陣痛を意図的に起こさせる薬がある?
出産を控えた妊婦さんは、陣痛促進剤という言葉を聞いたことがあるかもしれません。陣痛促進剤とはどんなものなのか、どのような時に使うのか、ご存知でしょうか?
陣痛促進剤とは
そもそも出産は、赤ちゃんの出てこようとする働きと、お母さんの赤ちゃんを外に押し出そうとする働きの2つがあって、やっと可能となるものです。この、お母さん側の働きは、具体的に言うと、子宮の収縮になります。
この子宮の収縮は痛みを伴い、これが、陣痛と呼ばれるものです。
陣痛が来なかったら、赤ちゃんを生み出すことは難しいのです。
ところが、いろいろな要因によって、陣痛が起きない、あるいは起きても弱すぎてお産にまでいかないという場合があるのです。弱い陣痛が長く続きすぎると、母体や赤ちゃんに悪影響を及ぼします。そこで、人工的に強い陣痛を起こさせる方法がとられることがあるのです。
この時に使われるのが、陣痛促進剤と呼ばれるものになります。
ちなみに、これとよく似た名前で、陣痛誘発剤というものもあります。
これは陣痛促進剤とどう違うのでしょうか。
字の意味を考えてみると容易にわかることですが、陣痛促進剤は、起きてはいるものの微弱な陣痛である場合に使われるもの、陣痛誘発剤は、陣痛がなかなか起こらない場合に使われるものなのです。そして、これらの薬の内容は、同じものとなっています。
以前は、使用方法が適切でなかったためにトラブルを発生させることもあった陣痛促進剤ですが、現在は、使い方や管理の仕方については詳細な取り決めがあり、慎重に使われるようになっています。
陣痛促進剤として使われるお薬は?
陣痛促進剤に使われているのは、どのようなお薬なのでしょう。
陣痛促進剤に使用されているのはホルモン剤で、子宮の収縮促進作用があるものになっています。そして使用されるホルモン剤は2種類あります。
①オキシトシン
オキシトシンの働きとしては、子宮収縮を促すだけでなく、母乳分泌も促進します。
この作用により、定期的な、しかも強い陣痛が起こるようになります。どのような形で使用することになるかというと、点滴によって体内に注入されます。
②プロスタグランディン
プロスタグランディンは、定期的に起こる陣痛を少しずつ促し、また、子宮口を柔軟にする働きを持ちます。つまり、子宮口がほぼ開いていない状態や、子宮口が固い状態の時に用いられる薬なのです。微弱陣痛が起きているときには、プロスタグランディンは使用されません。
この薬は、喘息、緑内障などの持病がある人には使用してはいけないことになっており、そのような場合には、オキシトシンが用いられます。
使用する形式は、点滴もしくは錠剤となっています。
どちらも子宮収縮を促すホルモン剤である点は同じですが、その働きが微妙に違い、その妊婦さんの状況によって、どちらを使うことになるのかが決定されるということですね。
錠剤による使用の場合は、服用量や服用方法がきちんと決められています。また、点滴による使用の場合は、赤ちゃんやお母さんの様子を見ながら、慎重に量が調節されるようになっています。
陣痛促進剤は慎重に使われます!
陣痛促進剤は、陣痛がなかなか起こらない時や、起こっているけれど弱いという時に、お産ができるような陣痛を起こす働きをする薬です。
薬なので、赤ちゃんやお母さんの体に悪影響を与えないかと心配になりますね。どんな薬でも、状況に合わない使い方をすれば、悪い影響を与えることになります。陣痛促進剤は、現在、その使用方法や管理方法に関してきちんとした決まりがあり、それに従って使用されることになっています。
つまり、お母さんや赤ちゃんの様子を入念にチェックし続けながら、陣痛促進剤は使われるのです。具体的に言いますと、分娩監視装置を常につけておき、子宮収縮の具合や赤ちゃんの心拍数などをいつもチェックしながら、使用量を調整するのです。
お薬というのはどんなものでもそうですが、その効き方は人それぞれです。ですから、一概にこれだけの量を使う、と決められているのではなく、あくまでその時の状況に合わせて慎重に使う、ということになっているのですね。
過去には陣痛促進剤を使うことによって、トラブルが発生することもありました。ですが、陣痛促進剤を使わなかったことで発生するトラブルもまたありえるのです。陣痛が弱くてなかなか出てこられなかったら、赤ちゃんはお母さんの体内でどんどん体力を消耗していってしまいます。お母さんにとってもそれは同じでしょう。
陣痛促進剤は薬ですから、お母さん本人もその薬について、よく知っておかなければなりません。お産になる前にあらかじめ、かかりつけの産院で、陣痛促進剤とはどのようなものか、どのような時に使うのか、どうやって使うのかをきちんと聞いておくのが良いでしょう。
どんな場合に陣痛促進剤が使用されるのか
お産を順調に進めるために使用されることがある、陣痛促進剤。具体的にはどのような場合に使われるのでしょうか。自分のお産の心づもりのためにも、知っておきましょう。
①微弱陣痛の場合
陣痛は、始めは弱く、不規則に表れます。それが次第に強く、一定の間隔で起こるようになります。分娩のためには、強く規則的に陣痛が起こる必要があります。
ですが、陣痛がずっと弱く、不定期にくるというケースもあるのです。また、いったん強く規則的になったものの、途中で途切れてしまったり、弱くなっていってしまったりする場合もあります。
このままだと母体や赤ちゃんの体力が消耗するため、陣痛促進剤が用いられることがあります。
②遷延分娩の場合
遷延分娩とは、分娩を開始した後、赤ちゃんがなかなか出てこず、分娩時間が非常に長くなってしまうケースのことを言います。
こうなると、お母さんの体は衰弱し、赤ちゃんの体力は次第に落ちて行ってしまいます。これ以上待つと危険であるという時、陣痛促進剤が用いられます。
③前期破水の場合
陣痛前に破水をすると、通常はその後まもなく陣痛が来るのですが、24時間たっても陣痛がやってこないことがあります。この場合は、赤ちゃんが感染症におかされることも考えられるため、陣痛促進剤によって陣痛を起こすことがあります。
④予定日を過ぎ、胎盤機能が低下している場合
予定日を過ぎても陣痛が来ないということは、よくあることです。ですので、普通は陣痛が自然に来るまでは待つのですが、胎盤の機能が悪くなっていくようなら、陣痛促進剤を使用する時があります。
胎盤は、赤ちゃんがお母さんから栄養や酸素をもらうために、とても重要な役割を果たしています。その機能が落ちていってしまっては、赤ちゃんが危険だからです。
上記に挙げたケースは、起こらないこともありますが、誰にでも起こる可能性があり得ます。一応頭に入れておくとよいでしょう。