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上手な記名の仕方にはたくさんのメリットがある

記名

小学校のクラスの問題として、小さいかもしれないけれど担任の先生の頭を悩ませることが多いもの…それは、落し物の問題かもしれません。

 

教室にはいろいろな、こまごまとした落し物があります。鉛筆に消しゴム、鉛筆キャップ、ハンカチ、ティッシュ、マスク…。記名があればすぐに持ち主が見つかるので問題ないのですが、記名がない落し物が多いからこそ、厄介なのです。

 

落し物は、教室に設置された落し物入れ箱に入れられることが多いですが、先生が前に立ちそれらを一つ一つ見せて問いかけたとしても、落し物入れ箱を席の端から順に回して全員に中を見させたとしても、落し物入れ箱の中の全てが持ち主のもとに戻ることはほぼありません。

 

もしもこれらの落とし物に名前がきちんと書かれてあったなら…。子どもの教育の中ではあまり特筆されることのない、この「記名」という作業について、少し注目してみましょう。

 

記名のない落し物はどのような悪影響をもたらすか

教室内に山ほどある落し物。それらのほとんどに、名前が書かれてありません。放っておけば、落し物入れ箱にたまっていくばかり。では、これらの落とし物は、クラスや子どもたちにどのような悪影響を与えるのでしょうか。

 

どんどんたまっていく落し物を、持ち主が見つからないからと言って担任の先生が全て捨ててしまったとしたらどうなるか。子どもたちはきっと、物を大切にするという心を持たないまま、成長していくかもしれません。

 

では、持ち主を徹底的に探せばよいのか。その場合は、大変な手間と時間が必要になります。しかもそれらの手間と時間は、子どもたちや先生にとって、無駄な時間以外の何物でもありません。

 

「これを落とした人は誰ですか」と問いかければすぐに落とし主が見つかるかといえば、そんなことはないのです。自分のであっても気づかないことが多いのです。すると次の手段に移るしかありません。

 

ハンカチであれば、全ての子どもたちの机の上に、自分のハンカチを出させなければなりません。ハンカチを出せなかった子どもが怪しいとなりますが、「今日は最初から忘れてきていた」というかもしれませんし、「自分のハンカチは全て名前が書いてあるはずだから違う」というかもしれません。でもそれが本当の事かどうかは誰にもわからないのです。

 

さらに、自分のハンカチが出せた子どもが落とし主ではないとも言い切れません。なぜなら、そのハンカチが今日落とされたものとは限らないからです。つまり、これだけ時間を割いても結局は誰が落とし主なのか分からないということですから、時間ばかりが無駄に過ぎていってしまったと言わざるを得ません。

 

落とし主が幸いにして見つかったとしても、良い時間が過ごせるとは思えません。落とし主探しで疲れた上に、イライラを決して出さないようにしながら落とし主を注意するのは、教師にとってはやりたくないことです。子どももみんなの前で注意をされて、しかも自分のせいでみんなの時間を使ってしまうのですから、決して良い気持ちはしないでしょう。

 

こんなことで消費してしまった時間があれば、どれだけのことが勉強できるでしょうか。どれだけ楽しく遊べるでしょうか。本来ならば勉強や遊びに使えた時間を、落とし主探しという、先生も子どもも楽しくない時間にしてしまうのは、とてももったいないことなのです。

 

落とし主を探さず捨てれば、物を大切にする心を育てられない。落とし主をきちんと探そうとすれば、時間を有効に使えない。このように、記名のない落し物というのは、子どもにも先生にも悪影響をもたらすものなのです。

 

記名にはこんなにも重要な意味があった!

