聞き上手な子供、話し上手な子供に育てるには?
人の話を聞くことと、自分の考えを言うこと。全く反対の事のようですが、実は両者は密接にかかわっています。そして、私たち人間が社会の中でうまくやっていくには、どちらもできなければなりません。子供がその力を身につけるには、どうしたらよいのでしょうか。
ついやってない?子供の集中力をそぐ行為
近頃、先生の話を集中して聞くことができない子供が増えてきているようです。授業中でも席を立ってうろついたり、教室を出ていってしまったりする子供がいるのです。その子自身ももちろん授業の内容が身に入らずに困ることになるでしょうが、周りの子供たちにとっても迷惑になってしまいます。
このような子供に育てたいと思っている親御さんはいないはず。しかし実は、親御さんが何気なくしている行為が、子供の集中力をそいでしまっていることがあります。
振り返ってみてください。我が子を見てあれこれ細かく注意を与えていないでしょうか?外を歩けば「そんなに走ると転ぶわよ」、食事をすれば「こぼすからよそ見しないの!」というように、お子さんに絶えず注意の言葉をかけている親御さんは、少なくありません。
「きちんとさせなければ」という思いからなのでしょう。しかしあまりにも注意ばかり言われ続けていると、子供は何を言われても「はいはい」と聞き流すようになってしまう傾向が高まります。つまり、集中して親の話を聞くことができなくなるというわけです。あまりにもそれが続いてしまうと、どんな人の話でもそのように聞くようになってしまいます。
人の話を集中して聞く子に育てる上で、親が気をつけなければならない事は他にもあります。それは、「子供の都合を考えずに命令しない」ということです。お子さんが集中して本を読んでいるところなのに、「さあ出かけるわよ」などといきなり声をかけて、親の都合に合わせようとすること、ありませんか?せっかく集中して何かをしていたところなのに、これでは子供の集中力がそがれてしまうでしょう。
子供の集中力をそがないようにするには、まずは子供が今やっていることをじっくりと見ることです。もしも何かに集中しているようであれば、いきなり中断させずに、「一区切り付いたら○○しようね」とか、「ここまで読んだら出かけようね」などと、予定の形で声をかけるようにするのがベターです。
話し合いの経験が、伝える力・聞く力を育てる
人の話を聞くだけでなく、自分の考えを伝える力も子供にはつけさせたいもの。自分の考えをはっきりと言う力を育てるために、もっと家族で話し合いをしてみませんか?
お母さんと話し合う、お父さんと話し合うということはよくあるかもしれませんが、家族全員で話し合いをするというのも、大切な経験です。「次の連休はどこに出かけるか」などとお題を決めて、家族で話し合ってみましょう。では具体的に、話し合いの手順を説明します。
まず、司会を決めましょう。司会は、なるべく全員が意見を言えるように、話し合いを進めていきます。また、争いにならないよううまく仲介するのも、司会の大事な役目です。
次に、話し合いのルールを確認します。
・挙手をして、司会に指名されてから発言をすること
・発言は冷静に、独断にならないように気をつけること
・お題に沿った発言をするよう心がけること
・人の発言中は意見を言わず、ちゃんと聞くこと
・誰の発言も大事にすること
※いわゆる会議のルールに類似のものです。家庭の状況に応じて柔軟に決めておきましょう。
これらを家族全員できちんと確認し、子供も大人も平等に、決まりを守るようにします。また、この話し合いで何かが決まったら、家族全員でそれに従いましょう。
最初のうちは、大人が司会を引き受け、進行していくことになるでしょう。しかし回数を重ねるごとに、子供にも任せられるようになります。家族内の話し合いにおける司会の経験は、家族以外の人との話し合いをスムーズにさせてくれます。
この話し合いを家族会議と名付けたり、司会役を設けたりすることによって、子供は気持ちがのってくるでしょうし、大人にとっても真剣みが増すことでしょう。欧米の人たちに比べて、日本人というのは議論が苦手だと言われています。家族ならなおのこと、話し合いなど必要ないと思ってしまう節があります。言わなくても通じ合うと思ってしまうのでしょう。
しかし、夫婦と言っても、親子と言っても、別の人格を持った他人同士です。考え方が違ってもそれは同然の事です。ということは、きちんと言葉にして伝えなければ、自分の考えを分かってもらうことなどできないということです。
家族全員での話し合いを何度も経験することで、自分の考えを相手に伝える方法を、子供は学びます。と同時に、相手の考えを理解する聞き方も学ぶことができます。さらに、自分の意見を聞いてもらうには、相手の意見もきちんと聞く必要があるということも知ることができます。自分の意見を伝える練習をしているうちに、相手の話を聞く力もついていくというわけです。