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摂食障害になる子供が増えている

拒食症の子供

昭和50年代ごろから、思春期の子供たち、特に女子の間で摂食障害を患う子供が増えてきました。摂食障害はいわゆる先進国と呼ばれる国々で多く見られる疾患で、バックグラウンドには痩せ志向や美食にふける風潮、そしてコンビニエンスストアの出現といったものがあるとされています。

 

体への悪影響が大きい拒食症

摂食障害の患者数は最近の10年間を見ても増加傾向にあります。過食症の発症はおよそ4倍に増加し、拒食症や特定不能型のケースもおよそ3倍に増えています。

 

摂食障害は圧倒的に女性に多く、特に思春期の子供が発症することが多いです。拒食症と診断されたある中学三年の女子は、食事の量をあまりに減らしてしまったせいで食べ物を受け付けなくなり、倒れて病院に運ばれる前の数日間はスポーツドリンクしか飲めなかったといいます。

 

こうした症状は、単純なわがままであったり、極端な痩せ願望といったものではありません。食事を制限してガリガリに痩せてしまった自分の姿を見ても、まだ太っていると感じてしまうような認知の歪みがあるのがその証拠です。

 

体重が危険な水域まで減ってしまってもダイエットをやめず、体を壊してしまうのはそのためです。病院に運ばれてからも点滴のせいで太るというイメージが抜けず、入院しているのに階段を上り下りして痩せようとしたというケースもあります。

 

拒食症で体重が極端に下がると、人間の体にはさまざまな悪影響が出ます。例えば子供にとっては重要な成長阻害、月経不順や無月経、骨粗しょう症のほか、脳が萎縮してしまうことさえあります。

 

こうした肉体面での状態は食事量をコントロールしたり栄養を点滴で補ったりすることによってゆっくりと回復を図ります。しかしそれだけでは足りず、精神的なサポートが必要不可欠です。拒食症には病的な思い込みや感情の抑圧、大人になることへの不安といった思春期特有の葛藤や親との関係などでの悩みといったものが背景に横たわっていることが多いからです。

 

患者は医師の指導などで正しい知識を身につけ、美醜観についての認知の歪みを修整していきます。こうした歪みが是正されていけば食事の量も普通に戻すことができるほか、体重も健康なレベルで安定させることができるようになっていきます。

 

摂食障害の原因

思春期の女子が摂食障害に陥るきっかけでもっとも多いのはダイエットです。中学生・高校生の女子は7割以上が自分の体重が気になっており、小学生のころから自分の体重を操作している子供も全体の5割を超えるという調査結果があるぐらいですから、子供たちの間には摂食障害の予備軍が確実に形成されていることになります。

 

最近の社会では生活習慣病やダイエットなどが大きく取り上げられ、痩せているということがいいことだという情報発信が多くなっています。このことが摂食障害を招く要因になっているのは否めません。しかしそればかりが原因というわけではけっしてなく、本人の性格的な要因であったり心理面での傾向も大きな原因を占めています。

 

摂食障害になってしまいやすいのは、「まじめ」「いい子」「自己肯定感が低い」といった性格的特徴を持っている子供です。こういう性格の子供はダイエットをする際にも厳密さを求めがちで、ダイエットで思った通りに体重が制限できると、それを自信のよりどころにしてしまい、さらに厳しい体重制限を続けていってしまうという悪循環に落ち込みがちなところがあります。

 

また、摂食障害の患者の中には、自分の周りの人の態度や人間関係について、認知に歪みを持っていることが多いとする研究結果もあります。こうした患者には、1か0かといったような完全主義的なものの考え方、自分を否定しがちである、思い込みが強く極端な思考に走りやすい、といった傾向があり、そのために人間関係を構築するのを難しく感じます。

 

例えば友だちが2人で話しているのを見たときに悪口を言われていると思い込んでしまい、話に割って入ることで自分の思い込みから抜け出すといった行動ができない、といったような具合です。そうやって人間関係に関するストレスを蓄積し、それを解消しようとして摂食障害になっていく場合もあります。

 

摂食障害の患者数は年々増加しており、拒食症だけでなく過食症や過食嘔吐といった違った病態も見られるようになってきているほか、小学生から主婦までと幅広い年齢層に見られるようになってきています。

 

セロトニンに関連する遺伝子に異常があると摂食障害になりやすいといった新しい研究結果も発表されるなど、原因を特定するのは難しい状況です。

 

摂食障害では精神面での治療も重要

摂食障害の患者には認知の歪みなどがあるため、肉体面での治療の他に精神面での治療が必須です。そうした治療を通して認知がおかしいということに自分で気づいてもらい、他人との接し方に問題がある場合にはそうした面も是正することになります。

 

患者が思春期の子供である場合、言葉で自分の考えを表現するのが難しかったり、心を閉ざして話さなくなってしまうようなケースも多いため、そういった場合には言葉ではなく絵を使って行う芸術療法なども効果があります。

 

弟が病気だったために両親が忙しく、幼いころから迷惑をかけないようにと感情を抑え込み、高校生になって拒食症になってしまった女子高校生のケースでは、この絵画を使った芸術療法が用いられました。

 

治療を開始した時には小さな子が描いた殴り書きのような感じの絵を描いていましたが、しばらくすると怒りを表現したものや甘えたいという願望を表したものに変化していき、だんだんと言葉を通じて親に自分の望みを伝えられるようになっていったといいます。

 

我が子の絵の移り変わりを見て母親はその女子高校生との関わり方を改め、そうすると体の症状は回復し始めたということです。

 

自分の思いを表現したり他者と意志を通わせるといった能力は、本来であれば幼いころに集団で遊んだり、ケンカをしたり、親との関係性の中で自ずと身についていくものです。

 

それがきちんと身についておらず、そのために摂食障害にまでなってしまうような場合、幼いころから他の人に対して気を遣いすぎるように育っていたり、家族が意識はしていなくても、子供の自己主張を制限するような態度を取っていたりすることが多い傾向にあります。

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