持ち主が見つからない落し物というのは、とても厄介な存在です。物を大事にする気持ちを養うには、簡単に捨てるわけにはいかない。かといって一つ一つ持ち主を探すのには大変な労力と時間が必要です。

 

ですから、持ち物には必ず名前を書く必要があるのです。子どもたちが学校にいる間の時間を、落し物の持ち主探しで削るのは非常にもったいないことですから。

 

これが、持ち物に記名をする大きな理由なのですが、まだほかにも理由があります。しかも、「持ち主探しを容易にするため」ということよりももっと深い重要な意味を持つ理由です。それは、「自分の持ち物に愛着を持ち、大切に扱う心を養うため」ということです。

 

今のように物が何でも豊富に与えられなかった時代では、家の中のものでも必ず自分の名前を書いたものです。そうしないと、自分の鉛筆なのにいつの間にかきょうだいが使っていて、自分が使う鉛筆がなくなってしまった、ということになった時に、おいそれとは買ってもらえないからです。

 

現代の家庭ではそんなことは起こりません。なぜなら、家の中に鉛筆などゴロゴロと転がっているからです。そんな状況下では、名前を書く必要はありません。さっき使っていた鉛筆が見当たらなくても、他の鉛筆を使えばよいのですから。だれも、鉛筆一本がなくなったくらいでは騒がないのです。それはイコール、鉛筆というものを大事にしていないということになります。

 

子どもだけでなく、大人にもよくあることではないでしょうか。会社のデスクの中にはたくさんの筆記用具がありますから、なくなってしまっても別のを使えばいいのでさほど気にしません。他の人のかもしれない筆記用具が紛れ込んでしまうこともありますが、あまり気に留めずに自分のデスクの中に入れっぱなしにしてしまうことでしょう。

 

小学校の中では、学年が進むほど、自分のものを大切にしない姿勢が表れてくるように思われます。なぜなら、入学したての頃は鉛筆が5本ほどしか入らない筆入れなのに対して、学年が上になっていくにつれ、大きめの筆入れにお気に入りのペンやシャープペンシルをたくさんいれてくる子どもが増えていくからです。

 

高学年とはいえ、それほどの量の文房具を全て自分で管理するのは難しいため、なくなってしまっても、間違って友達のものが混入していても、そのことに気付けません。現代の豊かさは、このように、自分のものに愛着を持ち、大切に使うということを難しくさせてしまったのです。

 

まずは、子どもに物を必要以上に与えるのをやめましょう。その上で、その子の持っているものにはすべて、名前を書きましょう。自分が管理できる数であれば、自分のものがなくなった時にすぐにわかるはずです。そして名前が書いてあれば自分のもとに戻ってくるはずです。

 

物に名前を書くというのは、自分のものは自分のもの、という愛着心を育て、物を大切にする心を養うという、とても重要な意味を持っているのです。

 

子どもの持ち物に効果的に記名をするための6か条

子どもが小学生のうちは、親が子どものものに名前を書いてやることが多いでしょう。ところが、ただ名前を書いてしまってもすぐに消えてしまったり、うっかり書き忘れてしまうものがあったりして、なかなか徹底しないことが多いものです。ここでは、効果的な記名の仕方についてご説明しましょう。

 

①姓と名をどちらも書く

せっかく記名があっても、姓か名のどちらかしかないために、落とし主が確定できないことがあります。佐藤さんや鈴木さんはどこの学校にもたくさんいるでしょうし、名が同じ子どももたくさんいて当然です。これでは記名の意味が薄れてしまいます。

 

②長い年数使う予定のものは記名の仕方に工夫が必要

その学年の時だけ使う物なら、学年とクラス、名前を全て書いておくと安心です。しかし、次の学年でも使う物であれば、進級時に学年とクラスを書き換えるのを忘れないように注意しなければなりません。長い年数使う物は、可能であれば名前だけを記入するのも良い方法です。

 

書き換えは面倒、でも名前だけだとなくしたときに戻ってこないかも…と心配であれば、その子が入学した年を記入しておくというやり方がおすすめです。平成27年に入学したのであれば「27年入学」などと書いておけばよいでしょう。また、住まいのある町名や地域名を書くのも一つの方法です。これもたいていはずっと変わらないものでしょうから。

 

③その物の使い方によって書き方を工夫する

雑巾は、水洗いをしたりごしごしこすったりするものですから、ただペンで一度書いただけでは、そのうち消えてしまいます。油性ペンを使い、濃い字になるように何度も重ねて名前を書きましょう。別布に名前を書いてそれを縫い付けるというのも良い方法です。

 

歯ブラシの背に書いた名前も消えやすいものです。そういう時は記名した上からセロテープなどの透明なテープを貼るとよいでしょう。歯ブラシでなくても、一度書いた名前を長持ちさせたいときにおすすめの方法です。

