液体運びのお手伝いで子供の脳を育てる
お味噌汁が入ったお椀を運ぶ手伝いを子供にさせたことはありますか?「こぼされたら後片付けが面倒」「やけどをしたらと思うと怖い」などという理由で、つい子供にはさせず親がやってしまうのは良くあることではないでしょうか。しかしそれはとてももったいないことです。なぜなら、液体の入ったものを運ぶお手伝いをさせることは、子供の脳を育ててくれるからです。
液体運びのお手伝いをさせる手順とは
何かを安全に運ぶというお手伝いをすると、集中力を育てることができます。また、自分のものは自分で運ぶ・片付けるということですから、子供の自立心も育てられます。
運ぶものはいろいろありますが、とりわけ味噌汁などの液体状のものが入った容器を運ぶには、相当の集中力が必要です。なぜなら、意識がどこかへ向いていると、すぐに中の液体はこぼれてしまうからです。
液体状のものが入った容器を運ぶお手伝いは、集中力を養うのにぴったりです。それだけでなく、自分の五感をフルに活動させて「モノ」の様子を感じ取る力を身に付けることもできます。
とはいえ、幼い子供にいきなりたっぷり汁が入った椀を運ばせるのは難しいことです。子供にこのお手伝いをさせるには、適切な手順が必要です。
まずは、食事が終わった後、自分が使った食器をお盆に乗せることから始めましょう。これは1歳児くらいから始められます。もちろん、最初はうまくいきません。乱暴に置いたり、食器がお盆に乗る前にパッと手を放してしまったり、いろいろあるでしょう。
ごく幼い子供には、壊れないように置くための力加減が分かりませんし、そもそも壊れるものだから大事にしようなどという意識がないからです。
このお手伝いをさせるには、大人の言葉かけが大事になります。食器が壊れないやり方で運ぶには、どれくらいの力加減でどんな風に置けばよいかということを、脳が腕や手に指令を出さなければなりません。
脳がその指令を出しやすいように、「そおっとね」などとイメージがわきやすい言葉をかけましょう。続けるうちに、お盆に優しく食器を置けるようになるだけでなく、お盆まで食器を運ぶときにも慎重に持ってこられるようになります。
それができるようになったら、いよいよ液体状のものが入った容器を運ぶお手伝いをさせてみましょう。最初はお茶が入ったコップなどが適当です。台所でお茶を入れてもらったコップを飲むためのテーブルまで運びます。そして飲み終わった後も自分で台所まで片付けさせます。もちろん、飲み残しがあっても自分で運ばせましょう。
台所からテーブルまでのわずかな距離であっても、中身をこぼすことなく運ぶには、相当集中していないとできません。だから、このお手伝いはきちんと手順を追ってやらせなければならないのです。きちんと手順を踏んで練習すれば、手元をきちんと見ながら行動できるようになります。
小さい子供は、手元に注意を向けながら行動するのが得意ではありません。いろいろなところが気になってしまうのが子供です。だからこそ、このようなお手伝いをさせるのは、子供にとってとても意味のある事だと言えます。
液体状のものを運ぶとなると、こぼした時の後片付けも面倒なものです。中身が熱いものであれば、やけどをするおそれもあります。しかしだからと言って全くやらせないのは、子供の集中力を育てるせっかくの機会を失うことになり、とてももったいないことです。
子供がいつこぼしてもいいように雑巾をスタンバイ、そしてやけどしないくらいに冷めた液体を運ばせるようにします。そこまで準備して、大きな気持ちで子供に体験させましょう。
準備はしていても、子供がこぼしてしまうとつい「きちんと手元を見ていないからでしょう!」と叱りたくなってしまうものです。でもそこはぐっとこらえて、言い方を変えましょう。
つまり「雑巾で拭けば大丈夫。次はよく手元を見るんだよ」と声をかけるのです。すると子供は「次こそ成功させるぞ!」とやる気になります。そうして子供がついにこぼさず運べた時には、「やった!できたぞ!」という大きな喜び、達成感を得ることができるはずです。
最初はうまくいかないし、準備も必要ですから、面倒に感じることでしょう。しかしやらせないでおいては、何でも親にやらせようとする子供に育ってしまいかねません。手順さえ押さえれば、子供は必ずできるようになります。ぜひトライしてみてください。
液体を注ぐお手伝いでさらに脳を活性化
しっかりと手順を踏んだことにより、こぼさずに液体状のものを運ぶことができるようになったら、さらにステップアップしてみましょう。次は、ジャグなどに入った液体を容器に注ぎ入れるお手伝いです。
こぼさずに上手に注ぐには、ただ運ぶよりもずっと集中力が必要です。こぼさないようにするために指先の力をコントロールし、ペース配分を考えながら徐々にジャグを傾け…などなど考えることがたくさんあるからです。しかし、それらは考えただけでできるものではなく、実際にやってみなければ分からないものです。
イタリアの教育家であるモンテッソーリは、液体が入った容器から別の容器に液体を移し替えるための教材を作りました。そこからも分かる通り、液体を何かに注ぐ行動というのは、子供にいろいろな力をつけてくれます。まずは、手元をきちんと見るための集中力が身につきます。こぼさないように注ぐための容器の位置なども、正確に分かるようになります。
子供を取り巻く生活の中にあるものを上手に使い、子供の五感を刺激してやれば、子供の様々な感覚が育てられます。子供の脳は自分の手や指に細かい命令を出す必要がありますから、脳が活性化するのです。
脳が育つだけではありません。「こぼさないようにして、次こそ成功させるぞ」という強い意志、「失敗してしまったけど、あきらめないぞ」という粘り強さ、自分の事は自分でやるという自立心、ものに対する観察眼…子供が身に付けられる力はたくさんあります。
それに加え、うまくできるようになれば周囲の大人も助かりますから、「自分は誰かの役になっている」という自信まで育てられるのです。もうお手伝いをさせない手はありません。
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更新日:2019/11/29|公開日:2017/07/17|タグ:お手伝い