児童手当は早めに申請を!
子どもの健全な育成に役立てるという目的のため、子どもがいるために発生する育児費用や生活費といったものをサポートする目的で設けられたのが児童手当です。児童手当を子どもの未来に資するようにきちんと活用するため、制度の内容や申請方法などについてみていきましょう。
児童手当を受け取れる条件は?
児童手当を受け取れるのは、0歳~中学校3年生(15歳到達後の最初の年度末まで)の子どもを育てている人です。
現行の制度では所得制限がかかっています。例として夫婦と子ども2人の家庭を見てみると、一年間に736万円以上の所得がある場合、所得制限にかかってしまいます(年収としては960万円以上となります)。
受け取ることのできる金額はどれぐらい?
児童手当として受け取ることのできる金額は、子どもの年齢や子どもの出生順によって変化します。
・0歳~3歳未満……一律1.5万円/月
・3歳~小学校修了まで……第1子または第2子は1万円/月、第3子以降は1.5万円/月
・中学生……一律1万円/月
また、所得制限を超過してしまっている家庭の場合、子どもの年齢や出生順などに関わらず一律5千円/月での支給を受けることができます。ただし、この部分については「当分の間」の特例給付とされています。
児童手当は申請をした翌月の分から受けとることができます。申請したその月のぶんは含まれないほか、申請するのが遅れてしまってもさかのぼって支給してもらうことはできませんので注意が必要です(下記の「15日特例」という例外はあります)。
また毎月支給が行われるわけではなく、10月~1月分は2月に、2月~5月分は6月に、6月~9月分は10月に、それぞれ4ヶ月分ずつまとめて支給される形になります。
15日特例
赤ちゃんが月末に生まれてしまった場合や、災害が発生したり引っ越しなどやむにやまれぬ事情があって手続きができなかった場合については、「15日特例」という制度で対応してもらうことが可能です。赤ちゃんの出産日の翌日以降15日以内に児童手当を申請し、15日特例が認められれば、申請を行ったその月のぶんについても児童手当の支給を受けることができるようになるのです。
例として、7月25日に赤ちゃんが生まれた場合、その翌日である7月26日を起点として15日目にあたる8月9日までに申請を行ったケースであれば、申請が8月にずれこんでしまっても7月分から支給してもらえることになります。
どうやって申請すればいい?
児童手当の申請は赤ちゃんの出生届とは別に行わねばならず、申請をしなくても勝手に支給されてくる性質のものではありません。申請が遅れてもそれまでの部分については受け取れないので、赤ちゃんが生まれたらなるべく早く申請手続きをするようにしましょう。
手続きを行う場所は、世帯主が職場の健康保険に加入している場合や国民健康保険に加入している場合には居住地の自治体の窓口となります。世帯主が公務員である場合は共済の窓口です。赤ちゃんが生まれた後に名前を決め、出生届を自治体に届けたらそのまますぐに児童手当の申請も行ってしまうようにすればいいと思います。
赤ちゃんが生まれてから必要な書類を揃えたりするのは大変ですので、あらかじめ児童手当の申請窓口に相談したり、自治体のHPを閲覧するなどして、どんな書類が必要になるのかということを確認しておくと申請がスムーズに行くと思われます。
特に、お母さんが実家に里帰りして赤ちゃんを出産するような場合は要注意です。
出生届は実家のある自治体でも提出することができるのですが、児童手当の申請は受け付けてもらえないからです。あくまでも居住地の自治体の窓口で申請することになりますので注意が必要です。
また、実家のある自治体で出生届を提出する場合、居住地の自治体がその出生届を受理するまでは児童手当を申請することはできません。こういった事情で申請が遅れてしまった場合でも「15日特例」が認められることはありませんのでこちらも注意せねばなりません。
出生届の受理までにどれぐらいの日数が必要であるのかをあらかじめ確認して段取りをしっかり行ったり、お父さんが居住地の自治体に出生届の提出と児童手当の申請を行うように決めておくなど、前もって準備しておくといいでしょう。
児童手当について良くある疑問点
児童手当の申請についてや、支給を受ける段になって発生する疑問など、よくある疑問についていくつかチェックしてみましょう。
■【申請について】出産と引っ越しの日程が近い場合、どこで申請すべきか?
