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子供が目標を確実に達成できるようになる方法

ピアノの目標達成に向け練習する子供

子供の目標達成や自己実現は、親の願いでもあります。目標に向かって子供には全力で励んで欲しいものですが、その中で目標達成の為の方法やモチベーションの維持が課題となってくると思います。

 

今回は、子供が確実に目標を達成していけるようになる脳の鍛え方や、脳の仕組みから考える効果的な目標の設定方法を見ていきたいと思います。

 

勝負脳を鍛えて能力を上げ続ける!

「勝負脳」という言葉を耳にした事があるでしょうか。勝負脳とは、試合などの大事な場面で、いつも以上の力を出す為の気構えであると同時に、その気構えをサポートする脳を作る為の方法論です。スポーツ界では勿論、近年ではビジネスにおいても注目されています。

 

勝負脳を鍛えるポイントとしては、

・常時、自己ベスト記録の3割増を目指す

・勝負がつくまで、勝ったと思ってはいけない

・相手に勝つ事より、自分の記録更新を意識する

・辛い、疲れたというネガティブな言葉は使用禁止

・状態の良い時は休まずに、強気で続ける

・会場と自分を一体化させ、自分の世界に入る

という気構えが挙げられます。

 

これらは全て、勝負強い脳を育てる為の方法論です。勉強に置き換えれば、意思を強く持ち勉強に夢中になり、最高の結果を残す為の心構えと言えるでしょう。

 

実際、この内容で指導を受けた水泳の北島康介選手は、北京オリンピックにおいて見事二冠二連覇を果たし、その後もロンドンオリンピックの4×100mメドレーリレーにて銀メダルを獲得しています。

 

また、勝負脳を鍛えれば、前頭葉の活発な働きを持続させる事も出来ます。

 

勝負脳の「勝負」には、勝ち負けの意味は勿論、その人の能力を上げ続けていくという意味もあります。勉強に夢中になれば、成績も上がり、テスト前にはいつもの3割増の力を発揮出来るかも知れません。しかし、それが一時的なもので終わってしまっては、「能力を上げ続けていく」という事にはなりません。

 

少子高齢化が叫ばれる現在では、子供一人一人の能力を高めなければ、社会を担っていけません。子供が意欲的に勉強に夢中になり、将来的にその能力を社会で活かす為にも、勝負脳のような意識を持つ事は非常に重要です。

 

目標は、より遠くに!

人は「終わりはもうすぐ!」と感じると、無意識に力を抜いてしまうものです。勝負脳を鍛えるポイントとして、「常時、自己ベスト記録の3割増を目指す」、「勝負がつくまで、勝ったと思ってはいけない」という内容を挙げているのは、これを避ける為でもあります。

 

実際に設定されている終わりよりも、より遠いところに設定した自分の中の終わりを意識する事で、目標到達直前で力を抜かない勝負強さを身に付けられます。

 

このように、目標をより遠くに設定する事による効果を実証した実験があります。

 

まず被験者に、大型のタッチパネル式ディスプレイの各所に現れる白い丸に、素早くタッチするゲームを行ってもらいます。この装置は車のドライバーの視覚反応能力をチェックするのに用いられるもので、白丸への反応時間や正しい位置にタッチ出来ているかによって、得点が決まります。

 

ゲームは1分間2セット行い、出た得点で次回の目標を決めます。1回目が460点、2回目が480点だったとしたら、次の目標は500点に設定します。その後500点を目指し、6回トライします。

 

さらにこの時、毎回40秒程たったところで、被験者に声掛けを行います。予め、目標が500点であるのならば、40秒時点での到達目標は400点程であると伝えておき、目標に届いてない場合には「今350点、終わりはまだまだだよ」、届いている場合には「今420点、終わりはもうすぐだよ」という具合です。

 

実験の結果、「終わりはまだまだだよ」という声掛けをした時の方が、脳が活発に働いている事が分かりました。前頭葉と、中でも頭頂連合野が最も活発化しました。頭頂連合野は空間認識に関わる部位で、この実験で言うと、ディスプレイの白丸の位置特定時に働きます。それが、終わりはまだまだという声掛けに刺激され、より活発化したと考えられます。

 

また、終わりを意識する事自体が、空間認識であるという考え方も出来ます。終わりはまだまだという言葉により、終わりへの意識が更に強まる事で脳が活発化したと言えます。

 

これらの実験結果から、脳の活発化を維持するには、目標到達直前においても「まだまだ!」と思う方が効果的という事が分かります。そしてその目標はより遠くに設定にする事で、自分の力をさらに伸ばしていける可能性があるとも考えられます。

 

目標は、意識化する!

