めるようにしましょう。

 

もう一つは、勉強する場所作りです。例え勉強に集中していたとしても、他に気になる物が現れれば、興味が移ってしまうのが男の子脳です。目を引くポスターが貼ってあったり、大好きなキャラクターのフィギュアでいっぱいの部屋での勉強は避けます。質素で落ち着いたリビングで、時間を決めて家族で勉強するのがお勧めです。

 

女の子脳は早熟、同時進行が得意!でも気が散りやすい

女の子は、男の子に比べると大人びているように見える事が多いです。実際に女の子の脳は、3歳から6歳頃に飛躍的に成長します。一般的に女性タイプの脳は「共感脳」と呼ばれますが、女の子は幼少期から、この特性が良く表れます。

 

周りの空気を読んだり、相手の感情を察知したりする能力に長けているので、「お友達の機嫌が悪そうだから、話しかけないでおこう」くらい、大人にように気が回ります。

 

女の子脳の最大の特徴は、複数の事柄を並行処理できる能力がある点です。右脳と左脳を一緒に使う上、前頭葉の成長が早いので、相手の心の中を読み取りながらも、自分の考えや気持ちをまとめて会話するような巧みな技を使うことが出来ます。口喧嘩に強いのは、感情的な言い合いをしながらも、頭の中で様々な理屈を整理することが出来るからです。

 

このような並行処理が出来るのは、女の子脳が「ワーキングメモリ」の多重使用に適応しているからです。ワーキングメモリとは、「脳内メモ」のような物で、女の子は一度にたくさんのメモを見ながら作業出来るとされています。逆に男の子は複数のメモを一度に覚えられないので、一つの事に集中するのです。

 

その為女の子は、お母さんと会話しながらテレビを見つつLINEを返信するというような達者な事が出来ます。他にも、様々な科目を同時進行で勉強したり、音楽を聴きながら勉強したりといった、「ながら勉強」に向いているように思えます。

 

しかし、同時にどのくらいの作業が行えるかの度合いを示すマルチタスク度は、高ければ高いほど、ワーキングメモリの使用能力や不必要な事柄を排除する能力、素早く意識を転換する能力が低くなると、近年報告されています。

 

つまり、一見マルチタスク度が高そうな同時進行ですが、実際には目の前に飛び込んできた事柄に気分次第で対応しているだけで、ワーキングメモリを多重使用している訳ではありません。むしろ注意が散漫していると言えます。

 

子供がもし勉強と他の作業を同時進行で行っていたら、それは脳内メモをしっかり使いこなしているのか、意識が色々な所を行き交っているだけではないか、よく注視する必要があります。

 

我が子は男の子脳?女の子脳?しっかり観察することが大切

統計的に見て、脳の特徴に性差があるのは確かですが、「うちの子は男の子だからコミュニケーションが上手く取れない」とか「女の子だから何か一つの事にのめり込めない」と不安になる事はありません。中には女の子脳を持つ男の子もいますし、男の子脳の特徴が強い女の子もいます。

 

それよりも、自分の子供の脳の傾向を知って、その中の良い面や伸びしろのある部分をより良くしてあげる事が重要です。その方法はもちろん、「褒める」事です。

 

実際に、就職面接等では、気持ちを上手く言葉に出来る女性の方が、面接官への印象が良いかも知れません。ですが、特に新卒採用では、採用者全員が女性という事は無いに等しく、必ず男性の採用者もいるはずです。これは、男性は入社後に急成長する事を、多くの企業が知っているからです。

 

この急成長は、就職してからの本人の努力だけではなく、それまでに自分を取り囲んでいた環境も大きく影響しています。コミュニケーション力が重要視される現代では、同調が苦手な男の子脳は確かにハンデになるかも知れません。しかし、社会に出るまでの環境次第で、大きな伸びしろを作る事が出来るのです。

 

