育児休業給付金は育児休業期間の強い味方!
育児休業を取得すると、たいていの場合は給料が出ないことになります。このため、その期間の生活を支援する目的で「育児休業給付金」という制度が設けられています。どんなふうに手続きすればいいのか、どれぐらいの支援を受けられるのかなどについて見てみましょう。
制度の中身について
仕事に就いているお母さんやお父さんは、赤ちゃんが1歳の誕生日の前日を迎えるまでの期間であれば育児休業を取得することができます(お母さんの場合は産休の終了から開始になりますが、お父さんの場合は子どもが産まれた当日から取得することができます)。しかし、たいていの場合は給料が支払われることはありません。このため、その間の家計を支援する目的で育児休業給付金が支給されます。
育児休業給付金は、お母さんやお父さんの雇用保険(共済組合)から支給されます。通常の場合は1年間まで受けとることができますが、特別な理由がある場合は最長1年6ヶ月まで伸ばすことができます。この特別な理由とは、保育所に入所を希望し申込んだものの入所できない場合や、子の養育を行っている配偶者がやむを得ない事情で養育困難となった場合があります。この場合は育児休業期間とともに給付金の期間も1年6ヶ月まで伸ばすことができるのです。
なお、お母さんとお父さんの両方が育児休業を取る場合、「パパママ育休プラス」という特例制度を利用することができます。この制度を利用すると、育児休業の対象である子どもの年齢が1歳2ヶ月に達するまで育児休業を延長できるのです。ただし、お父さんやお母さん1人ずつが取得できる育児休業期間の上限は1年間が原則となっています。このため、休暇開始をずらしたとしても2人で1年2カ月まで取得することができるわけです。
対象となる人はどんな人か
育児休業給付金については、次のような条件を満たしている人が支給対象となります。
1.本人が雇用保険に加入していて保険料を支払っている
2.育児休業開始前の2年間について、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が通算して12ヶ月以上ある
※この期間に転職した場合でも、すべての職場で通算して12ヶ月以上あればOKです。ただし、この期間に失業給付の受給手続きをしていた場合は通算できませんので注意が必要です。
3.育児休業期間中の各1か月ごとに、休業開始前の1ヶ月あたり賃金の8割以上の金額が支払われていない
4.各支給単位期間ごとの休業日数が20日である
※育児休業の終了日を含む期間については、休業日が1日以上あれば20日以上である必要はありません。
これらの条件を満たしていれば、期間雇用者(パート、派遣、契約社員など雇用期間の定めのある労働者)であっても支給対象となります。ただし、期間雇用者の場合は、育児休業の開始時点で、
(1)いま働いている会社に引き続き1年以上雇用されており、
(2)子どもの1歳の誕生日以降も引き続き雇用されることが見込まれる、
という2点も満たす必要があります。
このため、雇用保険に入っていたとしても、
(a)妊娠中に職場をやめる、
(b)育児休業に入る時点で、育児休業終了後に退職の予定がある、
(c)育児休業を取得せずに仕事に復帰する、
のような場合には給付金をもらうことができません。また、専業主婦(主夫)だったり、自営業を営んでいたり、パートやアルバイトなどで雇用保険に加入していない場合にも給付金はもらえないことになります。
以上のように、育児休業給付金をもらうにはさまざまな条件をクリアする必要があります。しかし、条件さえクリアすれば、育児休業を取得しているお父さんでも給付金をもらうことができます。育児休業は両親が同時に取得することもできますので、育児休業を取ることのできる期間(1年または1年6ヶ月)の前半部分ではお母さんが、後半部分ではお父さんがそれぞれ休業を取得し、別々に給付金を受けるということもできます。
最近では男性の育児休業については理解が進んできているとはいえ、まだまだ思わぬトラブルを招きかねないというのが本当のところではないかと思います。このため、休業取得についてはきちんと職場に相談をし、周囲の理解を得るようにすべきでしょう。
金額はどれぐらいもらえるのか
育児休業給付金で支給される金額は2014年3月に制度が変更され、最初の6ヶ月間は月給の67%が、残りの期間は50%が支給されることになりました。これは、お父さんたちが育児休業を取得するのを促進するという目論見があってのことです。(最初の6ヶ月が50%→67%に増額)
給付金は育児休業を取って休んだ日数ぶん支給されますが、その金額には上限額が設定されています(下限額はありません)。月給の67%の期間については月額285,420円、50%の期間については213,000円です。つまり、もともとの給料がどれだけ高いものであったとしても、この上限額を超えた部分はもらうことができないのです。従って、高い給料をもらっている場合や年俸制の人の場合、実質的な支給率が67%ないし50%を下回るということがおきてきます。