この時重要なのは、設定した目標をしっかり意識するという事です。

 

冒頭の、勝負脳を鍛えるポイントで挙げた「相手に勝つ事より、自分の記録更新を意識する」には、相手に勝つという実際の目標と、自分の記録更新という意識の中での目標の2つが存在しています。

 

子供の勉強に置き換えれば、実際の目標はテストや入試、意識の中での目標は、最高の結果を残す為の強い意志です。実際の目標は、意識の中の目標に支えられていると言えます。子供の脳力アップを目指すには、まずは実際の目標を意識化していく過程をきちんと踏む必要があります。

 

目標を意識化する上で欠かせないのが、ゴールネゴシエーションです。ゴールネゴシエーションとは、目標についての打ち合わせです。

 

先程の実験の500点という目標も、1回目、2回目の点数を基にして、被験者と具体的に打ち合わせた上で決めた値です。中にはこの打ち合わせをしなかった被験者もいましたが、その場合、実験中の「終わりはまだまだ」、「終わりはもうすぐ」という声掛けによる脳の活動の差が見られませんでした。

 

つまり、ゴールネゴシエーションの過程を踏んだか踏んでいないかが、脳の活動に影響を与えるのです。目標について話し合い、目標を意識する事が、より高い能力を発揮する為に非常に重要であると言えます。

 

子供に勉強に夢中になって欲しい時、親に出来るのは褒めて待つ事くらいです。やる気の無い子供に、横から親がとやかく言っても効果が無いからです。ゴールネゴシエーションは、そんな子供をやる気にさせるきっかけ作りにも適切と言えます。親子で目標について話し、その中で決めた目標を意識化出来るよう、子供をサポートしていくと良いでしょう。

 

親子のゴールネゴシエーションにおけるポイント

では、ゴールネゴシエーションの中で、どのように目標設定をしていけば良いのでしょうか。お勧めは、解決思考ブリーフセラピーという方法に沿ってみる事です。

 

解決思考ブリーフセラピーとは、インスー・キム・バーグや、ド・シェイザーという人物によって唱えられた技法で、複数存在するブリーフセラピーの型の一つです。問題の原因よりも、問題の解決に力を入れ、解決に必要な材料を見つけ出したり、具体的な解決像を示したりする事で変化を起こそうとする技法です。

 

実際にカウンセリングなどでも使われており、セラピストがクライアントをビジター(訪問者)、コンプレイナント(不平不満を言う人)、カスタマー(顧客)のどれに当てはまるのか、逐一判断する査定という作業が重要になります。

 

ビジターやコンプレイナントと判断した場合は、セラピストからのアドバイスは行いません。

 

ビジターは、たまたま目の前にいる人であり問題を抱えている自覚が無く、コンプレイナントは、問題は抱えているとしても、その原因は自分には無いと思っているという関係にあります。ですから、アドバイスをしても無駄に終わるか、問題を悪化させかねない為です。

 

一方でカスタマーと判断した場合には、問題解決に向けた目標設定をします。クライアントと目標について話し合い、意識化させていきます。解決思考ブリーフセラピーを用いたカウンセリングでは、ゴールネゴシエーションでの目標設定自体が、治療であると言えます。

 

目標は具体的に設定する!

親にとって子供は、基本的にはビジターです。つまり、親からのアドバイスは無駄である事がほとんどです。

 

ですが、時にカスタマーに揺らぐ瞬間が必ずあるはずです。例えば、「今度のテストで良い点数だったら、ご褒美にゲームが欲しいな」なんて言われた事はありませんか?良い点数を取る為にやる気になっている訳ですから、この瞬間、子供はカスタマーです。ゴールネゴシエーションの出番です。

 

子供のやる気を維持させる為には、ゴールネゴシエーションにおいて、具体的な目標を設定する事が重要です。「テストで良い点数」というのは具体的ではありません。良い点数とは何点なのか、明確に設定しましょう。はっきり点数を示さないと、評価する側も基準が分かりませんし、子供も達成感を得づらくなります。

 

他にも、例えば頭が良くなりたいとか、運動が出来るようになりたいといった目標は、具体的な目標とは言えません。教科書○○ページの単語を全て覚える、50m走で7秒切るというように具体的に設定すれば結果が分かりやすくなる上、評価も簡単で親は褒め易いです。子供も目標達成した場合の達成感が得られ、結果やる気の維持につながります。

 

肯定的な目標であれば評価しやすい

そしてもう一つ、目標は肯定的である事が、ゴールネゴシエーションにおける重要ポイントです。肯定的である方が、評価し易いからです。

 

テストが終わるまで漫画は読まないとか、ダイエット中だから間食しないという否定的な目標より、漫画に手が伸びそうになったら腕立て伏せをする、間食したくなったらお茶を飲むという肯定的な行動で目標設定した方が、出来た・出来なかったが明確です。