脳の個性はそれぞれ、勉強に夢中になる方法もそれぞれ

性差だけでなく、人には個人差がある事も忘れてはいけません。個人差は、遺伝的な特質や育った環境によって作られた「脳の個性」に左右されます。資質や人柄とも言えます。生まれつきの物を資質、経験等で身に付いた物を人柄とするなら、資質は遺伝的な特質を基に、人柄は大人っぽさを基に形成された脳の個性です。

 

オンリーワン思考が強まる近年では、「こうすべき」という枠がなくなってきて、遺伝的な特質の方が注目され易くなっています。その為、資質による脳の個性を探る方が、我が子の理解への近道となるかも知れません。

 

また人の行動様式には、資質が大きく影響します。つまり資質が違えば、勉強に夢中になれる方法も違うという事です。勉強に夢中にさせる為には、まず遺伝的な特質による脳の個性を知る事が重要です。自分が親から受け継いだ部分を思い浮かべれば、子供の資質が見えてきます。同時に、それを変えるのが不可能な事にも気が付くはずです。

 

資質は生まれつきの脳の個性なので、無理に変えようとするのではなく、どう使えば勉強に夢中にさせる事に役立つのか、その為に足りない要素は何なのかを考えていく事が大切であると言えます。

 

脳の個性に合う勉強方法を見つけよう!

脳の個性は、大きく次の4つに分類出来ます。子供が4つのうちのどれに当てはまるのか確認しながら、向いている勉強方法を見つけていきましょう。子供の脳に向いている方法を実行していく事で、勉強に夢中になれる脳に近づいていきます。

 

①小さな「完成」を目指すことで飽きさせない!

この方法が向いているのは、新しい物好きで、夢中になるのも早いですが飽きるのも早いと言った脳のタイプの子供です。

 

「行動のアクセル」と名の付くドーパミン神経系が活発に働くので、夢中なれる事を見つければ最初は気合十分に臨みます。しかしすぐに飽きてしまうので、中途半端に終わってしまう事が多々あります。

 

その為、興味や意欲が長続きする工夫が必要です。勉強の場合は「今日はこの科目だけやったら目標達成」と学習範囲を1つに絞ったり、毎回新しい単語を少しずつ覚えたりと、完成形がすぐ目に見えるような方法をとるのが効果的です。「完成」を体験する事で達成感を覚え、やる気維持につながります。

 

あるいは、すぐに夢中になれるその瞬発力を利用して、一気に終わらせてしまう方法も向いています。子供が何かに夢中になったと感じたら、小さい「完成形」から提示してみましょう。次々と達成していく事で、最終的には将来の夢の実現まで辿り着けるでしょう。

 

②ゆとりを持った計画を立てて、やる気を維持!

日本人に一番多いと言われる安定志向タイプの子供は、変化を好まない為物事を継続して行う事が得意です。

 

セロトニン神経系の働きが必要以上に活発だったり、反対に働きが少ない為に、安全な場所に身を置いていたいという思いが強かったり、不安になり易かったりします。セロトニンは「行動のブレーキ」や「脳の安定化装置」と呼ばれます。

 

継続する事を苦労と思わないので、勉強に関しても毎日着実に取り組む事が出来ます。参考書等もあれこれ手を出さず、一冊に集中して勉強する方が良いでしょう。しかし、万が一の変化に対応出来ないという弱点もあります。急用が入って勉強の計画が崩れたりすると、途端にやる気を失ってしまう恐れがあるので、注意が必要です。

 

このやる気減退を回避する為には、急用や体調不良が起こる可能性を考慮して、予めゆとりのある計画を立てる事が重要です。もしやる気を失ってしまって数日間勉強出来なかったとしても、簡単に挽回出来るくらい余裕を持った計画を立てましょう。

 

親は、やる気を失くしている子供に勉強を無理強いせず、「少しリフレッシュしてみたら?」くらいの気持ちで接する事を心掛けましょう。その方が、結果的に効率アップになります。

 

③とにかく褒めて、勉強の波に乗せる!

