国語力を身につけるには音読も効果がある
毎日頑張って勉強しているのに、今ひとつ成績が伸び悩んでいる。あるいは、ちゃんと真面目に勉強はしているのに、学力があまり身についたように見えない。そんな子どもは結構多いものです。そういった子どもにはある共通点が見られるといいます。どうしてそういうことが起きてくるのかチェックしてみましょう。
勉強しても伸びない子どもが増えてきている
近ごろ、子どもの学力が下がってきているなどと騒がれています。いつの時代にも勉強嫌いの子どもというのはいて、そういった子どもは学校では授業に興味が持てず、予習復習などするわけもなく家で教科書やノートを開けたこともない、といったような感じで学力も伸び悩むものです。しかし、こうした子どもはどの世代にも一定数いるもので、近ごろ言われる子どもたちの学力低下には直接的には関わっていません。
最近学力面で伸び悩む子どもの中にはきちんと勉強を頑張っていて、学習塾などにも通ったりしているのにも関わらず成績が伸びない、というケースが多いのです。決して子どもたちが勉強をしなくなったためではなく、勉強しても伸びない子どもが増えてきていることがその要因にあると考えられます。
こうしたケースを見てみると、いずれの場合にもある共通点が見えてきます。それは、そうした子どもは正しい意味での国語力が身についていないということです。「正しい意味での国語力」とは、文章を読んでその内容を読み取る能力(読解力)と適切に自分の考えを文章で表現する能力(文章力)の2つから成り立っているものです。そしてこれこそが子どもたちの学力低下の根底にあるものではないかと思われます。
国語力はどうやったら身につくのか
こうした国語力を身につけるためには、読んだ文章の構造をすぐに見抜くことができる能力が不可欠です。そしてそうした能力は、自分自身で文章を書くことによって身につけることができます。つまり、正しい意味での国語力を身につけるには作文を書くことが一番なのです。
また、国語力は作文を書くだけでなく文章を音読することによっても身につけることができます。どうして音読によって国語力が上がるかといえば、上手な文章を実際に声に出して読むことで、文章がどのように構成されているか、ということを知ることができるからです。
日本語は助詞や助動詞といったものが重要な言語です。もっと平たく言えば「てにをは」が大事ということです。「てにをは」をどういった時にどんな形で使うのかということが分かってくれば、文章を書くのも読み解くのも格段にうまくなります。
この助詞や助動詞の使い方は日本語の根幹をなしています。「てにをは」は、その文章で伝えたい内容、あるいは後ろに続くことになる文章の内容によって使い分ける必要があるのですが、この根本的なところは理屈で学ぶものではなく、何度も繰り返し使うことで感覚として「慣れる」ものです。
音読なら学校でよくさせられている、という意見があるかもしれません。たしかに昔から、国語の授業で音読をさせる先生はたくさんいます。子どもをあてて、何ページ何行目から読ませる、といったよくあるやり方です。それだけでなく、小学校に入りたてのころは音読をする宿題が出されることもよくあります。しかし、音読にも効果的なやり方とそうでないやり方があるのです。
学校で音読をする場合、先生が重視するのはなめらかさではないかと思います。つっかえず間違えずにすらすらと音読をすることを求めるわけです。また、音読の宿題を出す場合、重視されるのは回数であり、どんなふうに読んだかはあまり気にされない傾向があります。
男の子などは音読することに照れがあるためか、不明瞭にもごもごとやってしまったり、妙に速いペースで読んだりします。また、どれだけ早く読めるか、といった関係ないことに夢中になってしまい、とにかく早く読もうとしたりすることもあります。こうしたやり方で音読したところで、国語力の醸成にはつながりません。
国語力を伸ばせる音読のやり方とは
ではどういった形で音読をすると国語力に結びつくかですが、それは一つ一つの音をきちんと区切るようにして読むことです。音読する際のペースはゆっくりと、大きな声を出して読むようにするのです。たとえば「男の子が走った」という文章なら、「男の子が 走った」というふうに読みます。劇のトレーニングのように、発音するときの口の形まで意識しながら音読するとさらに効果が高まります。
こうした音読方法は、普通に読むよりも助詞や助動詞、すなわち「てにをは」が強く意識されます。そのため、日本語にとって大事な助詞や助動詞の使い方がよりスムーズに頭に入るのです。
また、いわゆる古文を使ってこうした読み方を実践するのも効果があります。しかも、作られた年代順に、例えば万葉集、古今集、竹取物語、枕草子、源氏物語、平家物語、徒然草、奥の細道、といったように読み進めていくようにします。そんなふうにして音読をしていると、明治期の文豪たちの作品にくるぐらいになれば、たいていの子どもは日本語というものがどういう形で成立しているのかということを感覚的に理解するようになります。
このようにした上であれば、教科書を軽々読みこなす程度の国語力は間違いなく身につきます。そうすれば、教科書や参考書に書いてあることがすらすら理解できるようになりますので、それまで学力が不振であった子どももどんどん成績を上げることができるようになるのです。
子どもがまだ小さいうちは古文を読むことなどできないでしょうから、その場合には国語の教科書を使う形で構いません。ただ重要なのは、一つ一つの音をきちんと区切るように、ゆっくりと大きな声で、口の形もきちんと意識して読むようにする、という点です。逆に言えばそこさえできていれば大丈夫です。
学校で音読をさせる場合、とにかくなめらかに読むことや、あるいは朗読的な読み方を求められるかもしれません。朗読的な読み方というのは、感情が伝わるようなやり方で文章を音読するやり方ですが、こうしたやり方の場合助詞や助動詞はむしろ強く意識されないように読むのが一般的です。確かに聞いていて心地いいかもしれませんが、国語力を身につけるために日本語の構造を理解する役には立ちません。
近ごろではこうした朗読が一種の流行で、有名な俳優さんやアナウンサーなどが朗読CDやDVDなどを出版していたりします。こうした方はいわば朗読のプロフェッショナルですので、確かに読み方は上手で、内容にいつの間にか引き込まれてしまうこともしばしばです。しかし、こうした読み方は国語力を身につけるためにはあまり役に立ちませんので、音読する際のお手本には向いていないのです。
また、特に男の子の場合は何故か音読することに照れを感じる子が多いようです。そういった子どもにプロの上手な朗読CDなどを聞かせたらむしろ萎縮してしまい、音読することそのものが嫌だと感じてしまいかねないので注意した方がいいでしょう。
もう一度まとめると、正しい国語力を身につけるために大事なのは、「てにをは」などの助詞や助動詞をきちんと使いこなせるようになり、日本語の構造をきちんと理解することです。そしてそのためには音読を行うことが効果的ですが、その際には一つ一つの音をきちんと区切り、ゆっくりと読むことが大切です。勉強はきちんとしているのに成績が伸び悩んでいる子どもがいる場合ぜひ一度試してみて下さい。
更新日:2019/11/29|公開日:2015/06/08|タグ:国語