 

しかし子供だけでは、このようなポイントを踏まえた目標設定はなかなか難しいものです。そこで、ゴールネゴシエーションでの親の導きが大切になってきます。

 

子供が「テストで良い点数を取る」と言ったら、「良い点数って何点なの?」と聞き返し具体的な数字で目標を決めさせ、「テストが終わるまで漫画は読まない」という否定的な目標を挙げてきたら、「読みたくなったら?」と聞き続け「腕立て伏せをする!」等の肯定的な目標に親が導きます。

 

目標が曖昧でなくなるまで、「具体的にどうする?」という質問を何度も子供に投げかけ続けましょう。そうする事で、具体的かつ肯定的な目標が生まれます。同時に、親の質問に答えていく中で、子供が自分なりに目標達成の為の材料を見つけ出していく事が出来ます。するとより目標達成の可能性が上がり、やる気もアップしてきます。

 

明るい未来の記憶を作る!

そして最後に、目標には前向きなオーラをまとわせましょう。前向きなオーラとは、明るい未来です。

 

例えば「明日ケーキを買おう」と考える事は、一般的には予定や計画と呼びますが、脳科学においては、未来に関する記憶と呼ばれます。つまり、これからの事を考えるのは、未来の記憶を作っている状態という事が出来ます。

 

目標を設定する時はそれを達成した時の事をイメージして、達成感や満足感、嬉しさなどの明るいオーラで満たされた未来の記憶を作りましょう。すると目標を意識する毎に明るいオーラに包まれ、意欲も沸いてきます。

 

もし目標が消極的なオーラをまとっていたら、例えば「次のテストで90点以上取る」という素晴らしい目標を掲げたとしても、「前回85点だった時はがっかりしたなぁ」とか「もしまた達成出来なかったらどうしよう」という過去の記憶が、目標を意識する毎に思い出され、勉強へのやる気が消えてしまいます。

 

一方、前向きなオーラをまとわせれば、「90点以上だったら、テストが返されたとき飛び上がって喜ぶだろうなぁ」とか「親に見せたら褒めてもらえるだろうなぁ」、「達成感あるだろうなぁ」という明るい未来のイメージが目標と共に立ち上がり、勉強のモチベーションもアップします。

 

そして、このような前向きなオーラの目標を設定する際も、ブリーフセラピーは有効です。ブリーフセラピーの手法の一つに、ミラクル・クエスチョン(奇跡の質問)というものがあります。これは、奇跡が起きて全ての問題が既に解決したと仮定し、奇跡が起きた事を知らないあなたは、どんなところから問題が解決した事に気が付くか?という質問です。

 

問題がもし解決したら何が起こるか、どうなるのかと仮定しながら物事を考える事は、前頭葉にとって刺激になります。問題について考えると辛い記憶ばかりが思い起こされるような場合は、過去にとらわれ過ぎていると言えます。

 

楽しかった過去の記憶はモチベーションを上げてくれます。同じように、未来の記憶も明るいイメージにする事で、目標達成への意欲を上げていく事が可能なのです。

 

目標達成の為の、脳の活性化と鎮静化とは?

もがく事で脳は活性化する

そもそも、勉強に関して子供が抱える問題とはどのようなものでしょうか。なかなか成績が上がらなかったり、単語や公式を覚えられなかったりといった内容が多いと考えられますが、実はこのように悩み、もがいている時こそ、脳は活発に働いています。

 

上手く出来ずに子供が行き詰っている時こそ、親の出番です。「そんなに大変なのに勉強を投げ出さないのは偉い!」と、解決思考型の方法で褒めます。すると悩むという行動と褒められたという快感が線条体で結びつき、子供のやる気がアップします。目標達成の為に悩み、もがく事を好きになるのは、親子それぞれにとって必要な事と言えます。

 

慣れてきた時こそ要注意!

脳には可塑性という性質があり、悩みやもがきも次第に自動的に出来るようになって前頭葉が鎮静化します。実は子供の脳力を上げるには、この前頭葉の鎮静化が必要なのです。鎮静化と同時に線条体が活発化する事によって、物事に慣れます。

 

ですが自分の限界を超えて最高の能力を発揮する為には、慣れた作業でも、脳を活発化させていなかければなりません。

 

例えば、フラッシュ暗算日本一の記録を持つそろばんの達人の大学生の脳活動を調べます。そろばんがあまり得意でなかったり慣れていなかったりする人は、そろばんをするという作業によって前頭葉が活発化します。そして、次第に上達していく事で鎮静化されてそろばんに慣れていきます。

 

達人の大学生の場合は、既にそろばんに慣れている分、前頭葉が素早く鎮静化すると予想出来ます。しかし調査の結果、鎮静化はすぐに起きたものの、前頭葉、特に46野は活発化し続けているという状態が見られました。