褒められて伸びるタイプの子供には、「あなたの頑張りを認めているよ」という事を実感させるのが何より重要です。周りから認められる事が「報酬」となって、報酬の為に頑張ることが出来ます。

 

このような脳の個性が出るのは、ノルアドレナリン系という神経の活動が不安定である事が関係していると言えます。この神経は脳の覚醒水準を決定する役割を持っており、活動が変化する度に気分も上下します。突然カッとなる事があるのは、ノルアドレナリンが急激に増加する為です。

 

一番身近な存在である親がとにかく褒めてあげましょう。些細な事でも、勉強に関係していたらとにかく褒め、継続出来てきたら徐々に褒めの頻度を少なくしていきます。

 

逆に認められていないと感じるとすぐさまやる気を失います。友人関係も需要です。自分を認めてくれる仲間がいないと不安になったり、関係が悪化して友人からの拒絶を感じてしまうと酷く落ち込んだりするので、例えば学習塾に通う場合等には、塾内の友人関係をチェックしておく必要があります。

 

④自己肯定感を高めて達成感アップ!

中途半端が大嫌いで、何事にも一生懸命取り組むタイプの子供は、「完璧」を達成する事で自信をつけます。「こうすべき」という観念を信じて突き進む為、逆にそれをやり遂げられなかった時の反動が大きく、自分を否定してしまう事があります。

 

一度に沢山手を付けると、全てを完璧にしようとしてパンクしてしまうので、勉強する時は順序を決めて、1つずつ着実にこなしていく方法が向いています。そして、やり遂げた物については、紙に書き出すなどして成果を確認し、達成感を実感させる事が大切です。自信がついて自己肯定感を高める事にもつながります。

 

学校選択も、脳の個性を考慮すべき

子供が自分の学力だけを材料に学校を選ぼうとしていたら、要注意です。資質を基にした脳の個性によって、合う学校も変わってきます。

 

中でも大学は、場所や規模、学風等さまざまな条件でカラーがまるで異なります。学力だけで選んで入学しても、自分の資質に合っていなければ実力を発揮する機会に恵まれないかも知れません。

 

今までとは違う環境で心機一転スタートした方が良いのか、地元などの親しみのある環境の方が落ち着いて励めるのか、開放的な雰囲気の方が合うのか、厳しい校風の学校の方が合うのか、実際に見学に行く等して、子供の資質に合った大学を見極める事が重要です。

 

環境次第で、学力はいつでも伸びる!

臨界期という言葉があります。臨界期とは、人生で一度きりの、さまざまな事を短時間で吸収出来る時期の事で、脳の発達が非常に盛んであると同時に、発達に一番大切な時期です。

 

8歳から10歳頃の臨界期までに、「知(知性)」「情(感情)」「意(意欲)」の基盤が必要と言われる事が多いので、その歳を過ぎた子を持つ親は、「手遅れだ」不安になってしまう事もあるでしょう。

 

しかし実際10歳頃までに臨界期が訪れるのは、聴覚や視覚等の五感に関する部分のみです。対して「知性」に影響する前頭前野は、10歳頃までに大体の基礎は出来上がりますが、それ以降も25歳頃まではわずかながらも成長を続けるとされています。

 

前頭前野の成長のスピードを考えれば、学力を伸ばすのに「手遅れ」という事はありません。後からでも伸びる可能性は十分にあります。そしてその可能性の鍵を握るのは、家庭外における子供の周囲の環境です。

 

前頭前野には、周りの環境によって変化できる柔軟さがあります。逆に言えば、周囲の影響を非常に受け易いという事です。つまり、周囲の環境を前頭前野の成長に向けて整える事で、学力を伸ばす事が出来ると言えます。

 

ワーキングメモリを使いこなして学力を上げる!