育児休業給付金は2ヶ月ごとに支給されます。ただし、一番最初の回については、育児休業が始まってから4ヶ月ないし5ヶ月後になるようなこともありますので、その期間内は少々家計が厳しくなるかもしれないということを念頭に置いておくようにすべきでしょう。
なお、育児休業の取得中に職場から給料をもらえるような場合には、育児休業給付金に調整が行われ、支給額が減額されることがあります。最大でも休業前の給料の8割を超過しないようになり、休業前の給料の8割以上の金額を給料としてもらえる場合には支給されなくなります。具体的な金額を知るためにも、育児休業の取得中に給料が出る場合には職場の担当窓口にこの点を確認するようにしましょう。
手続きはどうすればいいのか
給付金の手続きは職場が行ってくれるのが普通で、支給対象期間の1日目から4ヶ月が経った月の月末までに手続きを行うようにしなければなりません。
まず、産休に入る前に職場にどれぐらいの期間育児休業を取りたいかの目安を伝えましょう。このあたりをおろそかにすると思わぬトラブルを招きかねませんので、職場との連絡・確認は密にしておくことが大事です。そしてその際に職場から育児休業給付金の申請用紙(育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業基本給付金支給申請書)を受け取ります。
次に、就業規則で決められた期日(育児休業を取得する1ヶ月前などが多い)までに、育児休業申出書とあわせ、申請用紙に記入・捺印して職場の方に提出します。この時、給付金の受け取りを希望する金融機関から確認印を押してもらう欄がありますので、忘れずに押してもらう必要があります。
職場が手続きしてくれる場合、職場は産休が終わるころまでにこれらの書類をハローワークに提出します。そうすると2ヶ月ごとに給付金が支給されるようになります。自分で手続きする場合は、職場の承諾を受けた上で自分でハローワークに書類を提出することになります。
なお、育児休業給付金は、2ヶ月ごとに追加申請を行わねばならないことになっています。こちらも会社で手続きしてくれるようであればお任せしておけば問題ありませんが、もし自分で手続きする場合には申請期限には注意して下さい。
こんな時はどうなる?
■毎月の給与額に差がある場合に金額の計算はどうなるか?
毎月の給与額が定額ではない人の場合、育児休業開始前の、賃金支払基礎日数が11日以上ある直近の6ヶ月について給与の額を平均し、それを基礎にして計算が行われます。6ヶ月ぶんの賃金を合計して180で除算し、そこに30を乗算することで「休業開始時の賃金月額」を算出するのです。最初の6ヶ月間はこの賃金月額の67%が、残りの期間は50%が支給されることになります。支給が2ヶ月ごとになる点は通常と変わりません。
■給付金を受け取り中に配偶者控除を受けられるか?
税に関しては、社会保険とは扶養に関する考え方も基準も異なっています。このため、年収が103万円以下である場合、配偶者控除を受けることができるようになります。
■給付金を受け取り中にお父さんの健康保険の扶養となれるか?
育児休業給付金の支給期間は社会保険料が免除されてはいますが、お母さんはまだ健康保険の被保険者であることには違いありません。このため、この期間にお父さんの健康保険の扶養家族にすることはできません。
■育児休業中に2人目を授かった場合は?
本来、育児休業開始前の2年間について、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が通算して12ヶ月以上なければ給付金を受給することはできません。しかし、2人目の子どもについては、2人目の育児休業開始前の2年間について、産休により休業を取った期間および1人目について取得した育児休業期間がある時には、給付金の受給の可否を決める2年間にそれらの期間を加算することができるという定めがあります(最大で4年まで)。
1人目の育児休業中に2人目を授かり、育児休業をとる際には、2人目の産休が開始する前の日の時点で1人目の育児休業が終わることになります。しかし、受給要件さえクリアしていれば2人目の育児休業給付金を受けとることは可能です。
■育児休業給付金の延長をする場合は?
例えば保育所に入所を申込んだにも関わらず入所できず、職場に戻ることが難しいといったような場合は育児休業や給付金を延長することを申請できます。延長できる期間は最大で6ヶ月までで、申請をするには「育児休業基本給付金支給申請書」の必要項目を記入し、自治体が作成した入園不承諾通知書など、しばらくの間保育所に入所できないことが証明できる書類と一緒に提出する必要があります。この場合、認可外となる保育所は含まれません。
提出する時期としては、(1)赤ちゃんの1歳の誕生日の直前にあたる追加申請時か、(2)赤ちゃんが1歳の誕生日の直後の支給単位期間(8週間)中のいずれかのタイミングにすることが必要です。
なお、配偶者と離婚するか死別した場合には、世帯全員が記載されている住民票の写しと母子手帳も必要となりますし、子どもを保育する予定だった配偶者が重い病気にかかったり障害を負ってしまったような場合には、医師の診断書も必要となります。