 

調査で使ったフラッシュ暗算の問題は、達人からすれば楽勝レベルです。流れ作業のようにこなせる計算でも前頭葉が活発化しているという事は、どんな問題でも全力で挑み、脳の処理能力をより上げようとしている姿勢を表しています。

 

つまり、達人と呼ばれるプロのように他人より一歩上をいくには、慣れた作業にも気持ちを込める事が必要という事です。

 

慣れるというのは脳の素晴らしい機能の一つです。新しい事に慣れるまでは前頭葉が活発に働きサポートしますが、一度慣れれば習慣化され、無意識的に気持ち良く行動する事が出来ます。

 

しかし、慣れて前頭葉が活発化しなくなるという事は、それ以上のレベルアップを目指さなくなっていると言い換える事も出来ます。慣れる事が、自分の限界を超える妨げになり得るのです。

 

ですから、慣れた作業こそ今まで以上に誠心誠意取り組んだり、より難しい課題を与えたりする事で、前頭葉を活発化させ続ける必要があります。そうする事で、子供が自分で自分の限界を超え、最高の能力を発揮出来るようになります。親は、そのサポートに全力で徹したいものです。

 

子供を変えたければ、親が模範となる!

また、親は子供の模範であるという事を忘れてはいけません。人間の脳は、前頭葉の活発化後に鎮静化する事によって、あらゆる事柄に慣れていきます。たとえそれが、どのような環境であってもです。

 

つまり、場合によってはあまり好ましくない環境であっても、脳はそれに適応しようとしてしまいます。そこで親がいかに子供にとって適切な環境を作ってあげられるかが、非常に重要です。

 

また、認知心理学の「選考における重みづけ平均値理論」は、親の子供への影響を物語っています。選好とは好きな方を選択する事、重みづけ平均値理論とは、見たり触れたりした回数が多いもの程、重みをつけて平均化するという事です。

 

嗜好や判断は、今までどれだけそれに接したかという記憶や経験によって決められます。その為、CMで何度も流れるおもちゃをクリスマスプレゼントに指定したり、母親がいつも持っているバッグのブランドを自分も好きになっていたり、という事が起こります。脳の中で、重みづけ平均が演算されている訳です。

 

よって、毎日顔を合わせる存在である親が子供に与える影響は、特に大きいと考えられます。中でも、目の前の出来事に影響を受けやすい思春期の子供にとっては尚更です。

 

ですから、我が子に勉強に夢中になって欲しい、目標を達成して欲しいと願うなら、まずは親が勉強している姿や目標に向かって頑張る姿を子供に示し、良い模範になる必要があります。

 

目標達成の原点は、親の笑顔

そして親は、常に優しい言葉と笑顔で子供と接しましょう。親が優しい言葉遣いをすれば、それが模範となり子供も優しい言葉を遣うようになりますし、ありがとう、嬉しい、可愛い等の言葉は、褒められている時のような前頭葉の鎮静化を促します。同時に、子供の焦らない心の育成にもつながります。

 

また親の笑顔を見る事で子供の偏桃体が養われます。偏桃体は感情や情動に関わる部位で、好き嫌いを判断します。偏桃体が好きと判断すると、その情報が記憶の中枢である海馬に伝えられ、「好き」が強化されます。すると強化された「好き」の記憶が再び偏桃体を刺激し、どんどん好きになるスキスキ回路を回します。

 

偏桃体は同時に、人間の本能的行動を操作する部位でもあります。食欲や性欲、睡眠欲や攻撃欲等の本能的欲求に関わる視床下部とつながりやすい位置にある為です。

 

好きという記憶によってスキスキ回路が回れば問題はないですが、嫌いという記憶によりイヤイヤ回路が回ってしまうと、例えば視床下部の攻撃欲と結びついて暴力を振るうような事態にもなりかねません。そうなると、勉強どころではなくなってしまいます。子供の心を落ち着かせるような環境作りも、親の大切な役割です。

 

偏桃体に関して、ある実験が行われていますのでご紹介します。猿の偏桃体に予め電極を入れ、色々な表情で写っている数人の人間の写真を見せます。すると、猿の偏桃体は、笑顔の写真に強い反応を示しました。中でも、飼育者の笑顔により強く反応する結果が出たのです。

 

この実験結果から、偏桃体を養うのは笑顔であり、特に身近な人の笑顔が効果的であるという事が分かります。子供の能力アップ、目標達成には、親の笑顔がパワーの源になります。どんな些細な事でも、毎日必ず笑顔で心を込めて「ありがとう」と子供に言いましょう。子供の自己実現は、そこから始まります。

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