前述したワーキングメモリを操作するのも、前頭前野です。ワーキングメモリは脳内メモと言われるもので、記憶力に関わります。記憶力なくしては、学力は伸びません。

 

以下の問題で、ワーキングメモリがどのような物であるか実感出来ますので、挑戦してみましょう。

 

問題①:次の4つの単語を10秒で覚えて下さい。覚えたら見えないように伏せて下さい。【くるま いぬ つくえ みかん】

 

問題②:50に8を足し、出た答えにまた8を足し、その答えにさらに8を足して下さい。足す毎に答えを声に出して下さい。

 

問題③:最初に覚えた単語を4つ全て言って下さい。

 

いかがでしたでしょうか。問題に沿って、前頭前野の活動を見ていきましょう。

 

まず問題①で、4つの単語を脳内にメモします。そして問題②で計算問題が出てきましたので、別のメモを開いて計算します。計算の都度、答えをメモしますが、最初の答えの58は、次の答えの66が出たら消去されます。さらに次の74が出たら、66もメモから消されます。最後の問題③で、最初のメモに戻って4つの単語を思い起こします。

 

脳内のこの一連の活動こそ、ワーキングメモリの多重使用です。脳内メモを使った一時の記憶と、計算という知能的な行為が、ワーキングメモリであり、この多重使用が出来ないと、数種類の知能的行為を同時に行えません。

 

例えば算数のテストでも、まず問題文を読みながら問われている内容を理解して、公式を思い出しながら数字を当てはめて計算して、求めた答えが正しいか見直すという複数の作業を一度に行いながら解き進めていきます。これも、ワーキングメモリの力なのです。

 

ワーキングメモリの力を使う能力が養われていないと、テスト中に頭が混乱して、訳が分からなくなってしまいます。

 

学校に行くだけで、ワーキングメモリは養われる!

ワーキングメモリを上手く多重使用する為には、自分の考えや感情を管理する能力が必要とされます。このような能力は、一体どのように養っていけば良いのでしょうか。

 

実は、これには特別な練習や鍛え方はありません。普段の生活の中で、自然と養っていける物だからです。例えば、日常の会話においても、話の内容や流れを脳内にメモしながら聞き、相手が伝えたい事を理解しています。当たり前のように出来ている人が多いと思いますが、全てワーキングメモリの力です。

 

強いて言うならば、学校に楽しく通う事が、ワーキングメモリを使いこなせるようになる近道です。

 

授業を受けて勉強する事でワーキングメモリの力は向上します。先生の話を聞く、友達と話す、教科書を読む、漢字やその書き順を覚える、文章問題を解く、作品を作る、調理実習で料理を作る、絵を描く、楽器を演奏する等、学校にはワーキングメモリを養う為の材料が山ほどあります。

 

子供が学校に通う時期というのは、前頭前野の成長期です。言ってみれば学校はワーキングメモリ育成所です。

 

ですから、親は子供が毎日楽しく学校に通える手助けをしてあげましょう。起床時や登校時、帰宅時には笑顔で子供に挨拶する事を心掛けて下さい。「学校に行くのが楽しい」と思える事が、ワーキングメモリを鍛え、社会に出てから役立つ力を育てるのです。

 

勉強に必要な脳のバランス

「知性」は前頭前野の発達と共に磨かれていきます。他に、自分や相手の感情を理解する「情」、興味関心や意欲の「意」の成長も、前頭前野の発達に関わります。この3つは合わせて「知情意」と呼ばれています。企業の企画部門(知)、営業部門(情)、総務部門(意)に例えられる事もあります。

 

商品がどれだけ素晴らしくても、それを売る営業マンに力がなければ商品を世に出す事が出来ませんし、商品と営業マンが完璧でも、総務が社内環境を整えていなければ仕事に対するやる気がなくなります。つまり3つのバランスが非常に重要という事が言えます。

 

つい学力イコール「知」と考え、そこを伸ばす事ばかり考えがちですが、意欲が無ければ知力も上がりませんし、相手の感情を汲み取る力がないと、社会に出ても人とのコミュニケーションが取れません。

 

子供が勉強していれば不安はない、勉強さえしていれば良いという考えは、「知」の部分のみを突出させてしまう為、取り去る必要があります。「知情意」のバランスの取れた脳の成長が、子供の真の学力となっていきます。

 

コミュニケーション上手になって学力を底上げする!