例えば、現在住んでいる町(仮にA町とします)で8月に出産の予定があり、2ヶ月後の10月には隣市(同じくB市とします)に引っ越すことが決まっているような場合の手続きについてです。こういった場合は、まず赤ちゃんが生まれた8月の時点でA町で出生届を提出し、児童手当の申請手続きも同時に行います。そのようにすることで、とりあえず申請月の翌月である9月から児童手当を受けとることができるようになります。
児童手当は居住地である自治体から支給を受けることになる手当であるため、その後10月になってB市に引っ越す手続きを行った時点でA町からの支給を受ける資格を失います。このため、引っ越しに伴ってB市に転入する手続きを行った後でB市の窓口で児童手当の申請も行わねばなりません。この2度目の申請が遅れてしまうともらえるはずの手当がもらえない期間が出てしまいかねませんので、転入手続きをしたらすぐに児童手当の申請も終わらせてしまうことをおすすめします。
■【申請について】出産後に世帯主のお父さんが単身赴任するような場合はどうなるか?
児童手当は育児関連費用を支援するという性格の手当であるため、家庭の収入を支えるメインの柱である世帯主に対してサポートが行われる形を取ります。
つまり、その世帯主が赤ちゃんが生まれた後に単身赴任で別のところに引っ越して住民票が移動するようなことになると、単身赴任した先の自治体で別途児童手当の申請手続きをする必要が出る場合があります。もしそうなった場合には、手続きの遅れによってもらえない期間が出てしまわないように速やかに手続きをすることが大事になってきます。
手当が振り込まれる口座についても、原則的に申請を行う世帯主名義の口座になります。例えば数ヶ月後に単身赴任でいなくなってしまうことがあらかじめ分かっていたとしても、お母さん名義や子ども名義の口座を振込先として指定することはできないのです。詳しくは単身赴任で移動する先の自治体に相談してみて下さい。
■【支給について】申請したのに振り込まれない
例えば9月半ばに出産を迎え、9月中に児童手当の申請手続きを終わらせたのに、10月に振り込みがなかった、というようなケースです。2月・6月・10月は手当が振り込まれる月なので、10月分の1月分だけは振り込まれると思っていた……というようなことかと思われますが、10月に振り込まれるのはその前の4ヶ月ぶん(6月~9月ぶん)であるため、10月分は次の2月まで支給されないことになるのです。
■【支給について】申請して振り込まれたが金額が少ない
例えば7月に赤ちゃんが生まれ、7月中に申請手続きをしたのに、10月に振り込まれた額が3万円しかなかった、というような場合です。第一子の場合月に1万5千円となるので、3万円ということは2ヶ月分しか振り込まれていないことになります。7月に申し込んだのだから8月・9月・10月の3ヶ月ぶん、つまり4万5千円入るのではないのか、というわけです。
この場合、確かに8月以降が児童手当の支給対象月となります。しかし、1回目の振り込み月となる10月に振り込まれるのは10月の前月ぶんまでですので、8月・9月の2ヶ月ぶんしか振り込まれません。このため金額としては間違っているわけではなく、10月のぶんは次の振り込み月(翌年2月)に振り込まれることになります。このように、初回の振り込みについてはもらえる額の見積もりを間違いやすいですので注意する必要があります。
■制度が変わるとどうなる?
児童手当の制度はたびたび改正が行われています。例えば2009年度には、民主党が「子ども手当」としてそれまでの児童手当の見直しをマニフェストに掲げ、支給額を毎月2万6千円に上げることを公約にしていました。その後政権を取った民主党は児童手当を「子ども手当」の名称に変えたわけですが、財源問題によって満額支給は見送られ、月に1万3千円(またはこれ以上)の支給をする方針に転換されたのです。
結局、この公約が実現されることはありませんでしたが、2011年の所得税の実質増税を鑑みて支給額が1人1万5千円まで増えることになりました。これ以外にも、支給の対象となる所得制限についても設定されたり廃止されたりが繰り返されているという経緯がありますので、申請する際には最新の状況がどうなっているかをよく確認する必要があると言えます。
2011年に所得税の年少扶養控除(15歳以下の子どもを1人扶養すると38万円ぶんの控除が受けられた制度)がなくなり、2012年からは住民税における一般扶養控除(同、33万円ぶんの控除が受けられた制度)もなくなりました。この影響により所得税や住民税は以前よりも増税になっており、児童手当を受けとっていたとしても最終的には収支がマイナスになっているケースも見られます。
さらに、児童手当にはいろいろと問題点が指摘されています。所得制限があるせいで、所得制限をわずかに超えた人よりも、それよりも所得が少ない人が児童手当を加えると手取りの収入が多くなるという、逆転現象が起こっていたりするのです。つまり、所得制限をわずかに超えた場合が一番損をするような制度になってしまっています。
こうした問題点もありますので、現行制度よりも児童手当の金額が減ることは考えにくいとは言えますが、一方で現在配偶者控除の廃止も検討されています。そうしたことが将来的に家計にどういったインパクトを与えることになるのかについては注視しておく必要があると言えるでしょう。