 

④シール類を利用する

100円ショップでも手に入れられる、お名前シール。これは大変便利なものです。ペンで名前を書き込むタイプもありますが、注文して名入れするタイプもあります。どちらも、はるだけでよいので手軽ですね。

 

ただし、さっと貼っただけでは取れやすくなってしまいますので、シールを貼りつけたらその上から指でよく押さえてしっかりとなじませましょう。もっと長持ちさせたいなら、その上からセロテープなどの透明なテープを貼っておけば万全です。

 

また、わざわざシールを買わなくても、自宅にあるテープ類で代用できます。白や透明のビニールテープやセロテープなどがそれに当たります。これらを適当に切って名前を書き、貼るだけです。これらのテープであれば、はがしたい時も簡単にできますね。

 

⑤時にはカタカナで名前を書くのもよい

書く場所が狭い時、無理やり漢字で書こうとすると大変ですし、できたとしてもにじんで判読できなくなりがちです。ひらがなでも難しい場合がありますね。そんな時、カタカナはとても優秀です。カタカナは直線でできているものがほとんどですし、画数も多くありませんから簡単に書けます。雑巾などの布ものにもおすすめの方法です。

 

⑥なくなりがちなのに記名を忘れがちな物に注意する

大きなものなのに忘れ物になりがちなもの、それは上着類です。なぜなら、朝家を出てくる時は寒いから羽織ってきていても、学校で少し動けば暑くなることがよくあるからです。そうなると、子どもは上着を脱いでしまいます。でも、活動や遊びが終わった後も暑いですから、脱いだものに気づかず移動してしまうことが多いのです。

 

また、同じ理由で手袋やマフラー、帽子も忘れ物になりがちです。しかもこれらは細かいので、上着よりも忘れがちかもしれません。しかし、上着にしても手袋などの小物類にしても、文房具などに比べて、ついうっかり記名をし忘れてしまうことが多いので注意が必要です。

 

上着には名前が書きにくいので、上着の裏側の襟元の部分やわき腹の部分についている、小さなタグに書くといいでしょう。洗濯表示など、大事なことが書かれているので、よく読んだうえで、不要な部分に書きます。市販の油性ペンには細字タイプもありますので、それを利用して書くといいですね。

 

手袋やマフラーなどになりますと、タグがないことも多いもの。そんな時はひと手間かけて、タグを親御さん自身で付け、そこに名前を書きましょう。面倒かと思いますが、これで物を大切にする心を身につけられるのですから、ここは頑張りどころではないでしょうか。

 

これらの点に気をつけながら記名すると、途中で消えてしまったり、記名し忘れのものがあったりすることを防ぐことができます。

 

記名の作業は温かい思い出となる

多くのご家庭で、子どものものに名前を書くのはお母さん、もしくはお父さんがされていることでしょう。しかも、子どもが寝ている間にやるということが多いのではないでしょうか。しかし、親のどちらかが、子どもがいない時に書くものと決めつけることは決してありません。家族全員で、子ども本人も交えながら書いてみてはいかがでしょうか。

 

その子にとってはきっと、家族全員の愛情を感じ、また進学や進級が楽しみになる幸せなひと時になるでしょう。その幸せな気持ちは、後々まで良い思い出として残るでしょう。そしてそのように記名してもらった子どもは、自分の持ち物をきっと大切に使うに違いありません。

 

子どもの入学、進級準備といえば、「名前書きか…たくさんあって面倒だな…」というイメージを持ってしまう方が大半かもしれませんが、考え方を変えてみれば、名前書きの行事は、その子の、そして家族の大切な思い出にすることができるのです。

 

親と子で「次の学年はどんな先生かな」「今年は修学旅行があるね、楽しみだね」などと話しながら名前書きをしたなら、親子のコミュニケーションも一層深まります。

 

全てのものを一緒に書くのは大変ですし、学年が小さな子は途中で飽きるかもしれません。そんな時は部分的に一緒に書くことにするのでももちろんいいのです。名前を書くことを通して、自分のものに愛着を持たせ、物を大切に使うことを教えるということを、親自身がきちんと理解していれば、やり方は何でもいいのです。

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