「情」の養い方を見ていきましょう。一番効果のある方法は、対面式コミュニケーションです。人の心や感情は一定ではありません。会話の中で目まぐるしく変化する相手の気持ちを次々と汲み取りながら記憶することで、感情理解、即ち「情」の成長につながります。

 

そして、電話やLINEよりも、実際目の前にいる相手との会話の方が、前頭前野が活発に働くという調査結果があります。子供の「情」を養うには、人と直接会って楽しく会話したり、綺麗な風景や貴重な体験を肌で感じて心を震わせたりして、前頭前野を活性化させる事が重要です。

 

さらに、「情」を養う事はワーキングメモリの発達にも繋がります。人と人とのコミュニケーションの中で、脳内メモが頻繁に使われている事が、近年分かってきています。

 

プレゼンや発表など、自分がひたすら喋るだけの場であれば、1つのメモを見るだけで事足ります。しかし、例えば数人で行われる会社のミーティングのように、いくつもの意見が交わされる場では、メモは複数必要になってきます。A部長の意見を記憶する為のメモ、同期Bの提案を理解する為のメモ、自分の考えを発言する為のメモといった具合です。

 

つまり、上手なコミュニケーションにも、ワーキングメモリの多重使用が必須と言えます。

 

そしてミーティングが進むにつれて、それぞれのメモを次々に更新していく必要があります。更新し続けることが出来ないと、ミーティング中のコミュニケーションは成立しません。人の気持ちを汲み取りながら自分の意見を述べる並行作業が出来ないので、周りから、「他人の意見を聞かない人」とレッテルを貼られてしまう事もあり得ます。

 

しかし、実際には、人とのコミュニケーションが得意な人ばかりではありません。友達と上手くコミュニケーションが取れずに悩む子供もいるはずです。我が子がそうだと感じたら、まずは家庭で、親が意欲的に話し掛けてみましょう。

 

子供は特に、親の行動を無意識に真似てしまうものです。楽しく会話出来るよう、笑顔で話し掛ける事も意識して下さい。

 

親が笑顔なら、子供の脳も笑顔になれます。これを続けていく事で子供の脳は笑顔を学習し、「会話って楽しい」と感じられるようになります。同時に友達とのコミュニケーションも、笑顔で楽しむ事が出来るようになるでしょう。

 

「メタ認知力」でやる気も成績もアップ!

やる気をぐんとアップさせるのは、達成感に他なりません。達成感を得る為には、目標が必要です。物事に取り組む度に、その明確な目的を意識する癖をつけさせましょう。それを助けるのが、「メタ認知力」と呼ばれる力です。自分で自分を空の上から見下ろすように、自分自身を客観的に見る力の事を言います

 

例えば、赤、青、黄の3色の絵の具があるとします。そのままでは別々の3色ですが、この絵の具を眺めながら、赤と青、赤と黄、青と黄、あるいは3色全ての色を混ぜ合わせたらどんな色になるのか、と考える事も出来ます。そして、おそらく全く別の色が生まれてくるだろうと想像出来ます。

 

この色を「眺める力」と、混ぜ合わせる、つまり色と色を「結びつける力」が、メタ認知力にあたります。

 

色の場合に限らず、例えばテストの問題文を「眺めて」、この単語が入っているという事は、あの公式を使えばいいのだ!という具合に単語と公式を「結びつける」事で、問われている内容が見えてきたりします。この力はテストの点数を上げ、成績アップにも役立ちます。

 

さらに、テストの問題を解く為にどんな知識が必要で、どんな勉強をすれば良いのかが分かってくるので、目標をより明確に持てると同時に、意欲も上がるはずです。

 

メタ認知力は、今の自分の力ではどうにも出来ないような難問にぶつかった時に養われます。解決の為に、あらゆる情報を眺めたり結びつけたり試行錯誤しながら、新しい考え方や発想を生み出していく中で、メタ認知力は育っていきます。

 

勉強に関しても、少し難しそうな高い目標を持つ事でメタ認知力が養われ、目標達成の為にやる気も倍増していくでしょう。

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